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甲斐よしひろ TOUR of ”TEN STORIES 2” 2008

2008年5月6日(火) 愛知県勤労会館

 

 ゴールデンウィーク最終日で混みあう駅。でも、俺のゴールデンウィークはまだまだこれからや。 
 選んだひかりは米原岐阜羽島でのぞみに抜かれまくり。名古屋まで各停やったとは。前に 岡山のアコギライヴ行ったときも、 こんな目にあったな。 
 名古屋で甲斐友と合流。相変わらず中津川や多治見がどっちの方角なのかわからず、調べながら 鶴舞へ。ちょっと久し振りやけど馴染み深い駅に降りる。 
 腹ごしらえをしようと、改札を出て右、つまり会場とは逆の方へ出て店を探す。どうもちょうどいい とこが見つからず、会場のある公園の外をまわって図書館の前を通り、結局遠回りして会場に来ただけに なった。 
 愛知県勤労会館にも店はあるねんけど、こういうとこって、何か高いイメージがあって。大阪の 厚年やったと思うけど、甲斐のライヴ前に入ってミックスサンドを頼んだら、レタスと何かを切らしてる とかで、ものすごくみすぼらしいサンドイッチを食べさせられたこともあったし。 
 そんな話をしてたから、いざ入った普通の喫茶店では、ミックスサンドを頼んでみる流れになった。 となると、飲み物はホットコーヒーに限定されてしまう。ちょっとした「三つ数えろ」ゲームや。アイス ココアを飲みたい気分やったし、コーヒーなんてめったに飲めへんねんけど、ここはノっとかんと。 
 店は開場を待つ甲斐ファンでいっぱい。だから待たされたけど、うんざりする程ではなく、 サンドイッチはひからびてなかったし、コーヒーも苦いばかりのぬるいものじゃなかった。おいしく いただきました。ごちそうさま。

 開場時間の数分前に会場に戻ると、すでに入場の列ができていた。っていうか、その列が動いてる。 予定より早くもう開場してるんや。さっそく列について中へ入る。

 ロビーの左右に人だかりができてる。グッズ売り場は右のようだ。左はCDやDVDだろう。グッズ を確認して何を買うか決めた頃には、買い物の列は階段の上まで伸びていた。帰りに買うとするか。客席に 入ろう。

 全体を見渡して雰囲気を味わいつつ、自分の席へ行ってみる。え!ど真ん中やん!マイクスタンドの 正面!やった!めちゃめちゃラッキー! 
 ステージが近い。勤労会館って、こんなに近かったっけ?ますますうれしい。 
 甲斐のマイクスタンドの左に、メンバーのマイクが1つ立ってる。右には2つ。やはり左が蘭丸で、 右に西村とノリオが並ぶのか。 
 ステージ後方の下に、ライトが見える。黒い横長の長方形の中に、円い小さめのが縦に2つ横に4つ 並んだおなじみの。シンプルな円い大きいライトも、一定の間隔で並んでいる。 
 BGMは洋楽。歌がないのもあるのも、両方。やがて気づいた。これ映画音楽ちゃうん。「TEN  STORIES 2」の選曲テーマが、映像が見える曲ってことやったもんな。「スティング」の テーマも流れたし、きっとそうや。よく聴くフランス映画の歌もかかったが、タイトルが思い出せない。 いつ聴いてもいい「What a Wonderful World」は、数多くの映画で使われてる はずやけど、いちばんに思い浮かぶのは 「12モンキーズ」やな。 
 甲斐のライヴが数分後に迫った今、名曲を聴きながら心に想うことは。「前のツアーから今まで、 俺は何をしてきたか」「もっとがんばれたんじゃないか」そんな、自分と向き合う気持ち。意識過剰かも しれんけど、甲斐のライヴには、そういうことを考えさせる力がある。

 ギターやベースの音チェックが始まったのが、もう開演時間5分前。予定の6時には始まりそうに ないな。でも、全然いいで。 
 6時を何分か過ぎてから、ブザーと2回目のアナウンス。そこからは曲が終わるたびに、音が大きく なったかもと思うたびに、ドキッ!とする。もうすぐ始まる。この曲が終わった後か。この曲を途中で 切ってか。タオルを用意し、シャツを脱いで待つ。準備はいいよ。

 BGMが大きく、手拍子しやすいものに変わる。幕開けに違いない。すかさず立つ。 
 オーディエンスの手拍子。客電が落ちる。左手から白い光。そこからメンバーが入って来る。拍手に 応えてそれぞれの位置につく。でも、蘭丸がいない。蘭丸が出て来てから、最後に甲斐が出て来るのか。 「甲斐ーーっ!」と叫び、手拍子をしながら、待ち構えて左をずっと見ていたら、歓声が大きくなった。 甲斐が真ん中の奥から現れたのだ。わあ、真ん中見てたらよかった!

 音が静かに起ち上がる。「TEN STORIES 2」の音だ。 
 「駅」 
 マイクスタンドに近づく甲斐。アルバムジャケットのイメージ通り、赤のジャケット。黒のパンツ。 横に長めのサングラスも、アルバムのジャケットと同じか。少し縦が細いかもしれない。 
 スタンドからマイクを取る。去年 はカヴァー曲を歌うとき、クラシカルなマイクを使ってたけど、今日はいつもの丸いマイクだ。 マイクスタンドの前に出て来てうたう。立ち上がってみると、マイクスタンドからステージ前端までの スペースが目に入って、開演前に見たときより遠く感じたけど、これなら甲斐が近い。後半の激しい曲に なったら、さらに前に出て来てくれるんやろうな。 
 「懐かしさの一歩手前で」から演奏が大きくなる。甲斐の右に西村。その右にノリオ。後方右の台に 前野選手。JAH-RAHは後方左の台。松藤はその左でアコギを弾いている。西村はエレキギターを肩に かけつつ、弾ける高さに設置された別のエレキも弾いている。FIVEのライヴで「風の中の火のように」 のとき、アコギがスタンドに固定されてあって、エレキを持ったヤッチが前半はそのアコギを弾いていた。 あの形だ。 
 バックの右側。ちょうど西村の後方あたりに、縦長の網があり、照明で緑に染め抜かれている。 
 「言葉がとても見つからないわ」の「ら」。竹内まりやのオリジナルから変えたメロディが、 アルバム以上によくて感激。 
 「思わず涙あふれてきそう」。他の言葉ではなく、「あふれて」なのが、今日は印象的や。 
 間奏のメロディオンは前野選手がやっているのか。そう思って見てみたけど、うつむいていて口元が 見えず、確かめられなかった。 
 後奏。甲斐は「ラララララ」だけじゃなく、「Mmーー」や「アーー」という声も聴かせる。 
 再び最初の静かな音が戻ってくる。バラードをうたい終えた甲斐は、上げた腕を下げていく。

 聴こえてきた静かなビートは、アルバムの曲順通り。この名アレンジを披露しないはずがない。 
 「I LOVE YOU」 
 この曲はマイクスタンドで歌う。赤いジャケットの下の黒いシャツが、きらきら光る。ベルトの バックルや、左腰のチェーンも見える。曲前に、飲み物などを置いたドラムの台へ行ったとき、ジャケット のボタンを外したのか。途中でスタンドからマイクを取る。少し左右に動きながらうたう。 
 「子猫の様な泣き声で」の後のファルセットがいい。ここも甲斐ヴァージョンにアレンジされている のだ。 
 「生きてさえゆけないと」の「さえ」に感慨がわく。 
 曲の終わりで甲斐は、両手を広げておじぎをし、片手をすくい上げた。

 「サンキュー」 
 甲斐が拍手と歓声に応えるが、まだMCには入らない。バラードが続く。 
 「めぐり逢い」 
 今度は首元に銀のチョーカーが見える。黒いシャツの上のボタンを外したか。 
 甲斐のヴォーカルに合ったコーラスが人気の曲。松藤の高い声に加えて、遊麻沙亜万のコーラスも 聴こえているようだ。確かめたくて、左奥の松藤を見る。松藤はこの曲でもアコギを弾いている。右には 鍵盤も置かれていた。 
 サビの繰り返し。甲斐はコーラスに委ねたり、いっしょに小さめにうたったり。そして、再び 本格的にうたい出す。そのときの強い声がいい。 
 ラストは身体の傍で腕を下げていく。バラードの最後によく見せるポーズ。この3曲それぞれ違う 動きやったな。

 3曲目までアルバムの曲順通りや。これはアルバムのように、初めバラードを続けて、後で一気に ハジケると見た。次は「桜坂」なのか?

 違った。この前奏は、「タイガー&ドラゴン」。 
 「ここで、ギターの土屋公平を」 
 甲斐の言葉で蘭丸が左から登場。歓声に迎えられる。紫のロングコート。SGか、くわがたみたいな 形の黄色いギター。 
 「ダッダッダダッダダン」のフレーズが分厚い。甲斐は左右に動いて歌っていく。 
 「お前だけに本当の事を話すから」とか、低音がいい。貫禄のヴォーカル。そして、「ノー!」の シャウト。 
 のっけからバラード3曲でじらしといて、ここで激しい曲。しかも、蘭丸投入。この構成にうなる。

 甲斐が拍手や叫び、自分の名前を呼ぶ声に応える。「サンキュー」 
 「今夜も目一杯最後までやります。楽しんでって下さい」 
 「「TEN STORIES 2」を続けよう」

 「別れましょう私から消えましょうあなたから」 
 大黒摩季のコーラスが聴こえる。じゃあ、やっぱり「めぐり逢い」でも、遊麻沙亜万のコーラスが 使われててんな。 
 サンストで初めて聴いたときから、甲斐の声が活かされると思ってた。その通り。 
 蘭丸は同じ形の紫のギターを弾いている。 
 曲が終わると、近くの席から「マイナスだらけの未来はいらない」という詞に賛同するつぶやきが 聞こえてきた。

 あのスピード感のあるイントロ。白い光が走る。カラフルなライトの点滅は「漂泊者(アウトロー)」 を思わせる。 
 「Marionette」 
 「You’ve got easy day」は蘭丸もコーラス。 
 この盛りあがりは、カヴァー曲の最後を飾るものなのでは。去年の「すばらしい日々」みたいに。 後奏で甲斐が何度も「サンキュー」と言う。やはり、ここでカヴァーが終わるのだろう。

 アルバムのSEみたいな音がする。カヴァーが続くなら、「戦国自衛隊のテーマ」だろう。あのSE を使うのなら、その後は「涙そうそう」や。いや、これは「嵐の明日」かもしれない。とにかく、バラード の前奏。そこへ、あの音がわき上がる。甲斐がマイクスタンドを蹴って横廻し。うたい始める。 
 「嵐の明日」 
 去年の「I.L.Y.V.M.」の役割や。一気に甲斐オリジナルの世界へ。 
 通路を動く影がある。カメラマンだ。帽子をかぶってる。マイクスタンドを斜めに倒して持ち、左を 向いた甲斐を、撮ってる。 
 甲斐はいつの間にかサングラスを外してた。赤いジャケットの襟とポケットの縁が黒い。普通の 素材と違うようにも見える。ライヴでも暑くないとかかな。逆に、暑いけどステージ映えするとか。 
 1番で「ずっと君といるよ」とうたった甲斐は、2番を「でも君といるよ」と入れ代えてうたった。 
 壮大な甲斐のバラード。演奏も激しい。「涙をこらえ」の歌に、蘭丸の間奏ギターの最後がかぶる。 
 そして、あの後奏。「イェーー」甲斐が叫ぶ。「ウォーーー」は強く短めに。最後はやはり 「シャララララララララ」。これが聴けてうれしい。 
 甲斐の声にひたるとこやけど、こらえ切れず、曲が終わってすぐ「甲斐ーっ!」って叫んでもうた。

 ステージにイスが用意され、「「TEN STORIES 2」のプロモーションツアーです」の 言葉からMCに。

 「名古屋のイベンターは、ちょうどいい頃を取るよね。誰とは言わないけど」 
 客席から「サンデーフォーク」の声があがる。 
 去年・今年と名古屋のライヴはゴールデンウィーク中やから、そのことを言ってるのかと思ったが、 ツアーの中での位置のことやった。 
 「初日は原石をぶつける。(名古屋のイベンターは)甲斐がノってるツアー中盤頃にって」 
 そこから、去年Zepp Tokyoで行われた追加公演の話題に。 
 「Zepp Tokyoのライヴ、みんなから「いい、いい」って言われて」 
 自分でも手応えを感じてたみたいやけど、後でテープを聴いたら気に入らないとこがあったという。 
 では、なぜみんながすごくほめたのか。考えた結論は、「酸欠」。 
 「客席もステージ上も酸欠だから。どっちも酔っ払って」 
 今日も「イクときは一緒」。

 アルバムのプロモーションでは、名古屋にも来たみたい。でも、詳しくは話さず。 
 NHKの「SONGS」に続いて出た、朝早い「とくダネ!」に関する話。 
 翌朝に生放送を控えたホテルでは、穏便な人と暴れん坊にミュージシャンのタイプが分かれると。 
 「穏便な方に成り下がって。12時まで地下のバーで飲んで、1時に寝た」 
 「浴槽にお湯を張って、伯方の塩を入れて」っていうのは、のどのためなんやろうな。

 「スマスマ」の収録は、このツアーのリハーサル初日とかぶったそうだ。 
 「このバンドが行けない。ボクも夕方には戻らないといけない」 
 そこで、初めてつくったという「HERO」のオケの出番。去年「甲斐バンド ストーリー II」 でリミックスしたときにつくられたもの。「HERO」発表当時は、曲が完成したらヴォーカルなし ヴァージョンも録っておくということが、まだ行われてなかったそうだ。 
 「そのオケを使う。で、ガールズバンドを用意して。それだけじゃ、あれだから、公平にも 「来ない?」って声掛けて」 
 幕が開く前のMCで、キムタクが花園ラグビー場の話とかをして。それで、客が男っぽいバンドを イメージしてるとこへガールズバンドで出たから、客は一瞬驚いてたという。 
 キムタクも2番から参加。「2人で打ち合わせた通り、間奏で交差して、俺が公平と絡んで。 キムタクは女性SEX奏者のとこへ行って。その女性はとろけてたね」

 「これくらいでいいか。長くしゃべりすぎた。今回はMC少なくしてるのに。しゃべってしまう」 
 観客は歓迎の拍手。MCへの反応も大きかったな。

 「レゲエでやるから、みんなでやろう」 
 「安奈」 
 そうか。レゲエヴァージョンだと、蘭丸がエレキ弾けるねんな。 
 間奏では甲斐がハーモニカを聴かせる。 
 終盤のワンパートを、まるまるオーディエンスにうたわせてくれた。「サンキュー」と言ってから、 続きへ。甲斐と声を合わせて。

 甲斐はもう立ち上がってる。 
 「甲斐バンドで1回しかやったことない曲を。「胸いっぱいの愛」を」 
 おおおお!「ROCKUMENT」 以来や!オーディエンスもみんな沸いてる。 
 「BIG GIG」よりすごい、またレコードとも違うヴァージョンや。ちょうどいい高さで バッチリ合う「Go!」が最高。アルバムの少し軽く跳ね上がるような「Go」ではなく、 「BIG GIG」での低いコーラスでもない。強くて太い「Go!」やねん。 
 スピード感があって燃える。蘭丸も早くも前へ繰り出して来る。 
 充実感を逆説した「今夜お前と死にたい」という歌詞が、「こんなすごいライヴを体験してんねん から、もうどうなってもいい」と感じさせる甲斐ライヴ真っ只中の今と重なる。 
 後奏。甲斐と一緒に吼える。「ゴーオオーオオーオーオーオーーオー」

 蘭丸のイントロ!来たあっ! 
 「港からやって来た女」 
 1番のサビから、甲斐が左の蘭丸のもとへ行く。ギター弾きにくいんちゃうかと思える程ひっついて、 蘭丸の首の後ろからマイクをまわし、いっしょに歌う。 
 今度は西村が前へ出る。甲斐はジャケットを後ろにずらして肩を出したりしつつ、動きまわる。 
 3番の前で演奏はやや静かになるが、手拍子は続く。メッケンヴァージョンよりは静かではなく、 ドラムも効いている。甲斐はわずかに「み、見つーめ」と歌う。 
 いざ後奏。オリジナルのように一拍ためず、早めに「バインバインバイーン!」「フーッ!」 跳び上がる俺ら。3回目の前に甲斐が「ワンモア」と叫んだ。全部で4回の炎。 
 ここ数日、やりそうな予感しててんけど、やっぱり「港」はすごい。大騒ぎ。

 叩き出されるビートと低い唸り。俺は「ウウォーーオ!」と叫んでしまう。やがて蘭丸のギターが 「ギャン!ギャン!ギャーン!」と3連発。俺は「フーーッ!」って声をあげる。歓声が捲き起こってる。 西村は細かく強く弾いている。ステージ後方下、あの長方形に詰め込まれた8つの円が白く閃く。甲斐が マイクスタンドを蹴り上げる。歓声がまだ大きくなる。 
 「絶対・愛」 
 久し振りやで。燃える燃える。 
 「ウォウウォウウォウウォウウォウウォウウォウウォウウォーーっ!」そう叫びながら、「いつも カラオケではb2で歌ってるから、それよりキーが高いな」という意識がよぎる。もはやちょっとした カラオケ病か。でも、しっかり高い声が出せて気持ちいい。 
 「Hey!」の拳。蘭丸は振り下ろすように。そして、その右手で次のフレーズを弾いていく。 
 2番前で甲斐は、「ウォーっ!」と叫んでから「ウォウウォウウォウウォウ ウォウウォウウォウウォウウォーーっ!」へ。もちろん俺も一緒に叫ぶ。 
 「火がついたように赤く」。そう歌いながら甲斐は、赤いジャケットの向かって右側を開いて見せた。 
 甲斐が途中で2回右耳を押さえる。スタッフに対する合図にしては短く、ほんまに音を聴き取ろうと するように。 
 「そんな愛は嫌だろう」の後がニューヴァージョン。音も光もアクションも。スピードを落とさず サビへなだれ込んで行く。この速さ、いい! 
 サビの最後。甲斐は「絶対あーああーい」の歌い方を2回繰り返す。3回目で「絶対愛さ」。 「絶対あーーいっ」って突き放すのも。 
 後奏の「ウォウウォウウォーーオー」復活は2回。ラストは「絶対愛!」でフィニッシュ!これも 久々で感動した。かっこいい!

 「風の中の火のように」 
 最初から激しいヴァージョン。甲斐がジャケットを脱いだのはこの曲だったか。演奏の強さにたまら ず、僕は「そんなとき君の名を呼ぶ」と「寒さに目が覚め自分を抱く」の前のビートに合わせて拳を突き 上げた。 
 1番ラストの「君なんだ」で、詞の世界を突き付けられた感じがした。「君」と「僕」の関係が 胸の奥まで届いてくる。「かけられたコート」が「君」で、「射し込む光」が「僕」なんだと、改めて 細かいところまでかみしめる。 
 「激しい叫び押し隠し」に続く「アアアーーーー」という叫びには、繰り返すエフェクトなし。甲斐 は最後のサビの後、「火のようにーーー」と3回歌い、4回目に「火のーーーーー」と伸ばしていった。 
 ステージに炎はなく、また新たなライティング。長方形の中の8つの球は真っ赤に燃えていた。

 JAH-RAHのカウントから、あのビートと大音量が放たれる。 
 「翼あるもの」 
 甲斐が前へ右へ左へ。1番から2度目の「ゆ!こ!う!」を俺らに歌わせてくれる。 
 燃える蘭丸のギター。ノリオはイった顔をしてる。それから、隣の西村の方を向いて笑顔。西村は 後ろにとどまりながら、ギターを掻き上げて曲を跳ねさせてる。 
 間奏。ツインギターが前へ出て来る。ノリオだって動く。甲斐はキーボード台に上る。曲がどんどん 高まってくる。甲斐が前へ飛び出して来る。 
 「俺の声が聞こえるかい」と右端で歌い出す。それから走って左端へも。俺は甲斐といっしょに 歌いつつ、甲斐の声を聴き逃すまいとしてる。 
 「フラウウェイ  ハウウェイ   フラウウェイ」 
 甲斐が両腕を広げる。客席は水を打ったよう。前に身体を倒した甲斐を目で追ったとき、甲斐が 黒い靴をはいてることに初めて気づいた。

 蘭丸ヴァージョンのイントロ!そうそう、蘭丸のときはこうやねん。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 いつも目を引く「漂泊者(アウトロー)」の照明の印象がない。それぐらいのめり込んでたんや。 
 やはり1番の2回目から、客席に「愛をくれえーよおー」と思い切り歌わせてくれる。 
 「命の値段も下がったと」という詞が、社会を映してるように響く。「世の中すらさえも信じられ なくなりそうさ」が心に残る。 
 「爆発」はあまりためなかった気がする。後奏は「キューキュキュルル」と軋むより、 JAH-RAHの激しいドラムが押して来る。そのビートでフィニッシュ!

 メンバーが右へ去って行く。来たときと逆やんな。甲斐もそちらへ行きかけたが、戻ってきて長めに 残ってくれた。 
 場内には「かーい!」コールが起こってる。もうずっと前から、めちゃめちゃのどが渇いてる。 「胸いっぱいの愛」からの激しい曲6連発、すごすぎる。

 ステージに白く照らされ、メンバーが戻って来る。甲斐も再登場。グレーのベストに、下はグレーの タンクトップだ。 
 JAH-RAHのドラムに全員が熱狂。ステージ後方の薄い幕が上がって、壁がむき出しになる。 その手前全面にネットが張ってある。前野選手のキーボードが迫る。ステージ上は白いライト。 甲斐たちの影を壁に映す。オーディエンスの視線を一身に受け、甲斐がマイクスタンドを蹴り上げる。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 俺はサビの後に入るJAH-RAHのビートに合わせて拳を2連打!!3番に入る前に、ノリオも 拳を2連打!! 
 甲斐は3番の最後を、「ちくしょう恋なんて吹き飛ばせ」と歌う。 
 後奏に入る。熱いドラムと、キーボードのあの音。JAH-RAHと前野選手にだけ白い光が 当たってる。甲斐は暗いなか、長いコードを足で払う。甲斐から発せられる迫力が、マイクスタンドを 蹴り上げるんじゃないかと感じさせた。が、やはり。スポットを浴びた甲斐はスタンドをぐるぐる廻す。 胴の右側、脇腹の少し上あたりにコードが当たっててもおかまいなしや。俺らは最高に沸騰する。 フィニッシュも熱狂や。 
 アンコールの最初が「ダイナマイト」って、めちゃめちゃいい!

 「ここで、メンバーの紹介を」 
 ベースのノリオを皮切りに。キーボード前野選手、髪は短くして、片側だけボリュームを持たせて いる。ドラムスJAH-RAH。松藤は「キーマン」と紹介された。蘭丸が松藤に前へと促したが、松藤は 口の動きからして、「後で」答えたようだ。アルバムの共同プロデューサーでもあるギター、 SING LIKE TALKINGの西村。ギター土屋公平、クリーム色のボディに花が描いてあるのも 使ってて、今回はギター3本なんかな。

 「ブギをやるぜ」 
 甲斐のその言葉で、大急ぎで考え始める。もちろん真っ先に浮かぶのは「スローなブギにしてくれ」。 だが、他には何がある?必死に思い出そうとする。 
 続く一言でやっとどの歌かわかった。 
 「浜省からもらった曲を」 
 おお、ライヴで聴くのは初めてや。 
 「あばずれセブンティーン」 
 甲斐は2番で「ヴァージン」って言葉を歌わなかった。これはわざとなのか。左へ行きながら 「食べたいものはあるけれど」と歌っていく。 
 サウンドも詞も、3番の後に繰り返しがなくテンポが落ちないことも、「翼あるもの」ヴァージョン だと感じさせる。甲斐のヴァージョンや。 
 後奏。甲斐とツインギター、ノリオ、松藤もステージ前の端までやって来る。左から松藤、蘭丸、 甲斐、西村、ノリオ。ビートに合わせ、全員同じ方向へギターやベースを振って見せる。甲斐は曲げた両腕 を、下から弧を描くように振る。1回。2回。3回。メンバーが動きを合わせるのって、「どっちみち 俺のもの」以来か?「ストレート ライフ ツアー」の「夜にもつれて」大騒ぎも思い出す。松藤が 「後で」って言ってたのは、これのことか。今回のスペシャルのひとつやな。前野選手のキーボードが 「キュルルルル」と高鳴って、フィニッシュへ。

 甲斐が一言。「明らかに俺たちが勝ってる」 
 俺らもノってんで。甲斐のライヴのために鍛えて来てるもんね。負けへんぞ。 
 「レイン」でもっと来なかったら置いていくぜというような言葉で、甲斐がさらに挑発。 
 「公平が帰って来たから、「レイン」をやるぜ」 
 甲斐の歌声を聴く。「Call my name」で拳をあげる。蘭丸はまた、右手を振り下ろす アクション。 
 最後の「できはしなーいー」はブレイク。オーディエンスがさらに歌える新アレンジや。みんなの声 を受けて甲斐がうたっていく。 
 後奏。甲斐はファルセットを聴かせた後、蘭丸に「ここだ」とステージを示すようなアクションを して、先に左へ去って行く。「観覧車」を思わせるシーン。甲斐のいないステージで、バンドが「レイン」 を奏でる。オーディエンスが手拍子でそれを包む。 
 アンコールの「レイン」って、久々の気がする。第1期ソロでは、大ラスもあったなあ。

 2度目のアンコール。メンバーが位置につく。みんなが熱い手拍子で曲を求める。でも、メンバーの 反応を見ると、次はバラードっぽい。流れてきた前奏は、やはり静かなもの。甲斐は黒のツアーTの上に 黒のジャケットを着て現れた。 
 「光あるうちに行け」 
 うたってくれたのは「Singer」 以来じゃないか。あのときは、「希望の歌を」と言ってから曲が始まったんやった。切ない詞や けれど、甲斐は「まだ間に合う」って俺らに伝えてるんや。じっと甲斐の声を聴く。名曲やな。

 MCに入りかけた甲斐が、何気なくふっと「もう1回」って、再びメンバー紹介を始める。いきなり 予定外のことみたい。紹介されたメンバーおのおののプレイはなく、甲斐が「一言ずつ」と何か言うように 促す。 
 ノリオはすぐに対応して何か言ってくれたけど、僕は聴き取れなかった。前野選手はたじろいで、 無言の間ができてしまう。甲斐は催促して待つが、言葉が出ないうちに締め切って次へ進んでみせる。 JAH-RAHは立ち上がって、両手で「グー」。ギャグをやるとは意表を突かれた。かわいい感じで 場が和む。中に赤いシャツを着てるのが、初めて見えた。「業師・松藤英男」と紹介された松藤は、 「3の倍数と・・・」と言い出して即刻甲斐に止められる。西村も何か言ったが、聴き取れず。残念、 ノリオと西村がなんて言うたか知りたい。蘭丸に対しては、甲斐もクールなキャラクターを尊重して、 しゃべらせるようには持っていかない。蘭丸はオーディエンスにピースで応えた。

 甲斐が観客に話し始める。 
 「座ってもいいんだから。俺たちは職業だから立ってるけど。勝負かよ」 
 自分だってさっき勝負みたいに言ってたのにと、楽しくなってくる。 
 「君たちはいい。お世辞抜きで」と客のノリをほめておいてから、「「絶対・愛」、全然聴こえ なかったじゃねえかよ」 
 やっぱり、あのとき聴こえにくかったんや。だって、歌いたいねんもん。燃えるねんから。

 「秋は甲斐バンドで動くことになるでしょう」 
 この発表は、あくまでさり気なく。 
 今秋はアコギツアーじゃないねんな。来年はオリジナルアルバムも出すそうやし、突然に新しい 展開を繰り出して来る。うれしいで。

 「1回、2回トライして、夢の途中で倒れてうまくいかなかったり。それでも、何回もトライする んだ。そうやって、形になっていく。そういう歌を」 
 「嵐の季節」をやるのかと思ったが、ちがった。あのイントロや。甲斐バンドヴァージョン。 ギターの狭間、甲斐は「カモン!」じゃなく、「AHーー!」と叫んだ。 
 「ティーンエイジ ラスト」 
 ゆっくりめのテンポでの演奏。ライトは緑。「BIG NIGHT」の頃に甲斐友と考えた、 振付のことが一瞬よみがえったりした。 
 最近あらためてハマってた歌だ。熱い気持ちを忘れず、挑戦したいと。この歌を歌ってくれるとは。 
 「十代の熱気が」「十代の炎が」と甲斐が歌うたび、その声が胸を打つ。

 「ティーンエイジ ラスト」がしめくくりか。それにふさわしかった。いや、蘭丸がギターを換えて る。まださらに歌ってくれるんや! 
 「HERO」 
 ジャケットを脱いでいた甲斐は、前奏で黒Tシャツをめくり上げる。1番の途中まで上げてたかな。 
 「スマスマ」とは違うライヴヴァージョン。アレンジも歌い方も。「愛してるううーうさ」もあり。 
 西村から蘭丸の方へ近づいて行って、2人でプレイ。甲斐は前で動きまくる。 
 間奏。去年のステラボールでは明男のサックスが派手に冴えわたったが、今夜はもちろん蘭丸の ギター。鋭く強力や。 
 オーディエンスはなんか、みんなスッキリして「HERO」を楽しんでる感じ。いろんな曲が聴けた もんね。そのうえで最後にもう1回盛りあがれるねんから。

 甲斐たちがいちばん前まで出て来てくれる。全員で肩を組んで、おじぎを2回。俺らは拍手で讃え、 感謝を表現する。思いを込めて、「甲斐ーっ!」って叫ぶ。 
 甲斐は蘭丸やノリオらとハイタッチ。それから、ノリオの背に手を当てていっしょに帰りかけたけど、 戻ってきて長く声援に応えてくれた。 
 主役のいなくなったホールに、「アヴェ・マリア」。さらなるアンコールをと手拍子するけど、 あれだけのライヴを見せてくれた甲斐たちにかえって失礼かもという気もして。

 とにかく「胸いっぱいの愛」からの6連打はすごかった。本編が14曲やったから期待してたら、 その通りアンコールを6曲やってくれた。今年のツアーでも、いろんな曲をやってくれた。この感じ、 すごくうれしい。 
 「みんないろんな事情を背負ってるだろう」と思ってのことやろう。はげましの歌を歌ってくれた。 心を叩くMCとともに、「ティーンエイジ ラスト」。こんな時代やけど、年を重ねてきたけど、希望を 持てと。現状維持と守りだけでは、気持ちがスカッと晴れへんもんね。つらい状況であっても、希望を 抱けた瞬間、目の前が明るくなって心が軽くなる。僕にもいろいろあったから、そう思う。

 ツアー前のキーワードやった「このところ演っていなかったインパクトのある曲」って、どの曲を 指した言葉やったんやろな。「港」か、「嵐の明日」か、「絶対・愛」か。「光あるうちに行け」も 「ティーンエイジ ラスト」も。「翼あるもの」だって、去年は甲斐バンドの1回だけしか歌っていない。 思えば、どれもインパクトあるもんな。甲斐の歌は。

 「今日の一曲」がどれとは、決めがたい。みんな同じようによかったからなあ。あえて言うなら、 「胸いっぱいの愛」かな。

 パンフレットとTシャツを買う。マフラータオルは売り切れていた。大阪で早めに入手するとしよう。

 ライヴが終わった今ではどの曲のことだったかわからない、さまざまなシーンを思い起こす。 
 甲斐が歌い終わりを、マイクを持った肘から下を横に振りながら歌った曲があった。1番から3番 まで、少しずつ動きを変えてやっててんけど。あれ、どの歌やったかなあ。 
 ライティングは紫が多い印象。曲の途中で、真横から黄緑の光が射してくるのもあったな。去年の 暮れから青緑がいちばん好きな色になってんねんけど、その色のライトも使われてた。「絶対・愛」より 先に、長方形に並んだ8つのライトをともしたのは、どの曲だったか。 
 甲斐が前奏で「タン タタン」のリズムを取ってる曲もあった。オフマイクで「カモン」と言ってる のが、何度か見えた。マイクをズボンの前に差した場面もあったな。 
 メンバーみんな、表情がいい。演奏しながら歌ってる感じ。甲斐が前へ出ると、蘭丸が中央後方で 弾くという形も数回。 
 甲斐が誰の方を見て、いきいきうれしそうな表情をしたとか。照明の色の移り変わりとか。もっと 覚えときたいことがいっぱいあったのに。感動が多すぎて、記憶しきれない。それでもいい。大阪と福岡 で、またしっかり焼き付けてやる。

 

 

2008年5月6日 愛知県勤労会館

 

駅 
I LOVE YOU 
めぐり逢い 
タイガー&ドラゴン 
別れましょう私から消えましょうあなたから 
Marionette 
嵐の明日 
安奈 
胸いっぱいの愛 
港からやって来た女 
絶対・愛 
風の中の火のように 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー

 

ダイナマイトが150屯 
あばずれセブンティーン 
レイン

 

光あるうちに行け 
ティーンエイジ ラスト 
HERO