CRY

Twitterには長いやつ

甲斐バンド BEATNIK TOUR 2001 ーDo you beat?ー

2001年7月13日(金) ひこね市文化プラザ

 本格的に滋賀に来るのは、初めてや。新快速と快速を乗り継いで、能登川へ。 そこからは甲斐友の車に乗せてもらった。 
 ひこね市文化プラザは、曲線を活かしたデザインと、外壁の落ち着いた色合い で、周囲の風景に溶け込んでいた。駐車場も充分な広さがある。 
 円筒形の建物の階段を上り、しばらく待っていると、予定時刻より前に開場 された。 
 僕の席は、「お列」の右端。前から5列目だ。ただし、ほんまに端の方。 いちばん右に2つだけ席があって、その左側である。 
 このツアーに参加するのは、今日で4回目。でも、こんなに横の席から見るのは 初めてや。今までとちがう角度から見ることができ、新しい発見もあるだろう。 それに、僕は滋賀でのライヴ初体験。甲斐にとっても、久々の土地ということになる。 さらに、今日は大森さんが体調不良で出られない。それによってステージはどう変わる のか。大森さんが弾いていたフレーズは誰が弾くのか。さまざまな「今日初めて」が ある。 
 そして、何よりも、僕は甲斐の歌が聴けるだけで最高にうれしいのだ。今夜も また、あの感動を味わうことができる。

 パーカッションが響くなか、甲斐の影が今日は早めにマイクスタンドの前へ 立っているのが見えた。 
 そこに白い光が浴びせられ、「破れたハートを売り物に」 
 甲斐は黒いジャケットを着てる。会場は今日も大合唱。そのまま「ちんぴら」、 「ダイナマイトが150屯」の熱狂へと突っ込んで行く。

 「今回のツアーは、みんなが知ってる曲をたくさんやる」というMCに、客席から あれをやってくれ、これが聴きたいというような声がたくさんかかる。 
 「(みんなの希望に全部応えていってたら、)そのうち時間がなくなって、小屋 のおじさんから出て行けって言われて、君たちは最後のミラーボールを見られずに 終わってしまうわけやね」

 前奏のライティングが、この席からだと、いつもとちがって見えた。甲斐が ステージ後方へ行った間に、僕は後ろを振り返ってみた。 
 すると、会場全体を何千もの光と影の波が揺れていた。めっちゃ美しい。 
 その光景を胸に歌う「ナイト ウェイヴ」 
 英二から一郎へ。間奏のギターがまたいいねんなあ。

 「ビューティフル エネルギー」で泣けてきた。 
 松藤はとても楽しそうに一郎と英二とならんでギターを弾いている。それを 見ながら。 
 大森さんが今日のステージに立てないという事実に直面しても、甲斐バンドって こんなにすごいんや。あらためてそんな想いがこみあげる。 
 甲斐が戻ってきて、右側のマイクへ。今日はこっちの方が近いぞ。 「ビューティフル エーナジー」というコーラスのなか、甲斐だけが 「きーんいろのー」とハモっているのが聴き分けられた。それが心地いい。 
 曲が終わると、松藤は「サンキュ!」と客席へ短く叫んだ。

 続く甲斐の「BLUE LETTER」と「テレフォン ノイローゼ」も胸を 突く。 
 「テレフォン ノイローゼ」の歌い出しは、ひと呼吸遅らせてのヴァージョン やった。

 甲斐バンドのツアーは、できるだけ初めての土地をスケジュールに組み込むように しているという。 
 今回の「行ったことなさげな街」は、「ここと桐生」 
 「県には来てたんだけどね」と言うと、すかさず「おかえりー!」の声が飛ぶ。 
 「湖のまわりがあまりに気持ちよくて、帰れなくなったこともあった」と、 滋賀の思い出も話してくれる。

 「今回のツアーメンバーは、打ち上げで二次会、三次会になっても誰も 帰らない」 
 こいつらにはあきれるぜという感じでそう言いながら、めっちゃうれしそうな 甲斐。 
 と、ここで、「大森さんはー?」という間延びした声が客席からかかる。 
 悪気はなさそうやったけど、これはあかんやろう。大森さんがいない今日、 みんながんばってすごいステージを見せてくれてるというのに。 
 甲斐は「はあーっ」と溜め息をつき、MCをおしまいにして、 コーラス隊を呼んだ。 
 あんな声がかからんかったら、もっとしゃべってくれそうやったのになあ。 
 しかし、甲斐はひどく怒ってしまったという風ではなかった。 
 ギターを弾き始める前に、「次の曲は、昨日大阪で初めて(コーラスと ぴったり)合った。でも、きっと1度かぎりでしょう」とジョークを言ったのだ。 
 その「円舞曲(ワルツ)」は、果たして今夜も素敵なハーモニーを響かせて くれた。

 次は、NHKホールで「STARS」、大阪で「VIOLET SKY」を やった、その日だけのスペシャルな1曲だ。 
 甲斐は、今夜も他の会場では歌っていない曲をやると告げる。 
 でも、「今までに何をやったかは言わない」 
 そう聞いて、いろんな曲名を叫ぶ声があがる。「バス通り!」というのも あった。 
 「こういうとき必ず名前が出てくるのが、だいたい2つくらいある。1つはもう 出ただろ」と甲斐が言うと、「アップル パイ!」の声も出た。 
 「これで出揃ったな」とちょっと笑ってから、「こういう場合、やりそうにない 曲をわざと言うっていうのがあるだろ?でも、それはちがうんだな。だって、いつか やるかもしんないじゃん」 
 それから、松藤と前野選手を招き入れた。 
 3人が並んでイスにすわる。前野選手はアコーディオンを抱えている。 
 甲斐による2人の紹介。前野選手のときは、「アコーディオン横森良造」と 言う。ここで僕は「前野ーっ!」と本当の名前を呼びたかったけど、タイミングを 逸して、できひんかった。おしい。

 「甘いKissをしようぜ」 
 甲斐の歌声。松藤のギター。それらをほのかに縁どるようなアコーディオン。 その世界に浸って、耳をすませる。 
 ああ、めっちゃよかったあ。今夜はこの曲をうたってくれるんちゃうかと期待 してた。滋賀でも流れてる甲斐のラジオ「21世紀通り」のエンディングテーマやし、 「甘いKissをしようぜ」を聴かせてくれた去年のツアーは彦根に来てなかった から。でも、アコーディオンを使うとはなあ。ニューアルバム「夏の轍」の1曲目 「眩暈のSummer Breeze」でも話題を呼んだ、前野選手のこの楽器を。 
 今日もほんまにスペシャルな1曲になった。

 佐藤英二のギターから始まる「安奈」 
 今夜は、より繊細にうたわれ、演奏されているように感じる。 
 ラストの甲斐のハーモニカが長い。その抒情的な音の最後の伸びを見届けて から、一郎がアコースティックギターで曲を終わらせた。名シーンやったなあ。

 「LADY」でまた泣けた。 
 とにかく甲斐の声だ。歌だ。そして、あの詞だ。 
 緑の照明を裂いて、ピンクのスポットライトがステージ右手を貫いているのを 視界にとらえながらも、僕の意識は甲斐に向かい続けていた。

 さあ、ここから怒涛の盛りあがりや! 
 「氷のくちびる」では、「タン タ タン」のリズムで手拍子をしている人が 多い。そうや、「ビューティフル エネルギー」の中盤でも、今日はこれやってる人が 多かったな。 
 間奏のあの見せ場では、甲斐と一郎が二色に染め抜かれた。 
 「翼あるもの」の2番に入るところで、坂井選手がまわってる!ベースを弾き ながら、ビートにノって。これ、見たかってんなあ!「夏の轍」特典のトークCDで、 そうやって弾くときがあると聞いてから。昨日の大阪でもまわってたらしいねんけど、 僕は見逃してたのだ。ついにやった! 
 間奏が終わりに近づき、ステージの右奥から甲斐が前に走って来る。マイク スタンドの前を過ぎて、左客席最前列へ。僕は右端にいるのに、今日の甲斐は左側へ 行くことが多い。あっちのお客さんはラッキーやなあ。そう思いかけた瞬間、甲斐は 踵を返してこっちへ走ってきてくれた!どう見てもあのまま左の方へ行く動きやった のに。これにはめちゃめちゃ感激した!いちばん右まで来てくれて、そのまま長く 近くで歌ってくれる。もう僕も周りも大熱狂なのだ!もしかしたら、ここで燃えさせる ために、今まで何度も左へ行ってたんかなあ。こころにく過ぎるで。 
 「漂泊者(アウトロー)」では、パーカッション台の上から青いシャツを ふわっと落として、それから前へ走るアクション。甲斐の一挙手一投足を目で追い ながら、歌い、手を打ち、跳びあがって拳をあげた。

 アンコールを求める手拍子。僕は何度も「甲斐ーっ!」と叫ぶ。 
 そのうち、「アンコール!アンコール!」という声が飛び、それが会場に 広がった。甲斐バンドのコンサートに初めて行った頃は、こういうコールやったっけ。 これも他の会場では体験できなかったことで、いい感じでした。

 ステージに戻ってきた甲斐は、「この街でやれてよかった」と言ってくれた。 
 この言葉、ほんまにうれしいよなあ。

 「HERO」でもやはり、「タン タ タン」の手拍子が多かった。気持ちが こもってるから、それもうれしいのだ。 
 「観覧車」を歌う間、身体にかけたバスタオル。甲斐はこれまでマイクスタンド にかけて行ったりしてたけど、今日は坂井選手の首にマフラーのように巻いてから、 ステージを後にする。坂井選手はもちろんそのままプレイ。 
 そして、今夜もこの後奏のギターがいい。一郎は右前へ来て、その音を聴かせ てくれた。

 再びの「アンコール」。ステージに白い照明がついて、メンバーが現れても、 手拍子は続く。甲斐の登場への歓声、「甲斐ーっ!」の声、さらに手拍子。

 甲斐の第一声を聞こうとオーディエンスがようやく静まると、甲斐は一言も 発さず、そのまま前奏が聴こえてきた。あのピアノの音が。 
 「100万$ナイト」 
 静かなままこの曲に入ったの、よかったな。情感が沁みてくる。また泣いた。

 「アナログ レザー」の流れるなか、余韻にひたる。 
 出口のそばに休憩所があり、そこの自動販売機でクリスタルカイザーを買った。 ライヴで歌い、叫んだ後やから、ごくごく飲めてしまう。ROCKUMENTで ステージに近い客席を初めて体験したとき、甲斐たちが曲の合間に飲んでいる ミネラルウォーターのペットボトルが独特の形をしているのが見えて、甲斐友たちとの 間で話題になったことがある。僕らは、どうやらクリスタルカイザーらしいと見当を つけた。それで今、ライヴ後にこれを選んだのだ。もっとも、甲斐のステージ上に 置かれるペットボトルの形はそれから毎回のように変わり、クリスタルカイザーに こだわりがあるわけではなさそうやと判明してんけど。 
 ちらっとそんなことも思い出しつつ、水を飲む。今日の甲斐友たちと話す。 
 ライヴの感動が全身を包んでいる。同じ曲を聴いても、熱く力が湧いてくる ときと、心に沁みて泣けてくるときがある。どちらも深い感動なのだ。 今日は泣けるライヴやったなあ。

 

2001年7月13日 ひこね市文化プラザ

 

破れたハートを売り物に 
ちんぴら 
ダイナマイトが150屯 
きんぽうげ 
フェアリー(完全犯罪) 
眩暈のSummer Breeze 
シーズン 
ナイト ウェイヴ 
ビューティフル エネルギー 
BLUE LETTER 
テレフォン ノイローゼ 
円舞曲(ワルツ) 
甘いKissをしようぜ 
安奈 
裏切りの街角 
LADY 
嵐の季節 
氷のくちびる 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー

 

HERO 
観覧車’82

 

100万$ナイト