CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ ALTERNATIVE STAR SET ”GUTS”

1996年3月17日(日) 高知ZEYO

 目が覚めると、まだ大雨。鳥取で崖崩れがあったと、TVが言ってる。すごい低気圧 だから注意しろと。 
 大阪では放送されていない「ダウンタウンガキの使いやあらへんで」を楽しんでから、 朝食。バイキングだ。洋食を食べてんけど、せっかくの高知やからと、ほうれん草にかつお節 を大量にかける。 
 意外なことに、ホテルを出る頃には、雨は傘を差さずに済む程度になっていた。大体、 僕はこの旅に傘を持ってきてないけど。 
 多ノ郷駅のホームで振り返ると、山から白い霧がもくもくとわきあがっている。何か 名残惜しい。昨日はほんまに1日中いろんなことがあった。 
 鈍行で高知へ。切符のほかに、バスのように整理券が要る。なんでかわかれへん。 ワンマン電車というのは、初体験やった。

 ホテルは、はりまや橋の近く。橋の下に川はなく、ちょうど川をつくる工事中やった。 「土佐の高知のはりまや橋で 坊さんかんざし買うを見た」という「よさこい節」は、「毛の無い 坊さんがかんざし買って、何に使うんかね~」という意味のコミックソングだと、ずっと思い 込んでいたが、大悲恋の唄だと今回初めて知った。 
 高知の街を歩いていて目につくのは、路面電車。そのカラフルなこと!車体全体が 広告になっているのだ。リゲインの電車は、真っ黄っ黄。アステルトリコロール。稲妻と、 「鉄は熱きうちに打て!」「少年老いやすく・・・」などの格言が描いてあるのは、予備校のだ。 いちばんすごかったんは、電車の前と後ろがドラえもんの顔になってるやつ。 
 行き先が「後免」という町で、「ごめん」と書いてある列車も、ぎょっとさせる。

 とりあえず荷物を預かってもらおうとホテルへ行ってみる。すると、すでに掃除が済んで いるからと、1時すぎにもかかわらず、入れてくれた。 
 で、2時ごろには会場の高知ZEYOに着いた。 
 ライヴのポスターは貼ってあるが、誰もいない。「1番乗りやんけ、ふふふ」と思って たら、14番の整理券を渡された。ハンコはあるものの、なぜかノートの切れ端。急遽出す ことにしたんかな。しかも、「すいません、今濡らしちゃって」と、よれよれ。 
 ホテルに帰る途中、竜馬誕生地を見に行く。その後歩いてたら、いきなり高知城天守閣が見えた。迷ったけど、ホテルで休むことにする。 
 これが大正解!たまたまつけたTVで、「夕陽のドラゴン」をやっていたのだ。甲斐が ゲストで出た、BSの番組である。 
 Kiss-FMで言うてたトータス松本の番組って、これやってんなあ。甲斐は、ラフな スタイルに白いキャップをかぶっている。サングラスとかより、こっちの方がいい。トータスらや 客たちも、「肌がきれい」「若い」を連発してた。 
 「GUTS」という言葉は、どっちがパクッたとかじゃなく、同じ東芝、同じ編成会議で 出たとのこと。 
 バンドのスポークスマンが出て行って1人でインタビューに答えるというのは、日本で は甲斐が最初だったらしい。「ツアー」という言葉を使ったのも最初で、それまでは 「全国縦断リサイタル」という言葉しか知られてなかったそうだ。 
 トータスは、「「100万$ナイト」とか聴いてました」ということで、「兄貴、見てる?!今、 甲斐さんとしゃべってるぞー」と叫んで、甲斐から後頭部にツッコミを入れられていた。 
 最後に、これから行く高知ZEYOの話が出て、びっくり。「あそこはすごくて、酸欠に なりますよ」と、トータス。 
 番組自体もよかったのだが、今日は2時間スペシャルで、甲斐が出てくるのが遅くて あせった。しかし、甲斐の出番を最後まで見てからでも、何とかライヴには間に合った。

 番号順に階段にならぶ。14番なんて初めてや。 
 入ってみると、バナナホールよりも近い!いちばん前は、端には柵があるものの、 真ん中はロープのみ。スピーカーの間にバイト君が座りこんで、わずかに客のステージ突入 を阻んでいる。彼は両方とも耳栓をしていた。 
 僕はど真ん中、2列目と3列目の間ぐらい。目の前の床に、蛍光のKの字が光って いる。

 青いシャツの甲斐が登場。やっぱり近いぞ!今までで最高や。つま先まで見えるし、 血管までも見える。ライトがついていないときでも、甲斐が見える。 
 「ダイナマイトが150屯」から、場内すごい声。思いっきり歌っても、自分の声が聞こえ ない。 
 「絶対・愛」、マイクスタンドは横廻し。ヴォーカルのすぐ上の天井からライトが下がって いて、縦に廻すとぶつかりそうや。今日もマイクはコードあり。 
 「きんぽうげ」のラストは、ところどころ計3回客に歌わせる。自分のすぐ前に向け られたマイク。デュエット気分や。 
 オープニング3曲でめちゃめちゃ盛りあがる。汗が出てきたところで、冷気が来る。 場内に、冷たい風が吹き出されたのだ。

 これまでで最高の「時の人」 
 「「時の人」という曲をやるからね」「いっしょにコーラスしてね」「やるよー」 
 ひとことひとこと全部にすごい反応。 
 「ウォーオ!」「ウォーオ、イェー!」で拳をあげるのを、みんなもやってくれた。 
 ラップの部分では、ストロボの代わりに、白いライトが横に走る。

 暗転。歓声はやみ、みんな静まって次の曲を待つ。闇の中で「ワン、ツー、スリー、 フォー」と一光の声が響く。 
 「風吹く街角」 
 後奏。いつもより早くから一光が叩きまくる。甲斐の「ローンリネス OH!」も多い。

 「このバンド、白熱してきたんで」 
 アンプラグドをやめて、この形態にしたというMC。 
 そして、「スマイル」 
 甲斐すごい汗。澄みとおって、声がよく出ている。 
 最後に下げた右手、ライトが消えてからすくい上げる。

 甲斐もギターを手にして、「嵐の季節」 
 1番の頃は、前の客はかたまり状態。だんだん拳をあげる人が増えていく。 
 甲斐はサビであまり叫ばず、客といっしょに歌っていた。

 甲斐が椅子にすわり、アコースティックの始まり。 
 「2人で泣いた夜を」から、合唱がめっちゃ大きくなる。 
 「安奈お前に会いたい」は客にうたわせ、「愛の灯をともしたい」は甲斐。「サンキュー」 もあり。 
 ラスト。ジャカジャカ ジャカ ジャカ ジャーンとたくさんギターを鳴らす。

 「前は、ものすごく前に来てるよね。1歩半、下がる気ない?」 
 前の僕らは即座に、「ないー」と答えた。 
 が、「それで、すわらない?」と甲斐が言うと、拍手が起きた。 
 「後ろ、2歩下がって」 
 でも、言うこと聞かない奴がいると、「俺は花園ラグビー場で2万2千人動かしたことも あるんだ」 
 全員すわり終わると、後ろの客が大よろこび。拍手と声援。「甲斐さーん」 
 今日はアコースティック長くやるから、「こういうやり方もあるんだ」 
 全体的に動いたから、それまで左側にいた女の人の後ろになってしまった。「何か、 前行っちゃって、ごめんなさい」と言われる。福岡とおんなじや。

 観客全員が床にすわった状態で、MC。 
 「ゆうべここの社長と飲みに行って、ZEYOっていう名前の由来聞いたけど、全然 大したことなかった」 
 「大阪のやつに聞いたんだけど、高知には、「エチオピアまんじゅう」っていうのが・・・ ある?」 
 地元の人たちが爆笑。確かにあるらしい。何やねん、それは?!これは明日探す しかない。 
 「四国はいつ以来だっけ?」 
 「88年」という返事がある。 
 「そうか・・・。君に聞いたんじゃない!今漠然と耽ってたのに。くそお、思わずうなずい てしまった」 
 「昨日は高知から2時間車で・・・拉致されるのかと」 
 会場については、「味のあるホールだった」

 「橋の明かり」 
 あの声で天の上からうたいかけられているよう。新たな感動を体験。

 「やせた女のブルース」 
 短めの間奏で、メンバー紹介。メッケンコールが多い。 
 「冷たく 笑ってさあ ジャ ラーン」 
 ここのダウンとアップのストロークが心地いい。ブルース! 
 ラストはダウンストロークを2回続けた。

 ジョージが弾き始めたのを甲斐がすぐにとめて、「ブラッディ」と告げる。前から3列 くらいまでにはその声が聞こえ、拍手。 
 例のやせたローディがメッケンに伝え、メッケンが一光に右拳を突きあげてみせる。 一光がスティックを変える。 
 今の気分で、急遽曲目の変更や。 
 甲斐が「いい?伝わってる?」と言ってから、「ブラッディ マリー」が始まる。 
 松藤がいないからか、5月のROCKUMENTに近い感じ。 
 急やのに歌詞完璧と思ってたところへ、ニューヴァージョン。「切れることのない絆  今も僕をしばりつける」

 GUY BANDの話のあと、「もう1曲懐かしいやつを」 
 やる前に一光を見て確認。スティックがちがったのか、「地下室」と甲斐がひとこと。 一光があわてる。一光1人だけが、何か別の曲をやるつもりだったらしい。これに甲斐が 大ウケ。何回も大きく「ハハッ」と笑う。それがおさまらない。「そこまで笑う?」とジョージが 言っても、まだ笑ってる。 
 一光に、「「バス通り」をやろうなんて、そんな」 
 この言葉で大拍手が起こる。 
 「昨日は「裏切りの街角」やったんだけど」で、さらに大拍手。ものすごい沸きよう。 
 「だからやらないって。リクエスト大会じゃないんだ。全部一光が悪いんだよ、間違え るから」と言ってまた笑う。 
 リクエストに応えてくれという客たちに、「せっかくいいやつやろうと思ったのに」 
 「地下室のメロディー」 
 その、いいやつにみんな拍手。

 「6月、7月に新宿のパワーステーションで、ROCKUMENT IIをやる」と初めて発表。 
 「このツアーの成果が、それに組み込まれていくことになるでしょう。その練習じゃあ ないよ。本気でやってるから」

 「じゃあ」という言葉に、もう客が立ちはじめる。 
 「ハードなやつを」 
 すでにすばやく総立ちになっている。 
 「レディ イヴ」 
 「弾けて割れた」では、甲斐がしなくても、みんなあの手拍子。「太陽がなぜ」で、甲斐 も始める。「星で」で天を指差す。

 「風の中の火のように」 
 はじめの甲斐のギターは、今日も4回。1回目はきわめて静かに。

 「ディー!ディー!ディー!」でバックのライトが光る。「ジキ、ジキ、ジキ、ジキ」でいき なりストロボ。イントロから大騒ぎ。 
 「ポップコーンをほおばって」 
 すでに1番で甲斐の弦が切れてる。

 「漂泊者(アウトロー)」のROCKUMENTヴァージョン。 
 「希望の時代だと言ってる」で振る指は、はっきりと。

 最後の「HERO」 
 「月はくだけ散っても」のあと、今日はコードを廻す。 
 客に「アー、ハー」と言わせる。マイクがすぐそこや。後奏の「HERO」も、左右に 歩いて行って客席にマイクを突き出す。1番最後の「HERO」だけ自分で歌う。

 短いアンコールで甲斐が帰って来る。黒いTシャツ。

 「らせん階段」 
 「かけのぼおってゆくう  ジャン!」と鳴らされるギターに合わせて、拳をあげ「ハーッ!」 と叫ぶ女性ファンがいる。このヴァージョンにあってないと思うのだが、彼女はずっとやって いた。

 「もう1回メンバー呼び戻そう!」が出て、3人が現れる。ジョージと一光は、白いツアー Tシャツ。 
 「GUTS」 
 一光がスティックを落としてしまう。すぐに別のを取り出して、叩き続ける。落ち着いた もんや。当たり前なんやろうけど、予備のスティックが用意されていると初めて知った。

 蒼いライトの中、長いアンコール。 
 はじけた「ワン、ツー、ワン」の掛け声と、力強いストローク。 
 「破れたハートを売り物に」 
 大合唱。今日は一光がタンバリンをシャラシャラいわせる音が気持ちいい。 
 「雨の日も」くらいで、甲斐が左手を巻き込み、みんなを煽る。「俺の愛は」あたりを 客だけに歌わせる。

 一光と肩を組んだ甲斐。去り際にピックを投げる。右の方、5列目の辺へ飛んで行った。

 1列目の真っ正面に行ってみる。やっぱり、さらに近い。前に何にもない。1回ここで 見たいぞ!

 

1996年3月17日 高知ZEYO

 

ダイナマイトが150屯 
絶対・愛 
きんぽうげ 
時の人 
風吹く街角 
スマイル 
嵐の季節 
安奈 
橋の明かり 
やせた女のブルース 
ブラッディ マリー 
地下室のメロディー 
レディ イヴ 
風の中の火のように 
ポップコーンをほおばって 
漂泊者(アウトロー) 
HERO

 

らせん階段 
GUTS

 

破れたハートを売り物に

 


 

3月18日(月)

 昨日は暑かったはずや、19度。今日はぐっと涼しくなるらしい。予想最高気温11度。 
 まず、アイスクリンを食べに行った。製造元が、はりまや橋の近くにあるのだ。 なつかしい素朴な味で、めっちゃうまい。ふつうのバニラの他に、四国にちなんでポンカン味 のも食べてみた。 
 そして、いよいよ「エチオピアまんじゅう」を探し始める。ライヴがない今日の、最大の 仕事である。 
 ところが、見つからない。有名なまんじゅう屋さんでも、広大な土産物センターでも、 駅ビルでも。 
 どうやら、名物ではないらしい。それもそうか。どこかでひっそりと、マイナーに売って いるのだろう。結局見つからずじまいで、悔しい。

 中途半端に時間ができたので、高知城に行ってみる。軽い気持ちやってんけど、感動 してしまった。大阪城みたいに周りがやかましくない。いい雰囲気や。 
 特に追手門がよかった。門のそばにだけ、静寂がある感じ。何百年か前、ここに たくさんの侍たちがずらっと並んでたんやなあ。そう思うと、いきなり目の前にその光景が 浮かんできて、背中がぞくっとした。「歴史のロマンを感じる」なんていう言葉は、紋切り型で うそっぽいと思っていたが、これがそうなんか、と初めて実感した。

 すっかり城にハマってしまい、鈍行では高松着がかなり遅くなる時間になってもうた。 それで、特急に乗ることにする。節約の予定はどこへやら。でも、その分楽しんでるから ええねん。 
 高知では名物をほとんど食べることができなかったので、せめて駅弁だけでもと、 「かつおのたたき弁当」を買う。「ちょうど今入ったとこ!」と売店のおばちゃん。本格的な たたきはもっとうまいのだろうが、これもおいしかった。わさびが思いっきり鼻に来たのは、 自分のせいやし。

 高松は、今回まわった中で最も大阪に似てる気がした。やっぱり距離が近いせいなの か。商店街のアーケードがたくさん連なっている。そのうちの3分の1は、十三みたいな ムード。 
 初めて香川へ来て、讃岐うどんを食べずにいられようか! 
 雑誌で見ていちばんうまそうやった「かな泉」に行く。店のある通りは、エッチな店の 客引きがいっぱい。「客引き禁止」の立て札があるぐらいやから、普段から多いのだろう。 
 そばには寿司屋も多く、「四国のすしってうまいんやろうな。でも、予算ないもんなあ」と 思いつつ「かな泉」に入ったら、思わず「ちらし寿司定食」を注文してしまった。「天ざる」に しようと、大阪から決めてたのに。 
 他に行ってないからわからんけど、この店にして正解やった!うまい!これが讃岐 うどんかあ。好物のあなごも食えたし、一石二鳥。 
 ただ、大阪に帰ってから、駅前のデパートに支店があることを知ったときには、 ちょっと複雑やったけど。

 その後、明日ライヴのあるオリーブホールの位置を確認しに行く。このホールも 商店街の中にあった。 
 松山へ行く前に読んでおこうかと、近くの本屋で「坊ちゃん」を買う。この年になって まだ読んでなかったのだ。