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Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ Welcome to the ”GUTS FOR LOVE” Tour

1996年2月9日(金) 静岡市民文化会館

 静岡へは1度来たことがある。中学の修学旅行だ。でもそのとき静岡市には来えへん かったはず。 
 ツアー初日。静岡市民文化会館。7列目の真ん中。 ツアーのチケットはまだ全部は来てないけど、今のところ今日の席が1番近い。 1度でいいから1列目のど真ん中で見たい、という夢がかなう日は来るのだろうか。 
 場内は静かだ。ときどき仲間と拍手を仕掛けてみるが、誰ものってこない。 
 ところが、開演間近を告げるチャイムが鳴った途端、拍手の渦が巻き起こった。 そのまま手拍子に入る。さっきまでの静けさはどこへやら。これが静岡方式なのか? 諸注意を伝える場内アナウンスがかき消されている。やがて、アナウンス嬢に合わせて 手拍子を続けても仕方がないと悟ったのか、異様なまでの盛りあがりはおさまった。 ほんますごかった。びっくりしたで。

 僕の1曲目予想は、「漂泊者(アウトロー)」。11月のライヴでは2曲目にやったし、 わりと可能性あるのでは?みんなでいろいろ話したが、結局11月と同じ「絶対・愛」が 本命だろうということになった。 
 「甲斐どっから出て来ると思う?俺は、走って出て来る気がする」と聞かれる。 
 「あの真ん中からちゃいます?」と答えた。ドラムスの台とキーボードの台の間 のことだ。 
 「そんな訳ない。あんなとこせますぎるがな」と一蹴された。 
 確かにそうかもしれん。

 西部劇のテーマミュージックが大音量で流れる。間に「Listen!」という声が入る。 メンバーがやって来る。 
 音楽が終わったところでドラムが始まる。同時に左奥の一光にスポットが当たる。 あの独特のリズムや。ベース、ギター、さらにキーボード。楽器が加わって行くごとに、 それぞれのプレイヤーがライトに浮かび上がる。 
 果たして、甲斐は真ん中から登場した。例のフレーズのところでついに甲斐が 光を浴びる。ここで大歓声。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 ROCKUMENTヴァージョンの「ダイナマイト・・・」だ。盲点やった。充分考えられた はずやのに、誰も1曲目予想に挙げてなかった。11月にやれへんかったとはいえ、この バンドでの代表的なナンバーや。ROCKUMENTではずっとやってたし、早川義夫との ときもオープニングで歌われた。 
 「ダイナマイト・・・」が終わるとすぐに「絶対・愛」。続けて「きんぽうげ」。赤いライトが 客席を煽る。すごい3曲。このたたみかけが甲斐の言う「ヒット パレード」。

 「今夜がツアーの1発目。目一杯最後までやるから、楽しんで」 
 黒のジャケットにピンクのシャツ。 
 「何かさっきから声がきこえないから、イヤだな」 
 途端に歓声が増える。 
 「「時の人」という曲をやるからね。コーラスがある」 
 ライヴ前に仲間と、「時の人」ではコーラスをやるべきか甲斐と一緒に歌うべきか、 話し合っていた。が、このMCで完璧に、コーラスをやることにした。 
 「ワン トゥ スリー フォー」甲斐のカウントで曲が始まる。「やるよ、いっしょに」 
 拳をあげつつ、「ウォーオ!ウォーオ、イェー!」とコーラスした。 
 ラップになると、ストロボが閃く。甲斐は、この曲のアタマからかけていたサングラス を外す。 
 ここでは甲斐といっしょに歌う。「栄光という」を甲斐は低い方で歌ってた。

 「風吹く街角」のイントロに対する反応は大きかった。みんな「フ~ッ」とか言って。 
 赤と青のライトが印象に残る。小さな円いライトがいくつも並んでいて、左側から 1つずつ青が赤に変わって行く。と思うと今度は赤から青へ。光が走りながら色を塗り 変えているように見える。

 「ツアーの原点は、どの街に行っても、ワン ナイト ショー。ワン ナイト スタンド。 特に初日は何十年やってきても原石をぶつけるしかない」 
 「待たして悪かった。でも今日遅れたのは俺のせいじゃない。昔は「出ない出ない 病」っていうのがあったけど」 
 アルバム「GUTS」の話題へ。 
 「1番自分の心の中につぶ立ったものを、今まで以上に書いた。元気が出て、 若いアルバムだとよく言われるけど。チッ、チッ、甘い。今回ぐらい大人のやり口をやった のはない」

 次にうたう曲について、「これの前は、緊張する。・・・何年やってても緊張すんのは、 いいとこだぞ!」 
 「こういうの、書きたくて、ずっと・・・」

 「スマイル」 
 1番の前半は、コーラスが入らない。むき出しで、無防備な甲斐の声。 
 11月のように、突然終わりはしなかった。最後の音が美しくのびる。甲斐はそれに あわせて静かに右手を下ろした。

 シンバル。前奏。やっぱりやってくれたか。11月のとき、よかったもんなあ。歌い 出しで悲鳴が起こった。静岡じゃあ、久々やもんなあ。 
 「嵐の季節」 
 客に歌わすところは短めやった。ドラムも、音を小さくはするものの、完全に 演奏を止めるまでにはいかない。 
 大合唱で盛りあがったあと、またすごい熱狂がやって来た。「ポップコーンを ほおばって」や!もう騒ぎまくり。 
 後奏で、甲斐が照れ笑い。動きをまちがえたらしい。前に出て来るところだ。 左に出ようとして、ジョージを見て気付き、右前に行く。甲斐の右後ろで弾いていたジョージ は、クロスして左前へ。ここでは、ツアーを通してずっと、甲斐が右、ジョージが左に位置 をとる。 
 おびただしい閃光の中で、甲斐が左腕を掲げる。客たちが拳を突き上げる。 興奮したなあ。

 一光とメッケンが姿を消す。すごい盛りあがりから一転して、アコースティックへ。 
 甲斐とジョージがギター。河野陽吾も後方で参加していたようだ。 
 甲斐がゆっくりと静かなストローク。ジョージが旋律を重ねる。 
 「安奈」 
 今までに聴いたことのないヴァージョン。静かで、情感のある。アコースティック  ギターが活かされている。もちろん、歌声も。 
 それに、歌い方もめっちゃよかった。サビの前をとても静かにうたう。「そんなとき お前が・・・」の部分である。僕は2番の「安奈 寒くはないかい・・・」のとこが好きなので、 抒情的にうたってくれて、うれしかった。 
 そのまま1人でしっとりとうたい切ると思いきや、「愛の灯をともしたい」は客に うたわせた。 
 ともかく、素晴らしかった。

 害バンドの話。松藤のことを「昔ちょっと知り合いだった」と言ってて、笑った。 
 「浜ちゃん、遊ぼ」の裏話。甲斐は朝起きると、スポーツ新聞持って風呂場か トイレへ向かうこともわかった。 
 くだけてきたところで、「最初の2曲は忘れてやろう」 
 甲斐がこの日のMCで何回かコメントしたため、「静岡はすごく静かだった」との レッテルが、このツアーじゅうつきまとったが、盛りあがっていなかったわけでは、決して ない。静岡のファンは、自分たちなりにノッていた。たしかに、大阪や神戸と比べると 声は小さかったけど、そんなこと言うたら東京かって他よりずっと大人しい。それが 土地柄というものだ。

 「破れたハートを売り物に」の合唱。FIVEからずっと続けられているアコースティック  ヴァージョン。

 ドラムセットが運ばれて来て、ミニ編成コーナー。 
 音が始まったのを甲斐がすぐにとめて、メンバー紹介。一光。メッケン。「また復帰」 河野陽吾。「うわさのギタリスト」鎌田ジョージ。 
 「OK、ロックンロールをやろう」 
 「マイ マイ マイ」 
 このバンドの雰囲気のよさを伝えるような曲で、この編成にふさわしい。みんな 楽しそう。甲斐は踊ってる。サビのコーラスでは、河野選手の高い声が目立つ。

 メンバーが元の位置につく。後半盛りあがりのスタート。 
 「もっとやるよ。最新作を」と、「レディ イヴ」 
 「弾けて割れた・・・」のとこで、甲斐は自分の体の右側で手を打つ。みんなそれに 合わせて手拍子。

 「観覧車82」 
 「手をのばせば 届きそうな 星が降る 空の中 俺はお前を抱きしめ 二度と はなさないと 固く 心に決めた」 
 甲斐がそう歌うと、ステージが満天の星空になる。きれいや。客席からため息が もれる。 
 BIG GIGのとき、この部分で観客が空を見上げていた、という話もあったくらいで、 この星たちはこの詞にこそふさわしい。完璧に美しかった。 
 「若さで弾んでた頃の」で星は消え、曲が終わった瞬間、再び姿を現す。 
 その星空の下で、甲斐のアコースティック ギター。 
 「風の中の火のように」 
 2番に入るところで星が消え、演奏も激しくなる。 
 「風の中・・・」の最後のドラムの音が、そのまま「翼あるもの」へとつながって行く。 
 それから、「漂泊者(アウトロー)」だ。「HERO」だ。 
 「漂泊者(アウトロー)」では、「だれか俺に」を客に歌わせる新しいパターンが 登場。「HERO」でも、「ジェームス・ディーンのように」と歌わせたし。

 アンコールの1曲目は、「GUTS」 
 やっぱり、いい。最後の「ガーッツ!」と叫ぶところは低く歌ってた。後奏では何度も 「GUTS」と叫ぶ。 
 甲斐が手をあげる。メンバーが楽器をはなれる。1曲だけ?それより、アンコール 1回なん?!! 
 なんせ「GUTS FOR LOVE」ツアーやねんから、「GUTS」で終わることは充分 考えられる。実際、きっとそうなんやろうと予想してた。じゃあ、このまま終わってしまうのか? 
 必死のアンコール。少しでも多く聴きたい!もっと、歌ってくれ!

 甲斐が1人で出て来た。やった!!まだやってくれる。ブルーのシャツ。アコースティック  ギター。 
 かき鳴らし始めた。 
 「らせん階段」 
 新曲のカップリングに選んだだけあって、甲斐は、今、この曲をうたいたいのだろう。 
 「つまずいては起ち上がり よろめきながら生きている」「傷つけることだけを  ただ覚えた僕は」の部分を、甲斐はささやくようにうたう。 
 間奏が格好いい。2番に入る直前にストロークが密度を増す。ここが、ROCKUMENT の4月にやったときと変わっていた点。

 「OK ここでもう1回、メンバーを呼び戻そう!」 
 観客大よろこび!このセリフは大ヒット。めっちゃ気に入った。燃えたっちゅうねん。 
 イントロでまたまた客席に火がつく。 
 「港からやって来た女」 
 ここでやってくれるか。「オールナイトニッポン」のアンケート で健闘したことを考慮してくれたのかもしれない。 
 2番のあと、各楽器の見せ場があるのも定着した。メッケンのベースソロで 一旦静まり、「オ~レーわあーっ」からもう1回盛りあがるのだ。 
 「フーッ!」も、しっかり4回ある。 
 予告通り、最後まで騒げる内容やった。

 SingerやROCKUMENTのように、ずうっと歌ってなかった曲は、なかった。それより も、ROCKUMENTの収穫を注ぎ込んだ形。「ダイナマイトが150屯」「風の中の火のように」 「観覧車82」など。 
 アンコールの1回目が1曲、2回目が2曲というのは初めてではないだろうか。 ちょっとびっくりしたけど、考えてみれば、上手い工夫である。ツアータイトルにもなってる 「GUTS」を目立たせることはできるし。しかも、観客に次の展開を読ませない。1回目と 2回目のアンコールが逆やったら、僕らは2度目のアンコールを叫びながら、「あとは 「GUTS」をやって、おわりやな」と予想したはずや。

 帰り道、大阪から来た仲間と「今日のMVP」を言い合う。僕は、「観覧車」と言いたい とこやけど、「ポップコーンをほおばって」。「安奈」に深く感銘を受けた者もいた。 「「らせん階段」は今の時代にぴったりの歌詞や」という意見も。たしかに。 
 今夜はみんなで静岡に泊まって、明日は名古屋へ乗り込むのだあっ!

 

1996年2月9日(金) 静岡市民文化会館

 

ダイナマイトが150屯 
絶対・愛 
きんぽうげ 
時の人 
風吹く街角 
スマイル 
嵐の季節 
ポップコーンをほおばって 
安奈 
破れたハートを売り物に 
マイ マイ マイ 
レディ イヴ 
観覧車82 
風の中の火のように 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー) 
HERO

 

GUTS

 

らせん階段 
港からやって来た女