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Twitterには長いやつ

SURPRISE GIGS IN 松藤×甲斐

2003年5月12日(月) 大阪バナナホール

 荷物を持たず、万全の態勢でオールスタンディングに備え、バナナホールへ。 
 開場の6時半ちょっと前に着くと、入り口前のスペースにファンがごった返して いた。番号順に整列せえへんとは。僕は道路に並ばざるをえず、こんな遠くから自分の 番号のときに入場できるのか、心配になっていた。せっかく10番台やのに。しかし、 人ごみを縫って前に進んで行く、早い番号のグループを発見。すかさずその後ろに ついて、前へ行くことができた。自分の順番で無事入場。ワンドリンクのチケットを 受け取る間ももどかしく、いいポジションを求めて客席へ。 
 なんとか最前列をGET!ステージに向かって左の方だ。これまでのどの記憶、 どの経験から考えても、甲斐は松藤とならんでステージに立つ場合、左側に位置する はずや。 
 イスがあるとは意外やったな。丸イスに座って開演を待つ。ステージのバックに は、「Banana Hall」のロゴ。洋楽がBGMに流れている。 
 ステージの上にはイスが3つ。左のイスのそばにはテーブルがあり、水が2本と ハーモニカがのせられている。真ん中のイスだけが、やや後方に置いてある。それらが シンプルな紺色の照明を浴びて、主がくるのを待っている。

 BGMが大きくなる。アコースティックやろうし、アルバムに静かに聴かせる感じ の曲が多かった松藤甲斐やから、僕らは立ち上がらなかった。後ろの人への配慮もある し。だが、手拍子は目一杯。 
 さて、松藤甲斐の初日。どんなライヴをやってくれるのだろうか。

 意外にも、最初に現れたのは甲斐やった。 
 上下とも黒。ステージ左に立って、話し始める。歌謡曲の司会者のパロディー で、「罪を憎んで人を憎まず。松藤を憎んで松藤の曲を憎まず」というジョーク。 
 それから松藤を呼び入れ、甲斐は左ソデへ姿を消した。

 松藤は白いシャツに黒のベスト。拍手に応え、右のイスに座る。やっぱり甲斐は 左側なんや。 
 「かなしみがすきとおるまで」 
 ギターを弾いてうたう松藤。緊張しているのか、声がうまく出なかったりする。 場内は、心配しつつあたたかく見守っているような雰囲気。

 左手から甲斐が現れる。歓声があがるがそれには応えず、一直線に左のイスに 着いて歌う態勢に入る。 
 前奏は強いストローク。松藤が歌い出して初めて、この曲やとわかった。 
 「ダイヤル4を廻せ」 
 うおお、まさかこれをやってくれるとは!初めて生で聴くことができた! 今日は甲斐バンドの曲もやってほしいなあと思っててんけど、しっかりやってくれる みたいや。 
 甲斐と松藤がハーモニーを重ねる瞬間がある。 「うまくやりなよ」からは甲斐が歌ってくれる。 
 松藤が歌い、甲斐が歌い、2人で歌う。「ダイヤル4を廻せ」はそういう曲だ。 ファンなら誰もがライヴで聴いてみたかった曲やろう。それが実現したやんなあ。

 松藤甲斐ヴァージョンの「きんぽうげ」を思わせる前奏。しかし、松藤が歌い 始めた曲はちがった。 
 「一日の終わり」 
 甲斐はサビでコーラスをする。間奏ではハーモニカも聴かせてくれた。 
 なんかぞくぞくしてくる。松藤作曲のめったに聴けないナンバーが、次々と歌わ れるねんから。貴重ないいライヴやで、ほんま。

 MCは甲斐が主にしゃべる。 
 「みんなに言っときたいのは、自由にしていいけど、無礼講じゃないからね。 俺の松藤に何かあったら、俺がすぐにそっちへ下りていくからな。「下りて来て」って 感じでしょ?そうはいくか」

 「オープニングはドアーズかけてんのに手拍子で盛りあげて、お前ら、何てこと するんだ。盛りあげても1人しか出てこないのに」と言いつつ、うれしそう。 
 1曲目をソデから見てるという甲斐にはめずらしい経験の感想を述べ、ライヴの 1曲目の大変さについて語る。 
 「前のツアーなんて、ワールドカップの テーマから、1曲目始まったら「今日もー 枯れ葉ーのーまちー」って、落差もの すごかったんだから。って、自分で決めといて。途中から出るのは楽だ。 松藤も俺の大変さがわかっただろう。ちょっと声が上ずったりして」 
 甲斐があえてそうやって触れることで、松藤の緊張は和らいでいくのだろう。

 「バナナホールは、ステージで いきなり「明日やる」と告知したGUY BAND以来だな」 
 あの日はライヴ後に急遽飲み屋から予約の電話かけたりした。休み取るのに気を 遣ったな。 
 「ここは飲み屋が近い。たこ焼き屋もあるし。俺、たこ焼きの屋台はもう何十年 も素通りしたことがなくて」

 「今日最初に松藤がうたったのは、「かなしみがすきとおるまで」という曲で。 作家の江國香織が作詞してくれた。初作詞。タイトルは全部ひらがななんだ」

 「ダイヤル4を廻せ」に出てくる電話番号について。 
 「あれは、本当にある番号だったんだよね。 いっしょに住んでる女のひと、かみさんとも言うんですけど。の、実家の番号で」 
 驚きの声があがる。その番号がなくなった今だから明かされる事実。 
 「「かかってきた?」って聞いてたんだけど、「いや、かかってこない」って。 あの通りにまわして、あとひとつなのに。1から9まで廻してみたら、つながったんだ よ」 
 実在する番号を並べ換えたのかなとは思ってたけど。03が最初なんかなとか。 そういえば、秋本治の漫画か何かで、最後の一桁だけ伏せた電話番号を載せたら、かけ てきた奴がいた、とか聞いたことがあった。でも、まさか。そんなふうにしてあちこち 電話したら、甲斐なら怒りそうにも思えたし。どっちにしろ全然考えつけへんかった。 
 もしその電話がつながったら、「ゲンカク」なお父さんが・・・というギャグに 話はつながっていく。

 2列目の真ん中あたりを示しながら、「「一日の終わり」をやったら、イントロで そのへんが「ああ、「きんぽうげ」だ」って。読めてるんだよ」 
 甲斐のライヴって、すぐにどの曲かわかるイントロでも、歌い出しまで何か わからないイントロでも、どっちも盛りあがる。ROCKUMENTのことを「マニア のイントロ当てクイズみたいになってる」と甲斐が言ったことがあったな。

 今度は最初から甲斐が歌い出す。「さーみしさーに消え入りそうな街ーのあかーり のしーた」 
 「汽笛の響き」 
 うおお!また初めて聴ける曲や!すごいぞ! 
 甲斐はこの曲でもハーモニカを吹く。 
 最後のサビを「冷たくなってゆく」と歌い終えた甲斐は、レコードと同じように そのまま「さーみしさーに」と続けようとする。しかし、松藤のギターが、ごく短い 間奏をはさむ。このライヴに向けてアレンジした部分だったのだろう。甲斐はすぐに 気づいて歌をとめ、またあらためて「さーみしさーに」と歌い直した。

 甲斐もギターを受け取る。二人のギターがあのメロディーを奏でる。 
 「バランタインの日々」 
 名古屋のダイアモンドホールで、GUY BANDとしてうたってくれたことが あった。それで、今日も期待してたのだ。ほんまにやってくれてうれしい。 
 甲斐と松藤の声と詞とギターに、ひたる。この二人でやるのにふさわしい曲や。

 「流れは月にきらめき 憶いは波にゆらめく」 
 どの曲か思い出せないまま、そこまで聴いただけで泣けてきた。甲斐の歌声と メロディー、美しくて想いが感じられる詞に、やられてしまった。思い出した。 これは、初めて聴く「ユエの流れ」や。 
 「翼あるもの」では「くーろかみー」とうたっていたところを、 「くーろーかみ」という感じにうたう。「くー」と最初にのばす部分も少し短めに なっている。語尾は切るねんけど、それが情感深く響くのだ。詞の体言止めが、より 印象的に届いてくる。こっちの方がオリジナルに近いアレンジなのだろうか? 
 最後の「淋しく帰る」は、2回目で「さーみしくー かーえーるー」とゆっくり うたい、曲が終わる。 
 「ROCLUMENT V」でも 聴けなかった「ユエの流れ」、めっちゃよかったあ。

 「今のはマリオ清藤という人の曲で。フォークルとかもやってた」 
 それから、今「翼あるもの2」をつくっているという話。みんながよろこびの 拍手。 
 「2はすごいよ。「恋のバカンス」とか入ってる」と言うと、「それ、 1じゃん」と松藤がツッコむ。それで、1のレコーディングのエピソードに。 
 「ナッシュビルに3週間いて、その間ずっとドイツレストランに行ってたんだ。 シチュー。ハンバーグ。ウインナー。ミンチ系ばっかり」 
 おいしかったそうやけど、 「帰ってきて、見るのもいやになった。B型、極端だ。チラせよ!」

 ここで、前野選手が加わる。今日はサングラスをしてなくて、パーマの髪以上に、 くっきりと大きな目が印象的だ。真ん中のイスに座る。 
 昨日もライヴの後、甲斐たちはかなり飲んだ らしい。 
 「坂井くん、コーヘイ、JAH-RAHと、昨日で帰るメンバーもいて。松藤は 「お前は明日があるんだから」とか言って、2時頃先に帰して。僕らは5時半頃、 定食屋にいました。僕は冷奴かなんかだったんだけど、イベンターの奴がいっぱい 食ってて、「お前、朝定かよ!」って」

 「前野は「前世が甲斐の妹」説っていうのがあるんだよな」と、甲斐が話し出す。 
 「俺が夜中にオネーチャンと2人で飲んでるだろ?で、奴は隣りの隣りくらい で、坂井くんや松藤と飲んでて。それで、俺がオネーチャンと次の店行くと、なぜか 前野もついて来るんだよ。3人で飲むはめになって。それで、腹立つのは、その オネーチャンが帰ると、前野も帰るんだよね」 
 「その話を松藤にしたら、「それは前世が妹なんだよ」って。それをすぐ言う 松藤もすごい」

 前野選手に関する話題で楽しんだあと、「まだ松藤甲斐の曲、1曲しかやってない じゃん」というフリから、松藤がヴォーカルの曲に入る。 
 「-サスライ-」 
 甲斐はサビのコーラス。前野選手はピアニカを奏でる。 
 雰囲気があったな。

 「今のは、松藤が16か17のときにつくった歌で。当時は学生服で照和に来て て、すぐ人にバス代借りにくるような奴だったんですが。いつか甲斐バンドで曲がない ときに使おうと言ってて、そのままになってた」 
 甲斐もこの曲かなり気に入ってるみたいや。

 「ビューティフル エネルギー」 
 松藤が歌い出し、甲斐がコーラスをする。2番からは甲斐がヴォーカル。 
 甲斐は「汗を流そうぜーぇ」と語尾を響かせる歌い方。そうしておいて、ラスト だけは、「声をあげようぜーーーっ」とオリジナル通りに歌った。

 「このところ、僕らの間では、「ビューティフル エネルギー」再評価っていうの が起こってて。松藤の前ではあまり言ってませんが」 
 それで、「Series of Dreams  Tour Vol.2」でも歌われたのか。 
 「ジャックスの歌で、早川義夫は詞書いてなくて曲だけで、女のひとが詞を 書いた「遠い海へ旅に出た私の恋人」という歌があって。それは、女性の マスターベーションを歌ってて。これぞロック、という。いつか書きたいと、僕が いくつか持ってるテーマのひとつだったんだけど。ちょうど化粧品のテーマソングの話 がきて」 
 そこで、そのテーマで書いてみた、と。 
 「「まずいかなあ、発売中止にならないかなあ」と思ってたら、「とっても きれいな曲ですね」とか言われて。「あの曲に出てくる草原っていうのはね」「雨って いうのはね」って、説明してやろうかなと思った」 
 それから客席に向かって、「みんな、こういう話できる年代になったね。3回 ぐらい傷ついて、人生やり直してそうだもん」

 「これはツアーでもやってるから。ミカバンドや加藤和彦の詞を書いてた松山猛に 書いてもらって」 
 「メガロポリス ノクターン」 
 またこの歌が聴けるしあわせ。

 今夜はやはりたっぷりしゃべってくれたので、どの曲の後に言ったのか、覚え きれてない話もある。なので、ここで残りのMCを書いておきます。

 新しいスタッフを決める面接。自分にゆかりの名字だからと、名前だけで甲斐が 密かに「あいつじゃなきゃいいな」と思ってた人がいた。けれど、「やっぱりそいつが いいんだよ。明るくて」。で、その人が選ばれた。 
 そこから名前の話。宍戸開の名前も挙がる。 
 「これ、5日ぐらいたってから、また笑えるよ。2週間で4回くらい。そういう のが好きなんです。って、俺は何なんだ」

 「ぐっさんに詞を頼んだ代償は大きかった」と、「くずアルバム」2曲参加に ついて。 
 甲斐が普段から興味を持っていろいろ見てるのが、結局歌にプラスになってるん やなあと感じる。 
 レコーディングに行くと、宮迫がぐったりしていた。前日に番組で失言をして、 落ち込んでいたそうだ。甲斐が2時間ずっとそのことをからかってたら、後日 「HEY!HEY!HEY!」でアルバムの話題になったとき、宮迫は甲斐の名前を 出さず、ダウンタウンにツッコまれてたという。でも、それは台本に書いてあった らしい。 
 「「岸和田少年愚連隊」 見て、いいなあと思ってたのに。でも、きっぱりやめた」と笑う。

 JAH-RAHの選挙カーネタ。 
 それから、このツアーのJAH-RAHのことを、「自分の顔より大きい人の 顔が入ったTシャツでね。あれにもちゃんと、鼻と耳にピアスつけてるんだよ」 
 そうやったんやあ。そこまで見えへんかった。今度よく見てみよう。

 甲斐のVol.2ツアーには、伊勢原や笠懸野など、行ったことのない街も あった。 
 そこのノリは、「あたたかくて、よかった」

 松藤甲斐では、「東京キネマ倶楽部」という会場でもやる。 
 「すごいんだよ、元キャバレーというところで。上の階も下の階もキャバレー なんだって」

 「今日は穏便で、みんな騒がないからいいよな。昨日、全然聴こえなかった。 ちょっと暴れてしまいました」 
 マイクスタンドを床に投げた「ダイナマイトが150屯」を思い出す。あれ、 めっちゃ盛りあがったで。

 松藤甲斐のライヴは、「最初はシリドリの幕前にやろうか、とか言ってたんだ けど。「LIVE AID」のディランのように。ミックとティナ・ターナーの準備中 に、白い布が下りてきて。「ディランをそんなふうに使うなよ、ミック」と思った時 みたいに」

 ソロのツアーと松藤甲斐のライヴを例えると、「国立演芸場末広亭みたいなもん だからね」 
 自分と松藤のことを、「歌丸と小円馬」とも言う。 
 他に落語関係では、志ん生も枝雀もいなくなったと話した。志ん朝と言ったのを 僕が聴き違えた可能性もあるな。

 松藤甲斐のレコーディング。 
 「「きんぽうげ」の間奏のフルートに、4時間かかった。セッション ミュージシャン入れれば早かったんだけど、松藤の頭の中にあるやりたいことを、 本人が音で表現するのがいちばんいいわけだから」

 松藤甲斐でやりたかったこと。 
 「AORっていう大人の音楽のジャンルが、もうここ10年死滅してて。AOR やっても、ソウルと呼ばれたり」 
 そういう音楽を復活させたかったという。松藤もうなずいている。 
 甲斐が小室哲哉に請われて組んだ時にも、大人が聴ける音楽をつくりたいって 言うてたな。 
 「僕は自分ではできないんで、松藤を通して。それは、今日1曲目をソデで 見てたような、いい感覚に似てるんだけど」

 「松藤と歌を半分コできるのが、松藤甲斐のウリだね」

 僕が思い出せるMCは、これぐらいです。 
 あと、「オフクロは永遠のライバル」と言ってたのも印象に残ってるな。

 「レイニー ドライヴ」 
 松藤のギター。前野選手はアコーディオン。そして、この曲でも、甲斐と松藤が 歌を「半分コ」や。 
 次は松藤の番という時に、甲斐も「スピード あげ」とうたったところが あった。曲に入り込んで思わず、なんやろうな。こういう瞬間を見るのも好きや。

 アルバム「松藤甲斐」の前奏。 
 今度こそ「きんぽうげ」やった。 
 ギターとアコーディオンで。フルートはないけど、間奏のギターもいい。 甲斐がハーモニーをつくり出す。

 「花,太陽,雨」 
 アルバムで甲斐の歌がいちばんたくさん聴けた歌や。かつてGUY BANDの 名古屋ダイアモンドホールでも、やってくれたことがある。あのときは、うたい終えて から、「(曲の終わりをわかりやすくして)この曲でも(すぐに)拍手してもらえる ようにしようよ」と、ステージ上でジョージと松藤に話しかけていた。今は僕らも 「迷える人よ」で終わるとわかっている。 
 甲斐が顔を紅潮させながら熱唱している。めっちゃ印象的なシーン。 
 「まーよーえーる人ぉよぉー」の声が響いた。その余韻が消えるまでじっと 聴いてから、僕は拍手をした。

 甲斐が前野選手を送り出す。そして、甲斐も去ってしまった。もう一度、松藤 一人でのステージだ。

 松藤は「一人でやるのも何なんで。自分でつくったオケといっしょに」と 告げる。 
 「憧憬Love Dayz」 
 アルバムの音に、松藤の生のギター。声もよく出てるぞ。

 「あいのもえさし」 
 甲斐が松藤に書いた詞がうたわれていく。真っ赤なライトで。 
 ラストは左上からの白い光と、下からの赤だけが残った。

 「サンキュー」 
 歓声に応えて、松藤が去って行った。 
 アンコールの手拍子。「まーつふじー まーつふじー」というコールが始まる。 野球の応援みたいや。「よーしのぶー」とか繰り返すときのリズム。 
 そのうち「まーつふじー まーつーふじー」の間に「かい」という合いの手が 入るようになる。「まーつふじー かい まーつふじー かい」の連呼。たしかに 松藤甲斐やけど、こんなんきっと大阪だけなんちゃうん。でも、あたたかくていい コールやったな。

 松藤が帰って来る。 
 「APRIL SONG(ぬるい時間の河を泳いで)」 
 前田さんの詞。アルバムでも特に印象が強い曲のひとつ。大人のぎりぎりの 世界。

 甲斐も出て来てくれた。白地に黒の模様がたくさん入ったTシャツになっている。 
 「破れたハートを売り物に」 
 3人で、KAI FIVEからのアコギヴァージョン。圧倒的な甲斐の歌。 オーディエンスの大合唱。完全に甲斐の空間になって行く。甲斐といっしょに大きく 大きく歌う。最高潮や。 
 甲斐が後奏で「チュルルルル」と声をあげた。

 いつの間にかみんな立っていた。僕も立ち上がる。こんなにうれしいライヴを 見せてくれた3人に、スタンディングオベーションや。ものすごい拍手。 
 松藤がピックを投げた。左の客席前の床に滑り落ちてきた。近い客が殺到する。 僕は立ち遅れてしまった。でも、いいねん。今夜のライヴを体験できただけで、 満ち足りているのだ。

 声援に応える3人。 
 甲斐は最後に「6月7日なんばHatch、よろしく」と言い残していった。 
 僕らは歓声をあげる。こういうのめずらしいけど、かっこよかったな。 もちろん、なんばも行くで!

 「What A Wonderful World」が流れてくる。それでも 手拍子は止みはしない。2度目のアンコールを求める。あと1曲!「甲斐ーっ!」の 叫びが飛び交う。動かない客席にアナウンスが入る。そんなもん、手拍子と歓声で かき消してしまえ。誰も動かない。もう一度、出て来てほしい! 
 スタッフが複数現れる。「What A Wonderful World」が またかかる。どうしても、これで手拍子をやめなあかんみたいや。 
 スタンディングオベーションした位置にずうっと立っていた僕ら。どうしようも なく、歩きはじめる。 
 もう1曲聴きたかったな。でも、ほんとは充分やってん。ほんまにいいライヴ やってんから。

 表で松藤甲斐のビアマグが売られていた。もう残り数個になっている。 「Series of Dreams Tour」のバッグと一緒に買った。

 松藤甲斐のアルバムは、思ったより甲斐のヴォーカルが少なかったけど、ライヴ ではたっぷり歌ってくれたなあ。めっちゃうれしかった。 
 しあわせな気分とともに、もうひとつの想いが生まれてきた。このライヴをもう 1度見たい!また聴きたい曲がたくさんあるのだ。 
 名古屋のチケット何とか獲られへんかな。ライヴの余韻に漂いつつ、僕はそう 考え始めていた。

 

 

2003年5月12日 バナナホール

 

かなしみがすきとおるまで 
ダイヤル4を廻せ 
一日の終わり 
汽笛の響き 
バランタインの日々 
ユエの流れ 
-サスライ- 
ビューティフル エネルギー 
メガロポリス ノクターン 
レイニー ドライヴ 
きんぽうげ 
花,太陽,雨 
憧憬Love Dayz 
あいのもえさし

 

APRIL SONG(ぬるい時間の河を泳いで) 
破れたハートを売り物に