CRY

Twitterには長いやつ

Big Year’s Party 30 KAI YOSHIHIRO 30th ANNIVERSARY

2004年9月20日(月) 愛知厚生年金会館

 KAI FIVEの後期に2回ほど来たことのある愛知厚生年金会館。駅を出て すぐ右の建物やったな。駅名は忘れてたので、調べてメモしておいた。地下鉄の池下駅 だ。にも関わらず、池下ではなくひとつ手前の今池で降りてしまった。早めに着けそう やったのに、これで開場時間ぎりぎりになる。メモも見なければ意味がない。 
 池下駅のエレベーターを上っていく。ああ、こんな雰囲気やったと、懐かしさを 覚える。 
 並んで開場と同時に入りたかったけど、ここで考えた。今回は30周年のツアー で、3時間・30曲のボリュームだという。何か食べておかなければ、6時に開演して 9時まで持てへんやろう。まだ腹は減っていないが、会場の左向かいにあるミスドに 行くことにした。 
 ミスド店内でトイレに立つ。トイレのドアの前で甲斐友に呼びとめられる。挨拶 をして、トイレのドアを押し開ける。すると、ドアの向こうにいきなり道路が広がって いた。ああ、びっくりしたあ。当然トイレの中につながってると思ってたのに、店の表 に出るねんもん。道を挟んだ向かいのビルに、トイレはこのビルの2階にあると 貼り紙がしてあった。

 会場の外には、待ち合わせをしているらしいファンが多かった。その前を通って、 ホールへ入場。ロビーに「ぐっさん家」というTV番組からの花が飾ってあった。 
 まずは自分の席へ。客席内には甲斐トリビュートアルバム「グッドフェローズ」 が流れていて、僕が入った時は高橋克典が「漂泊者(アウトロー)」をつぶやいて いた。僕の席は左寄り。左隣が通路とはラッキー。思う存分動けそうや。 
 ロビーに戻ってグッズ売り場。パンフレットとTシャツ2種類を買う。パンフが 本になっているのが、久しぶりだと感じられる。青のTシャツはプリントの色が 白と赤。ドラゴンズカラーやな。名古屋やし。黒のTシャツは甲斐のモノクロ写真も 入っている。背にはツアースケジュール。これ好きやねん。 
 ブザーとアナウンスで、自分の席へ急ぐ。さあ、始まるぞ。

 「グッドフェローズ」の曲が消え、スピーカーから歓声が聴こえてくる。女性 ファンの「大森さーん」という叫びも聴こえた気がする。低く唸る前奏を破って、 ギターの音色が高らかに放たれる。 
 「25時の追跡」! 
 7月に亡くなられた大森さんの曲、大森さんの演奏だ。 
 僕らは立ちあがり、表のタイミングで手拍子をする。思い出すあの 「PARTY」。そして、胸に来る大森さんへの想い。 
 あの無線の交信音もある。乾いたビートとみんなの手拍子が重なる。甲斐と バンドはこれから3時間、歌と音楽で怒涛の攻撃をしかけてくるにちがいない。 また僕らオーディエンスにも、この手拍子という武器があるのだ。 
 ステージ後方は金網。左右の端は手前側へ斜めに伸びている。 ステージはフラットで、床下からの照明はない。 
 メンバーが入ってくる。甲斐はスタッフとともに後ろへ行ったようだ。 蒼だったライトが赤に変わる。ステージ奥中央に、真っ赤なXXXのライトがひときわ 映えている。三つ並んだXは、これが30周年を記念するツアーだと告げているのだ。 
 蘭丸は左、ノリオは右に位置を取る。右奥のキーボード台に前野選手。左寄りの 奥にJAH-RAH。松藤はさらにその左にいた。 
 大森さんのギターが曲を閉じていく。歓声が高まる。

 「25時の追跡」に続く1曲目は、やはり「ナイト ウェイヴ」なのか? 
 そう思っているところへ、静かな前奏がはじまった。もしかして、大森さんに 捧げる「100万$ナイト」だろうか。僕がライヴに参加し始める前やけど、 「100万$ナイト」が1曲目だったことがあった。 
 ステージ中央奥から甲斐が進んでくる。歓声と拍手がまた一気に押し寄せる。 ギターを持った甲斐。サングラス。黒の上着、中は白。黒のパンツ。 
 「映画を見るなら フランス映画さ」 
 甲斐は静かにそううたいだした。「ポップコーンをほおばって」!それも、 ハッピーフォークコンテストを思わせるデビューヴァージョンや!まさに30周年。 このツアーの1曲目を飾るのに、これほどふさわしい曲もないだろう。 
 「思い出話は」の後をデビューヴァージョンの詞でうたうのか、注目していた。 すると、ちょうどそこで静かなメロディーは消え、甲斐もうたうのをやめた。代わって あのビートの3連打!再びオーディエンスの叫びと歓声。甲斐はもう一度「映画を見る ーなあらー」と歌い始める。今度は強く。ここからは、ファン熱狂のライヴ ヴァージョンだ。 
 2番に入る前。歓声が集中する。この静かな部分が今日は長い。その間も客席は ずっと手拍子。めちゃめちゃ熱いのだ。 
 後奏も長くてうれしい。松藤がアコースティックギターを弾いている。蘭丸は 早くもステージ右へ行く。僕は拳をあげ、甲斐を見ながら、激しさを増していく JAH-RAHのドラムに耳を傾ける。曲のフィニッシュとともに拳を2連打。

 蘭丸のギターがうなりをあげる。 ファンを狂喜させるあのビート。松藤のカウベルが絡みつく。 
 「きんぽうげ」 
 甲斐がいつものタイミングでマイクスタンドを蹴り上げた。と思ったが、前奏が もうひとまわりあった。今回は長いアレンジなのだろうか。 
 素のライト、と感じさせる照明。白くステージを照らすだけ。この曲では甲斐と 客席の熱狂を見せるだけでいいだろう、と言うように。 
 甲斐はステージを動く。左の前へ。あるいは右へ。 「くーらやみのなか」は語尾を突き放した歌い方。間奏前にはもちろん、肘で 宙を打つようにして身を翻す。ラストは短く2回、客席にマイクを向けてくれた。

 打ち続けられるビートに身体が弾む。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 前奏で、甲斐は決然とマイクスタンドを持ち上げて、強く置き直す。怒っている のか?表情も不機嫌そうや。マイクスタンドを蹴り上げるが、あまり高くは廻らない。 コードに不具合でもあったのだろうか。でも、僕らは歓声をあげる。だって、充分 燃えてるねんから。 
 後奏。ステージはあまり暗くならない。甲斐の様子がしっかり見える。甲斐は ぐるぐるぐるぐると長い間マイクスタンドを廻し、片足を1歩引くようにして キャッチ。そして、そのまま頭の上でスタンドを横にぶん廻す。いいぞ!

 「やるよ、目一杯」 
 短い言葉やけど、この「目一杯」がうれしいのだ。声援で応える客席。甲斐は すぐに後ろへ下がり、次の曲が始まった。

 「電光石火BABY」 
 3番の前。CDなら女性コーラスが入るところを、松藤が低めにコーラスして る。 
 今日は「体震わせ」と歌ったように聴こえた。その後の「Hey」はやさしく。 ああ、Vol.3ツアー でもこんなふうに言ってたよなあ。

 「新曲をやるぜ」の言葉に拍手。 
 「FIGHT THE FUTURE」 
 ニューアルバム「アタタカイ・ハート」の1曲目だ。熱いサビを、甲斐は手の ひらをこちらに向けながら歌う。僕もともに歌う。甲斐の声はややかすれ、それでも あくまで強く歌って行く。甲斐の激しさを堪能できる新曲が生まれてきてることに 感謝。ライヴではさらに力強いねんから。 
 ラストはもう1度「FIGHT THE FUTURE」と歌い、 「ジャーーン!」と音がわき上がる。かっこよかったな。

 このツアーについてのMC。これも短かった。 
 「30周年・3時間・30曲」という声が、よろこびの歓声で聴こえづらく なる。 
 「最後まで目一杯楽しんで」

 「裏切りの街角」 
 イントロの2回目、蘭丸が少し低く弾いた気がした。 
 m.c.A・Tの手で生まれ変わった、トリビュートアルバムの「裏切りの 街角」を聴き込んだ後やから、通常のアレンジで聴くと、久しぶりの感覚。ゆっくりに なって終わっていくラストが、新鮮に感じられた。

 まず最初の音が長く響く。それに続く「ダンダンダンダンダンダンダンダン」と いうリズムに、僕は「おおーっ!」と声を出してしまった。客席のあちこちから歓声が あがり、それが増えていく。つまり、演奏もオーディエンスの反応も、 「BIG GIG」の通りだったのだ。 
 「東京の一夜」 
 僕が初めてツアーに参加した84年暮れには、 もうこの歌はうたわれていなかった。後にROCKUMENT IIIや ”My name is KAI”の アコースティックなど、何度か「東京の一夜」を聴くことができたけど、ここまで BIG GIGに近いヴァージョンは初めてやった。 
 感激したのは、それだけが理由じゃない。「口にーしたー」の後に入る音の やさしさ。BIG GIGと違った、オリジナル通りの歌詞。それに何といっても甲斐 の声とバンドの演奏が、「東京の一夜」の繊細な切なさと哀しみを伝えてきたから。 泣けないわけがない。 
 最後のサビの繰り返しに、松藤が「東京の一夜は」とかぶせ、甲斐がまた 「この街で過ごす一年のよう」とうたっていく。

 レコードに忠実なイントロだった。たまらず「大森ーっ!」「大森ーっ!」の声が 飛ぶ。演奏が激しくなっていく。けれど、その裏でオリジナルの素朴な音もちゃんと 奏でられている。甲斐がうたいはじめた。「ねえ、あなーた さみしいひとーねー」 
 「くだけたネオンサイン」 
 甲斐のうたう、大森さんの詞が沁みる。痛い。隠れた佳作という ふうに位置づけられてた曲やけど、こうして聴くとあらためてほんまに名曲やと思う。 
 甲斐は1番からもう「くだけたー ネオンサーイーンー」と後半を上げ気味に うたう。「ぼくーはー うたい続けるー」での歌声が、それにぴったり合った曲の展開 が、それに続く間奏が、さらに胸を締めつける。 
 「二人で買ってきたー」からの部分だけ、甲斐は低く重くうたった。 
 後奏。激しかったバンドの音が、オリジナルの静かさに帰っていく。 JAH-RAHが最後にシンバルを、なでるように静かに揺らした。 
 この曲、やってほしかってん。甲斐たちはもちろん、僕らにとっても特別な人 やったから。甲斐はオリジナルを活かしつつ、今の音で表現してくれた。大森さんへの 敬意と想いを込めて。ステージの上も客席の中も、同じ想いやったよ。 大森さんに届いたかな。

 この雰囲気のまま、大森さんのことを話すMCに入るか、もう1曲ゆかりの ナンバーをやるかとも少し思ったけど、ステージは次の歌へと進んでいく。 そうやんな。あえて触れないんじゃないかという気もしてた。いつも言ってるもんね。 その曲をやることそのものが、自分のメッセージだと。 
 水色の光。Vol.2ツアーヴァージョンの 「シーズン」。 
 別れを目前にしながらも、希望を探す歌だ。「くだけたネオンサイン」の次の曲 にふさわしいと感じた。

 きれいな前奏。緑のライト。シンセの声が曲名を歌ってる。前方の観客が後ろを 振り向いてるから、僕も振り返ってみた。光と影がたくさんの波形を描いていた。 そうそう、最近はこうやって客席までも利用したライティングがあるんや。二階席の オーディエンスも見える。開演前は死角になってたけど、今はみんな立っているから。 
 「ナイト ウェイヴ」 
 手拍子と大合唱。甲斐の「ウーウーウーウー」の声は、オリジナル通りでも、 PARTYのように短くもない。6割くらいの長さ。 
 甲斐が手拍子のアクションをしたから、「波に落ちてく」の ところも手拍子が続く。甲斐も強く歌っていく。 
 「ドラムス、JAH-RAH」という甲斐の声から、長い間奏に突入。甲斐は 左のソデへ姿を消す。JAH-RAHのドラムがすごい!ノリオのベース、前野選手 のキーボードと、ソロが移っていく。松藤は三つ並んだ平たいドラムを叩く。そして、 蘭丸が前へ。身体を傾け、激しく弾きまくる。 
 甲斐はステージに戻ってきたが、ラストのヴォーカルはなし。シンセの声が 「ナイトウェイヴ」と2回繰り返した。ニューアルバムの「ショック アブソーバー」 を連想した。

 「地下室のメロディー」 
 イントロで沸いた客席。まずは「タン タタン」の手拍子を始める。 
 蘭丸は変わったギターを奏でている。銀色で円いボディ。あれもシタールと言う のだろうか。 
 この曲も、JAH-RAHの間奏がいい。タイミングをつめ、オリジナルより ずっと多く叩くのだ。 
 甲斐は間奏では目を閉じて曲を聴き、アコースティックギターを縦に持って 奏でる。

 このイントロでさらに熱狂。やってくれるとは思ってたけど、ここで来るとは。 
 「港からやって来た女」 
 ほんまに盛りあがる曲や。今日はサビで蘭丸と一緒に歌うことはしない。 
 一転して3番の頭は静かになる。それでも手拍子は続く。甲斐は「オーレー はー」から再び強く歌い始める。これまでは「まだ待ってるのさ」からやったけど、 今夜は早かったのだ。 
 「フーッ!」は4回。これがやれてうれしい。 
 騒ぎながらも、弱った男の姿を書き切る強さ、を感じた。

 蘭丸の前奏に会場が聴き入る。 
 「嵐の季節」 
 僕はゆっくりと拳を突き上げる。2回に1回のタイミングで。今日は1回1回の 拳に、いっそう想いを込めたい気分やったから。 
 1番が終わると拍手が沸く。2番の詞がいつも以上に僕をとらえる。「その 気持ちが、お前の愛なんや」と感じる。 
 サビ。繰り返し。ありったけの声をあげ、拳を打つ。左手でも胸で拳を握り 締め。

 感動の拍手のなか、甲斐は「15分後に会おうぜ」と言って去って行った。 
 15分休憩というアナウンスも入る。もしかしたらとは思ってたけど、休憩 あってんな。初めての経験や。 
 それにしても、ここまで13曲、すごかったあ。まだ30曲の半分もいってない のに、盛りあがる曲をこんなに連発してくれるとは。周りのファンの顔も昂揚してる。

 白に着換えた甲斐が、左手から歩み出てくる。再び、拍手と「甲斐ーっ!」の声。 甲斐はアコースティックギターを受け取った。 
 「テレフォン ノイローゼ」 
 今日はオリジナルに近い歌い方。もちろん僕らもいっしょに歌い、コーラス する。いや、コーラスとは言えないほど大きな声で「テレフォン ノイローゼー アハ」。 
 間奏。ネックの端から端まで指を渡らせてから、あのフレーズへ。これ盛り あがるやんなあ。

 松藤と前野選手を呼び入れる。松藤が右、前野選手は左、甲斐も真ん中のイスに、 それぞれ座る。 
 今夜初めての本格的なMC。 
 オリンピックの話題。イメージの違う有名人と名前が1字違いの選手について。 選手の格言についても。 
 このツアーのリハーサルを山梨県のロフトでやったこと。そこは初めてカタカナ が使われた「南アルプス市」だったという。ここの中学校は略すと「みなアル中」だ と松藤が指摘した、リハ休憩中のエピソード。ようそんなん気づくわ。松藤やるな。

 「ビューティフル エネルギー」 
 松藤のアコースティックギターで”My name is KAI”のように。 今夜は前野選手のアコーディオンも加わって。 
 2番は松藤がうたい始めた。拍手が送られる。「ああ、ごらんよ」から、再び 甲斐のうたと2人のコーラス。繰り返しのないショートヴァージョンやった。甲斐が 「汗を流そうぜぇ」と語尾を響かせて曲をしめくくった。

 短い前奏で、甲斐がハーモニカを聴かせる。 
 「BLUE LETTER」 
 やっぱり甲斐の歌声は胸に刺さる。 
 後奏も短かった。「ブルー レター」の甲斐の声。

 3人はそのままで、後ろにノリオとJAH-RAHと蘭丸が戻る。 
 「3時間・30曲は・・・今日は「テレフォン」やっちまったから、31曲に なるんだけど」 
 そうやたんや!みんな大よろこびで拍手。 
 「大変なんだ。定刻通りやらなくちゃいけないだろ。あまりしゃべれないし」 
 今度は、甲斐のMCも聞きたいぞ、という拍手がわく。 
 「そう言ってるうちに早くやれと、バンドも会場もサンデーフォークも思って る。この感じがいい」

 「「安奈」をやるぜ」 
 甲斐の声を聴き、詞をかみしめる。そのときそのときで、沁みる場所はちがう のだ。 
 甲斐が手で示したから、「あんなーあ」と声をあわせる。ほかに客だけに うたわせる部分はつくらず、甲斐が最後までうたい終えた。

 前野選手も松藤も、拍手を浴びて後ろに戻っていった。 
 ピアノの音に歓声があがる。やってくれるとは。 Vol.1ツアーではアンコールで、長方形のパネルがあったなあ。 
 「最後の夜汽車」 
 「僕が寂しいって言ったら」からの詞が沁みる。その3番が終わって間奏に入る ところで、拍手が起きた。 
 ラストはサビを2度繰り返し。甲斐は1度目も少し上げてうたった。 「夜汽車がああー」とうたう声が、まさにこの歌にぴったりで、切なくて。

 「レイン」 
 初めて蘭丸とやった曲。今日はここで来たか。 
 拳で宙を叩く。30周年のツアーや、ファンのアクションもたっぷりあるのだ。

 「ジャーーーン!」といきなり最初の音が響く。KAI FIVEから進化した あのヴァージョンや!甲斐もギターを持ってる。バラードの静けさを一掃するのに 打ってつけの歌。これが後半盛りあがりの幕開けに違いない! 
 「幻惑されて」 
 揺れるオーディエンス。縦に、縦に。僕も身体を縦に揺さぶり、手を打って、 歌う。3番のギターとともに、腕を動かさずにはいられない。続いて襲ってくるサビ 前のリズムに、頭を振って身をゆだねる。「タブー」と歌った甲斐の声が響く。狂乱の 後奏へ。蘭丸がギュワギュワ言わせながら細かく弾きまくる。リズムがはじけ、甲斐が 腕を挙げる。その激しい波が繰り返す。短いフィニッシュが快感。

 続くイントロに「おおーっ!」と声をあげてしまった。 
 「三つ数えろ」 
 虚を突かれた。それがまた意外でうれしいねん。後半ラッシュでこの歌を聴く の、俺は初めてちゃうかなあ。 
 「ワン!ツー!スリー!」で手を挙げ、指を動かした。今までは拳を突き上げて たけど、今日はそうしたい気分やってん。周りにも、やってるファンが多かった。 
 甲斐はオリジナル通りに「いつも路上に」と歌った。「ファッションだけが」で タンクトップに触る。最後の「おっぱじめるさあーーっ」は高く張る。「ウフッフー」 のコーラスが降ってきて、さらに燃える。

 「氷のくちびる」 
 劇的な前奏は、ギターのみならず、JAH-RAHのシンバルの金属音が効いて る。静かに甲斐の歌に聴き入る前半、そしてドラムスから手拍子へ。 あの黄緑のライトが印象的。蘭丸のギターが攻めてる。尖ってる。 
 間奏。ステージ中央に赤と青の照明。左に立つ甲斐、赤に染まる。右に腰を 落とした蘭丸、青に映し出される。 
 甲斐が歌い出すと、松藤のたてぶえが聴こえてくる。 
 熱くも痛いサビの繰り返し。甲斐の声が最高や。後奏は 「アアア アアア アアア アアア アアア」を2回全部歌い切り、すぐに ファルセット。これもフルに。すごいすごいっ!めちゃめちゃ燃える! 
 ラストは「ダダダ ダダダ ダダダ ダダダ ダダダッダーーーン!」のビート に、蘭丸も同じ音をぶつける。ギターを左脚に何度も叩きつけるようにして。おおお! 
 ほんまに名演やった!これほどの「氷のくちびる」は、ちょっと思い出せない。

 「翼あるもの」 
 俺はもう声がかすれてる。もちろんそれでも手を打ち、歌う。甲斐といっしょ に。みんなとともに。 
 間奏。蘭丸が左前に出て来る。甲斐は右奥のキーボード台の上。飛び下りて前へ 走り出る。マイクスタンドが倒れるが、甲斐はすでにマイクを奪っていた。 「俺の海に翼広げ」と歌いながら左右へ動いていく。 
 ラストのポーズ。両手を広げ、それを組み、上へ長く伸ばす。演奏はゆっくり だ。甲斐の手を影が上る。最後まで上らないうちに、甲斐は手を下へ、身体を前に 折る。最後の音がわき上がる。甲斐は身体を起こし、宙を横殴りにしてフィニッシュ!

 間があってから、蘭丸ヴァージョンのイントロ。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 大きな色のかたまりが右へ走ってる。身体を揺すり、手を打って歌いながら甲斐 を見てるねんから、全体のライティングは視界に入らない。 
 「爆発!」で甲斐の腰の落とし方は浅めやった。 「愛をくれー」「誰か俺に」で客席にマイクを向ける甲斐。最後はやはり自分で、 「愛をくれ」と歌った。

 おお、やってくれた! 
 「冷血(コールド ブラッド)」 
 3番前の間奏で、白い光が斜めに回転する。ステージを、壁を、客席を、天井 を。それを左の客席で浴びる。肘を叩き下ろして、歌に向かう。 
 甲斐は後奏で、腕を手で払う動きを見せる。片方の腕ごとに、2回ずつ。それを 繰り返す。このアクションは初めて見た。何かを振り払おうとしているのだろう。 寒さか。どうしてもとれない血なのか。プロモーションビデオでボツになった案に、 甲斐に血の雨が降りかかるというのがあったはずで、それも思い出した。よくよく 考えたら、それは「フェアリー(完全犯罪)」のビデオやったか。この時はそこまで 思い至らなかった。

 「最後の曲になりました」 
 蘭丸のイントロで、さあ行くぞ! 
 「HERO」 
 「そーらはひび割れー」からが特にいい。その勢いのまま、甲斐はマイク スタンドを蹴って横廻し。その時、蘭丸が「ギャン!ギャン!ギャン!ギャン! ギャン!」と煽るのだ。甲斐が、蘭丸が、ノリオが、動き、歌い、弾き、マイクを客席 へ突き出す。 
 ここで本編、全26曲が終結

 激しく、間隔の短い手拍子。まとまった大きな手拍子になっても、間隔は短いまま 。みんな燃えてるのだ。甲斐コールも始まった。 
 長めのアンコールを経て、ステージに白い光が戻る。手を挙げて声援に応え ながら、メンバーが帰って来る。

 蘭丸とノリオが顔を見合わせて、イントロへ。途端に会場中すごい熱気!だって、 この曲やねんもん。 
 「ブライトン ロック」 
 甲斐が左手から走り出て来る。ステージ右へ行って、「イェー!」と叫ぶ。 真ん中の前で「今!」と歌い始める。 
 サビは手で下を指差すアクションだ。大きく、力強く。 
 一度アンコールのいちばん最後に聴いてみたいと思ってるねんけど、 「ブライトン ロック」をアンコールで聴くこと自体俺は初めて。やっぱり最高や。 
 「ブライトン ロック、答はどこだ」を4回とも全部歌う甲斐。これでますます 燃えてしまう。

 「風の中の火のように」 
 最初からずっと激しい演奏だ。甲斐もアコースティックギターを弾いている。 
 「そんなとき君の名を呼ーぶー」 
 蘭丸がサビで歌と同じメロディーを弾く。それも あくまで激しく。

 「メンバーの紹介を」 
 「ドラムス、JAH-RAH!」 今日も激しく叩きまくってくれてる。 シンバルも印象的やった。 
 「キーボード、前野知常!」 席からいちばん遠かったからか、いつもよりは キーボードの音が目立ってないように感じた。でも、もちろん好きや。アコーディオン もうれしい。 
 「もう一人、松藤英男!」 キーボードだけじゃなく、ギターにパーカッション も叩く。松藤がスティック持ってるだけでも、うれしくなってしまう。曲の終わりを、 いろんなパーカッションで味つけしてたな。茶髪の髪は短いが、甲斐バンド後期よりは 長め。 
 「ベースギター、坂井紀雄!」 よく動いてる。甲斐と顔を見合わせたり、甲斐 がノリオのそばに行くことも多かったな。ステージ左前で弾く蘭丸の元へ、甲斐が ノリオを引き連れて来て3人並んだのは、名場面やった。左の甲斐は両手を頭の後ろで 組んで、身体でリズムを取る。真ん中の蘭丸と右のノリオは、身体を合わせての プレイ。 
 「リードギター土屋公平!」 大きな帽子とサングラス。今日は声援にピース サインで応える。左の席でスピーカー正面だったからか、ギターがよく聴こえて めちゃめちゃいい!

 30曲がクセになりそう、というところからMC。 
 「これ以上にならないようにしないと」なんて言ってみせる。 
 それを聞いたノリオと松藤が、顔を見合わせてほほえんでる。30曲以上になり そうなんかな?毎年1曲ずつ増やしていくのもええやん。聴きたい歌ばっかりやねん から。俺は何十曲でも大歓迎や。

 「大黒摩季はまるで自分の歌のようにのびのびと「HERO」を歌ってて」と、 トリビュートアルバム「グッドフェローズ」について。 
 「DA PUMPや、Don Doko Donのぐっさん。 高橋克典くん。ハウンドドッグ」参加メンバーの名前を挙げる。 
 「役者の藤原竜也と飲んだ時に、「ぐっさん好きって、ヤバいっすよ」って 言われた」と笑う。甲斐と藤原竜也の関係は、パンフレットを読めばわかるように なっていた。 
 続いて、最新オリジナルアルバム「アタタカイ・ハート」を出したと告げる。 
 「この30周年のツアーは東京から始まって、福岡で一旦終わる。その後に 日本武道館。 これは、トリビュートのメンバーもゲストで出てくれて。そこまで堪能 してほしい」 
 30周年イベントの武道館、めっちゃ楽しみ。ゲストがあるとは初めて知った。 それも、けっこう多そうやな。 
 「最後のあの長いソロは、誰が弾くんだろう・・・田中一郎になるでしょう」 
 !これは、武道館のアンコールの最後で「100万$ナイト」をやるってこと なんちゃうん!大森さんに捧げるんやろうなあ。絶対見たい。もちろん、チケットは すでに予約してある。

 「「観覧車」をやるぜ」 
 ステージ奥から虹色の光が射す。ここはやっぱりこの歌やんな。 
 間奏の音が分厚いねん、このバンド。素晴らしい。甲斐は両手をあげ、軽やかに まわる。左前へ進む。 
 後奏。「ウォーオオオー」の叫びは、今日は少なめ。甲斐は右へ行き、 オーディエンスに挨拶をする。これ、好きやねん。次は真ん中へ。それから、手を 挙げて、去って行った。

 虹色の照明が放たれたままだ。アンコールを求める者たちに向かって。左から、 桃、赤、橙、黄、緑、青、紫。七色の大きな円がそれぞれ2つずつ。 
 見上げると、客席の空中に虹がのびている。それがやがてぼやけ、二階席の方は オレンジっぽく染まっている。 
 手拍子は早めに大きなゆったりとしたものになる。甲斐コールが叫ばれる。

 リズムを刻む音。三度登場したメンバーが奏ではじめる。甲斐はステージ後ろから 現れた。緑色のタンクトップ。黒のパンツは灰色がかって見える。 
 「ラヴ マイナス ゼロ」 
 俺は揺れながらステージを見る。今日は手拍子してもいい感じに聴こえる。 前野選手のサックスの音色が、こちらに届いてくる。 
 今回はないかなと思ってたけど、演奏は静まった。 
 「サンキュー30周年。じゃあね、また」 
 拍手が起こり、音楽が高まってゆく。

 フィナーレを感じさせる盛りあがりやけど、31曲ならもう1曲歌ってくれる はずや。 
 暗転のなか、きれいなメロディーが流れてきた。スタッフの影がマイクスタンド を並べてる。そうか、「PARTY」やもんね。 
 「破れたハートを売り物に」 
 4本のマイクスタンド。甲斐は左から2番目。甲斐の右が松藤。いちばん右が ノリオ。左端には2人が立っている。スタンドをはさんで右に前野選手、左に蘭丸だ。 JAH-RAHはドラムスのところにいる。 
 1番は甲斐と松藤のハーモニー。2番に入ると、甲斐と前野選手に代わる。 「お前とゆきたい」から、松藤も加わった。 
 蘭丸が後ろへ下がり、ギターをとどろかせる。その蘭丸を前野選手が呼び入れ て、また5人の合唱だ。いや、ちがった。5人と観客全部の合唱や。楽器を手にした JAH-RAHも立ち上がってる。みんなで歌ってるんや。

 このところ定番だった、全員が肩を組んでのおじぎはなし。メンバーそれぞれが オーディエンスに応える。甲斐は前に出て、拍手と声援に何度も応えてくれた。

 甲斐のいなくなったステージに、XXXのライトが赤く残っている。今夜何度も その光で興奮させてくれた。 
 流れる音楽は、ニューアルバムから「かけがえのないもの#2」。僕は席に 座り、天井を仰いで余韻にひたった。

 甲斐ライヴの醍醐味連発やったなあ。「肉体の裏付けがあるカタルシスってものを ちゃんと見せていく」って言うてたけど、まさにその通りやった。俺らは何度拳を 挙げ、叫び、飛び跳ねたことか。充実感でいっぱいや。 
 思った以上に「30周年のスペシャル」を感じさせるステージでもあったな。 
 トリビュートアルバムを聴いてたおかげで、アレンジに敏感に聴くことがで きた。これは意外な収穫。 
 定番曲+新曲+めったにやらないそのツアーのスペシャル曲という布陣は 鉄壁や。初めて見に行った甲斐バンド時代からずっと続く名ライヴ。 これぞ甲斐!

 甲斐の激しい歌い方を堪能した。ニューアルバムにはあたたかい曲も多かった けど、ライヴは激しいやろうなと予想はしてた。けれど、ここまで激しく来るとは。 
 後奏で何度もこだまする甲斐の声。 
 間奏で気配を消す甲斐。でも見てしまう。 
 2番への入り際、甲斐の顔に右から青いライトがぽつぽつと当たる曲があった なあ。 
 たっぷり30曲のボリューム。それでいて、名曲が続々と歌われていくスピード 感もすごい。 
 これほどのステージを見ることができたしあわせ。大阪と武道館でも見ることが できるよろこび。心の底から涌いてくる満足感が身体の隅々にまで行き渡っていく。

 

 

2004年9月20日 愛知厚生年金会館

 

ポップコーンをほおばって 
きんぽうげ 
ダイナマイトが150屯 
電光石火BABY 
FIGHT THE FUTURE 
裏切りの街角 
東京の一夜 
くだけたネオンサイン 
シーズン 
ナイト ウェイヴ 
地下室のメロディー 
港からやって来た女 
嵐の季節

 

テレフォン ノイローゼ 
ビューティフル エネルギー 
BLUE LETTER 
安奈 
最後の夜汽車 
レイン 
幻惑されて 
三つ数えろ 
氷のくちびる 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー) 
冷血(コールド ブラッド) 
HERO

 

ブライトン ロック 
風の中の火のように 
観覧車’82

 

ラヴ マイナス ゼロ 
破れたハートを売り物に