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Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ Series of Dreams Tour Vol.2(1979-1986)

2003年5月11日(日) NHK大阪ホール

 朝から雨。昼間は甲斐仲間たちと野球観戦。大阪ドーム近鉄オリックス。 1イニング3ホーマーなどで近鉄が圧勝、オリックスは日曜日の連敗をまた伸ばして しまった。オーティズは相変わらずすごすぎる。

 そのままみんなで、谷四にできたNHK大阪ホールへ。 
 地下鉄の最寄り出口から少し坂を上る。中学校、家庭裁判所と通り過ぎた先に、 タマゴみたいな3つの楕円形にN・H・Kと書いたあのロゴのある建物を発見。 これがNHK大阪ホールにちがいない。 
 1階はだだっ広いホール。その端にコーヒーの店。真ん中に大きなエスカレータ ーがある。客席は4階や。これで上がっていくらしい。 
 まだ時間があるので、近くをうろつく。といっても雨やから、傘差さずに行ける とこだけ。隣接する大阪歴史博物館は、床に発掘現場のショーウィンドウみたいなのが あった。外には復元された古代の建物が見える。あの横木は校倉造なんかな。 
 食事はサンドイッチにした。1曲目を意識したわけじゃないけど。

 ホールに戻ると、エスカレーター周辺にめっちゃ長い列がくねくね続いていた。 この大きなエスカレーターは上り出すと近くに何もなく、あまりいい気持ちはしない。 新しい建物っちゅうのは、なんでこうも高所恐怖症のことを考えない造りにしてある のか。 
 ロビーではアルコールも飲めるようになっていたが、僕はライヴ前に水分は 摂らない。

 新しくてきれいな客席。自分の席まで来て、驚いた。F2列というのは2列目やと 思ってたのに、前に列はなく、実質1列目だったのだ。F1列は真ん中だけに存在して るらしい。僕の席は左の方やから、自分と甲斐の間に何もないのだ。やったぞ! めちゃめちゃうれしい!

 手拍子して甲斐を呼ぶが、BGMの松藤甲斐が続く。「きんぽうげ」が始まり、 「今夜限りね」でフェイドアウトした。拍手と歓声、「甲斐ーっ!」の声。すぐにあの 「ドンドドッンッドン」というビートの曲がかかる。今日、大阪ドームでもかかって た。野球場でよく使われているようだ。曲のそこここに入る吼え声が、「甲斐ーっ!」 と叫んでいるように聴こえた。

 1曲目のイントロが大阪の客たちを興奮させる。 昨日は衝撃受けてて気づけ へんかったけど、「ウフッフー」のコーラス、最初から入ってたんや。 
 「三つ数えろ」 
 ノリオがベースを縦にするアクションをしてから、自分の最初の音を出す。 うおお、いいぞ! 
 さあ、甲斐の登場や。えんじのジャケットに黒のパンツ。髪は段になっている。 青いサングラスをしてるけど、ここからはその奥の甲斐の目も見える。やっぱり近い んや。 
 甲斐は「満足なんか できはしないさー」と歌いながら、殴るように腕を振る。 好戦的とも言われた歌や。 
 キーボードが「キュルルルルル」と明るい音色を添えている。前野選手の指が 鍵盤を一気に渡っているのか。 
 甲斐はやはり「路上」と歌った。かつては「通り」と歌うことが多かったけど、 このツアーはそっちの気分なんやろう。

 蘭丸のギター。キーボードが壮大なスケール感をつくり出す。ドラムの2連打。 
 「ブライトン ロック」 
 甲斐は右の方で「イェー!」と叫ぶ。走って左にも来てくれ、もう1回叫ぶ。 その後の演奏は短く、歌へ。 
 「俺の導火線に火がついて」と歌う甲斐は、「俺」の「れ」と「火が」の「火」 のところで、指を強く下方向に突き付けるアクション。 
 「ブライトン ロック、答はどこだ」今日は4度続けてそう歌った。もちろん 俺もいっしょに歌う。この歌はどこも大好きや。

 「サンキュー」と声援に応える甲斐。 
 「Series of Dreams Tour Vol.2へようこそ」 
 「BIG GIG」を思わせるこの挨拶に感激した。

 「フェアリー(完全犯罪)」 
 甲斐があの、両手を上げる仕草を見せる。「フェアリー」といえば、これと、 中盤の3つのビートが打たれる瞬間の身をかわす動きやんな。 
 ラストの繰り返しは短めにアレンジされていた。

 「「シリドリ2」という感じで。1979年から1986年まで、「安奈」から 甲斐バンド解散までと。目一杯やるからね。今日はもう出てきた時からみんなでき あがってる感じなんで」 
 そう言われて、大阪の客がさらに大歓声で応える。 
 「最後まで楽しんでって下さい」

 「「暁の終列車」をやるぜ!」 
 このツアーでも特に気に入ってる「暁」がまた聴ける!このビート、このホーン の音に、めちゃめちゃ興奮してしまう。 
 一心に頭を振りながらギターを弾く甲斐。ジャケットを脱いで、黒の半袖に なっている。前は下までジッパーで、それをはさむ縦のラインと肩前のT字が 切り換えになっている。 
 今日の甲斐はオリジナル通りの歌詞で歌った。ほんまに燃えた。Vol.2を 代表する曲やで。

 水のあぶくのような音が聴こえた気がした。 
 「シーズン」 
 甲斐はきびしい顔つきで歌っていく。 
 「はじけ飛ぶ 黄金に光る岸辺」からは静かになる。ここから甲斐の アコースティックギターがよく聴こえるのだ。このアレンジ、いいなあ。

 「ビューティフル エネルギー」 
 甲斐はこの曲でもアコースティックギターを弾いている。 
 上から縦にピンクと紫のライト。舞台横の上方からは群青のライトだ。 
 ステージを見ながら、しぜんにギターを弾く甲斐と同じように右手を動かした。 そうやってリラックスして聴いているのが、気持ちよかった。

 「BLUE LETTER」 
 背景にうすく曇り空が映し出される。わずかに晴れ間ものぞいているのか。 
 甲斐が左手にハーモニカを持っているのが見える。右手でマイクスタンドを 握って、うたっていく。2番でハーモニカを右手に持ちかえた。3番ではスタンドを 持ち上げてうたう。再びスタンドを置き、左手でスタンドとハーモニカを持つ。後奏で ハーモニカを吹くときに、マイクがスタンドからとれそうになってしまう。甲斐は マイクをはずし、ハーモニカといっしょに持つ。そのまま口もとにもっていって、 ハーモニカを吹く。声と音を感じながら、一連の動きに見入ってしまった。

 暗転のまま、すぐに曲がはじまる。松藤のギターによる前奏も、レコードのあの メロディーやった。 
 「街灯」 
 甲斐の声がよく聴こえる。語尾の響く余韻が素晴らしい。サビ前で特にささやく ようなうたい方はしなかった。素直な歌唱。それが心にしみてくる。 
 サビは松藤のコーラスがある部分と、甲斐が一人でうたう部分がある。最後は 一人で、「なが  していーるー」と後半を遅らせてうたった。 
 くちびるでこすってから、甲斐がハーモニカを吹く。後奏では先に甲斐の ハーモニカが終わり、松藤が静かなギターでしめくくった。聴きほれていた観客たちの 拍手。

 松藤甲斐についてのMC。 
 ヒデとロザンナの名前が出たところで松藤が「アモーレ」と言ったが、今日は やや間がずれたか。 
 ぐっさんに作詞を頼んだ代わりに、参加することになった「くずアルバム」。 
 「テキは本気じゃないからね。宮迫のナレーションのバックで「アー」って コーラスしてたり。こういう悲しい立場になって、松藤の大変さがわかった」と笑う。 
 そこから松藤がこなすいろんな楽器のことへと展開する。 
 「松藤は「松藤甲斐」の「きんぽうげ」の間奏で、フルート吹いてるからね」 
 「昔「氷のくちびる」では、たてぶえ吹いてたよね。おかしいよ!でも、それが いつしか成熟していったんだよね」 
 元々はギタリストだった松藤を、「譜面読めるから、甲斐バンドつくるとき、 僕と大森信和で騙してドラムスにしたんだ」

 明日、松藤甲斐のライヴをやるバナナホールのことをほめる。 
 「飲み屋に近いし」と、ジョークにしつつ。

 甲斐が初回に出演したNHK「夢・音楽館」の収録エピソード。 
 衣装は「くずしたフォーマルで」と指定されてたらしい。 
 いっしょに「HERO」をやったキンモクセイのことを「好きだ」と言う。 
 あの番組、よかったなあ。桃井かおりとのトークも絶品やった。

 「TVで「怪奇幻想シリーズ」とかいうのがあって。2時頃再放送してて、 水商売の人たちから、2・3年後にこの曲をほめられた。そうか、水商売の人はその 時間にTV見てるんだと」 
 そういうコメントから、「メガロポリス ノクターン」 
 キーボードの席についた前野選手が、アコーディオンをふるわせる。その音色が 曲の雰囲気にすごく合っている。夕暮れの不思議な世界。 
 最後はゆっくりと、「ふーいに きーえーたー」

 幕開けはあのきれいな音。「ナーイト ウェーイヴ ナーイト ウェーイヴ」の コーラス。ビートのはじまりとともに、満を持したオーディエンスの手拍子。蘭丸も 手拍子してる。体をひねって、左手に右手を打ちつけてる。最後のキーボードが寄せて きて、さあ甲斐のヴォーカル。みんなの大合唱。 
 甲斐はサビで「ウーー」と歌ってるのを切って、「イェー!」と叫んだ。 
 「彼方に流され 消え行く ものか」の後、「チュン!チュン!」と12インチ ・ダンスミックスのドラム音が聴こえる。それから各楽器の見せ場が到来。ドラムス。 ベース。キーボード。松藤のコーラスも今日はよく聴こえる。さらに蘭丸が加わってく る。全ての楽器と手拍子の時間。それが最後の甲斐の歌声へと収束していく。手拍子が 拍手に変わる。甲斐はラストをひざまずいて歌う。立ち上がって、早めにおじぎを する。オーディエンスの大拍手。

 「地下室のメロディー」 
 1番の前半、甲斐がマイクスタンドを離れて後ろへ下がる。歌詞が出てこないの かと思って、僕らが歌う。しかし、そういう事情ではないようだ。「地下室・・・」 らしくうねりながら、演奏が止まる。甲斐は前のモニターを指している。曲が聴こえ なかったのだろうか。 
 もう1回最初からやり直し。大歓声が沸く。分厚い音の「地下室・・・」が 生まれた。 
 1番の後の間奏から、早くもドラムスが叩きまくっている。これやから JAH-RAHのプレイ好きやねん。

 イントロのギターを聴いただけで、もう場内は大騒ぎ。 
 「港からやって来た女」 
 甲斐は3番の前半を静かにうたい、「まだまあーってるのさー」から強く低い声 を張り上げる。 
 「バイ!バイ!バイ!」は最初から、右のノリオのところでいっしょに。 「フーッ!」 
 後奏で甲斐はマイクスタンドを抱き上げるようにして、そのままスタンドの下の 方を振り廻した。 
 JAH-RAHが叩き出す煽情のビートの洪水。いつもとちがうタイミングで 迫ってくるキーボード。モニターの音が聴こえづらいのか、甲斐は前野選手の方を 見る。しかし、メドレー風で通常のアレンジとはドラムもキーボードもちがう前奏で、 甲斐はきっかけをつかめなかったらしい。いつものところでマイクスタンドを蹴り上げ なかったのだ。 
 悔しさをぶつけるように激しく歌う甲斐。1番が終わると、マイクスタンドを 後ろの床に投げつけた。ONになったままのマイクが、ボコッという音をたてた。 こういうアクシデントもまた、俺たちが燃えるポイントになる。PARTYの大阪城 ホール初日なんか、この歌で客席までマイクスタンドを蹴り飛ばしたやんな。 
 後奏。マイクスタンドを廻す前に、足をクロスさせるのが見えた。ぐるぐるぐる ぐる完璧に廻した。前奏の分を取り戻そうとするかのような激しいステップ。 マイクスタンドを持ったままで。思いっきり盛りあがった。

 「漂泊者(アウトロー)」 
 もうこのへんのスパートでは、ステージの坂の内側にある赤いライトが光を 放ちっぱなしやったように思う。僕の席から甲斐を見てると、そのライトははっきり とは視界に入らず、下の方に真っ赤に燃える玉があるという感覚。 
 甲斐はドラムスの台に上る。そこから、前へ出て間奏を弾きまくってる蘭丸を 見て、よろこんでいる。ノリオと視線を交わす。楽しそうな表情や。JAH-RAHと も顔を見合わせていた。 間奏の終わりで後ろから走り出てくる。マイクスタンドからマイクを 奪って歌い出す。前へ出て、右へ行き、ステージ最前列を横切って、左へやって来る。 
 歌い終わると、後奏が短く炸裂した。

 「冷血(コールド ブラッド)」 
 3番の前半を歌う甲斐の声がいい。興奮し手を打ちながら、その声に酔う。 
 フィニッシュの音が猛々しく響いた。

 前奏で、JAH-RAHのシンバルの音がする。 
 「破れたハートを売り物に」 
 今日は「悲しみやわらげ」からの部分を、甲斐と前野選手が歌う。「雨の日も」 から松藤もハーモニーを重ねる。 
 もちろん今夜も歌ったよ。みんなで。声いっぱいに。

 まずメンバーが先に帰って来るアンコール。「ノリオーっ!」って叫んだら、 ノリオは歩きながら、手を横に向けたままのサムアップで応えてくれた。 
 「HERO」 
 甲斐は青い袖なしTシャツだ。ステージ左、僕のすぐそばまで来て、「空はひび 割れ」からのパートを歌ってくれた。それから真ん中へ行き、マイクスタンドを 蹴って横廻し。ああ、やっぱり近いのっていいな!

 「メンバーの紹介を」 
 今夜はノリオのことを、「ベースギター、バンマス」と紹介した。 
 蘭丸の指を立てるポーズ、今夜は短く。

 レゲエヴァージョンの「安奈」 
 甲斐もアコースティックギターを弾いている。蘭丸のギターが1拍おきに 「ギャッ ギャッ」と鳴らされる。 
 最後の「燃えているかい」だけは、客席にうたわせてくれた。

 「観覧車’82」 
 虹のライトを浴びて甲斐の歌を聴く、甲斐の姿を見る、甲斐とともに歌う、 至福のとき。 
 間奏で甲斐は両手を上げる。はじけるメロディー。バンドの分厚い演奏が心地 いい。そして「ウォーオオオオオ」の叫び。 
 後奏。甲斐が右の客席に挨拶。続いて、僕の立ってる左の方にも。めっちゃ うれしい。顔につけた手をはなして掲げる、感謝をあらわす甲斐の仕草。 
 甲斐は蘭丸に対し、「ここは任せたぜ」というふうにステージを指差してから 去って行った。

 戻ってきたメンバーが、バラードを奏ではじめる。 
 甲斐の姿が真ん中に見えて、オーディエンスから大歓声。甲斐は青いTシャツの 上に黒のジャケット。 
 「レイニー ドライヴ」 
 昨日は「息がつまる街の中で君を見つけたとき」のときめき、恋に落ちた瞬間の 気持ちを感じた。でも、今日は、「忘れていたぬくもりを感じたけれど」の「けれど」 が胸を突いた。そんな気持ちにさせてくれた相手と、別れなければならなかったんや。

 「ラヴ マイナス ゼロ」 
 雰囲気のある緑色のステージ。あのときの甲斐のように揺れながら、聴いて いた。 
 甲斐もまた揺れる。そして、あの言葉を口にした。客席のひとりひとりの想いが 噴き出す。拍手となって、歓声となって、あるいは胸の痛みとなって。

 最高のライヴが終わった余韻。それに陶酔しながら聴く「What A  Wonderful World」は心地いい。 
 ああ、ほんまに充実した時間やった。この気持ちを味わうために生きてるんやと 感じる。これからも甲斐のライヴにたくさん参加できるように、 普段は仕事がんばろう。甲斐のステージはいつも、そう思わせてくれる。

 

 

2003年5月11日 NHK大阪ホール

 

三つ数えろ 
ブライトン ロック 
フェアリー(完全犯罪) 
暁の終列車 
シーズン 
ビューティフル エネルギー 
BLUE LETTER 
街灯 
メガロポリス ノクターン 
ナイト ウェイヴ 
地下室のメロディー 
港からやって来た女 
ダイナマイトが150屯 
漂泊者(アウトロー) 
冷血(コールド ブラッド) 
破れたハートを売り物に

 

HERO 
安奈 
観覧車’82

 

レイニー ドライヴ 
ラヴ マイナス ゼロ