CRY

Twitterには長いやつ

BBガールズの土曜パームトーン劇場(2019年4月6日)

木屋町通の桜は満開。人通りも多い。高瀬川沿いをゆっくり花を見ながら歩く。ちょっと前まで、河原町は映画かお笑いを見に来るところだった。その頃から、桜の多いこの道はお気に入りで、春は花見代わりに散歩していた。月1以上で木屋町に通うことになるとは想像もしていなかった。

 

開場時間を少し過ぎて event space PALMTONE に入る。いつもより多く席が用意されている。今日は初めて、観客数の目標が設定されているのだ。それが達成できれば、BBガールズは京都ミューズホールでライブができる。

たじさんとカナさんは毎月、開演前に客席に来て、客に声をかけてくれる。初めて来たときはびっくりしたな。そのお二人が今日は出てこない。開演前にもし目標より少ない客数を見たら動揺するかもしれないからだという。

 

僕は迷った末、最前列の左端に座った。先週の「北山かなんデビューLIVE」で見た迫力が忘れられない。

それに、客入りの心配をしたくなかった。前にいれば、この場に何人来ているかわからない。

もちろん目標は是が非でも達成してほしい。ミューズホールでBBガールズのライブが見たい。それにまず、BBガールズの素晴らしいライブを多くの人に見てほしい。でも、万が一、今日目標に達しなかったとしても、BBガールズのライブがいいという事実は何も変わらない。その場合は、その思いを拍手や手拍子で伝えたかった。

なんて思っていたけど、あっさりと目標人数は超えたようで、カウンター内の曽我未知子さんから報告の声があがった。祝福の拍手が沸く。ああ、本当によかった。来てくれた方々、ありがたいな。

 

今日は初めてのお客さんも多いだろうから、プロデューサーの冴沢͡鐘己さんは「これまでのベストライブをぶつける」と宣言されていた。王道の曲順で行くということだろう。

 

「人生はミラーボール」

「もっとオールドファッションド」

「苦い林檎酒」

「ひらいたトランプ」

クランベリージャム」

「それはウソじゃない!?」

「恋してオムレツ」

 

カバー2曲

「離れてもそばにいて」

「透明な水」

「風のファンタジスタ

「ガーディアン・エンジェル」

「平成ガール」

「まだまだGIRLでいいかしら」

 

「陽だまりの鳥」

「境界線はいらない」

 

というのが僕の予想。

 

いちばん前の左端から舞台を観察する。

客席を向いたスピーカーを乗せている銀の柱の中のライトが、左右で違う。初めて気づいた。今まで何を見ていたんだ。

楽屋側から左の幕の端をめくった伊藤直輝さんが、「うわっ」と驚きの声をあげた。それほど客が多いのだ。

 

BGMが高鳴り、やがて「Fai La Brava」に変わる。このオープニング好き。

カナさんが先に登場。拍手が沸く。これこれ。やっぱりスターは開幕とともに姿を見せて、歓声を浴びるのがふさわしい。

カナさんが先ということは、やはり1曲目は「ガーディアン・エンジェル」なのか。しかし、流れている曲は先月の最初と同じだ。カナさんは立ったまま、右手で最初の音を奏でる。「タララッラッラッラッ」

たじさんが現れる。ここでも拍手が沸く。両手を広げてお辞儀。カナさんは座ってさっきのフレーズを繰り返す。

「もっとオールドファッションド」

先月初めて聴いて好きになり、何日も頭から離れなかった曲。やってほしいとは思ってたけど、先月に続いて1曲目で聴けるとは。

カナさんが客席1人ずつの顔を見てにっこりしながら弾いていく。

たじさんは躍動。この距離だと、体を揺さぶったりちょっとした動きもしっかりわかる。表情や気持ちがあらわれてるような目も。

ボーカルの語尾が好き。切っても伸ばしても響く。勢いがつく「アハー」もめっちゃいい。

 

「人生はミラーボール」

衣装は紺というか、濃い藤色か。たじさんの方が白い模様が多く見え、沖縄のミンサーっぽく感じる。「わくわくシティーパーク in 厚木」で初めて着た、「fm GIG アカデミー賞 最優秀歌唱賞」の賞金で買った服のはず。僕は初めて生で見れた。

ニューバージョンの歌詞。肘を曲げた左手を上に向けてのたじさんのステップ。うれしそうなカナさんの演奏。回るミラーボールの光。「BBガールズ!」の声。サビの強く歌う音。後奏。とにかくめちゃめちゃ楽しい。

 

「ガーディアン・エンジェル」

お二人が頭上で手拍子。会場の手拍子もさらに大きくなる。1曲目じゃないときは、これができるのだな。たじさんがカナさんを両手で指差して、キーボードが入る。

まさかここで「ガーディアン・エンジェル」を出してくるとは。この曲か「人生はミラーボール」のどちらかは、終盤の盛り上げるところまでとっておくと思ってた。

そうか、最初のMCより前に間奏でカナさんを紹介するねらいもあるのか。と思ったが、ここでは紹介されなかった。

最初の3曲で絶対に盛りあげてやる! という布陣に思える。

 

「BBガールズでーす! 土曜パームトーン劇場、始まりましたー!」

「いっぱいいるー」

カナさんは「泣きそうになる」

「人数達成できましたー!」に、拍手と歓声。照明も点滅。

感謝を伝えるお二人。

 

たじさんが今日初めてマイクスタンドを使う。「今日も心をこめて」という言葉。カナさんは静かな音を奏でている。曲名が告げられ、前奏が始まる。

「夜明けの月に」

久しぶりにやってくれた。ベストライブなら、外す手はないか。

近くの席にこの歌が好きな方がいらっしゃる。震災後に祈りを込めてつくられた歌。僕も出だしからうるうるきてしまった。

 

しっとりとしたカナさんのピアノ。

「透明な水」

ここでバラードを続けてくるとは。

二人でいるのに感じられる孤独。カナさんの奏でるきれいな音は波のように。照明は雫。「光る砂が見える」のピアノの間隔が心地いい。「あなたをこんなにも 愛してーーーるー…」やや長く伸ばすうたい方。最後は悲しみより希望を感じた。

 

「ひらいたトランプ」

前奏からたじさんが声を出し続ける。「アーィ」という語尾が特に好き。

カナさんのグリッサンドが絶妙なタイミングで。たじさんが後方へ放つ目線は輝いている。

1番の最後は、そこだけ弱く「ものよ」

2番は「呼ぶの」を響かせ、「アーィ…」という吐息のような声でカナさんのソロへ。ここめっちゃ好き。

ラストは上げて伸ばした「呼ぶのーーーー」が反響する。後奏でもたじさんの声が伸びる伸びる。

 

「恋してオムレツ」

距離が近いから、たじさんのステップもよく見える。このひたすらかわいい幸せな曲でも、軽く歌っているように見えてずっと声がいい。強弱のつけ方も驚異的に気持ちいい。コーラスもめっちゃ好き。

カナさんの振り付けは1番の「ワー」が大きくなっていた。楽しすぎるぐらい楽しい。

僕は後ろの人のじゃまにならないように、いつもよりずっと振り付けを小さくしていた。本当は思う存分動きたい。これだけが前に座るときの課題。

「御色直しの後も楽しんでいってください!」

 

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BBガールズが白い衣装で戻ってくる。最初は上下白だと思ったが、よく見るとたじさんのスカートはクリーム色がかっているみたい。

 

「長いMC」

「やっと客席見えた」という言葉が印象的。

いっぱい入って目標達成。あらためてMUSEの予告。客席の反応も、人数に比例して大きい。

カナさんはめずらしく緊張していたそうだ。

BBガールズTシャツの件もはさみつつ、桜や花見の話でしめくくる。

 

カナさんが「さくらさくら」を弾き始める。シンプルなのではなく、飾りをほどこしたおしゃれなアレンジ。何をカバーするのか探りながら聴いているからか、別の曲なのかとさえ思った。

これはきっと、12月に「ジングルベル」から「恋してオムレツ」につなげた形。何を歌うのだろう。もしかして童謡? このまま「夜桜お七」に突入したりして。たじさんが演歌もうまいのは間違いないと思うが、今日ワンマンライブで歌うだろうか。

軽快でいて静かな曲調に変わる。

「traveling」

「つかまる」「飛び乗る」「目ー指ーすーは  君」とカナさんの歌がはさまる。BBガールズのカバーは、このお二人である強みをいつも生かしてる。ハーモニーがずっといい。

「風に またぎ 月へ 登り」田嶋ゆかが音を三つずつに連ねかっこよくて春の昼の夢の如し。

宇多田ヒカルは「平成ガール」の歌詞でもリスペクトを示した存在で、好き過ぎてこれまでほぼカバーしていなかったはず。このところのBBガールズは、新しい課題をどんどん打ち破って大きくなっている。

 

「春よ 遠き春よ」

カナさんの静かなピアノで、たじさんがサビから歌い出す。

「春よ、来い」

声がすごく高い。高い音はいくらでも出せるようなたじさんとはいえ、こんなに高く入るものだろうか。サビからだからこれでいいのか。

「春よ、来い」って、こういう歌詞やったかな。なかなかサビ前の感じにならない。こんなふうに「フォーウォーウォー」って声を重ねるとこあったっけ。

たじさんの強い語尾が響く。

たじさんとカナさんで「信じ合えるよろこびも」 ! これ、ELTやん!

「Time goes by」

いつの間に変わっていたんだ。ともかく、歌も演奏もコーラスもよかった。詞も曲も。

 

「離れてもそばにいて」

先月に続いて、等身大の女性が歌ってるイメージ。

ひたすら夢中な甘い歌。

以前アメリカ映画のシーンが浮かんだのは、曲が洋楽っぽいということなのだろうか。

 

たじさんがまだお辞儀をしてる間からイントロ。

クランベリージャム」

この始まり方が、ライブでもアルバム「ラ・ブラバ/LA BRAVA」でも好き。

後半初の手拍子する曲。

すまして見せるたじさんもいいし、幸せな魔法みたいな終盤のコーラスも素敵。

 

後半に2度目のMCが入るのは今年初。

クランベリージャム」から終盤の盛り上がりになだれ込むのかと思ったが違った。今日は今年よく前半で歌われていた曲がまだだったりして、この後の展開の予測がつかない。

 

カナさんがカバーコーナーで緊張したという。キーボードのみの形だったのもあったみたい。今年は毎月プロデューサーから難しい課題を出されて、でもそれを全部乗り越えて、BBガールズは着実に進化している。

これまでは昭和の名曲のカバーが多かったけど、これからさらに幅広い世代を引き込むために、最近の曲をやるのもいいのかもしれないですね。

 

月1回の土曜パームトーン劇場を始めた頃はお客さんが少ないこともあって、「『これを10人、20人、30人にしていこうね』って言っていたんですよ。それが今日、叶いました。ありがとうございます」

拍手を受けて、「ちょっと泣きそう」

「本当にありがとうございます」と頭を下げたまま、「陽だまりの鳥」

 

たじさんは弱くうたう。時には少し泣きそうな声で。

2番になると、小さいけれど澄んだよく届く声になる。そうかと思うと、サビで弱めたり、泣きそうな声も一瞬まぜる。僕はもう聴き入ってしまう。

繰り返し。カナさんのコーラスが高い。強くなるお二人の声。高く歌えるたじさんのコーラスができるのって大変なことだな。カナさんのすごさを、あらためて強く感じる。

一瞬ピアノが止まり、たじさんの声だけになる。この終わり方、CDや配信と違うでしょう。今日初めてBBガールズのライブを見た方にも、生の「陽だまりの鳥」の魅力が伝わったと思う。

 

こうなるともう次はこの曲しかない。

「風のファンタジスタ

きっと今まででいちばん多くの拳が上がってる。

たじさんが感慨深げ。目がうるんでいるようにも見えるが、歌声は一貫して力強いから僕の気のせいか。カナさんは楽しそうに笑ってる。

今日は「君に夢を託す 少年の眼差し」という詞が胸を打った。

 

「それはウソじゃない!?」

ここで来たか。「平成ガール」もそうだし、新曲が次々と終盤盛り上がりのラインアップに入るのはすごくいい。勝負どころで使える強いカードが増えている。本当に毎月進化を見せてくれて熱い。

アルバムで発表されたばかりの曲だけど、つくづくBBガールズらしい曲だと思う。詞も含めて、たじさんが歌い、カナさんがコーラスすることを考え抜いて書かれている。

軽快な曲で「シュビドゥビドゥビドゥバッパー」って聴かせるの、いいなあ。

歌とグリッサンドのタイミングも最高。

さらにはたじさんの歌い方だ。語尾に「ん」をつける愛嬌を見せたかと思えば、そっとつき放す。吐息まで見せ場のひとつ。

 

すぐに「平成ガール」

前奏で何か言いかけてやめたたじさんが、「会場に来てるかわからへんけど、ギターはたかしです!」

たかしさんのギターに乗って、カナさんのキーボードに彩られて歌うたじさん。これがバンドで、MUSEで、聴けるんだよ。バンザイ!

平成最後の「平成ガール」、めちゃめちゃ盛り上がったもんね。

 

「まだまだGIRLでいいかしら」

代表曲であり、大喜利もやってるラジオのタイトル曲。

たじさんの動きと声。カナさんの歌いながらの演奏。サビの振り付け。僕の席には大きく動けるスペースはないが、「Love me,love me」で手を振り、その後は力一杯手を打つ。BBガールズの勇姿を目に焼き付ける。人数が多いから、手拍子が分厚い。

「on keyboard、万木嘉奈子!」

拍手と歓声。

「ありがとうございまーす!」

最後はカナさんが鍵盤を連打。たじさんは声を伸ばす。グリッサンド。お礼を叫んでたじさんが跳ぶ。着地に合わせて「バン!」と弾き、とどめのグリッサンド。カナさんも感謝を述べて、二人が去る。

 

拍手がすぐに手拍子に。人が多い方が意外と手拍子が合いやすかった。

アンコールの間の赤い照明が、次の曲の予告になっているに違いない。

 

BBガールズTシャツに着替えたカナさんとたじさんが帰ってきた。

すぐに音が鳴る。曲はもちろん、「苦い林檎酒」

たじさんの首元に汗がまとわりついてる。いつもは汗のイメージないけど。前に座ったから初めて見えたのだろうか。

たじさんがいつも以上にスキャットを聴かせてくれてる気がする。でも、「カナ」とささやいて間奏の後半はしっかり見せ場を譲る。

後奏で再び、のびやかで澄んだスキャットをたっぷりと。

 

「アンコールありがとうございます!」

「これがTシャツです」

「来月もみなさん来てくださいね」

「MUSEも来ていただいてね。毎月第1土曜日のこのドヨパも来てください」

「来月はゴールデンウィーク真っただ中」

5月4日です。

何度もお礼を言ってくれて、深々とおじぎしてから最後の曲へ。

 

「境界線はいらない」

前奏に乗せてたじさんが「6年がんばってきた甲斐がありました! 本当にありがとうございまーす!」

カナさんは感極まってるように見える。でも、すぐ笑顔になった。

たじさんが「みんな、手を挙げろ! イェーーーイ」と言ってからの終盤。会場じゅうで手が揺れる中、カナさんが涙する。もうコーラスができない。たじさんは思いきり楽しそうににこにこしてる。たじさんが行き過ぎかけた時はカナさんが修正し、カナさんが泣いてる時はたじさんが明るく支える。これがBBガールズだと思える光景だ。

コーラスが聴こえないからか、たじさんがカナさんの方を向く。カナさんは涙顔でうなずきながらキーボードを弾く。たじさんも一緒にうなずきながら手を振って歌う。見てる方もこみ上げてくるものがある、感動のフィナーレだった。

 

「Fai La Brava(reprise)」が流れ、BBガールズがステージ前に出てきてくれる。ライブ後もゆっくり交流してくれる。今日はお花見も兼ねた飲み会もあるぐらいだ。

繰り返しみんなにありがとうと言ってくれ、その度に温かい拍手が起きる。

 

そんな中、脳髄筋肉さんとのりじゅさんがケーキを運んでくる。今日はプロデューサー冴沢͡鐘己さんの誕生日。甲斐よしひろの前日だから覚えやすい。

ろうそくの火を吹き消した冴沢さんの挨拶がいい。

「まだこれは途中経過なのでね」

たじさんが「そうです! これから!」と応じる。

冴沢さんはさらに、「早く日本中に知れ渡るように、今後とも応援よろしくお願いします!」

 

僕は仕事で飲み会までいられそうにないので、チャーハンを注文して食べ、ちょっと早めに会場を出た。

木屋町通を桜がなくなるまで北へ行き、また南へ戻りながら桜を眺める。

 

去年のお正月、大喜利の噂を知ってラジオ「まだまだGIRLでいいかしら」を聴き、そこで流れた「恋してオムレツ」をいいと感じた。このBBガールズというお二人は応援できると思ったから、投稿を始めた。

番組もいいし、曲も好きだし、カラオケにも入ってる。CDを買い、ライブにも行きたいと思ったが、結局初めて生で曲を聴けたのは3月。春の大喜利大会になった。

その日、翌週の土曜パームトーン劇場に来たいから、たじさんに終演時間を確認した。たじさんは意外にも、「今日より人少ないかもしれませんけど」と弱気な顔を見せた。

結局、去年3月のライブには、まあまあの人が来た。お二人はMCで「大喜利にだけ人が来て、ライブには来てくれなかったら、私たちの歌は要らないと言われてると思うところだった」と、ほっとした様子だった。

それがどうだ。今日は満員だ。BBガールズのすごいライブにふさわしい。

 

来月また来てくれたらいいな。今日来れなかった方も含めて。

そして、人数がどうあろうとも毅然としていつも通りの、あるいはそれ以上のライブを見せてほしい。これまでずっと期待に応えてきてくれたから、BBガールズなら大丈夫。

 

 

2019年4月6日 event space PALMTONE

 

もっとオールドファッションド

人生はミラーボール

ガーディアン・エンジェル

夜明けの月に

透明な水

ひらいたトランプ

恋してオムレツ

さくらさくら ~ traveling

春よ、来い ~ Time goes by

離れてもそばにいて

クランベリージャム

陽だまりの鳥

風のファンタジスタ

それはウソじゃない!?

平成ガール

まだまだGIRLでいいかしら

 

苦い林檎酒

境界線はいらない

 

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北山かなんデビューLIVE(2019年3月31日)

昨日の「オールリクエスト! ベスト30歌謡曲」を見に行けなかった原因である出張が終わり、一旦家に寄ってから、京都の大宮へ。

北山かなんさんのデビューライブ。スペシャルゲストとしてBBガールズと伊藤直輝さんの出演もあるし、初めてのCDにBBガールズが深く関わっているそうだし。

 

会場のスタジオ246 KYOTOは、阪急の大宮駅からも京福電鉄四条大宮駅からもすぐだった。

円広志さんがTVで付けている缶バッジの「246」が、ご自身が経営するスタジオの名前だと知ったのは、心斎橋のスタジオを見た時。カフェで行われた芸人さんのイベントに向かっていて道に迷った夜のことだった。

 

見晴らしのいいロビーで少し待って、開場。

安部美香さんが自ら受付。BBガールズのアルバム「ラ・ブラバ/LA BRAVA」や、たじさんのイラスト、ポストカードも売っている。

 

キーボードはステージ右手。「YAMAHA CP」という表示があるから、event space PALMTONEでよく見るのとも、fm GIGアカデミー賞のとも違って、ジングルウィークのと同じ系統のキーボードらしい。

たじさんもカナさんも同時に視界に収められるように、左の最前列に席を取った。

 

 北山かなんさんが登場。左手に、アコースティックギターの伊藤直輝さん。

 

「ツムギウタ」

優しい声。衣装も白のふんわりしたの。

 

初々しいMC。

そうだった場合にも備えて、特に集中して聴いていたけど、「BBガールズさんの田嶋ゆかさんの作曲でつくっていただきました」

意外だったのは、「後ろにおられる」と入口を示されたこと。右後ろを振り返ると、たじさんとカナさんが。楽屋にいてはるのだと思ってたから驚いた。

 

涙そうそう

好きだし僕にとって特別な曲が聴けた。

 

伊藤直輝さんが「自分のデビューライブは覚えてない。大学の頃から気が付いたらライブしてる感じだったので。緊張されてるはずですけど、いい感じですね」と盛り上げて、舞台を去る。

 

プロデューサーである安部美香さんのカバーで、CDにも入っているという「青い月」

CDに入っているなら、カナさんが編曲したはず。ムードがあるうえにキャッチーだと感じました。

 

CDの代表曲「gift」

こちらもカナさん編曲のはず。静かめの曲をきれいな音が彩る。次第にドラムも入ってくる。

「紡ぎ」という詞がこの歌にも入っていた。

 

北山かなんさんに代わって、スペシャルゲストライブ第1弾。

伊藤直輝さんが先程のギターを手に、今度はステージの中央に。

 

「君の大好きだった歌」

迫力がある。詞も共感されるのでは。

 

前奏に乗せて気合いの入った自己紹介。

「FLY」

数あるバージョンのうちの一つを聴くことができた。激しかった。後半のシャウトは映画「リメンバー・ミー」を思い出して気持ちよかった。

 

「3曲目は何を歌うか決めてなかった」というMCに笑いも起きていたけど、その時の空気の中でいちばん歌いたい思いが高まった曲を選びたかったのだと受け取れて、僕はうれしかった。

 

前奏を一度とめるようにして、「両親に向けて書いた曲なんですけど、みなさんも大切な方を思い出して聴いてください」

「あなたに捧げるバラード」

二つだけの言葉を伝えるためのバラード。いつもはピッチャーが球種を変え、スピードを変え、コーナーを狙うように、かぎりない工夫を凝らして歌を書くミュージシャンの方が、まれに敢えてど真ん中に豪速球を投げ込むようにシンプルなメッセージをぶつけてくることがある。この曲もそうなのでは。そういう歌って、印象に残りますね。胸が熱くなりました。

 

「キミトナイト」

生で初めて聴いた伊藤直輝さんの歌はこの曲だったと、BB大喜利 春の陣の記憶がよみがえった。

さまざまなか所で韻を踏んでいる。曲名が予告になっているのだな。

 

「Hello!」

最近配信されてカラオケで歌ってる曲が聴けた。

ギターの技がいっぱいで気持ちいい。

そして、コール&レスポンス。

 

伊藤直輝さんが去る。

スタッフさんが舞台に上がり、客席に対して垂直に置かれていたキーボードの角度を変える。カナさんが現れてマイクの位置を決め、慣れた手付きで高さや角度を調節していく。たじさんが小走りでカナさんの元へ行ってから、マイクを手にする。

さあ、BBガールズのステージが始まる。

 

「人生はミラーボール」

たじさんの弾むようなステップが、最前列だと跳ねてるぐらいに感じられる。楽しくて自分が笑顔になってるのがわかる。カナさんも楽しそうだ。

ステージも低いから、めっちゃ近い。カナさんの手の動き、指の開き方、指の運びまでよく見える。楽器が弾けない僕には新鮮だし、すごいと思う。

 

今日の衣装は上が白、カラフルなストライプのスカート。

北山かなんさんの歌声をたたえ、CDを通じてのつながりを紹介する。

客席の後ろで聴いているらしい北山かなんさんに、これから歌手としてがんばっていくことを確認し、そこからがんばる人への応援ソングに入る。

「風のファンタジスタ

BBファンが拳を上げる。たじさんのアクションを見て、他の方々も手拍子してくれる。

カナさんがソロの後、「夢を君の手に」で北山かなんさんを指差したように見えた。

 

伊藤直輝さんと北山かなんさんに呼びかけて笑いを起こす。空気を和やかに。

たじさんが「安部美香さんの小説『めありちゃんのお散歩』の挿し絵を描いたのは私です」と明かし、二人で安部美香さんのパワーにも言及する。

北山かなんさんの応援に来た方々、安部美香さんとつながりのある方々のうち、BBガールズのことをよく知らない方にも、親近感を持っていただけたのでは。「わくわくシティパーク」などいろいろな環境で場数を踏んできた、百戦錬磨のMCだ。BBガールズはどんなところでも空気をつかみ、自分たちの音楽を届けることができる。

 

「陽だまりの鳥」

曲順だけで「おおっ!」と思ってしまう。「陽だまりの鳥」「風のファンタジスタ」の順で歌われることが多かったのが、逆になっている。めっちゃ興味がひかれるし、貴重なものが見れたと感じる。

傷ついて弱っているイメージの声。2番のサビあたりから強さが加わっていく。

 

アルバムが出たことをお知らせ。

来週4月6日土曜日のライブにお客さんがいっぱい来てくれたら、京都ミューズホールでライブができるというお誘い。北山かなんさんは来てくださるという。とてもとてもありがたい。

 

「BBガールズの代表曲」という紹介で、「まだまだGIRLでいいかしら」

前奏で「最後の曲」と告げられた。伊藤直輝さんが5曲だったから、BBガールズも5曲聴けると思ってた。「まだまだGIRLでいいかしら」が5曲目じゃないなら、新元号が発表される前日だから最後に「平成ガール」をやってくれるのかもと考えていた。

でも、とにかくこの「まだまだGIRLでいいかしら」が楽しい。最前列の迫力もやっぱりめちゃめちゃいい。ずっと感じてたけど、来てよかったとまた改めて思った。

 

「BBガールズのステージは以上にしようかなと思ってたんですけど、何といってもかなんちゃんのデビューライブということで。いっしょに歌おう。かなんちゃんにステージに上がってきてもらおうと」

やった! やっぱりもう1曲聴けるんや! こういうことだったのか。会場がすっかりBBガールズに染まっていたところで、今日の主役を目立たせる配慮は素敵。

拍手の中、北山かなんさんが客席から舞台へ。伊藤直輝さんも続く。

「もっとかなんちゃんのトーク聴きたかったよね」の呼び掛けに客席が拍手するが、「時間がやばい」と安部美香さんの声が飛んできた。

 

「境界線はいらない」

左から、伊藤直輝さん、たじさん、北山かなんさん、カナさん。「ラララ ラララ」とみんなで右手を振る。もちろん伊藤直輝さんと北山かなんさんも。

終盤の繰り返しで、たじさんは北山かなんさんにマイクを渡す。両手で手を振り出すたじさん。貴重なバージョン。みんなで両手を振るのもいいな。

再びマイクを受け取ったたじさんが声を響かせる。カナさんの最後の音に乗せて、「ありがとうございましたー! かなんちゃん、デビューおめでとうございまーーす!」

 

安部美香さんがステージに上がって最後の挨拶。

安部美香さんが伊藤直輝さん、たじさん、カナさんと握手している間に、ファンの方たちがステージ前に行って北山かなんさんに花束を渡していた。

 

BBガールズは伊藤直輝さんとともにスペシャルゲストということだったが、北山かなんさんが10曲とか歌う途中にゲストコーナーで2曲ぐらい歌って少ししゃべるみたいな感じを想像してた。思ったよりがっつり見ることができたし、最後に「境界線はいらない」で全員そろったのもよかった。

 

いやあ、BBガールズよかったなあ。今日のライブを見ると、4月6日の大事な土曜パームトーン劇場はやっぱり「人生はミラーボール」が1曲目なのかなと思えてくる。終盤にやっても盛りあがる曲だが、果たしてどうなるのか。

 

北山かなんさんのデビューCD「gift」を買ってから、「よるぽじ大・大喜利大会」でお世話になっている西院の居酒屋 陰陽(ネガポジ)に向かった。

 

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泣くな、ジョニー! -千葉ロッテ17連敗の夜-

オリックスVSロッテ 1998年7月7日(火) グリーンスタジアム神戸
 

 歴史的な試合だ。千葉ロッテは、この試合の前まで引き分け1をはさんで16連敗。 今日負ければ、プロ野球新記録の17連敗。果たして、阻止できるのか? 
 今のロッテは、決して嫌いなチームではない。 キャプテンのフランコは、球界一、二を争う闘志あふれるプレイヤーだ。 ロッテが勝ってもよし、負けても新記録が見られる、というくらいの気持ちでいた。

 

 球場に着くと、やはりロッテ応援団に気合いが入っている。 「どんなときも 俺たちがついてるぜーっ」という歌が今日ほど重みを感じさせることがあっただろうか。 
 期待を背負っての先発は黒木。連敗中、抑えに失敗していたが、完投能力充分の投手。 ストッパー失敗は黒木のミスというより、河本・成本の強力ストッパーコンビの故障が響いた形だろう。 グリーンスタジアムのDJに、愛称の「ジョニー黒木」で紹介された黒木は、この球場が似合いそうだ。

 

 ロッテがどん底状態なのにもかかわらず、スコアボードから異様な雰囲気を漂わせているのは、オリックスの方だった。 
 異形のオーダーと言ってもいいだろう。田口がセカンドを守っている。レフトはプリアム。 大島がサードにまわり、キャッチャーは若い日高。内・外野とも完璧だった日本一チーム・ブルーウェーブ、見る影もなし。 本西、馬場、中嶋らの退団が裏目に出ている。 
 しかし、僕は今夜オリックスを応援することに決めた。ピッチャーが木田だったからだ。

 

 試合開始。僕はセンター左に席をとった。 
 グリーンスタジアムの外野とグラウンドは近い。 「小坂ーっ、走れーっ!」「ジョニーーッ!行けーっ!」というレフトスタンドの声は、選手に聞こえているだろう。

 

 3回表。チャンスに福浦がレフトフライ。タッチアップの福澤が倒れ込むように気迫のヘッドスライデイングでホームイン。 ロッテ先制。フランコもライトフェンス直撃の2塁打で2点目。

 

 4回裏。イチロー技ありのレフト線2塁打などで、無死2、3塁。しかし、ジョニー黒木は、ニール、谷からストレートで連続三振を奪う。 気合い充分。しかし、ツーアウトから痛恨のワイルドピッチ。1点差。

 

 6回表。5回終了後の花火打ち上げが終わった途端、キャリオンがレフトスタンドへ花火。3-1。

 

 9回表。いつもは、外野でキャッチボールしたボールを最終回にイチローがライトスタンドへ投げ入れる。 でも、それがなかった。負けているせいか。田口とのコンビでないからか、背面キャッチもしてくれへんし。 パも審判4人制になって、線審がファールボールを子供にあげることもなくなってしまった。 どうも、2、3年前よりもグリーンスタジアムの魅力が減ってきてる気がするぞ。 
 ロッテは14安打放ちながら、結局3得点のまま最後の守備へ。 フランコ初芝、平井に守備固めが送られる。みんなそんなに守り悪くないのに。 フランコのグラブさばきなんて見事なのだ。にもかかわらず交代したのは、故障のせいらしい。 やはり、チーム事情は悪いのだ。

 

 9回裏。ジョニー黒木は、ここまで2安打に封じる最高のピッチング。 
 先頭のイチローを三振に切って取る。ワンアウト。これで大丈夫だろう。 
 しかし、ニールがヒット。1死1塁から、谷は簡単にファーストファールフライを打ち上げる。谷にはまだ5番は無理に思える。 
 2死1塁となって、バッター、プリアム。あと1人。黒木は相変わらずストレートをずばずば投げ込んで行く。 ツーストライク。あと1球。プリアムはファールを打つのがやっとだ。1球外す。簡単に三振が取れそうや・・・ 
 ところが、次の球をプリアムが気持ちよくスイング。大飛球。 切れるかどうかの問題だった。レフトポール際、まさかの同点2ラン。 
 黒木はマウンドにへたり込んでしまった。動けない。 連敗脱出まであと1球というところまで快投を続け、力尽きたのだ。 次のピッチャーがマウンドにやって来て、黒木はようやく重い足取りで3塁ベンチに向かいはじめた。 ロッテ応援団から、盛んにジョニーコールが起きる。 
 そのときだった。グリーンスタジアムのDJが、「黒木投手、ナイスピッチ」と言ったのだ! やっぱり、グリーンスタジアムは素晴らしい!敵チームであっても、いいプレイ、いい選手は認めるべきだ。 日本の野球ファンに欠けているのがそれなのだ。球場全体から黒木への拍手。 
 黒木には泣けた。僕はレフトのロッテ応援団そばまで移動した。 木田が降りたときから、内心ロッテを応援していたが、この感動で完全にロッテびいきになった。 
 泣くな黒木!ほんとうにいいピッチングやったぞ。

 

 延長戦。守備の人ばかりが並んだロッテ打線には、もはや1点も取る力はなかった。リードできないのだから、抑え登板覚悟でブルペンに立つ気力を見せたエース小宮山も使うわけにはいかない。 
 イチローは12回表が始まるときに、スタンドへボールを投げ込んだ。 ライト線の打球を捕って1回転してサードへ送球するステップや、鋭い2安打(打率3割8分!) で今日もすごさを見せてくれた。

 

 12回裏。もう、ロッテの勝ちはない。あの近鉄の悲劇にもかかわらず、いまだに引き分け制度があるのは、パリーグの怠慢である。 134勝1敗のチームよりも1勝134分けのチームの方が上位に来るばかげたやり方だ。 ファンをなめている。 
 ヒット、パスボール、エラーで無死2、3塁。こうなれば当然敬遠策。無死満塁。 左ピッチャーなので右の代打が出てくる。デカやろうと思ったが、なんとダイエーから移籍していた藤本やった。 
 貴重なもんが見られると思ったが、ピッチャーが右に変わると、あっさり代打の代打を出されてしまった。 
 広永。打ち上げた打球はライト後方へ。あー、タッチアップでサヨナラや。ロッテが負けてしまう。 
 しかし、もっと残酷な結末が待っていた。意外に伸びたボールは、ライトスタンドに舞い落ちたのだ。 
 あまりにも痛々しい。この試合、ファイトを見せていたセンター堀がゆっくりとゆっくりとベンチに向け、歩いていく。 代打満塁サヨナラホームランなんて初めて見たけど、そんな興奮はなかった。 
 この幕切れにも、ロッテ応援団は選手に声援を送り続けた。もう1回ジョニーコールの大合唱。 この応援団も、勝利への闘志を見せ続けたチームも素晴らしい。 
 確かにロッテは史上最悪の17連敗を喫した。だが、決して情けないチームではない。 これから何かにつけこの記録が話題にのぼるだろうが、この日のロッテのGUTSは最高だったと僕が保証します。 黒木をはじめマリーンズナインにはほんとうに感動させられた。 
 いつか、マリンスタジアムに応援に行きたい。 そのときもまた、いい試合を見せてくれよ!

 

 

 

 M









 0


 3
BW









 0

4x
 7x
 
 

勝 鈴木(3勝3S) 敗 藤田(2勝4敗3S)  
キャリオン8号 プリアム11号2ラン 広永1号満塁
 

 

 

MVP 黒木(M) 
優秀選手 プリアム(BW) イチロー(BW) 広永(BW) 堀(M) 福澤(M) 
ファインプレー 松本(M) 小川(BW)
 

1999年 春のセンバツ

MVP  比嘉 公也(沖縄尚学

 

ベストナイン

 

投手   比嘉   公也   (沖縄尚学)   3
捕手   池内   大輔   (今治西)   2
一塁手   杉山   勝悟   (静岡)   2
二塁手   具志堅   偉乃   (沖縄尚学)   3
三塁手   荷川取   秀明   (沖縄尚学)   3
遊撃手   比嘉   寿光   (沖縄尚学)   3
外野手   覚前   昌也   (PL学園)   3
   加藤   光弘   (海星)   3
   新垣   雄之   (沖縄尚学)   2

 

ベストチーム  沖縄尚学(沖縄)

ベスト監督  金城 孝夫(沖縄尚学

ベストゲーム  準決勝 沖縄尚学(沖縄) 8-6(延長12回) PL学園(大阪)

ベストプレー  準決勝 沖縄尚学 VS PL学園 9回裏2死3塁 サヨナラのピンチで 比嘉公也投手が覚前選手と勝負し、ショートゴロに打ち取る

ベスト応援団  高田(奈良)

 沖縄に悲願の優勝旗が初めて渡った歴史的な大会。また、準決勝の沖縄尚学-PL 学園戦は、高校野球の醍醐味を堪能させてくれた、球史に語りつがれるべき名勝負であった。 
 優勝候補がすんなり行ってしまうのかとも思えたが、番狂わせもあり、1戦ごとに 力をつけた好チームが活躍した。 
 延長戦7試合は過去最多。沖縄尚学のトリプルスチールは史上2度目。 
 村西(比叡山)、川原(峰山)という大会を代表する投手が初戦で姿を消してしまった。 ベストナイン以外の野手では、決勝で気を吐いた助川(水戸商)が印象的。

 


 

 

 

決勝 沖縄の悲願、成就! の日

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 7-2 水戸商(茨城)

 

 試合開始2時間以上前に甲子園に着いたが、沖縄尚学の1塁側アルプス席券売場 にはすでに長蛇の列ができていた。沖縄悲願の初優勝への思い入れが伝わってくる。
 決勝戦ならではの打撃練習をながめつつ、試合開始を待つ。すでにビールを飲んで 気合いを入れている人も多い。

 

 沖縄尚学の先発は照屋。昨日のPL戦で200球以上投げた比嘉公也は、やはり 投げられないようだ。照屋投手は好投してくれるだろうか。打線は水戸商エース三橋の 下手投げからの軟投にかわされないだろうか。PLとの死闘に気迫で勝った沖縄尚学ナイン を信じたい。

 

 先攻は水戸商。子どもによる始球式が終わって、プレーボール。1番好打者の助川 が、いきなり照屋の初球を弾き返す。やられた。右中間を破ると思われたライナーはしかし、 センター松堂が右へ走って好捕。抜けていれば立ち上がりからいやなピンチだった。 このファインプレーは大きい。松堂は、1回戦村西投手に苦しめられた比叡山戦で、相手 捕手のタッチをくぐり抜けてホームインした選手である。ポイントとなる場面でラッキーボーイ の働きをしている。 
 しかし、照屋はコントロールが定まらず、1死1・2塁のピンチを招く。打席には今大会 ホームランも打っている4番小林。ここで照屋は、自慢のカーブで小林を空振りの三振に 仕留める。強打者小林がまったくタイミングが合っていなかった。このカーブは有効だ。 照屋は次打者に四球を与えて2死満塁とするも、再びカーブで三振を奪い、ピンチを 脱した。

 

 ところが2回表、沖縄尚学はまたも守備の乱れからピンチに立たされる。ショート 比嘉寿光のエラーで先頭打者を生かし、そこから1死1・3塁に。この場面で、1番助川は 1塁前へスクイズ。ファーストが捕り、ホームはアウトのタイミングだった。が、バックホーム までに一瞬の躊躇があり、ホームはセーフ。水戸商が1点先制。さらに2番松本の当たりが 一塁手手前でイレギュラー。はじいたのを見て2塁走者が一気に3塁をまわる。セカンド 具志堅がバックアップにまわっており、これも殺せるタイミングだった。しかし、具志堅は ボールが手につかない。その間にランナーホームイン。2点目。 
 次の打者を併殺に打ち取り、 この回何とか2点でとめたものの、1塁側アルプスに不安がひろがる。PL戦で力を出し 尽くしてしまったのではないかと。対照的に盛りあがる3塁側水戸商応援団。 考えてみれば、今大会沖縄尚学がリードを許したのは初めてのことだ。 ここまで4試合、すべて接戦だったが、追いつかれたことはあってもリードされたことは 1度もなかった。不意にそのことに気がついて、僕はさらに不安になってしまった。

 

 しかし、そんな杞憂はあっという間に吹き飛んだ。2回裏先頭のキャプテン比嘉寿光弾丸ライナーで左中間を破ったのだ。守備でミスすれば、バットで返せばいい。これが 沖縄尚学の野球だ。無死2塁。5番松堂は死球で、無死1・2塁。送りバント失敗があった ものの、7番有銘がライト前へタイムリー!1点差。ここで早くも代打新垣雄之が登場。 準々決勝の市川戦では、スタメン3番に起用された左打者だ。新垣雄の当たりは強烈だった が、好守に阻まれセカンドゴロに。しかし、この間に1点追加。同点だ!アルプスだけでは おさまりきれず外野や1塁内野席にまであふれた沖縄大応援団が息をふきかえす。

 

 すぐに同点にしてくれた味方打線に勇気づけられてか、照屋は完全に立ち直った。 もう四球も出さない。リズムが出てきた。

 

 2-2のまま迎えた5回裏、沖縄尚学の攻撃。先頭の7番有銘がセンター前ヒット。 続くバッターは、代打からライトに入っていた新垣雄之。きっちり送ってくると思ったが、金城 監督の作戦はヒッティング。強攻した新垣雄の低いライナーは右中間をゴロで破る勝ち越し タイムリ三塁打!痛烈な当たりだった。3-2。 
 1死後、1番荷川取がセンターへ犠牲 フライを打ち上げて、4-2。2点差。1塁側が大いに沸く。 
 この回の得点は2点どまりだった が、この後具志堅、津嘉山が連続してセンターへ痛烈なライナーのヒットを叩き出し、三橋 投手を完璧に捉えている。「なんぼでも打てるよおっ!」確信した僕は、ブラスバンドの演奏 がもはや聞き取れない大騒ぎのアルプスからそう叫んだ。

 

 2点リードしたところでグラウンド整備。いい流れや。全くの沖縄尚学ペース。

 

 さらに6回裏。 1死2塁から、またも新垣雄がレフトオーバーのタイムリ二塁打。5-2と3点差。 沖縄尚学の勢いは止まらない。

 

 7回裏。1死から4番比嘉寿光が3塁線を破り、今日2本目の二塁打。牽制悪送球 で3塁へ進んだところで、5番松堂がライトフライ。これも犠牲フライとなって、6-2。 4点差。行ける!これでだいじょうぶや。優勝まちがいなし。1塁側はまた総立ちで大盛り あがり。 
 その真っ直中のことだ。続く6番浜田が初球を叩く。ボールは弧を描いてレフトフェンス を越えた。ホームラン!歓喜のかたまりが爆発する。こんな最高のタイミングで出たホームラン があっただろうか。まさに、優勝に華を添えるホームランだ。もうわけがわからないくらいの 大騒ぎ。それまで「タッチアップ!タッチアップ!」「まわれ、まわれえっ!」「行けーっ!」 「何点でも取れるよおーっ!」「勝てるぞおっ!」などと叫んでいた僕は、想像する間もなく 飛び出した夢のようなホームランの中、ただただ「やったーっ!やったあーっ!」と繰り返し、 その場でジャンプし続けた。感激で泣けてくる。そこへビールのシャワーが降ってくる。チェンジ になるとウェーブが起こる。これ以上のことがあるか。

 

 8回表。水戸商の打球はすべて、ショートのキャプテン比嘉寿光のところへ。テンポ よく三者凡退や。

 

 8回裏から水戸商のマウンドには安達が上がった。三橋投手は今日で3連投。 よく投げた。決勝進出の立て役者だ。2死から荷川取が打った右中間への大飛球を、この回 からライトに入った磯崎がファインプレー。ランニングキャッチした後倒れ込んで転がったが、 ボールは放さない。もともと背番号9をつけている選手だ。水戸商も最後まですばらしい。 このプレーに、1塁側からも盛んな拍手。これが高校野球のいいところだ。

 

 9回表。6番宇野の当たりはショートゴロ。キャプテン比嘉寿光が捌いてワンアウト! わき上がる歓声。 
 7番キャプテン外山の代打、根本裕はセンター前に落とし、1死1塁。 
 でも、大丈夫だ。続く代打、根本智はセカンドとライトの間に打ち上げる。セカンド具志堅が バックして捕った。ツーアウト! 
 あとひとりや。1塁側の僕らは立ち上がって「テルヤ」コール を続けている。中盤からブルペンでピッチングをしていた比嘉公也もベンチへ向かう。 最後の1人くらいは投げさせるのかと思っていたが、金城監督は動かない。今日好投の 照屋に任せるのだ。7-2。5点差、2死1塁。9番石田の打球はセンターへ。一瞬越されるか と思ったが、松堂が追いつき、そのグラブに白球が収まる。やったああああああっ!!! 沖縄県勢初の優勝や!!!沖縄の悲願、達成!!!この日をどれだけ待ち望んでいた ことか。この目で見ることができた。ついに、ついにやった!!!この現場にいられて 最高にしあわせや。ほんとうにうれしい。この瞬間を体験できた!!! 
 沖縄尚学高校、優勝。 君たちを誇りに思う。ありがとうと声をかけたい。おめでとうではなく。こんな思いをさせて もらって、心から感謝します。ありがとう!!! 
 最初と最後は松堂の好プレーやったなあ。 頭の片隅にそんなことを浮かべながら、叫び、拍手し、万歳をしてよろこびを体現する。 歓喜の中で、またビールのシャワーだ。そこここで缶ビールを思い切り振って、フタを開けて いる。頭も服も鞄も靴もビールで濡れる。それがまたうれしい。よろこびでいっぱいだ。 歓声と拍手と指笛と一体だ。甲子園に、今大会5度目の沖縄尚学校歌が流れる。

 

 

 

那覇を見渡す 祝嶺森に 
聳ゆる甍は 吾等が母校 
聳ゆる甍は 吾等が母校

 
 みんなの感情が先走ってうまく歌と合わない手拍子をしながら、感動の涙があふれて きた。もう来ないのかと思っていた沖縄悲願達成の日が来たんや。そりゃあ、泣けてくる。 
 アルプスに走って挨拶に来たナインを迎え、心から最大の拍手を贈る。もう何十年も 沖縄代表の試合に駆けつけては応援し続けた、あの名物おじさんがみんなの手で胴上げ されている。このおじさんへの感謝は、これだけでは表現しきれない。だが、おじさんにとって は最高の時だろう。どんなにうれしいことだろう。 
 歓喜の大ウェーブがわき起こる。1塁アルプススタンドから外野へ、バックスクリーン までつながって行く。何度も何度も波が押し寄せる。みんなが嬉々として加わっている。 ウェーブは次第にひろがる。1塁内野席から、アルプス、ライト、センター、レフトまで。 収まることはない。かぞえ切れないウェーブが生まれる。バックネット裏の観客たちも参加 してくれた!これは感激やった。中立の高校野球ファン、しぶく玄人っぽい人たちまで 沖縄の優勝を祝福してくれている。波はやがて3塁内野席へも。そして、3塁アルプス水戸商 応援団もウェーブしてくれた。それを見て1塁側から大拍手と歓声、指笛の音。甲子園球場 のスタンドを、ウェーブがとまらない。何周も何周も。こんな決勝戦も記憶にない。果てしなく 続きそうな大ウェーブも、表彰の準備が整い両校選手が整列し始めると、きちんとやんだ。 そして、球場じゅうからの手拍子のなか、閉会式が始まる。

 高野連会長が、講評を述べる。恒例の「印象に残った試合」に、沖縄尚学の全試合 が挙げられた。「沖縄県勢の技と気力を充分に発揮」と、堂々の優勝を讃えてくれた。 
 「優勝旗や、優勝旗。あれを沖縄へ持って還るんやあ」とため息がもれる。紫紺の 大旗が比嘉寿光主将に手渡される瞬間をしっかりと見た。信じられないほどのよろこび。 
 主催者による閉会の挨拶。「球史に残る大会で優勝旗を手渡せて、主催者として 冥利に尽きます」という言葉を沖縄初優勝にかけてもらった。

 

 手拍子の中、両校選手が場内を一周。連日の応援で、もう手が痛い。が、こんなに うれしい痛みはない。閉会式が終わり、1塁ベンチ前で記念写真に収まる沖縄尚学ナインの 姿をながめながら帰路についた。球場の外では沖縄民謡を唄い、踊る人たちが尽きなかった。  

 

 

 

水戸商  020000000  2
沖尚学  02002120X  7

 

 

 


  

 

 

準決勝 強豪に向かって行く勇気 の日

  

 

 

沖縄尚学(沖縄) 8-6(延長12回) PL学園(大阪)

 

 沖縄悲願の初優勝を目指す沖縄尚学がついにPL学園と激突。今年のPLは 走攻守投のうち、比較的投手力が弱い。ある程度は打てるはず。 問題は、あの強力打線をどうやって抑えるかだ。何とか守って接戦に持ち込みたい。 
 沖縄尚学が先攻。1番荷川取、4番比嘉寿の打順に戻している。 PLの先発は予想どおり2番手の西野。決勝をにらんでの起用だ。

 

 1回表。PL打線のことを考えると、初回から点を取っておきたい沖縄尚学。2番 具志堅が四球。3番に戻った津嘉山、4番比嘉寿の連打で先制点!しかも、5番に上がった 松堂がスクイズを決めて2点目。これは打てる!PLの猛打さえ凌げれば。

 

 1回裏。守りにつくと、PL打線はやはり恐い。何点でも取られてしまいそうな迫力だ。 しかし、1死1・2塁のピンチを無失点で切り抜けた。

 

 2回表。相手投手の制球難から1死2・3塁のチャンスを得るも、無得点。PL相手に 2点ではこころもとない。

 

 2回裏。2つのエラーにフィルダースチョイスもあって、2死満塁のピンチ。ここで 2番足立が、それまでタイミングの合っていなかったカーブをうまく流し打って、レフト前 タイムリー。PL、1点を返す。 
 さらに2死満塁のピンチが続くも、比嘉公投手が3番覚前を ピッチャーゴロに打ち取る。 
 守備が乱れて点を失い、思いっ切り押されていたが、よく 踏ん張った。弱気になると一気につけこまれる場面だったが、勇気をもって攻めの ピッチングをしている。

 

 3回。沖縄尚学クリーンアップは三者凡退に抑えられ、その裏PLの攻撃もツーアウト。 試合が落ち着きはじめるかと思われたが、そこから満塁のピンチに。点こそ取られなかった が、PL打線は息をつけない。

 

 4回表。2死1・2塁から荷川取のタイムリーで3-1。続く具志堅にこの回3つめの 四球を与えたところで、PLは投手交代。エース植山が登場。決勝進出へ、これ以上点は やれないということだ。津嘉山のファールフライを、レフトの俊足・田中一徳がおさえて チェンジ。さすがの守備だ。植山もきっちり仕事を果たした。

 

 4回裏。ツーアウトランナーなし。やっと初めて三者凡退が奪えるかと思いきや、 3番覚前・4番七野の連続二塁打が出て、3-2。またも1点差に。

 

 5回。沖縄尚学は、植山の前に三者凡退。その裏PLは、3安打でまたも2死満塁 のチャンス。しかし、ここでも比嘉公投手が無失点で切り抜ける。 
 沖縄尚学1点リードのまま 前半戦が終わる。グラウンド整備の中、甲子園の雰囲気が変わりはじめているのに 気づいた。下馬評は圧倒的にPL有利。だれが考えてもそうだろう。実際、PLは毎回ランナー を2人以上出して押しまくっている。けれども、なかなか追いつけない。球場全体に「もしか したら」の空気が流れている。PLナインもあせりはじめているのではないか。

 

 6回表。沖縄尚学の1塁側アルプスが沸く。かつての名物おじさんが、立ち上がって 応援をしはじめたのだ。ブラスバンドに合わせて腕を振り、観客の手拍子をうながす。 沖縄代表のアルプスにいわゆる応援団長はいない。友情応援のチアガールとブラスバンドの ほかは、最前列に野球部員がいるだけだ。観客の方を向いて声を張り上げるリーダーは いない。その役目は、ずっとこのおじさんが果たしてきた。会社を辞めてまで、何十年も 毎試合沖縄代表校の応援に情熱をそそいでくれていたのだ。ところが、去年から 「高校生主体の応援」とやらを高野連が義務づけたため、姿が見えなくなっていたのだ。 どうしてはるんやろうと心配していたが、やっぱりちゃんと見ていてくれたんや。強豪相手の 熱戦に、我慢できなくなったのだろう。「我が心の故郷 沖縄」と染めぬかれたかつての 黒い法被ではなく、ブレザー姿だったが、みんなはおじさんのことをもちろんよく覚えていて、 大喜び!僕もめっちゃうれしかった。

 

 6回裏。PLはまたもランナーを出しながら、得点できず。ワンアウトを取るたびに 1塁側アルプスが沸き、流れはゆっくりと沖縄尚学に向きつつある。

 

 7回表の攻撃前に、おじさんが恒例の三々七拍子。途中で扇子を放り出しても 続けるいつものパフォーマンスだ。
 それに応えるかのように、沖縄尚学打線も植山投手を 捕らえはじめる。それまでもPLの好守に阻まれてはいたものの、いい当たりは多く出て おり、打てないとは思わなかった。四球と連打で1死満塁。1塁側アルプスは大声援で 沖縄尚学を後押しする。ものすごい盛りあがりだ。PLナインにはプレッシャーだろう。とても 地元で試合しているとは思えないはずだ。植山はコントロールを乱し、押し出しの四球。 4-2。 
 そして、なおも続く1死満塁のチャンスで有銘はスクイズ。PLバッテリーは外角遠く 低めに外す。飛びつきかけた有銘がバットを引く。そこへスタートを切っていた3走・比嘉寿 がそのまま走り込んでくる。捕手はタッチに行けない。ホームイン!記録はホームスチール だ。しかもその間に1・2塁の走者もそれぞれ進塁しており、何とトリプルスチールの成立! 5-2となった。

 

 3点差をつけ、7回裏PLの攻撃もツーアウトランナーなし。あと7人。このままいける かと思われた。しかし、ここでエラーが出てしまい、チェンジにならない。リズムが崩れたか、 比嘉公は次の1番田中一に四球を与え、2死1・2塁。続く2番足立の当たりは、内野と 外野の間へ落ちる。ラッキーなタイムリ二塁打となって、5-3。 
 なお2死2・3塁で、打席 には最も恐い3番覚前。今大会屈指の強打者である。2点差、7回。バッターを考えると、 ここは歩かしのケース。が、高校野球はちがう。こういう場面でも勝負!ということがしばしば あるのだ。ここでも沖縄尚学は敬遠策を取らず、真っ向勝負に出た。結果は、ライトへ 会心の2点タイムリー。同点である。5-5。 
 この試合、ついに初めてPLが追いついた。 さっきまでのムードは一変。沖縄尚学の健闘もここまでか。やはりPL強しという思いが 球場を包む。

 

 8回はおたがいに無得点。PLはまたもや1死2塁のチャンスを逃した。 
 9回表の 沖縄尚学も0点。「逆転のPL」という言葉が重くのしかかってくる。過去に何度もあったように 、PLのサヨナラ劇がまたも演じられるのか。伝統の力。

 

 9回裏。1死から田中一がヒット。最も恐いランナーを出してしまった。超のつく俊足、 走塁センスもすごい選手だ。走られる。それが恐かった。 
 しかし、ここでPLベンチのとった 作戦は、送りバント。助かった、と思った。いや、ちがう。ツーアウトにしてもいいというぐらい、 次の3番覚前が信頼されているのだ。それだけのバッターなのである。先程の打席でも 同点打を放っている。9回裏2死2塁。サヨナラのピンチ。 
 ここでも、沖縄尚学は敬遠せずに堂々と覚前に勝負を挑んだ。ところが、 この局面で痛いミスが出てしまった。ワイルドピッチ。ボールはそれほど転がらなかったが、 田中一は好判断で3塁を陥れた。2死3塁。今大会の沖縄尚学は暴投、捕逸が多く出て しまう。それが命取りとなるのか。もう、バッテリーミスは許されない。エラーでもサヨナラだ。 
 それでも、沖縄尚学は覚前と勝負する。9回裏に入ってから1塁側アルプスは、マウンドの 比嘉公也投手に向かって、「コウヤ、コウヤ」の連呼を続けている。果たして、覚前の打球 はショートゴロに。守りきった。渾身の勝負をして、勝った!1塁側アルプスは大騒ぎ。 僕もそばの席の人たちと握手するやら、跳び上がるやら。恐いPL、恐い覚前に対して、 一歩も引かずに向かっていった。ほんとうにしびれたね。

 

 延長戦に突入。10回表沖縄尚学の攻撃は、セカンド中尾の好守に遭い、三者凡退。 その裏、比嘉公也投手は「コウヤ」コールのなか、またしても1死2塁から2死3塁という サヨナラのピンチをくぐり抜ける。

 

 11回表。3番津嘉山のレフト前タイムリーで荷川取が還り、沖縄尚学ついに勝ち越し! 6-5。 
 僕は「やったあーっ!」と叫んで、周りの人たちと握手しまくった。 アウトにはなったものの、後続も外野へ鋭い当たりを続け、植山投手を完全に捕らえている。

 

 11回裏。ここを抑えれば勝つのだ。だが、PLはしぶとい。先頭の8番植山が二塁打送りバントを決めて1死3塁。バッターは1番、センスのかたまり田中一だ。 
 スイッチヒッターの 田中一は、右打席からライト線へふらふらっと打ち上げる。これがラインの内側に落ちた。 同点。しかし、2塁を狙った田中一は返球に刺された。沖縄尚学ナインは、同点に追いつかれ たことに落胆するよりも、走者をアウトにしたことを喜んでいるようだった。いいぞ。その意気や。

 

 12回表。先頭の6番浜田がヒット。だいじょうぶ。やはり、打てる。送りバント成功で 1死2塁。途中出場の新垣雄之は凡退で2死2塁。 
 続くバッターは9番比嘉公也。左打席 から流し打ち。打球はレフトの前へ。レフト田中一、俊足をとばして前進するも、わずかに 及ばず。ボールはフェンス際へ。浜田還って7-6。またも勝ち越した!またもや1塁側 アルプスは大喜び。僕もまた「やったああーっ!」と叫んだが、もう声が嗄れていた。 9回以降はずっと、守りの間じゅう「コウヤ」コールしてるからなあ。 
 さらに荷川取の レフト前ヒットで、2塁から比嘉公也が生還。8-6。2点差をつけたのは大きい。

 

 12回裏は、最も恐いバッター覚前から。強い打球やったけど、ライトの正面。覚前は 1塁ベース上で天を仰いだ。
 しかし、PLもすがりつく。4番七野がセンター前ヒット。 
 5番田中 啓之はショートゴロ。2塁も間に合うタイミングだったが、1塁へ送球。よっしゃ、それでいい。 確実にワンアウトずつや。2点ある。2死2塁。 
 しかし、6番中尾へは四球を与えてしまう。 さすがに比嘉公也も相当疲れている。変化球でストライクが取れない状態になってきた。 2死1・2塁。同点のランナーも出てしまったわけだ。 
 バッターは7番永山。また スリーボールになってしまう。アルプスは必死の「コウヤ」コールを送り続ける。 ここへ至っても、比嘉公也投手は攻めのピッチングを崩さなかった。ストレートでツースリー まで持っていく。そして、最後もストレート!バッターは手が出ない。見逃し三振。試合終了!

 

 1塁側アルプスの歓喜が爆発する。みんな感激している。僕も周りの知らない人たち と叫び、ジャンプし、握手をし、ハイタッチを交わし、抱きあい、足を踏み鳴らした。僕の隣に すわってらしたおばさんは、娘さんが沖縄の興南高校野球部でマネージャーをしているという。 センバツの前に練習試合をして、「尚学は強い」と報告を受けていたという。みんなと「明日も 応援に来よう」と誓い合って別れた。

 

 それにしても、すごい試合やった。20年以上甲子園に通い続けているが、自分の中の ベストゲームや。これまでは、沖縄水産が天理に惜敗した決勝戦がベストやったけど。 
 強豪中の強豪PLを相手に、堂々と真正面からぶつかっていって、倒したのだ。同点のピンチ、 サヨナラのピンチにも、敬遠などしなかった。相手エースにクリーンヒットを浴びせて、打ち 崩した。前半は離されていたヒット数も13本で、2本差に迫った。 
 強豪を倒すには、守って守って、 2-1か1-0で逃げ切るパターンが多いが、こんな勝ち方ってかつてあっただろうか。 守りのミスはたくさん出るのに、打って帳消しにしてしまう。 
 ほぼ毎回得点圏に走者を進め られながらも、ねばり強く凌ぎ切った。強気の姿勢で攻め込んでいく、強力打線に立ち向かって いく比嘉公也のピッチングは、ほんとうに素晴らしかった。感動した。勇気が大事なんだと 教えてもらった。気持ちで一歩も引かなかった。少しでも弱気なところを見せれば、PL打線に つかまり、伝統の力に気圧されて、自滅してしまっていたことだろう。 
 延長12回。死闘だった。 最後の最後は気力の勝負やった。この緊迫した息詰まる試合で、PL学園はノーエラー。 これもさすがに素晴らしい。

 

 そして、沖縄尚学は決勝へ!沖縄悲願の初優勝まであとひとつ。沖水は2年続けて 涙を飲んだが、今回こそは沖縄に優勝旗を持って帰ってくれ!気を引き締めて、何とか 勝ってくれえっ!

 

 

 

尚学  200100200 012  8
PL  010100300 010  6

 

 

 

 

 

水戸商(茨城) 11-3 今治西(愛媛)

 

 沖縄尚学の決勝の相手はどちらになるのか。偵察の気分で見た。 
 打線が強く、エース越智への継投パターンができあがっている今治西の方が手強い ように見えた。ところが、2点リードされた水戸商は5回、満塁のチャンスを作って越智投手 を引きずり出すと、一気呵成に4点を奪って逆転してしまった。ここ数年ですっかり恒例と なった「水商サンバ」が何度も繰り返される。終わってみれば、7・8回にも集中打を浴びせた 水戸商の大勝であった。

 

 実際に見る水戸商は、資料とは全然ちがっていた。不安定とされた守備はノーエラー。 打線も弱いと言われていたのに、外野へ快打を連発。今大会から3番に抜擢された川上が 期待に応えているばかりか、全員がレベルアップしているようだ。いわゆる、甲子園で1戦 ごとに強くなってきたチームである。

 

 敗れた今治西は2年生の好選手も多く、層の厚さを感じる。愛媛は強豪ぞろいだが、 きっとまた甲子園に戻ってくるだろう。

 

 さて、明日の決勝戦だ。水戸商のエース三橋は、今日も緩急をつけたピッチングを 披露。アンダースローのフォームも、何パターンかタイミングを変えて投げている。9回ワン アウトでベンチへ下がり、決勝へ備えた。今日延長12回を投げた沖縄尚学比嘉公也投手 の方が疲労は濃いだろう。水戸商打線はあなどれない。沖縄尚学打線がいかに三橋投手を 攻略し、ピッチャーを楽にしてやれるかが鍵である。技巧派投手の投球に翻弄されないよう、 引きつけて白球を叩いてほしい。そして、いいゲームを。何とか、沖縄悲願の大旗を!

 

 

 


  

 

 

準々決勝 最後のアウトひとつが大変 の日

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 4-2 市川(山梨)

 

 沖縄尚学の打順の組み替えが成功した。1番と4番を入れ換えたのだが、どちらも 三塁打を放つなど活躍。初回から2点を奪って、試合を優位にすすめた。

 

 先発は2番手投手の右腕・照屋。再三フォームを注意されるなど不安定なところも あったが、責任は十分に果たした。6回途中からはエース比嘉公がリリーフ。ピンチを断った。

 

 最大のポイントは3-2で迎えた8回裏。市川は1死3塁からスクイズを敢行。しかし、 これがフライとなってダブルプレー。続く9回表に沖縄尚学は、比嘉公のタイムリーで1点 追加。完全に沖縄尚学の流れに。

 

 9回裏市川の攻撃。1死1塁からファーストゴロ。ダブルプレーで試合終了!・・・と 思いきや、ファーストの足が離れていたらしく、2死1塁で試合続行。続くバッターは三振。 今度こそ試合終了!・・・のはずが、捕手がボールを見失う間に振り逃げ。最後のワンアウト がなかなか取れない。同点のランナーまで出て嫌なムード。しかし、最後はファーストゴロで ゲームセット。ひやひやしたで。

 

 沖縄尚学、準決勝進出!春は沖縄勢初の4強だ。次は比嘉公の先発だろう。 4番で調子の出ていなかった比嘉寿が、1番でのびのびと固め打ちしたのは大きい。 相手は強くなるが、同じ高校生。くらいついて行けば、何が起こるかわからない。1回戦で 当たった村西以上の投手はいない。守っていけば、打ち勝つチャンスもあるはずや!

 

 

 


  

 

 

第6日 沖縄尚学 ベスト8一番乗り の日

 

 

 

高田(奈良) 7x-6(延長14回) 高崎商(群馬)

 

 一方的な高崎商ペースだったが、終盤、高田が猛反撃。8回裏に3点を挙げてついに 同点に追いつき、史上初だという4試合連続延長戦へ。一転してチャンスのつぶしあいに なったが、最後は松村がセンター前へサヨナラヒット。 
 粘りづよく逆転した高田は好チーム。評判の左腕・松本から18安打を奪ってつないだ。 目立った選手は、1番サードの白木。鋭いヒットを4本も放ち、守備もよくて、しかも俊足と きている。 
 応援団も、44年ぶりに出場できた県立校の喜びがはじけてたなあ。

 

 

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 5-3 浜田(島根)

 

 1回表の先頭打者にいきなり三塁打を打たれたものの、沖縄尚学・比嘉公投手は 無失点でピンチを切り抜けた。逆にその裏、沖縄尚学が先制。その後もヒットを重ね、 スクイズを決め、相手投手のボークもあって、順調に得点を追加。負ける気はしなかった。

 

 しかし、8回表に鍛冶畑が代打で登場すると、様相が変わった。鍛冶畑はケガで スタメンを外れてはいたが、本来は4番打者であり、浜田の主将である。 昨夏ベスト8入りしたときのレギュラーでもあるのだ。鍛冶畑は1死1・2塁のチャンスで 見事な流し打ち。ライト線への2点タイムリ二塁打を放った。 
 が、浜田の反撃もここまで。続く2死2塁の場面で、ショート内野安打の間にホームを ついた走者が刺されて、流れがとまった。

 

 沖縄尚学ではセカンドの具志堅が攻守走に活躍。ベースよりの打球を捕り、回転 してショートへトスしたダブルプレーでの動きは華麗だった。ベスト8一番乗りやあっ!

 

 

 


  

 

 

第5日 初出場校 延長に泣く の日

 

 

 

日南学園(宮崎) 3-1(延長12回) 峰山(京都)

 

 両エースの投げ合いで素晴らしい試合になった。峰山は防御率No.1、サウスポーの 川原。日南学園の右腕・春永は左手を振り上げる独特のフォームだ。 
 川原はすごかった。大ピンチで日南の4番吉武を直球で三振に斬って捨てたし、 完全に決まったと思われたスクイズを全く隙のないグラブトスでアウトに。 
 もう1人峰山で光ったのが岡崎。打撃はセンスを感じさせるし、記録上はエラーが ついてしまったが守備のフットワークもいい。 
 日南は今年も走れるチーム。サヨナラ負けのピンチにも動じないし、確かに優勝 候補だ。でも、内野の守備に不安もある。今年は去年の横浜のようなチームはないようだ。 
 峰山の大応援団は、バックネット裏近くまでぎっしりと。いっせいに丹後ちりめんを 振る光景は、ちょっと壮観やった。こういうの、いいやん。沖縄の民族衣装も許可してえや。 社会人野球みたいに、試合そっちのけにせんかぎりは。だいたい、高野連って何なんや? 高校野球ファンだった人間はいるのだろうか?何もわかってないぞ。

 

 

 

 

 

静岡(静岡) 7-5(延長13回) 柏陵(千葉)

 

 試合前のノックが終わると、柏陵ナインはベンチ前でラインダンス!選手名鑑の写真 は全員笑顔で写ってるし。関東大会では8点差をひっくり返したというし。このチームを 率いるのは、県立校ばかりを甲子園に導く蒲原監督。応援したくなるではないか。 
 しかし、あと一歩のところで柏陵は敗れた。ゲッツーでピンチを切り抜けたと思った ところでエラーが出て同点に。12回裏2死2塁からレフト前ヒットが出てサヨナラ勝ちかと 思ったが、走者は3塁ストップ。レフトはファンブルしていただけに、なおさら惜しかった。 結局次の13回表に決勝点を奪われた。それまでは無死3塁を切り抜けるなどよく守って いたのだが。 
 静岡の殊勲は、杉山。あと数十センチでホームランというレフトフェンス上金網直撃 の大三塁打に、13回表の決勝点を挙げたツーベース。 
 そして、何といっても両チームのエース。静岡・高木に柏陵・清水。 ともにカーブを武器とする左腕で、13回を投げ抜いた。 
 静岡は高木投手がはまれば、次の日南学園戦でも好勝負するかも。サード松山の 三塁線守備も上手い。 
 柏陵は夏にまた来てほしいチームだ。ヒットを打たれながら清水投手はよく粘った。

 

 

 


  

 

 

第2日 ヒグマ打線吼える の日

 

 

 

駒大岩見沢(北海道) 15-4 神戸弘陵(兵庫)

 

 初回から駒大岩見沢ヒグマ打線が猛爆。四球とエラーで走者をためては、痛烈な タイムリーを叩き出す。打撃の評判は本物。初回に4点、2回に5点で試合を決めた。 
 駒大岩見沢が勝つとは思っていたが、兵庫代表にここまで大差をつけるとは。 昨夏の経験者が8人もいるのも強み。弱点をあげるなら内野守備か。 
 立ち上がりに連打され、わけもわからないままにマウンドを降りた神戸弘陵の 西島投手が心配だ。立ち直ってくれるといいなあ。

 

 

 


  

 

 

初日 村西の投球は噂以上 の日

 

 

 

浜田(島根) 5-3 東海大三(長野)

 

 5-1と完全な浜田ペース。昨夏ベスト8まで行っただけのことはある。 
 が、8回裏。難しい打球を内野安打にしてしまったことから、浜田の内野陣が動揺を 見せはじめる。ここで東海大三がたたみかけ、2点差に迫る。ふいに、今年もまた甲子園に 高校野球が帰って来てんなあ、と感じる。ちょっとしたことから崩れていく守り。急変する 流れ。この試合に負ければ終わってしまうという切なさ。祈りを込めて見つめるアルプス。 あたたかいファン。これなのだ。高校野球を見るときの感覚がよみがえってくる。 
 8回裏の東海大三の攻撃は、会心の当たりが正面を突いてダブルプレーになり、 終わってしまった。が、いい試合やった。さあ、今大会も高校野球を存分に楽しむのだ!

 

 

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 1-0 比叡山(滋賀)

 

 比叡山の村西投手は、噂以上のピッチングを見せつけた。直球は速い。スライダー は鋭い。緩く落ちる球はナックルだそうだ。近鉄のマットソンのナックルほど遅くはなくて、 スッと落ちる。この球も有効だった。 
 対する沖縄尚学比嘉公也投手もコントロールがよく、カーブとシンカーを操る。 投手戦となった。

 

 3回、村西はピッチャー返しの打球をまともに右足に受けてしまうが、大事に至らず よかった。沖縄尚学応援団は、なかなか打てそうもないピッチャーからヒットを奪ったという ので浮かれていたが、ここは音楽を止めて村西に声援を送るぐらいの気持ちを見せた方が よかったと思う。

 

 試合が動いたのは6回裏、沖縄尚学の攻撃。2死1・3塁のチャンス。しかし、期待の 4番比嘉寿光は空振りの三振。体格のいい強打者だが、今日は村西の変化球に 全くタイミングが合っていなかった。

 

 チャンスのあとにピンチあり。7回表、比叡山は1死1・2塁と比嘉公也を攻める。 が、ここでセカンドゴロダブルプレー。両チームともほとんどヒットが打てない緊迫した 投手戦で、先に1点取った方が・・・のムードが漂っていただけに、これは大きかった。

 

 7回裏1死。完璧だった比叡山内野陣がほころびを見せる。サードのエラーで ランナーが出る。次の投球を捕手が少しはじき(記録はワイルドピッチ)、走者は2塁へ 向かう。これを刺そうとした捕手の2塁送球が高投となり、走者は一気に3塁へ。1死3塁。 最大のチャンスが訪れた。村西から点を取るには、ここはスクイズしかないだろう。 1点勝負。比叡山は満塁策まで覚悟で外しまくってくるのではないか。 
 しかし、次の球はスライダーでストライク。切れのいい球を投じれば、簡単には バントできないという自信なのか。沖縄尚学・金城監督は次の投球でスクイズを敢行。 またもバッテリーは外さない。これは決まる!と思ったが、打者・有銘のバントは転がらず キャッチャー前へ。捕手がボールを拾う。走者はまだホームから遠いところを走っている。 完全にアウトのタイミング。だが、捕手の前で一瞬停まった走者・松堂は、際どく タッチをかいくぐってホームへ滑り込んだ!捕手はタッチをアピールするも、判定はセーフ。 記録はフィルダースチョイスとされたが、これはおかしい。楽にホームでアウトにできた プレーだ。実質はエラーだろう。堅守比叡山がこの回にミスを4つ重ねてしまった。ともかく、 貴重な1点が入った。これがそのまま決勝点に。

 

 両チームともヒットは3本ずつ、四球もほとんどなく、素晴らしい投手戦だった。 守りのチームである比叡山にミスが出、内野守備が不安視された沖縄尚学がノーエラー。 機動力が自慢の比叡山は盗塁を試みることもできず、逆に沖縄尚学の方が走った。 高校生の一発勝負はわからないものだ。

 

 敗れはしたが、村西投手はすごかった。自責点0のまま甲子園を去ることになった けれど、夏もこのピッチングを見せてほしい。

 

 沖縄尚学で雰囲気がある選手は、トップバッターの荷川取。チームの課題は、 三遊間のスローイング。捕ってから投げるまで間があるので、内野安打を奪われそうだ。

 

 もうひとつ書いておくべきことがある。3、4歳の女の子がブラスバンドに合わせて 小さな太鼓を叩いていたら、腕章をつけた高野連の男が注意しに来る。一体何の害がある というのか。行き過ぎた応援規制は、アルプスのムードに水を差すだけだ。観客動員が 減っているのには、こういうことが響いているということがわからないのか。表面だけの 人気とりにばかり策を弄さずに、実態をしっかり見て応対せえっちゅうねん!

 

 

 


  

 

 

優勝予想

 

 

 

◎ 沖縄尚学(沖縄)
○ 日南学園(宮崎)
▲ PL学園(大阪)
△ 東邦(愛知)
× 今治西(愛媛)
注 駒大岩見沢(北海道)

 

 予想とはいえ、思いっ切り願望入ってます。沖縄代表の優勝が夢なので。沖縄尚学の 初戦の相手、比叡山のエースはすごいらしいけど。 
 最近常連の日南学園。いつも好感のもてるチームでしたが、なかでも今年は 九州大会を制覇。最強なのだ。 
 PLは優勝するには投手力にやや心配があるが、あの田中一徳外野手が 引っ張ってくれるだろう。横浜にも雪辱するはず。 
 潜在能力高そうなエースが化ければ、東邦の優勝も。今治西も勝ちあがる力を 秘めていると見る。 
 注目は駒大岩見沢。昨夏感動させてくれたヒグマ打線は健在。捕手から一塁手に まわった北村選手にがんばってほしい。投手もよく、初戦で手強い神戸弘陵を倒せば、 北国旋風を巻き起こす期待大。 
 横浜を無印にしたのは、いきなりPLと当たるからではない。史上初の三連覇は、 並大抵のことでは達成できないと思うからだ。水野の池田でもできなかった。あの松坂を もってしても、春夏連覇紙一重の勝利。いいチームではあるが、精神的なことも含めて 考えると、決勝まで進めないのではないだろうか。

 

大森信和(甲斐バンド リードギター) 追悼文

 2004年7月、大森さんが亡くなった。

 信じたくなかったけど、本当のことらしい。

 何よりもまず思い出すのは、ROCKUMENT II。大森さんがゲストとしてアンコールに登場した。1996年6月。「Big Night」直前のことだ。 
 まずは甲斐と二人、イスに座って、アコースティックギターで「光と影」。 
 僕は甲斐友と一緒に、ステージ左真横に立っていた。ROCKUMENT特有の 、あのスペースだ。 
 「光と影」が終わった。拍手。ステージの左側で演奏していた大森さんが、 スタッフにギターを手渡して立ちあがる。大森さんがステージ左、つまり僕らの方を向いた瞬間、僕は「大森さあーーん!」と叫んでいた。無意識に。しかも、両手まで振って。これはライヴに通ってきた中で、自分史上最高にミーハーになった瞬間やったと思う。 
 前年1月の武道館、大森さんは体調をくずして、甲斐バンド再結成に参加でき なかった。だから、僕には1986年6月、「PARTY」の大阪城ホール以来、 久々の大森さんやったのだ。 
 思い切り手を振りながら、自分でもひどく興奮しているのを感じた。 
 「俺って、こんなに大森さんのことが好きやったんや」 
 自分の気持ちの強さに驚くほどやった。 
 そして、大森さんは、こちらの方を向いて、にっこり笑いながら会釈してくれた。めちゃめちゃうれしかったな。 
 エレキギターを手にした大森さんのソロが始まる。ブルースだ。たっぷり聴かせ てくれた。その音に酔いしれているうち、バンドの演奏が加わった。甲斐バンドの曲の 前奏や。始まったのは何と、「SLEEPY CITY」! 
 この「SLEEPY CITY」が素晴らしかったのだ。激しく、気持ちよく、 熱狂した。すごいしあわせ感があった。

 それから後、会場で叫ぶときは「大森さーん!」ではなく、「大森ーっ!」って 叫んだ。 
 甲斐より年上で、「大森さん」というイメージやねんけど、ライヴ中にはそう呼ぶのは他人行儀のような気がして。わきあがる想いに親しみと敬意を込めて、「大森ーっ!」と叫んだ。

 大森さんのあの笑顔。 
 反面、曲のフィニッシュでギターを右肩の上から大きくステージに叩きつける ようにした、激しいアクション。 
 「観覧車’82」の後奏で、最後にギターを立てて置く姿。 
 音楽をかみしめるように弾いている時の表情。 
 「破れたハートを売り物に」の間奏ギター。

 今年は甲斐のデビュー30周年。 
 きっとまた大森さんと会えると思っていた。 
 大森さんの参加がなかなか発表されなかったのは、入院なさっていたという事情からやったんかな。 
 こういうこともあるから、あらためて思う。甲斐たちの事情もわからないのに、文句を言ったりしない。重箱の隅を突つくようなあらさがしをしない。自分の好みと ちがうことがあっても、騒ぎ立てない。僕は「今」のファンでありたい。

 いつかこういう日が来ることを、考えたことがなかったわけでは、実はない。 自分の最大の趣味が永遠に楽しめるわけではない。ほんとに残念なことやけど。 
 そのことに思いをはせる時、なおいっそう自分の好きな音楽を聴きたくなる。 できるかぎり多く。できるかぎり深く。

 大森さんのステージを見ることは、もうできない。 
 しかし、大森さんの書いた曲、大森さんの弾いた音、大森さんの存在が、僕には 残っている。 
 大森さん、これからも僕は、大森さんの音楽を聴き続けていきます。 
 今までほんとうにありがとうございました。 
 心から、ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

大森信和作品

 

光と影

くだけたネオン・サイン

スローなブギにしてくれ

25時の追跡

エコーズ・オブ・ラヴ

JOUJOUKA(ジョジョカ)

ロマン・ホリデー

甲斐よしひろ 2012 愛のろくでなしツアー 2

2012年6月11日(月) Zepp Namba

 

 このところ毎週お笑いを見に通ってるなんばの駅で降り、かつて大阪球場だったなんばパークス横の 道を行く。いつの間にか「パークス通り」っていう名前になってるねんな。パークスから数分で、左手に Zepp Nambaが現れた。今年のゴールデンウィークにオープンしたばかり。これは近い。 Zepp Osakaにも思い出は多いし、大阪港の夕陽もきれいやったけど、 便利さが何桁も違う。移転という形でZepp Osakaがなくなったこの先、 もうコスモスクエアへ行くことはほぼなさそうや。

 Zepp Nambaの建物に沿って左折、さらに右に曲がったところに入口。チケットを見て、 「奥の左手から(客席へ)お入り下さい」と案内してくれるが、どこから入ればいいのかわからない。 ロビー奥の左は女子トイレの表示しかないねんもん。 
 グッズ売り場の列はすでに2階まで達しているようで、開演前に買うのはあきらめる。震災の被災者 の方々への募金箱は、グッズ売り場の柵の向こう側にあった。募金も終演後にしよう。 
 そんなふうにロビーを見渡しても、やはりどこから客席に入れるのかわからない。係員に聞いたら、 やっぱり奥の左手から入れるねんて。いや、あの表示、まぎらわしいって。あっちは女子トイレだけやと 思って、男は進まれへんで。

 その入口を入ると、客席右やや後方に出た。自分の席は右前やねんけど、ステージと会場全体の様子を 見たいから、あえて遠回りする。客席最後方を通って左端の通路を前へ、ステージを見ながら1列目前の 通路を右へ。今日は久々にかなり前の席や。たぶん「Classic Kai 」以来。 
 ステージ上方に、白いライトが8つ並ぶ。その光がまぶしくて、近くても舞台の様子がよく見えない。 2列目の上あたりにも、ライトが吊ってある。黄色、肌色、白桃色が、いくつかずつ。ステージの前端から 客席へ飛び出すように設置した、小さな黒い装置が真ん中の左右にひとつずつ。横長の長方形の左右に半円を 付けたような形。これもスピーカーなんかな。 
 目の上に手をかざして、舞台上を見てみる。横長の長方形の中にに赤い円が並んだライトを見つけ、 「絶対・愛」をやると確信する。舞台後方にはネットがあるようだ。 
 スタッフが出てきて、ギターからベースへと各楽器を最終チェック。ウクレレがある。ウッドベース もあるぞ。去年は「よい国のニュース」と「かりそめのスウィング」で 使われたが、今日はどの曲で音を出すのか。いろいろと想像する。 
 楽器の位置からして、メンバーの並びは去年どおりらしい。ツインギターが左右に。後方右の台に ベース渡辺等。さらに高い後方左の台にドラムス佐藤強一。 
 飲み物が配置される。右ギターの後ろの台には、ふた付きのタンブラー。うずまき模様が見えた。 甲斐が飲むと思われるものは、ドラムス台の手前右に置かれた。濃い青のキャップがついた水のペットボトル と、こちらもふたのあるタンブラー。入っているのは特製ドリンクか、はたまた酒か。 
 準備がここまで整えば、開演はもうすぐのはず。アナウンスの声は小さく短かった。BGMが終わると、 拍手。その拍手が客席じゅうに広がっていく。次のBGMが始まっていようが関係ない。拍手はやがて 大きな手拍子へ。甲斐よ、早く出て来てくれ。歌を聴かせてくれ。

 新たなBGMが高まって、開演の時を告げる。立ち上がって手拍子を打つ。客電は落ちていないようだ。 興奮のためか、BGMがよく聴こえない。ふっと 「Series of Dreams Tour Vol.3」を連想した。あのときは、「吹けよ風、呼べよ嵐」。 ブッチャーの登場テーマやった。これもプロレスの曲のような。そうか、ブルーザー・ブロディ。 「移民の歌」か?でも、はっきりはわからない。意識がそっちに向かない。思い切り手を打って、ライヴが 始まることだけを待っている。甲斐のロックを欲している。 
 左からメンバーが歩んで来る。こっち側、ステージ右に蘭丸。左に佐藤英二だ。蘭丸は黒縁のメガネ。 濃紺のジャケットには銀の縁取り。

 さあ、来るぞ。去年は「エキセントリック アベニュー」やったんや。強一のあの太いドラムを、 今回もオープニングで見せつけるはず。 
 しかし、意外に静かな曲が立ち上がった。ステージ中央奥、ドラムスとベースの台の間から甲斐が やって来る。「甲斐ーーっ!」と叫ぶ。さらなる拍手と大きな歓声。甲斐は銀のジャケット。中には灰色の ストールなのか、下の方は太く広がっている。そのさらに内は青。黒のパンツには穴を補修したような跡が いくつか。多分そういうデザイン。ゴーグルっぽいサングラスは全体が透明で、レンズの部分だけ紫 がかった色が入っている。 
 コーラスの声に聴こえるのは、サンプリングか。静かな曲の中を渡辺等のベースがうねる。 大好きな「ROCKUMENT V」以来や。あのときもごく序盤に歌われた。 
 「レッド スター」 
 ただし、「ROCKUMENT V」そのままのアレンジではないはずだ。蘭丸が刻むギターが 効いている。 
 イラク戦争時に「KAI FUND」の対象になったこの曲を1曲目に据えるには、大きな意味が あるに違いない。もちろん今の状況を考えてのことだろう。甲斐が目指す「社会が垣間見えるラヴソング」 のひとつだが、今は「社会」を描写した部分の詞が強く響く。「俺たちはニュース不感症さ」「割れたビンを 世界中が今ふみつけている」 
 後奏。甲斐が叫ぶ。その声もまた胸をつかむ。

 「ダッ!ダッ!ダダダッ!」と分厚い音がはじける。別の曲かと思った。まさかこの歌が聴けるとは。 
 「ナイト スウィート」 
 「レッド スター」から一気に激しい曲へ転じるかと思ったが、そうではなかった。オープニングに しては、どちらかといえば、静かめな曲が続いた。ますます「ROCKUMENT V」を思わせる。 もちろん、「ナイト スウィート」だからバラードではないし、蘭丸はまたギターを刻んでるし、僕も みんなもノっている。 
 ライヴで聴くと、普段よりさらに詞に敏感になる。「新聞社」とか、「竜土町」という地名にも、 意味がありそうに聴こえてくる。 
 バンドが転調し、そのとき甲斐は左前で歌っている。その姿がなぜか印象的やった。

 「甲斐ーーっ!」の声と拍手を浴びて、甲斐がマイクスタンドの前へ。 
 「魂を込めたナンバーばかりをやりましょう。」 
 そうそう、「愛のろくでなしツアー」は、こういうMCやった。 
 曲に行くためにスタンドを離れそうになった甲斐は、「最後まで楽しんでって」とつけ加えた。

 さあ、MCを挟んで再スタートのここから激しく。と思ったが、三度意表を突かれた。 明るいイントロがわきあがる。「ハートをRock」っぽいなと思った。 
 「浮気なスー」 
 うわ、この曲もやってくれるんや。ライトな曲調を楽しむ場内。甲斐は左に右に歩を進める。 
 蘭丸のギターがちょうどいい感じに、演奏を特徴づけてる。甲斐のヴォーカルの形と色ががっちり あるうえで、そのところどころに蘭丸が自分の色を塗ってるようなイメージ。甲斐の歌を染めてしまうん じゃなくて、何か所か色を塗るような。甲斐の歌もギターに押されるような個性じゃないし。 
 「そんな娘だとは 知っているけど まだ愛してる」って、わかってしまう気がする。詞は痛いのだ。 
 後奏も終わりに差し掛かる。音がわきあがって、オーディエンスが拍手。最後にあと一つ音が鳴って 曲がフィニッシュ。と思った瞬間、そこで「ダッ!ダン!」と二音が跳ねる。そこから速いリズムが 続いてくる。「おおーーっ!」って声が出た。まさか、この曲につながるなんて。 
 「ムーンライト プリズナー」 
 歌が入る直前の、二度目の「ダッ!ダン!」で俺は拳を二連打。大合唱が始まる。甲斐もどんどん 大きなアクションに。手を打ったりしながら、左右へ動く。間奏前の「アー」という声は大きめ やった。そこから蘭丸が前に出て弾きまくる。黒縁のメガネをかけて、こんな激しいプレイを見せるねんから。 本当は凶暴やからこそ、そういうメガネをかけてるという余裕ある凄みを感じた。かっこいいやんけ。 目の前で蘭丸の激しさを見て、さらに蘭丸越しに甲斐の姿も見られたりする。絶好の席やな。 
 この曲でも転調があって、特に注目してしまう。今夜はなぜかそういう感覚になる。 
 最後は「だけどあの娘が忘れられない」というニューヴァージョンの歌詞。 
 もう一度あの「ダッ!ダン!」でフィニッシュ!

 そうか、ここから激しい曲が続いていくんや。そう思ってんけど、またもや意外な展開に。 
 「「愛のろくでなしツアー」には付き物の、バラードを」 
 ああ、確かに「ストレートなロックを謳う一方で、バラードも見せ場になっている」というのが、 「愛のろくでなしツアー」の秘められた売りやった。でも、ついに激しい曲が来た、という直後に バラードとは。流れが予測不能やな。そして、そういう意外性も大歓迎や。

 ごく静かな前奏。すぐにあの痛切な名曲だとわかった。 
 「橋の明かり」 
 本当に久々に聴くことができた。もしかして、 「ALTERNATIVE STAR SET ”GUTS”」以来ではないのか。 最近カラオケでよくうたってたけど、今日聴けるとは予想できなかった。 
 「弱い太陽の下で 俺は何とか生きてる」 
 「冬の太陽の下で 俺は何とか やってる」 
 ここの詞が特に胸を突いた。本当にかなしくて、つらく、やり切れない。だけど、もしかしたら この先には望みがあるのかもしれない。そういう、ごくかすかな光が見えそうな予感だけはある。わずかに。 
 後奏の甲斐の声がまた、めちゃめちゃ切ないのだ。CDよりも1回多く、曲が消えるぎりぎりまで、 声をあげ続けてくれた。

 今日初めてのバラードに聴き入った客席は、声は発せず、しんみりした拍手でたたえた。 
 「「橋の明かり」という曲をやりました」 
 そう甲斐が言って、ふたたび拍手がおくられる。

 そこからのMCで、甲斐は震災に触れた。まだ問題は続いていると。 
 そして、こうしめくくった。 
 「仲のいい漫画家の萩尾望都は、震災の後、「なのはな」という作品を描いて。俺にはこの曲があった。 「カオス」という曲をやりましょう。」

 「カオス」 
 去年のツアーでもやるという話はあった。でも、うたわれなかった。去年だと生々し過ぎる、 辛過ぎる、あるいは、客席のことを思うと仙台ではうたえないという判断があったのかもしれない。 
 今年にしても、さっき甲斐が話したような状況なのだから、「カオス」の詞はきわめて重く響く。 
 甲斐は、あえてそうしているのだろう、リズムに合わせて、歩くように腕を振ったりしながらうたう。 
 第一期ソロのライヴでは「ラヴ ミー テンダー」とうたわれることの多かった曲名は、 発売当時のレコード通り「キリング ミー ソフトリー」やった。 
 渡辺等のウッドベースが響く。奴は「カオス」のアルバムの頃にはもう、甲斐のレコーディングで 弾いていたのだ。 
 2番の後の間奏。甲斐がハーモニカを吹く。フルートのパートを奏でているようだ。 強一が「タン!タン!タン!」とかわいた音を叩いて、3番へ。 
 甲斐はここでも「FIRST LYRIC VERSION」ではなく、「見えない嘘によごされた雨 がふる」とうたう。ほっとした。「見えない塵」やったら、あまりにも強いし、詮索や曲解もされかねない。 
 それでも、3番後半の詞は重かった。ものすごい歌やな。あらためて痛感する。 しかも、視点が偏っていない。ラヴソングとしても聴ける。さすが甲斐、という作品なのだ。 
 甲斐の「カオス」という声が、静寂に溶け込む。その後に「ザ!ザーン!」という高い音でフィニッシュ。

 拍手がやむと、甲斐はこう言って、静かな空気を破った。 
 「ロックンロールをやろうぜ。ロックンロールを」 
 そうやんな。震災のことは頭の中に置きながらも、エンターテイメントがないと。それだけを見続けてたら、 どうかしてしまいそうになる。ここからハジけたとしても、聴いた者の心に今日の「カオス」は必ず残る。

 前奏はレコードと違っていた。でも、歌入りの瞬間、完全にあの曲やとわかった。 
 「特効薬」 
 一気に雰囲気が変わってる。王道のロックンロールで燃焼や。甲斐がマイクスタンドを持ち上げて、 斜めにこっちへ向かってくる。俺は勝手にデュエット気分。歌いまくる。蘭丸は再び前で弾き尽くす。 身をよじるようにギターを抱え、ときどき靴の裏が見えそうなほど足を上げて、指から気持ちをしぼり出す如く。 
 2番に入る前の「アイーッ」というシャウトはなし。「フォークも聴きなよ」ではなく、 「フォークを聴きなよ」と歌う。欲しいものを挙げていく部分は、「名前」を2回のニューヴァージョン。 
 英語タイトルにもなってる「Drugs love you」を、今日の甲斐は低くつぶやく。 そこからの後奏では、右に甲斐とツインギターが集まる。甲斐と接するように並んだ蘭丸と英二、 「ダンッ!ダン!」のビートとともに、同じ方向へギターを振り上げる。甲斐も同調。この見せ場が目の前で見られる幸せ。 
 中山加奈子との「ROCKUMENT IV」以来かな?「特効薬」もカラオケでよく歌ってるけど、 まさか今日聴けるとは思ってなかった。

 続いて叩き出されたドラムの重低音に、意識する間もなく身体が跳ねる。そうそう!これをやってくれな! 
 「ダイナマイトが150屯」 
 前奏から蘭丸のギターが鳴り続く。あのキーボードの音を凌駕するほど。甲斐がマイクスタンドを縦に 蹴り上げる。「フーーッ!」「ヒューッ!」とオーディエンスが高い歓声を浴びせる。 
 最初の「ダイナマイトがよーホオホー」の後、早くも客に「ダイナマイトが150トンー」と歌わせて くれる。そこから1番の続きは、甲斐と俺らで代わる代わる半分ずつ歌う感じ。こんなに歌わせてくれるのは めずらしい。客席の熱が伝わってるからこそやと思う。大声で歌えるうれしさと、甲斐が自分たちを認めて くれてるよろこびと、何より「ダイナマイト」の興奮がある。 
 甲斐は後半、右へ来る。ステージの前端を歩く甲斐へ、その見えてる左耳へ向けて、「ダイナマイトが 150トンー」と全力で歌う。「ダイナマイト」で近くに来てくれて、歌ってくれて、感激や! 
 後奏。真ん中に戻った甲斐は、マイクスタンドを置く。最初の縦蹴りで絡まってたコードは、 いつの間にか解けてる。そしてそして、ぐるんぐるんスタンドを多く廻す。身体を低くし、下でしっかり 受け止める。スタンドを横にぶん廻すことはせず、もう一度右に来てくれた。 
 またしぜんに身体が跳ね、右左右と拳を突き上げ、跳びながら手を打ち続ける。 やっぱり、「ダイナマイト」最高。これまで序盤かアンコールでの披露が多かったのに、中盤に入った あたりでやるとは。この意外な感じもさらによかった。

 「ダイナマイト、ぶちかましたぜ」という言葉から、MCへ。 
 主な話題は、キャンペーンで出た「レッドカーペット」。「都合よくTVを使う男」と言われるとか。 
 スギちゃんの本番でのすごさ。サバンナの高橋さんが、むっちゃオーラあるということ。 野性爆弾の川島さんが好きだということ。 
 最後は蘭丸の参加について。もともとは去年も蘭丸で行く計画やったはず。 
 「蘭丸がいるのにこれやらないと、タダじゃおかないぞ、というのは後で。「渇いた街」をやるぜ」

 「渇いた街」 
 甲斐が今日初めてギターを持つ。茶色のボディで、縁は黒っぽい。 
 印象的な風景の描写から入る詞がよくて、「HIGHWAY25」収録の、詞が長いデモ・ヴァージョン やったらうれしいなと急に思ったが、通常の詞やった。この曲で2番が倍になるのはよくないという、 音楽的な判断なんやろうな。いつかライヴでデモ・ヴァージョンを聴いてみたい。 
 「そんなたわ言を俺に吐かせたいのかい」の一連は、今日も強烈。 
 もう一度あのイントロのフレーズが入ってから、後奏が終わっていく。

 メンバーが去って行った。残ったのは、甲斐と渡辺等だけ。 
 8月12日(日)に薬師寺で行う、甲斐バンドのライヴについて。 
 世界遺産が好きだとか、拝観料付きという程度のサービスだけどとか、奈良が好きとか言ってて、 客席に「拍手してるけど、本当に来るのか?」と問う。「行くよー」「買ったよー」というような声が 多く飛ぶ。「僕もいい大人だから疑わないけど」と笑わせる。 
 松藤が薬師寺でドラムを叩くと張り切っているそうだ。よろこびの拍手が沸く。

 さらにいくつか松藤のエピソードがあってから、「松藤の話も出たし。夏ヴァージョンでいいのができたから」 
 渡辺等がウクレレを奏でる。その音に、去年のハイライトのひとつ「よい国のニュース」の記憶がよみがえった。 
 ウクレレだけで歌われる「ビューティフル エネルギー」 
 爽やかや。音色は本当にあくまで爽やか。しかし、あまりの爽やかさに、「きれいそうに見えるけど、 詞は実は淫靡やねんなあ」と感じていた。これには裏がある。詞の本当の意味に思いを馳せながら、 甲斐の声を聴く。甲斐は語尾を下げて響かせるうたい方。甲斐はこんなふうに「ビューティフル エネルギー」 をうたうことが多い。松藤はいつも伸ばしてる。 
 2番の後に甲斐のハーモニカ。と、テンポがゆっくりになる。 
 「潮がひくように 消えていくんだろう はなしたくない 愛はもう戻らない」 
 なんと、「ミッドナイト プラスワン」がうたわれたのだ。爽やかさの背後にエッチな影を感じては いたけど、さらに悲しい別れのうたを入れ込んでくるとは。これで、例えば、初めてこの曲を聴いた人でも、 爽やかなだけじゃないと気づかされたことだろう。ひたすら幸せで全く不安のないような歌って、 甲斐には本当に少ないし。 
 メドレーに移るのかと思ったが、その一節だけで、すぐ「ビューティフル エネルギー」のサビ 繰り返しに戻った。後奏の最後に、もう一度甲斐のハーモニカ。

 再びメンバーが全員揃う。 
 「さっきの曲の前に座らせようと思ってたんだった」と、甲斐が客に一旦座ることをすすめる。 僕はずっと立っときたかったけど、後ろの人らが気の毒やから座った。「後ですごいことになるから」とも 言う。終盤、激しい曲をいっぱいやるっていう予告やんな。期待高まるで。

 「孤独になって追いつめられると、いろんなモノが寄ってくる」「子どもの頃に空を飛ぶ夢をよく 見てたけど、あのときは本当に空を飛んでいたような気がする」という系統のMCをめずらしく。 そこから、「こわいものについて書きたいなあ」と思って書いた作品のことへ。 
 「蘭丸のソロのために書いた曲を。2人でやるなら、この曲入れないと」 
 「バンドでもやったんだけど、蘭丸に負けてると思う」と言うと、右の蘭丸は「いや、いや」という ふうに手を振った。

 始まったのはもちろん、「立川ドライヴ」 
 もともとそういう曲やけど、あのMCの後やから、詞がそこもここも霊的なものを表してるように 聴こえてくる。「ウォーオーあいつが消えてしまう」というサビも。 
 強一は刷毛みたいなのでドラムを叩いてる。 
 曲が終わると、甲斐が蘭丸の名前を呼び上げる。「公平ー!」「蘭丸ーっ!」の声がなおさら増えた。

 きれいな音が湧き、みんなまたすぐ立ち上がる。蘭丸ゆかりの曲が続く。 
 「レイン」 
 今回も手拍子する感じのアレンジ。甲斐も何度か手を打ってみせる。この時いつも、両肘が直角に近い ねんな。トレーニングするみたいに腕が動く。 
 甲斐といっしょにうたい、「Call My Name」で拳をあげ、「できはーしなーいー」と コーラスする。甲斐とやり取りする感じが気持ちいい。 
 前に出た甲斐を見ると、その後方、客席横の壁に大きな甲斐の影も見えた。 
 後奏。甲斐はファルセットを聴かせる。それから、蘭丸だけにピンクのスポットが当たる。 甲斐とやるきっかけになった「レイン」を、蘭丸が弾く。それを見せる。

 イントロのフレーズに「ウォーッ!」と声をあげてしまった。 
 「メモリー グラス」 
 ただし、蘭丸が弾くあのフレーズは、オリジナル通りではない。情感を抑えた、フラットな響き。 これがロックっぽさを増して、かっこいいのだ。 
 甲斐が歌い出すと、蘭丸はギターを一音ずつ鳴らしていく。その音を長く震わせる。 こちらは逆に、情感を増してるように聴こえる。そして、サビに入る甲斐の「メモリーグラーース」と ともに、「キュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキュキューーン」と高く駆け上がる。 歌もギターも最高や。 
 後奏でもう一度あのフレーズに戻ってからフィニッシュ。

 ドラムスから始まる前奏。もしかして?ギターが入ると、客席全部が確信したはず。甲斐がマイクスタンドを蹴り上げる。 
 「きんぽうげ」 
 まさかやるとは。やるなら薬師寺やろうと思ってた。こうなると、逆に薬師寺ではどうなるんやろ。 一瞬だけそんな思いがかすめ、あとは全身で「きんぽうげ」のよろこびに突撃。 
 今日は客にかなり多く歌わせてくれる。「はずーれた胸のボータン」からはしばらくずっと客。 甲斐はマイクを口から離し、左へ歩いている。「くーらやみのなかー」と甲斐が突き放した方のメロディーで歌う。 続いて客が「だーきーしめてもー」。甲斐の歌い方に対応して、同じくフラットめに。 
 甲斐はそのまま左で、あのターン。今日はマイクを腰に差すことはしない。 
 2番に入ると、甲斐が自分で歌う部分を増やす。客は「くちぐーせのようにおまーえは なんどーも つぶやーくー」。 これでもいつもよりだいぶ多い。客に多く歌わせるのは、「客がノってるから大声で歌うはずだ」と、 甲斐が確信してるからやろう。みんなの熱気が伝わってると実感できるし、信頼されてる証のようで、 これもまたうれしい。 
 間奏の後も「だーきーしめてもー」は客に歌わせてくれる。最後の部分は甲斐が多く歌う。 客にも歌わせるけど、客との詞の分け方を変えている。今夜だけ、今だけのヴァージョンなのだ。 
 後奏で再びあのギターの音。その間に入る強一のドラムのすごいこと。あの短い中に太い重低音を連打。 さらにさらに盛りあがっていくのだ。

 シンバル。ドラムの爆発。渡辺等のベースがうねる。見れば、ベースを左右に強く振りながらのプレイだ。 「ギャー!ギャー!ギャー!」とギターが煽る。甲斐はマイクスタンドを横廻し。 
 「絶対・愛」 
 バックにある赤の大きなライトが全部ついてる。新たなライティングや。とにかくずっとドラムが 「ドドドドドド」と太い音を放ってる。強一すごい、すごいぞ。 
 蘭丸が右手を挙げる。野球でツーアウトを示す時のような、人差し指と小指を立てる蘭丸お得意のサインや。 俺らは「Hey!」と叫んで拳を上げる。その瞬間、蘭丸は手を下げてギターを鳴らしてる。このやり取り、いいなあ。 
 「見えてはいても」と中央奥で歌う甲斐が、前に出てる蘭丸で見えない。「ギャン!ギャン!」と ギターを入れる蘭丸。そこから視界に甲斐が現れ、前に出てくる。「そんな愛は 嫌だろう」の後、サビに 戻るまで今日はそんなに長くない。 
 最後の繰り返し。右端まで行ってた甲斐が、左へ動く。目の前を通る甲斐へ、 「絶対あーああい ウォウウォウウォーーオーー」と全力で歌う快感。蘭丸が弾く姿をオーディエンスに 見せるためか、前半は左に行くことが多かった甲斐。「その分、終盤にこっち来てくれたら」と思っててん。 やったで。 
 後奏はもう「ウォウウォウウォー」に戻ることなく、「絶!対!愛!」フィニッシュ。

 「風の中の火のように」 
 ドラムスも初めから激しい、このメンバーでの「風の中の火のように」だ。 
 1番の序盤、蘭丸は一音ずつ弾いてるようだ。その後どんどん音を入れてくる。 
 甲斐が「愛な のに」と歌う瞬間、照明が青になる。いつもは赤くなる場面。ライティングもだいぶ 変えてきてるな。そこから赤の世界になっていく。 
 今年も最後の「火のように」を3回と、以前より1回多く歌ってから、「火のーーーーっ」と伸ばした。

 考える前に身体が跳ねてる。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 甲斐は1番の途中から2番の詞で歌う。1番から「愛をくれーよー」も「愛をくれーー」も両方客に 歌わせる。また客に多く歌わせてくれてる。 
 2番。歌わなかった1番の詞を入れ換えて歌うかなとも思ってたけど、全部2番の詞のまま歌う。 いざその部分が来ると、俺もしぜんに2番の詞を大声で歌ってた。興奮してて、そういうの意識から消えててんな。 
 「バクハツ」の後のタメは短め。でも、その直後のドラムがものすごいねんなあ。強力なメンバーやで。

 興奮の客席に、甲斐が感謝の言葉を伝える。 
 「平日にも関わらず、こんなに来てくれて」 
 それから、甲斐は、こう言ったのだ。 
 「君たちに向けて。「マッスル」をやるからね」 
 「マッスル」はギターの曲という印象がある。大森さんと一郎が「サンスト」で話してたから。 しかし、1番の前半、ギターは少なめ。ベースのうねりを聴かせる感じだ。 
 甲斐は最初だけ、「マッスル」を滑らかに速めに歌う。次からは演奏に沿うように力強く「マッ スル」。 俺らにも何度か「マッスル」と歌わせてくれる。 
 いつの間にかギターがガンガン鳴っている。後奏になると特にすごい。やがて長く湧き上がる音。 ドラムスの台に上がった甲斐が強一の顔を見る。アイコンタクトから飛んだ甲斐が拳を握ってフィニッシュ。

 ついにバンドヴァージョンの「マッスル」が聴けた。今年の2月と3月に、アコースティックで 久々に「マッスル」が聴けた訳やけど、こんなに力強いのはいつ以来か。もしかして、 初めて見た84年暮れのツアー以来ちゃうんか。 
 感慨に浸る間もあまりない。去っていく甲斐たちに目一杯「甲斐ーーっ!」と叫び、拍手をおくる。

 手拍子から甲斐コール。メンバーが戻ってきて、拍手。拍手が止んでから演奏が始まるまで間ができて、 「手拍子した方がいいかもな」と思った頃。静けさの中から、あのイントロ! 
 「ティコーン!」と高い音が響いた直後、「ディデュデュデュン!デュン!ディデュデュデュン!」と 強一の太く分厚く低いドラムが轟く。俺は「ウォーー!」と叫んでしまう。去年のツアーを代表するこの曲、 もう聴けないかと思ってた。 
 「エキセントリック アベニュー」 
 コバルトブルーのVネックTシャツを着た甲斐が登場し、歌っていく。そうやんな。 去年のハイライトやからって、今年やったらあかんってわけじゃない。むしろ、このメンバーでやらない なんてもったいない。音も歌も圧倒的なのだ。 
 強一のドラムが、3番に入る前もすごい。太い。重い。とにかく強い。甲斐が「ウォーーーーーッ」と叫ぶ。 
 「ダダダダダッダダッダダッ」のビートに続けて、甲斐が「ヨオーーオッ」と声をあげる。 それを繰り返した後奏から、「ダダダダダッダダッダダッ ダダッ」で曲が消えた。

 「メンバーの紹介を」という甲斐の声。そこからバンドが奏で始める。おお、曲に乗せてのメンバー紹介や。 「ストレート・ライフ ツアー」のアルヴィンとトレヴァーによる、ラップのメンバー紹介を思い出す。 
 ドラムス佐藤強一、ギター佐藤英二、ベース渡辺等の順に、甲斐が紹介していく。名前と楽器名の 他にも曲に合わせてコメントするが、全部は聴き取れない。各メンバーがソロを披露し、最後は 「もう一人のギター」。蘭丸こと土屋公平だ。甲斐は名前を呼び上げる前に、「4年ぶりに会いたかったぜ」 と言った。4年もライヴに参加してなかったなんて、意外な感じ。 
 蘭丸のソロから全員参加になり、最後の音が湧き上がる。そこで甲斐が言った。「オーケー、「HERO」をやるよ」 
 曲はそのまま途切れずに、「HERO」の前奏へなだれ込んで行く。 
 もう盛りあがって、歌いまくり。甲斐が左耳にイヤモニをしてることに気づいて、右耳めがけて 思い切り歌う。甲斐がマイクを向けて、俺らに歌わせてくれるとこもある。 
 バックの赤いライトも白いライトも全部ついてたのって、この曲やったっけ?熱狂のうちに1回目の アンコールが終わっていった。

 手拍子と甲斐コールに応え、左から歩いて出て来たのは、今度は甲斐一人。大歓声。「甲斐ーーっ!」の叫び。 
 灰色に黒の豹柄がところどころ見えるTシャツ。豹柄でもこういうのはかっこいいな。 
 楽器は持たず、オケだけでうたう態勢。始まったイントロに、また「ウォーッ」と声をあげてしまった。 
 「スマイル」 
 この曲もまた久々や。やるとは想像してなかったなあ。 
 ストリングスによる演奏は、オリジナルより速めのテンポ。このツアーのために新たに録ったのだろう。 きれいな音のバラードで、甲斐の声を堪能する。 
 「胸を切り裂いてく」で甲斐は手を胸のあたりに。2番の後には「エーーイ」と声をあげる。客席から拍手が起こる。 
 終わりの音も、以前のライヴヴァージョンとは違ったように思えた。

 すでにメンバーが帰って来てる。 
 甲斐が最後の曲だと告げる。今回も壮大なバラードでしめくくるんやろうと思ってた。ところが、またしても意表を突かれた。 
 「涙の十番街」 
 うおお!最後にこの曲とは! 
 甲斐は銀のジャケットを着る。そして、今日初めて、サングラスを外す。 
 歌詞に合わせて、髪に櫛を入れるような仕草。蘭丸が刻んでる。今夜の序盤もそうやったな。こうしてライヴが終わっていくんや。 
 「こんなふうに 君を失う ために生まれてきちゃ いないさ」 
 甲斐の大きなテーマの一つでもあるこの詞が、胸の傷をえぐる。 
 「ハーートブレイカーー」と女声コーラスが力強く。これも新たに録った声のように聴こえた。 
 3番のサビの後、最後の繰り返し。「破裂しーそーなー 夜のなーかーでー 君をだーいていーる 十番街 こんなふうにー 君をうーしなうぅ ためにうーまれーてきーちゃ いないさ」 
 甲斐はそう歌った!オリジナル通りの詞で。これ、好きやねん!これまでライヴで聴いたどの「涙の十番街」でも、ライヴアルバムでも、最後は「バックミラー……」と最初の歌詞に戻る形やった。初めて聴けた。いちばん沁みる詞をもう一回聴けた。感激やあ。 
 後奏がゆっくりになっていく。甲斐は何度も「サンキュー!ありがとう!」と俺らに言ってくれた。

 甲斐とメンバーが、あるいはメンバー同士が、握手をする。抱き合う。手をつないでおじぎをする。その間、俺らは拍手をし、「甲斐ーーっ!」と叫んでいる。 
 メンバーが左へ去り、最後に残った甲斐もやがて行く。「甲斐ーーっ!」の声を浴びせた背中が、スタッフが広げた大きなバスタオルにつつまれた。

 

 蘭丸越しに甲斐が見えたり、めちゃめちゃいい席やったな。甲斐がドラムスやベースの台から飛んでフィニッシュの曲がいくつかあったけど、甲斐が強一を見てる時、蘭丸も甲斐を見てタイミング計ってるのが感じられた。 
 何より近いのがいい。甲斐がオフマイクで叫ぶ声も聴こえたし。「カモン!」が多かったな。 
 顔の赤みや、腕の血管まで見えた。バラード以外では、「もし歌詞忘れそうになっても、俺が教えるでー」くらいの気持ちで歌った。

 それにしても、ものすごいライヴやったな。このツアーは、ROCKUMENTを超えた。僕は通常のツアー以上にROCKUMENTが大好きで、再開を待ち望んできた。だけど、「愛のろくでなしツアー」は、それを超えたシリーズになってる。 ROCKUMENTは、甲斐が「マニアのイントロクイズになってる」とジョークにしたことがあったように、どの曲も大幅にアレンジを変えていた。 でも今は、大きくアレンジを変える曲もあれば、ストレートに原曲通りの曲もある。原曲通りと言ってももちろん、細かい部分には手が加えられ、「今の曲」になっているし、それを最強のメンバーが弾くねんから。 どんな曲でもやってくれそうやし、曲順も予測がつかない。 
 「愛のろくでなしツアー」はこれからも続くと確信できてる。早くも来年が楽しみや。いや、その前にもう一回このツアー、東京で見られるもんね。

 

 

2012年6月11日 Zepp Namuba

 

レッド スター 
ナイト スウィート 
浮気なスー 
~ムーンライト プリズナー 
橋の明かり 
カオス 
特効薬 
ダイナマイトが150屯 
渇いた街 
ビューティフル エネルギー 
~ミッドナイト プラスワン 
~ビューティフル エネルギー 
立川ドライヴ 
レイン 
モリー グラス 
きんぽうげ 
絶対・愛 
風の中の火のように 
漂泊者(アウトロー) 
マッスル

 

エキセントリック アベニュー 
HERO

 

スマイル 
涙の十番街

甲斐よしひろ 2011 愛のろくでなしツアー

2011年7月2日(土) Zepp Nagoya

 

 巨人の二軍が今週は関西に遠征に来てる。イースタン・リーグウエスタン・リーグのファーム交流戦だ。 神戸で3試合見て、今日は滋賀の皇子山球場。大田や、このシリーズ絶好調の隠善ら、若手の奮闘を試合終了まで 見届けてから、いよいよ甲斐のツアーに向かう。6月25日の横浜BLITZからスタートしたこのツアー、 僕は今日が初参戦や。 
 皇子山球場はJRの最寄り駅が大津京。滋賀といっても京都から2駅なので、名古屋へ向かうには一旦 京都へ戻って新幹線に乗るのが最も速い。駅弁を食べ終えたら、すぐ名古屋に着いた。十数分しか変われへん はずやけど、新大阪から向かうよりだいぶ早く感じたな。

 名古屋からは、初めて乗る「あおなみ線」。Zepp Nagoyaへのアクセスを調べたとき、これが JRなのか地下鉄なのか名鉄なのかわからず戸惑ったが、そのどれでもないらしい。単独の路線やったんか。 表示が多くてJRからの移動もすんなり。往復切符を買って、1駅先のささしまライヴ駅へ。 
 出口から長く曲がる階段を下りる。何もない道路に下り立ったが、たぶん左だろうと見当をつけて 歩き出す。こっちの方が遠くに大きな建物が見えるし、他の甲斐ファンらしき人々もこちらへ向かっている。 万一違ったとしても、引き返して間に合う余裕もある。 
 Zeppらしき建物が見えずちょっとだけ不安だったが、すぐに着いた。熱中症対策のスポーツ ドリンクを求めてそばのコンビニに入ったけど、ライヴ前の客で列ができていたので、自動販売機で済ませる。 臨戦態勢は整った。Zeppの中へ入って行く。

 まずは自分の席をチェック。思ったより真ん中や。いいぞ。 
 グッズは明日の地元大阪で買いたい。でも、CDだけは別や。甲斐のニューアルバムがツアー会場で 先行発売されているのだ。これは1日でも早く手に入れたい。しかし、グッズ売り場の列は長く、開演前の 購入は断念した。

 自分の席に戻る。場内のBGMはフラメンコやジャズ。洋楽のみが選ばれている。 
 ステージの上には、マイクスタンドが3本並ぶ。甲斐とツインギターのものだろう。後方には二つの台。 向かって左にドラムセット。右のやや低い台がベースのものらしい。今回はキーボードレス。甲斐の歌声をむきだし でぶつけて来るという。パーカッションもサックスもない。キーワードはロックンロール。 
 ステージの上方から、乳白色のライトが照らしている。横に8つ並んでる。気になるのは、舞台の床 に据えられて下から上へ向いてるライト。左右の端に数本ずつ。垂直ではなく、少し外向きに立っているのだ。

 いきなり大音量の声。「パワー トゥ ザ ピープル」だ。立ち上がり、手を打ちながら考える。 今日の大ラスは「破れたハート・・・」やな。ライヴに通い始めた84年 ・85年は、終演後の音楽がこれやった。そして、その前には「破れたハート・・・」が歌われるのが定番 やったから。 
 左手からメンバーが現れ、それぞれの位置に就く。左に英二、右に一郎。左奥のドラムに佐藤強一、 右奥にベースの渡辺等。僕は、観客は、「甲斐ーーっ!」と叫んで、甲斐の登場を待ち構える。 
 曲が始まる前に、甲斐は登場した。左手から歩いてくる。銀のロングジャケットは、襟の部分が 光を反射する。中は黒。えんじっぽい赤と黒が混ざったズボン。サングラスはゴーグル風で、藤色がかって いる。増し続ける「甲斐ーーっ!」の叫びと歓声に応える甲斐。そして、熱狂は始まった。

 「ディデュン!ディデュデュデュン!デュン!ディデュデュデュン!  ディデュン!ディデュデュデュン!デュン!ディデュデュデュン!」 
 真っ赤な照明とともに、驚くほど太く強いドラムスが響く。ほんまにめちゃめちゃ太い。それに、 何というか、音が粒立ってる。ぷるっぷる。そして、この音は「エキセントリック アベニュー」では ないか!まさかの1曲目や!「おおーーーっ!」って叫ばずにいられない。 
 ドラムスにかぶさって他の楽器が弾け、湧き上がる。その瞬間、甲斐は正面を向き、両の掌と指を 上へ向ける。客席から歓声と手を打つ音が爆ぜる。 
 歌い出し前のあのリズムがやって来て、俺らは手拍子を始める。上からの照明はピンク。背後からは 紫紺。妖しい世界。たしかに「愛のろくでなし」の歌か。 
 「ストレート ライフ」ツアーではピアノの上に腰掛けて歌ったりしてたけど、今日は強く動きながら 歌っていく。マイクスタンドの横に出て、スタンドを傾けて歌ったり。靴が見えるほど足を上げる。 ビートに乗って。 
 あれは、この前に「エキセントリック アベニュー」が歌われた「ROCKUMENT III」 だっただろうか。客席には、「エキセントリック」の「トリ」あたりで開いた片手を上げ、「アベニュー」 の寸前で肘を落とすアクションをする者が多かった。しかし、今日はほとんどいない。でも、俺は腕を低め にしながらやってしまう。気持ちいいのだ、これ。 
 間奏で甲斐は「ヨオオーーッ」と吠える。むき出しの声を聴かせるというツアーの旗標を最初から 叩き込んで来てるのだ。ベースも激しい。ドラムスはずっと太い音を叩き出してる。この曲をこれほどまで 表現できるとは。一郎が早くも前へ出る。 
 異色の1曲目やった。甲斐がちょっとした時に名前を挙げる、きっと自分でもお気に入りのソロ曲 「エキセントリック アベニュー」。しかし、まさか1曲目とは。このツアー、すごいことになってるぞ!

 きれいな前奏に、またも意表を突かれた。2曲目もアップテンポの曲ではない。 
 「レイン」 
 歌い出すまでに、甲斐は右へ左へ動いて観客にアピールする。静かに聴くべきかという俺らの思いを 見透かしたように、身振りで「歌っていいぜ」。最初からみんなでうたう。 
 サビでは客席がメンバーとともにコーラス。「できはしなーいー」。いつもは語尾を縮めてすぐに 甲斐といっしょに続きをうたうねんけど、今回は全員でコーラスするのが心地いい。「レイン」の新たな 魅力に気づいた。 
 今度は英二が前に出る。甲斐は後奏でファルセット。生のヴォーカルをここでも体感させる。 
 この2曲でメンバー個々の、そしてこのバンドの力量を知らしめた。新しいバンドの自信に満ちた宣言 とも言うべきオープニングやった。ライヴでは初めて聴く佐藤強一と渡辺等の音は、とっくに俺の心を 掴んでた。

 「甲斐ーーっ!」の声に応えてから、最初の短いMC。 
 「3年振りのソロツアー。目一杯やります。身も心も捧げられるナンバーばかり。目一杯やるぜ!」

 去年、プロになって初めて照和でライヴをやったこと。その映画 「照和 My Little Town」 のDVDが出たこと。その二つに触れてから、照和でも歌った曲を次にやると告げる。 
 このタイミングでやると思ってたで。最初のMCの後に。抽選にことごとく外れて行けなかった照和 ライヴでも、1曲目やったというし。ここがステージの第二のスタートでもあるもんね。 
 後ろを向いた甲斐の右手に、黒いものが見える。おお、ハーモニカ吹くんや! 
 「黒い夏」 
 曲の幕開けからわくわくしてくる。めっちゃロック!甲斐に黄色いライトが当たってる。ハーモニカが いっそう「黒い夏」を燃え立たせる。 
 映画でもそうやったように、甲斐はオリジナルとは譜割を一部変えて歌う。 「君がそっとうーつむーいーて」というように。 
 ほんまにめっちゃよくて、笑顔になってしまう。間奏もすごい。そこへ入るハーモニカがまた最高や。 甲斐も自ら参加するコーラスが挟まる。ここからさらに楽器が増えたように高まっていく。再び甲斐の ハーモニカ。この昂揚感。燃える燃える。しかし、甲斐はハーモニカを持ったままマイクをスタンドに 戻そうとして、落としてしまう。マイクは甲斐の左に。すぐに拾って3番へ。 
 僕が「黒い夏」を生で聴けたのは、これまで「ROCKUMENT II」だけやったけど、 あのときはゲストと半分ずつ歌ってんなあ。ずっと、甲斐のヴォーカルだけで聴きたかった。念願が叶ったぞ。

 イントロに興奮しすぎて、一瞬どの曲かわからんかった。 
 「港からやってきた女」 
 ここで来るか。まだ4曲目やで。 
 3番に入るところから静かになるヴァージョン。「まだまあーってるのさあ」から再び甲斐は強く歌い、 演奏も激しくなって、会場がなおいっそう沸き立つ。大騒ぎのサビを経て、最後はあのお楽しみ。甲斐たち が「バイ!バイ!バイーッ!」と叫ぶ。語尾は上げず、突き放し気味の、あくまで強く乾いた叫びだ。 俺らは右手を上げて応える。「フーーッ!」。このやり取りが3回で終わると見えたが、もう1回やって くれる。めっちゃうれしい。これ、甲斐ファンみんな大好きやろ。

 甲斐がアコースティックギターをかける。NTTのCMソングだった曲をやると言う。 「最近までこの曲のよさをわかってませんでした」というジョークを交え。ほんまは自分でも気に入ってる くせに。発表当時から、「書いてよかった」って言うてたし。 Series of Dreams Tour Vol.3でも 取り上げかけ、2年後のアコースティックツアーでは、松藤と クラッシャー木村とともに1曲目にうたってくれた。名曲やで。 
 「スウィート スムース ステイトメント」 
 「君がむ ねーに灯をとも すまで」と、甲斐はリズムに合わせて少し切るようにして歌う。 この詞は一行ずつ息継ぎなしだと歌いにくいやろうから、そのためなんかな。 
 静かめの曲やけど、今日の甲斐は強く歌っていく。低音を効かせるように。 
 「君の代わりなんかー いやしなーいー」というニューヴァージョンの歌詞も使った。 
 最後の「君のものー」の繰り返しは少なく、後奏へ。そのまま終わると思いきや、再び「君のものー」 のリフレインが戻ってきた。 
 このツアーは第一期ソロが多く聴けるのもうれしいな。

 ギターのあのフレーズ!「スウィート スムース・・・」に聴き入ってた観客に、一瞬でまた火がつく。 
 「ジャンキーズ ロックンロール」 
 甲斐はAメロを少し変えて歌う。「とってもいかーしーてる」とか。ここでも乾いた感じ。 ブルースっぽい聴こえ方もする。かっこいいぞ。詞もときどき花園ヴァージョンになるし。 
 2番のサビで、甲斐が一郎のそばへスタンドを持って行く。一郎は来ないかと見えたが、サビ後半で 自分のマイクスタンドから甲斐のスタンドへ移動。一緒に「ジャーンキーズロックン ジャーンキーズロックンロール」。 
 何かノってるうちに、気がつけば2番まで終わってた。いつの間にか間奏や。もうノドカラカラ。 ベースが比喩ではなく胸を叩いてくるし。ものすごい迫力。 
 最後の繰り返し。終盤は「ジャン ジャン ジャンキーズロックンロール」を2回続けた。 
 ああ、それにしてもこの緩急よ。「港・・・」から「スウィート スムース・・・」行って、 また「ジャンキーズ・・・」って。俺らはバンドに引きずりまわされてるようなもんやな。 いや、どんどん引きずってくれ。

 ギターとともに高まるビートは、またもや意外な曲。 
 「裏切りの季節」 
 「甲斐よしひろ 早川義夫 パワステ夏祭り」で、 オリジナルのロングヴァージョンを早川義夫と分け合って歌うのは見たが、甲斐が1人で歌うのを見るのは 初めてや。自分のライヴで歌うのって、ほんまに久々なんちゃうかな。 
 今日はライヴアルバム「サーカス&サーカス」のサイズ。このアレンジにこだわりがあるのだろう。 
 歌い終わると、「23…のとき以来? 甲斐バンドの最初のライヴアルバムに入ってる。ジャックスの カヴァー。紙ジャケで出てるから買うように」と言っといて、「「ハイ」って言うな。買ってないってこと だな」とオトす。

 「このツアーのテーマは、”ロックンロール”。と言いつつ、見せ場は今のようなロッカ・バラード であったりもする。」 
 甲斐は「裏切りの季節」をバラードとして認識してるんや。激しいイメージもあるけど。甲斐の バラードには、絶唱する激情のバラードも多いもんね。まさに、ロッカ・バラード。初のバラード・ベスト のアルバムタイトルにもなってるこの言葉、あらためていいなあと思う。

 「自分が自分にしたことは覚えてるけど、ひとが自分のためにしてくれたことは覚えてない」 
 そううそぶいてから、「歌手で俳優の、竹本孝之くんに書いたナンバーを」。 
 「Weekend Lullaby」 
 これはもう、正真正銘、ライヴでやること自体、初めてのはず。 
 この曲も甲斐は、低音を効かせてうたう。「コンプリート リピート&フェイド」や 「HIGHWAY25」、あるいはサンストのカラオケ大会で聴いたのより、歌がたくましく響く。 「都会」はやはり、「まち」とうたった。

 「Weekend Lullaby」は、「行列のできる……」TV番組のスタッフからリクエストが あったそうだ。みんな甲斐の性格を知ってるから、きつく頼むのではなく、「……あれは、やりま…せん…よねー……」 とか言うらしい。 
 チェッカーズを書いてた売野雅勇に詞を書いてもらったと説明。リクエストを受けて、 「聴いてみたら、いい曲で」。そらそうやで。今までライヴで取り上げなかったのがもったいない名曲や。 聴けてうれしい。

 甲斐はイスに座っている。誰かに言われたのか、「松藤がいなくてもMCできる」と改めて宣言するのがおもしろい。 「松藤の呪縛」とも言ってたけど、これは松藤甲斐の曲名「ju-ba-ku」に掛けていたのか。 
 たしかに、松藤のいないツアーは久々な気がする。ノリオも前野選手もJAH-RAHも。 前野選手は、偶然同じ新幹線に乗っていたらしい。それで、一郎は、このZepp Nagoyaに来るように 誘ったとか。

 このツアーのプロモーションのために出たTVの話。バラエティ番組から。 
 「アカン警察」の収録後には、浜ちゃんが抱きついてきて「100点」と言われたという。 あの放送では、ひいき目なしに甲斐がいちばん面白かったもんなあ。「こんなんダウンタウンの番組で見たいか?」 と思える、泣かせるコーナーに、甲斐一人だけがダメ出し。一斉にツッコまれながらも、容認に回った松本に対し、 「君は子どもが生まれてから、どうして変わってしまったんだ」と訴えた。予定調和に見える部分が多く、 「これだけのメンバーがおってなんでやねん」と歯がゆかった空気が変わったもんね。 
 「深イイ話」についても一言。 
 「愛のろくでなしツアー」にふさわしい人物として、雨上がり決死隊の宮迫をツアーパンフでの 対談相手に選んだこと。もちろん、最高のほめ言葉です。 
 最近、ピース綾部フットボールアワー後藤らと飲んだりしてるらしい。

 そうやっていろいろな話をしてから、話題を震災へと踏み出す。 
 あの状況を見て、「歌は二の次だ」と感じたという。「まずは、被災された人たちが普通の生活が できるように」 
 そう考えて、米100キロとか、Tシャツを大量にとか、送ったそうだ。 
 そうして、二ヶ月ほど経ったとき、ラジオから「安奈」が流れてきたという。きっと、ミュージシャン として印象的なできごとやったんやろうな。歌の力とか、音楽にできることについて想ったんやろう。 でも、今夜の甲斐はそういうことは声高に主張せず、ただこう言った。「いろんな曲書いとくもんだなあ」

 「安奈」 
 僕はうたわず、聴くことに徹した。観客の多くもそうやったし、甲斐もいっしょにうたうように 伝えてはこなかった。 
 渡辺等の奏でる楽器が特徴があって。あれは、エレキのウッドベースとでもいうのだろうか。 どこまでが楽器なのか、銀の棒にウッドベースが刺さったみたいになってて。でも、途中でボディが 切れてて、下の方は銀の棒だけという。そのベースの音も生かした、温かな演奏やった。

 渡辺等を残してメンバーは去り、甲斐はマイクスタンドの前に立つ。それだけでもう笑ってる人が 客席にいる。すでにこのツアーに参戦して状況を知っているのか。僕にはその笑いの意味がわからない。 甲斐が後ろ手に何か変なものを持っているのか?

 しかし、甲斐が話し始めたのは、真剣な話だった。 
 このツアー会場で先行発売しているニューアルバム「ホーム カミング」について。 「MINORITY TRACKS SERIES Vol.1」と銘打たれたこのアルバムは、以前 リリース寸前まで行きながら発表されなかった音源がもとになっている。おそらく、「ホーム・カミング」 がサブタイトルになっていた、「ROCKUMENT IV」の頃に製作されたものだろう。当時のMC でも、そのようなことをしゃべっていた。 
 震災後、甲斐は「ホーム カミング」というタイトルがいいなあと感じ、新曲を3曲加えて出すことに 決めたそうだ。新曲には当然、震災を契機に書いた曲もある。 
 「自粛してる場合じゃないんで」 
 「大阪に行ったら、(街の灯かりが)明るくて。東京は、蛍光灯2本に1本が消されてて、 本当に暗いんだよ」 
 やがて、話はあるTV番組のことになる。BSで放送中のニュース番組で、「よい国のニュース」 というらしい。 
 甲斐は以前から「よい国のニュース」を見ていたというが、とりわけ引き付けられたのが、震災後の ある回で。その日は、こんな特集だった。 
 震災から何ヶ月か経ったら、被災地の子どもたちが、「地震あそび」や「津波あそび」 というものを始めるはずです。神戸の震災でデータが出ています。そして、そのとき、大人は 子どもたちを叱ってはいけません。震災のストレスはさまざまな形で子どもたちに現れてきます。 「地震あそび」や「津波あそび」はガス抜きなんです。大人は叱らずに見守ってやり、そのあそびが 終わったら、抱きしめてあげたり、手を握ってあげたりしてください。 
 その特集を何十分も放送した番組を、甲斐はすごいと思った。それから、曲を書いた。曲名はズバリ、 「よい国のニュース」だ。

 その新曲をうたってくれるという。ただし、「歌詞をまだ覚えていない」。そう言って、甲斐は ファイルを持った手を前に出した。さっき笑ってる人がいたのは、このせいか。驚く場内に甲斐は、 「間違えずに歌いたいんだ。これは、俺のステイトメントだ」。納得させたところで、新曲を始める。 
 楽器は、一人残った渡辺等のウクレレのみだ。 
 「よい国のニュース」 
 曲はウクレレの調べとともに、口笛で幕を開ける。甲斐が吹いているのかと思ったが、渡辺等も 口笛を吹く口をしている。でも、きっと、アルバムの音源も使ってるんやろうな。 
 「たおやか」という語が特徴的やと感じているうちにも、希望の詞がうたわれていく。 希望をうたった語尾が「ますよう」と聴こえる。何度も。「ますよ」とうたっているのか、「ますように」 と祈りを込めた「ますよう」なのか、甲斐がどちらの詞を書いたのかが知りたくなる。いずれにしても、 震災後の、今の日本にふさわしい歌や。勇気がわいてくる。希望が見えてくる。素晴らしい歌をつくって くれた。さすが甲斐!

 出演したTVのこと。今度は音楽番組。NHKの。 
 「普通は、俺たちが今やりたい曲、マニアックな曲を言って、局側はヒット曲をやってほしいと言う。 それが、そのときは逆で。スタッフが「ダニーボーイ・・・」を、とかって言ってきたんだよね」 
 聞いてみたら、その人は「ダニーボーイ・・・」で止まってる。「HERO」以降は認めないとか 言い放ったようだ。 
 そこで、自分たちがこの新メンバーでできることをと考えて、初期のある曲をやった。

 そんなMCに続いて歌われたのは、「かりそめのスウィング」。 
 渡辺等のウッドベース。シンバルが印象的でドラムスを見たら、強一は刷毛のようなのでたたいていた。 
 間奏で甲斐は身体を完全に横向きにする。左を向いた状態でステップを踏む。客たちに「軽くダンス してね」と呼びかけたナンバーやもんね。

 「ヒット曲は時を越える。季節関係なくなる」 
 一瞬、さっきの「安奈」のことを言ってるのかと思ったが、甲斐はやはり「かりそめのスウィング」 の話をしていた。 
 「ヒットと言われなかったけど、30万枚売れたらヒット曲と言っていいと思うんだけど」

 甲斐がアコースティックギターを持ってる。曲が始まると、俺はまた「おおーーっ!」って叫んでしまった。 
 「ダニーボーイに耳をふさいで」 
 MCで触れただけで、歌わないのかと思ったら。やった! 
 甲斐はサビの語尾を張り上げずに歌う。「明かりをけーしてー」も「ドアをとざーしてー」も 「鍵をおろーしたー」も。最後の「あーの日ーー」だけは強く上げる。ライヴでこの歌い方は初めて聴いた かもしれない。 
 2番が終わると、あの高い単音の繰り返し。なんと、いつの間にか英二の右側に小さなキーボードが、 縦に置かれていた。英二がギターを持ったまま、右手だけはその音を叩いているのだ。 
 甲斐が「いーくつーかのーー」と歌うと、「パーパパーパパー」とコーラスが入る。オリジナル ヴァージョンの「ダニーボーイ・・・」や。ところが、そこからさらに曲調が変化していくではないか。 「いつものよーうにー いつものよーうにー ドアをとざーしてーー」。「悪いうわさ」からのメドレーで 歌われたときのアレンジになったのだ。さらにもう一度、「いつものよーうにー いつものよーうにー いつものよーうにー  ドアをとざーしてーー」。 
 2つの形を合体させ、繰り返しを増やした新ヴァージョン。うれしいとこだらけやで。

 甲斐が一人でアコースティックギターを奏ではじめる。「昨日鳴る鐘の音」かと思った。初期の歌 3連発かと。しかし、甲斐がうたい出したのは、早くもあの曲やった。 
 「翼あるもの」 
 弾き語りの「翼・・・」を聴くと、「STORY OF US」のビデオがよみがえる。あのシーン、 好きやねんなあ。映像も含めて。マックの最高のパーカッションなしでどうするのかと思ってたら、 こう来たか。 
 静かなギターとうたい方に聴き入って、俺は拳を上げなかった。上げる人もいるが、やはりいつもより だいぶ少ない。甲斐は1番で「翼濡らし」とうたった。 
 最初のサビが終わったところで、ドラムスが高らかに参戦を告げる。二人のギターとベースも続く。 甲斐はギターをとる、マイクをスタンドから外す、動いて強く歌い出す。いつもの「翼あるもの」へ。 照明も派手な白・赤・青・黄。俺らはもちろん、みんな拳を上げる。 「おーれのー うーみーいにつーばさひろーげー」。そこで甲斐が自分の正面に来た。めちゃめちゃ燃える っちゅうねん。 
 後奏。両手を上げるポーズを長く、じっと。甲斐の指の組み方もしっかり見える。影が甲斐の腕から 手へ、そして指先まではい上がってから、甲斐は身体を折った。 
 いやあ、バラードからいきなり「翼・・・」に来るとは。いつもなら盛りあがる曲で橋渡ししてから やのに。 
 さっきのMCで言ってたテレビ人の言葉を思い出す。「ダニーボーイ・・・」から先へ進んだ、 甲斐バンド中期最初のアルバム「誘惑」の曲やで。後にもいい曲あるやろ。どうや。

 しぜんに「漂泊者(アウトロー)」を待つ態勢になる。が、鳴らされたのは他の、しかしめっちゃ 盛りあがる曲の前奏やった。 
 「三つ数えろ」 
 「ウフッフー」のコーラスが最初からある。「誘惑」からさらに次のアルバム「MY GENERATION」 へ進んだな。 
 「俺の車をけとばしーたー」で、甲斐はスタンドを殴り倒した。歌詞に合わせたアクションなのか、 それとも、実際に今イライラしてるのか。そういえば、持ち上げたマイクスタンドをステージに叩きつけて 置いた場面が何度かあった。右ソデへ強く指示を飛ばしたことも。どこかに甲斐をいら立たせるものが あったのかもしれない。歌や演奏やMCでは、そんなところは少しも感じられなかったが。 
 今日はタイミングを変えて、「満足なんかー できはしないさー」と歌っていく。これは1番から 最後までずっとやった。 
 後奏には「ウフッフー」がなかった。甲斐自身が「ウフッフー」と歌うと、渡辺等も声を合わせた。

 ここであのイントロ!俺は跳ねる。 
 「漂泊者(アウトロー)」。 
 また一つアルバムを進んだぞ。「地下室のメロディー」へ。 
 熱狂のうちに「漂泊者(アウトロー)」が進む。いつものように左から右へ光が走っていたような 気もするが、そんな気がしただけかもしれない。間奏で英二と一郎が前へ。甲斐は一旦、後ろの台に置いた 飲み物を口にして、やがて前へと躍り出る。「バクハツ」で今夜の甲斐は、少ししゃがみかけるだけ。 そこからさらにドラムスが激しさを増すニューヴァージョンだったからか。どんどん熱を高めながら終局 まで突っ走る。「誰か俺にー 愛をくれーよー」客席にマイクを向ける。俺らはそこへ向かって全力で歌う。 最後の「愛をくれ」は甲斐が歌う。いつものこだわりや。

 たたみ掛ける前奏に、「おおーーっ!」と狂喜する。リズムはややゆっくり目か。ここに持ってきて くれるとは!「漂泊者(アウトロー)」の後に。甲斐がマイクスタンドを縦に蹴上げる。 
 「絶対・愛」 
 一気に飛んでFIVEの曲や。そういえば、今日FIVEは初めてか。ソロの曲とか多かったから、 全然そんな気せんかったけど。 
 甲斐は、指を突き出した拳を思い切り投げるように「HEY!」。一郎たちも同じように。 俺も一緒にやってみる。いつもは握り拳やけど、同じ指の形にして。いつもは「ヘイ!」って短く叫んで、 すぐに続きを歌うけど、「ヘーーイッ!」て完全にコーラスする。やってみたら甲斐との掛け合いが めっちゃ気持ちいい。 
 「そんな愛は嫌だろう」の後は新たなアレンジ。スタンド横廻しは変わらず健在や。 
 サビの繰り返しから曲が絶える瞬間は「絶!対!愛!」。

 甲斐が「最後の曲になります」と告げ、「もっと聴きたいよ」という想いの歓声が湧く。甲斐は アコースティックギターを手にしている。そして、静かに曲がたちあがる。 
 「嵐の季節」 
 前奏で、甲斐はギターを背中にまわし、ハーモニカを吹く。つらいときを励ますための歌。 今年は特に。その思いからのこの曲であり、このアレンジなんやろう。静かな曲でも今日は低音を目立たせ、 強く歌ってきた甲斐が、ここでは独特のハスキーな声を聴かせる。高音が沁みる。僕はゆっくりと拳を上げる。 思いを込めて。 
 しぜんに起こった拍手につつまれてから、2番へ。甲斐は後ろ手で、背中のギターのネックを握る。 歌詞の合い間にさっとギターを前へ。それを弾き始めたところがサビの頭だ。 
 「そうさコートの襟を立て じっと風をやり過ごせ みんな拳を握り締め じっと雨をやり過ごせ」 
 繰り返しが客席にゆだねられる前、甲斐はギターを手渡す。メガネのローディに。ギターを指して 何か告げた。それからステージを左へ右へ。叫び、歌い、バンドに指示し、観客の声を引き出していく。 
 再びバンドとともに歌い、甲斐が最後の詞を歌う。今度は爆発的な拍手になる。しかし、見せ場は ここで終わらない。静かに戻った後奏に、甲斐のハーモニカがもう一度重なるのだ。万感の思いが聴こえて くる。やがて、強一のシンバルが震える。間をとってから、ものすごく太い音が「ダーーーーーン!」と 轟いた。

 メンバーが去り、甲斐も左ソデへ行ってしまうと、アンコールを求める手拍子。「甲斐ーーっ!」の叫び。 熱心な甲斐コール。 
 スタッフがマイクスタンドをさわっている。「破れたハート・・・」をここでやるのか?英二の左手に キーボードが再び出てきた。こうして見ると、特別小さいわけでもないみたい。この形で何をやる? それよりも、手を打ち、「甲斐ーーっ!」と叫ぶ。甲斐に伝えたいのだ。燃えてるぞ、早く戻ってきて 歌ってほしいぞと。

 現れたメンバーが跳ねるビートを叩き出す。俺も跳ねる!跳ねる!白いジャケットに着がえた甲斐が、 真ん中の後ろから登場や。マイクスタンドを蹴り上げる。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 同じライヴで「絶対・愛」と「ダイナマイト・・・」両方やってくれるんがまたうれしい。 
 もう興奮して跳んで歌って手打って拳上げて。甲斐ばかり見ていて、結局キーボードが使われたかどうか わからんかった。

 メンバー紹介。英二。強一。等。一郎。今日一回でこのバンドの虜や。ほんまに太い音やねんもん。

 「風の中の火のように」 
 その太い音で駆けて行く。みんな手拍子で着いていく。 
 甲斐が「愛な のに」と歌った瞬間、バックでライトが真っ赤に燃える。縦4つ横2つ並んだ、大きな 8つの赤だ。甲斐の姿はしかし、青で貫かれている。「風の中の火のように 風の中の火のように」。 繰り返していくにつれ、バック下方から赤が増してくる。こちらは馴染みのある2×3個の赤玉で、 小さめながら並んでいくつも。新しいライティングもまたよし。

 2度目の甲斐コールに応えた甲斐は、白いTシャツになっていた。黒い写真のプリントで、左に 外国人女性の裸の背中が見える。写真の上に銀の文字。最初の単語は読み取れないが、「NUDE」という 文字が続いてるのはわかる。

 前奏に、そうかなとは思ったものの、確信が持てず、最初の拳を上げられなかった。 
 「HERO」 
 激しくて、かっこいい。この新たなメンバーでの「HERO」や。 
 シンプルな肌色がかったライトが軸になってる。そこへ「翼・・・」の白、赤、青、黄。よく見ると 他にいろんな色も使われている。でも、よく見る暇なんかないもんね。甲斐たちとともに、緩むことのない このスピードを感じて行く。

 震災について、甲斐が再び口を開く。 
 ようやく、いい方へ向かいつつある。そう感じられるようになってきた、と。そりゃあ、まだまだ だけど。ほんとに少しずつかもしれないけど。 
 そういうことを言った後、語気を強めて付け加える。「政府は、ぜんっぜん、だめですよ」 
 元の口調に戻って、「その分、周りの、自衛隊なり、地元なりががんばっている」とたたえた。 
 会社や政治家の名前を少し挙げ、ちょっとほめたり、鋭く刺したり。

 「(当初は)アンコールは1回で、さっと3曲やって終わりにしようかという話も出たんだけど、 自粛自粛じゃしょうがねえだろ」 
 「「おひさま」見て泣いてる場合じゃねえなとも思いつつ泣いてしまう。日本人がいちばんつましい 暮らしをしてた時代の話だからね」

 それから、グッズ売り場近くに置かれた、募金箱について語る。 
 「ポケットの小銭でいいんで。ちゃんと、ねえ、持っていく。僕らは(このツアーで)仙台にも行くんで。 僕は、釜石まで足を延ばそうと思ってます」 
 長いラグビーファンでもある甲斐は、釜石につながりがあるのかもしれへんな。

 5月の末から、 JOYSOUNDの着うたフルのサイトで、甲斐はチャリティ配信を行っている。収益は全て 被災地のために寄付される。その歌をうたうという。「役者で歌手の、吉岡秀隆くんに書いた曲」とも紹介された。 
 「光あるうちに行け」 
 甲斐はこのバラードも、低音を中心に強く歌ってゆく。 
 この歌で伝えたいことが凝縮されている詞のひとつが、「君を失うために 生まれてきたんじゃない」 やと思う。演奏も高まるクライマックスで歌われる。甲斐はその後半を、フェイクして高く歌った。 「生まれてきたんじゃなーい」。この一行に込めた思いをあふれさせるように、「き」の音から高く上げたのだ。 甲斐のテーマとも言える詞でもあるもんな。甲斐は、「君を守るために生まれてきた」とは歌わない。 「君を失うために生まれてきたんじゃない」と、ほとばしる切ない痛みを叫ぶのだ。

 全ての歌を終えたバンドが前へ。甲斐たちは並んで、挙げた手を握り、みんなでお辞儀をする。2回。 次に手が挙がったところで動きをとめる。甲斐がメンバー一人一人と握手し、ハグをする。いい笑顔や。 その間ずっと観客からの拍手につつまれている。「甲斐ーーっ!」の声が飛び交う。メンバーがそれぞれ ちょっと控えめに歓声に応え、最後に残った甲斐が客席すべてに応える。 
 かつて終演後に流された「パワー トゥ ザ ピープル」が始まりを告げたこのライヴ、 今聴こえるのは、このところ続けられている「アヴェ・マリア」だ。

 ロビーに出て、ドリンクのコインを交換する。ペットボトルにZeppのストラップが付いていた。 開演前に客席で何人かが持ってるのを見かけ、こういうのがハヤってんのかと思った。 
 並んでニューアルバム「ホーム カミング」を買う。売り場の脇に人だかりができてるのは、 アルバムの曲順が掲示されてたからやった。なにしろ緊急リリースのため、CDにはジャケットも歌詞カードも 付いてないのだ。僕も携帯で写真に収める。これがないと新曲のタイトルさえわかれへんし。 
 募金箱には、ささやかながらお札を入れた。自分の好きなものを見に来て、そこで募金に協力するのが、 自分らしい義援金の送り方やと思う。

 英二と一郎がギターバトルしてたのがどの曲か、思い出せない。前半やったと思うねんけど。 
 一郎の髪がたなびいてることが多かった。あのあたり、風が送られてたのだろうか。 
 そんなひとつひとつの場面を思い起こし、ライヴの流れを振り返る。そうして感じたのは、 「このツアーは、今までのどのツアーにも似ていない」ということやった。そんな気がする。 1曲目といい、激しい曲とバラードを行ったりきたりする展開といい、取り上げた曲目といい、 後半盛りあがりへの入り方といい、そこでの曲順といい。 
 それと、予告された通り、甲斐の生の声も堪能した。

 次は続けて明日見られる。しかも、地元大阪でや。

 

 

2011年7月2日 Zepp Nagoya

 

エキセントリック アベニュー 
レイン 
黒い夏 
港からやってきた女 
スウィート スムース ステイトメント 
ジャンキーズ ロックンロール 
裏切りの季節 
Weekend Lullaby 
安奈 
よい国のニュース 
かりそめのスウィング 
ダニーボーイに耳をふさいで 
翼あるもの 
三つ数えろ 
漂泊者(アウトロー) 
絶対・愛 
嵐の季節

 

ダイナマイトが150屯 
風の中の火のように

 

HERO 
光あるうちに行け