CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ 「HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP」

1994年11月19日(土) 砧スタジオ

 早めに集合場所に行ってて、よかった。おかげで、2台連なったバスの、前の 方に乗ることができた。バスの入り口で会員番号と名前を告げて、乗り込む。 
 フジテレビは新宿にあるから15分もかからないという噂とは裏腹に、 バスはどんどん進んで行く。かなりの時間走ってから、ようやく停まった。やっと着いたと 思ったが、まだしばらく歩かされる。曲がりくねった歩道橋を上ったり。 
 そうして到着したスタジオは、どうやら名前だけは聞いたことのある砧(きぬた) スタジオらしい。 
 収録は夜遅くまでかかるというので、「弁当は出るやろう」「フジの食堂で有名人に 会えるかも」と期待してる人もいたようだ。が、実際は、廊下に並ばされただけ。 トイレに行くにも監視が付くのだった。そら、そんなあまないって。 
 だいぶ長い間、廊下で待たされた。昼飯たくさん食っといてよかった。 
 やがて列は進んだが、まだスタジオには入れない。記念のテレカが配られただけ やった。

 ようやっと、スタジオ入り。入り口に予定表が貼ってあり、フミヤは別録りとわかった。 
 スタジオは、やはりTVで見るよりちょっと小さい感じ。イスはないものと思っていた が、長~いクッションがならべてあった。 
 バスの順番通りやから前で見られるぞと思ってたら、しっかり「背の高い男性は 後ろの方へ」と言われてしまった。仕方ない。右後方に席を取る。 
 正面に、ライヴのセット。左手にトークのセットがある。トークセット側の最前列には、 フミヤのファンが配置された。 
 みんなが座り終わると、いかにもADといった感じの女の子が出てきた。 諸注意やら、手拍子の練習やらがある。右横のスクリーンに甲斐の写真が映し出された ときに、拍手で盛りあげる、という練習もあった。僕はそのとき、ライヴと同じように 「甲斐ーっ!」と叫んだ。 
 女の子に代わって、大阪なまりのおっさんが出てくる。 
 「僕も甲斐さんの歌聴いてたんだ」「「HERO」での客の動きをやってみせてよ」という ふうに、みんなに話しかけるのだが、この前セツが最悪。今日の曲順を全部バラして しまいよったのだ。何すんねん!せっかくTV雑誌とかも見ずに、楽しみにしてたのに。

 いよいよ収録。「あの、みなさんが並んでた廊下を、同じように甲斐さんが入って 来てます」と言われ、みんな大騒ぎ。 
 そして、吹き上がる煙とともに、ダウンタウン登場。歓声が鳴りやまず、2人が しゃべり始めても聞こえないという、TVで見慣れた光景。 
 「あっ、今日はお兄ちゃん多いですね」と浜田。「ぶっさいくやな~」 
 そう言われて、拳を突き上げ、歓声をあげる俺ら。 
 それを見て松本が、「ぶさいくと言うより、東洋人まるだし。こうやって(手を挙げて) るんですけど、手が箸を持つ形になってるからね」

 甲斐が「MUSIC CHAMP」として紹介されて、出て来る。 
 ものすごい歓声。密集してるし、ファンクラブの濃いファンばっかりやから、いつもに 増してうるさい。本当にすごい声援で、甲斐も気分よさそう。 
 オンエアされた分より、もっとすごい声やったと思うけど、あれは男の野太い声を 調節して流したのではないか、とも聞いた。 
 フミヤの登場シーンも録って、さあ、LIVE!

 再び、ダウンタウンとともに甲斐が登場。 
 すごい歓声に、浜田が「ソデにおるとき、よーしゃべんの、知らんやろ?」 
 松本も、「やっぱり、ギター持つと人格変わりますよね」

 バックのメンバーは、武藤さん以外、知らない人ばかり。もちろん、ツトムもヤッチも いない。ドラムは、ひさうちみちおみたいにしなびた感じの人や。 
 「やる前から、こんなに声援されてもなあ」とかいうようなことをギタリスト(今思えば このときが、僕がジョージを見た最初やった)に話しかけてから、さりげなく演奏が 始まる。 
 アコースティックの「風の中の火のように」 
 すごく雰囲気がある。大阪城ホールの「Act Against Aids」を思い出すが、 「ララララ・・・・」と、繰り返しの部分がなかったので、またちがった印象。

 「風の中の火のように」が終わった拍手と歓声のなか、武藤さんがバイオリンを 奏で始める。 
 「安奈」 
 静かに聴きたい曲やけど、じっと聴き入ってたらTV見てる人らに盛りあがってない と誤解されそうや、などと変な心配をする。

 「風の中の火のように」「安奈」と、あたたかい落ち着いた雰囲気やった照明が、 一気にはじける! 
 白いライトが駆け巡るなか、甲斐がギターを投げ上げて、「HERO」 
 HISTORY LIVEや、「嵐の明日」ツアーの頃より、ビートが強調された感じ。 最初のサビを歌い終えると、甲斐はマイクスタンドを蹴り上げる。 
 かなりアレンジされていて、「銀幕の中 泣き顔の・・・」の部分でもテンポが 落ちない。みんなの手拍子も、「タン タ・タン」と、「昨日のように」のリズムに変わること なく、そのまま突っ走る。 
 1番が終わると、そのまま長い間奏へ突入。歌に入るところで、甲斐が右手を 振り上げる。浜ちゃんが一緒に歌うことになっていると説明を受けてたのに、僕は ノリまくって、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。それで、甲斐が浜ちゃんを呼ぶ そのアクションを見ても、「もっとノッていいぜ!」と客を煽ってるんやとばかり思い、 燃えてますます大声で歌った。

 甲斐のMCで、やっと浜ちゃんのことを思い出す。 
 「「HERO」は一体、何回目のアレンジし直しだろう?」とも語っていた。ほんまに 格好良い「HERO」やった。 
 「TVで「HERO」を歌うのは、十何年ぶり」と言ってたけど、ソロのとき「夜ヒット」で 歌ったアコースティック ヴァージョンは、忘れられているのだろうか。

 続いて、ニューシングルの「渇いた街」 
 1番の途中でついに、「通わぬ血の音を・・・」のところを、「渇いた血の音・・・」と 歌う、ニューヴァージョンの歌詞が登場。どうなるのかと、放送のとき確かめたら、 画面に出る歌詞の方がなおされていた。 
 サビでは、ギターを後ろへまわすアクション。後奏で頭を振ってギターを弾いて いたところとともに、格好良かった。短髪の甲斐がそういう動きをするのを見ると、 コンサートに通い始めた頃を思い出しもする。 
 激しい曲では格好良く、バラードでは泣かせ、さすが甲斐や!TVを見た友人も、 「甲斐は前より格好良くなってる」と言ってた。

 再びMC。 
 ロスで見た泥棒の話。靴屋で新しいのを試着して、そのまま走って逃げる 手口だったという。

 「TVを見てる人のために、コレクターズ アイテムを」と言って、演奏が始められる。 
 アコースティック ギターと、不思議な音を叩くドラム。こんなに静かなはずはない。 さっきおっさんが言ってた曲は、こういう前奏ではないのだ。変更があったのか。 甲斐が別の曲をうたいたくなったのか。 
 しかし、甲斐がうたい始めた歌詞は、やはり聞いていた曲のものやった。 
 「世界中から声がする」 
 !「漂泊者(アウトロー)」 
 アメリカの話を聞いた直後やったからか、前衛的な演奏に感じた。NYかどこかの、 地下のクラブのイメージがうかんで。ブルース調のアレンジらしい。こういうのも、ソロ ならではか。 
 ほんとうに貴重で、いいものが聴けたなあ。

 ダウンタウンとのトーク。 
 トーク コーナーの収録になると、左前方の客席が、トークのセットに正面向く ように、斜めに置きかえられる。といっても、そこに座ってる客が自分たちでクッションを 動かさなあかんねんけど。

 行進するのが嫌いだという話は、放映されたものよりも長かった。 
 松本に、「それやったら、スポーツ嫌いでしょう?」と聞かれていた。松本は、 ボクシング以外のスポーツは嫌いやと言うてたから、同意が得られると思ったのだろう。 
 が、甲斐の答は、「ラグビーでもサッカーでも、ポジションによって役割がある。 それぞれが頑張って、自分の役目を果たせばいい。バンドもそれに似ている」という ものだった。1人1人の個性が出せずに、全員で同じひとつのことをさせられるのが嫌だ という。

 かつてのベストテン番組拒否についても、聞かれていた。 
 浜田は、「TVの奴から電話がかかってきたけど俺は切ったんだ、という歌まで あったじゃないですか」と言う。「噂」を知ってるわけで、浜田が甲斐ファンだというのは、 本当らしい。

 「お笑いオタクなのでは?」という話題では、「ガキの使いやあらへんで!」を録画 したテープも、放送開始から1年半分持っていると告げていた。 
 「ダウンタウンDX」も見学に行って、やつらとは面識があったらしい。白岩 ディレクターのつながりもあるのだろう。よくしゃべる仲みたいやけど、さすがに 「ダウンタウンDX」の出演依頼は断ったということだ。だから、最後に「ごっつええ感じ」の コントに出てくれと頼まれてたけど、もちろん出ることはないだろう。

 ほかに、吉岡秀隆に案内されて「寅さん」の撮影現場に行った話なんかもあった。 あの役者陣は全員好きとのこと。 
 結局、必要な収録時間よりずっと長くしゃべってくれた。うれしかったなあ。

 甲斐の出番が終わると、力が抜けた。 
 フミヤはトークのみ収録。僕の席からでは、ちょうどカメラの真後ろになって、 ゲストの姿が見えない。甲斐の顔は生で見たくて、必死に体を折ってたけど、フミヤは そこらへんにいっぱいあるモニターで見た。 
 セットの左端には、バーカウンター。飲み物を運ぶ女性は、映ってなさそうなとき でも、ひとつひとつ話にちゃんと反応していた。

 新人の今西太一の歌も、別録り。 
 甲斐のほかで実際に歌を聴いたのは、「セクシャル バイオレット No.1」の 桑名正博だけ。 
 カットされてたけど、ダウンタウンとの会話で板尾の名前が出てたのが、ちょっと おもしろかった。

 生でダウンタウンを見るのは久しぶりやったけど、やっぱりおもろかった。松本は、 ちょっとしたコメント録りでも必ず笑いとってたもんなあ。

 甲斐のステージも、7月のRED SUDDEN-DEATH TOUR以来。感激した。 距離も近かったし。 
 甲斐の存在感がすごいから、ツトムとヤッチがいないさみしさは感じなかった。 そこまで意識が行かないのだ。

 スタジオを出ると、雨。全く気配はなかったのに。バスまで急いだけど、けっこう 濡れてしまった。 
 それが、新宿に戻ると、ぴたりと止んでいた。 
 まるで、「渇いた街」の初ライヴのために降ったような雨やった。

 

1994年11月19日(土) 砧スタジオ

 

風の中の火のように 
安奈 
HERO 
渇いた街 
漂泊者(アウトロー