CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ ALTERNATIVE STAR SET ”GUTS”

1996年3月20日(水) 松山サロンキティ

 いよいよ四国ライヴも最終日。今日は初めての1日2回公演なのだ。 
 高松から松山へ向かう特急はひどく揺れて、「坊ちゃん」を読むどころではなかった。 でも、高松駅で買った「あなごめし」はうまかった。ごはんは味つき。 
 松山に着いてからちょっと迷ったが、昼過ぎに川沿いのライヴハウスにたどり着いた。 
 四国に来て知り合った甲斐ファンたちが、すでにいる。始発の鈍行で高松を出た人や、 高松ライヴ後に宇和島まで行って戻ってきたという人もいる。なんか、みんなすごい。 
 10人以上並んでたけど、1回目はファンクラブ優先で、ひとケタの整理番号が もらえた。

 近くの商店街で腹ごしらえ。デカいあべ川もちを3つ食ったが、全然ダメ。やっぱり 「エビスヤ」はよかったなあ。 
 花のきれいな神社を見つけたので、1人で時間を潰す。寒桜に、紅梅、白梅もある。 どれもみな美しい。「薫風や・・・」の子規の句碑が立っていた。松山には、あちこちに句碑が ある。子規や虚子が出た俳句のまちである。

 会場に戻る。リハーサルが聴こえるなか、みんな待ってる。大阪のファンが来ていた。 昨日東京に帰ると言ってた方も、やっぱり参加。先月の博多で知り合った夫妻にも再会した。

 例によって、「真ん中は緊張するから」「ギターが見たい」という人が多かったため、 2日続けて最前列のど真ん中。何という幸運。うれしすぎます。 
 四国はどこも満員だったが、松山は特にすごい。後ろの扉が閉まれへんぐらい。 ぎっしりと人が立ってる。

 オープニングのBGMは、静かなオペラ調。いつもエンディングでかかっている曲だ。 
 客席左後方からステージに伸びた黒い階段を、甲斐が下りて来る。階段の側面は 金網やから、ずっと甲斐の姿が見える。みんな左後ろを振り返って、歓声をあげてる。 
 四角いサングラスの甲斐がステージに降り立つ。ギターを手にして、うたうは 「らせん階段」。今、この歌にかなり思い入れを感じているようだ。 
 ジョージを呼び入れて、「テレフォン ノイローゼ」 
 早くも「・・・ときたもんだ レッドレッドシューター」の口癖が出る。

 「初めての1日2回。初のライヴハウス ツアー。7、8年ぶりの四国」 
 このセリフに、みんな沸く。「待ってたよー」の声も。

 「やせた女のブルース」 
 四国に来てから、僕はこの曲にハマっている。 
 間隔をたっぷりとった長いメンバー紹介。 
 ラスト、今日はダウンストローク2回やった。

 ツーステージのため、昨日の高松までとはかなり曲順がちがう。まだ前半やけど、 甲斐が「さあ、一光」と呼び掛けて、「破れたハートを売り物に」がはじまった。

 出演した「浜ちゃん遊ぼ」の裏話。2人とも自分の車は出さずに、ロケバスで楽しみ ながら、池袋のボーリング場まで行ってんて。 
 「TVの影響力がなくなったから、逆に、今は出ていいんだ」

 「この歌は、1番を函館で書いて、2番は東京で書いたんだけど。1年後に函館に行った ら、酔った客がこれを歌ってて、じ~んと来た」 
 弾き始める前に、左ソデのやせたローディに「(ハーモニカホルダーを)ゆるめ過ぎ」 と、ちょっと笑う。締め直してから、うたい出す。 
 「安奈」 
 客の合唱に対する言葉、今日は「サンキュー」ではなくて「サンクス」

 「このあたりからそろそろ、1番新しいアルバム「GUTS」からの曲が出てくるわけです ね」 
 拍手が起きる。 
 「スマイル」へ向けての、久石譲に関するコメントが、今日は長い。 
 「「となりのトトロ」とか「ソナチネ」とか、「天空の城・・・・・・ラピュタ」とか、「風の谷の ・・・・・・・・・・・・」 
 次の言葉が出てこない。思わず僕は、最前列から「ナウシカ!」とささやいた。 
 すると、「ああ、そうそう」という感じで、「・・・ナウシカとか・・・」と甲斐が先を続けた。 安田成美がみかん箱の上でこの主題歌を歌わされた、という話に発展する。 
 たったひとことだけやったけど、甲斐とやり取りができて、うれしかった。これも初体験 や。

 「ポップコーンをほおばって」 
 すぐ目の前で、甲斐がギターを弾いている。拳を振り上げると、ギターを弾く手に 当たりそう。「ポーップコンをー」の前に拳を揚げるのは遠慮して、3連打だけにする。演奏の 邪魔になったら大変や。

 「漂泊者(アウトロー)」 
 いつもは「希望の時代だと言ってる」のとこで指を振るけど、今日は少し遅らせて 「エキサイティングな」で。

 内容が変わってるから、アンコールで何をやるのか見当がつかない。 
 そこへいきなりのビート。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 2月からずっと聴いてて、「絶対・愛」に続いて行く流れが体に染み込んでいた。が、 「ダイナマイトが150屯」から間髪入れず「きんぽうげ」に突入。イントロのギターに観客が 熱狂。 
 甲斐は狭いステージでマイクスタンドの横廻しをきめ、「どうだ」という目でやせた ローディを見た。 
 後奏では、甲斐がギターに合わせて「おおんおお・・・」とうなるように歌う。 
 「絶対・愛」は歌われず、1回目のアンコールは2曲やった。

 甲斐が三度階段をやって来る。スタッフがついていたが、降りるのに勢いがつき過ぎて、 ちょっと危なかった。 
 最後は「GUTS」 
 これははずせない。アルバムだけでなく、ツアーのタイトルチューンでもあるのだ。

 外へ出て、もう1回会場裏の公園に並ぶ。2回目の整理番号は8番だ。 
 1回目のステージ終了が7時15分。20分にはもう並び始めたが、なんせ終わった ばっかりである。予定の7時半に開場できるわけがない。結局、中に入れたのは7時45分。

 今回は真ん中の位置にカップルが入ったため、僕は1列目やけど、左の方。福岡では やや左寄りやったけど、2月からずっと通ってて、僕はなぜか左側から見るんは初めて やった。 
 正面のカップルの男の人には、高松の会場前で「福岡で会いましたよね~」と声を かけられたんやけど、僕は覚えてなかった。ライヴ中に「すいません。前に来ちゃって」と 言ってきた人だろうか。

 BGMは、さっきと逆。いつもの西部劇の音楽。20分遅れでスタート。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 さっきアンコールで聴いた曲で、また盛りあがる。初めての感覚。 
 甲斐が初っ端からモニターに足をかける。そんなん俺が目の前におるときにも、 やって欲しかった! 
 メッケンのそばに立ってるせいか、最初からベースの音がビンビン響いて来る。 メッケンは、あれでけっこう過激なプレイヤーなのかもしれない。うまいとは前から思って いたが。

 今度は「絶対・愛」があった。1回目にやらんかったこともあってか、いつも以上の 盛りあがり。 
 甲斐がコードを廻した時に、マイクがジョージに当たってしまう。びっくりした表情で 寄って行く甲斐。子供のような輝く目。

 「嵐の季節」がなくなってる。甲斐がギターを持つ3月ヴァージョンも、好きやってんけど。 2回公演のためだろうか。

 「安奈」の前に甲斐がジョークを。 
 「このギターは新しいんですが・・・気に入ってません」 
 「今のいいだろ?」とジョージに言ってる。 
 左ソデで、やせたローディが「自分がそれだって言っといて!」と、ウケてるのが聞こえ てきた。

 「松山は、甲斐バンドがまだあるんじゃないかというぐらい、ラジオとかでいっぱい かかってて。10年前に関係は絶ったのに」 
 客席が大いに沸く。 
 今から思えばこのコメントは、再結成へのフリだったのか?

 ニューヴァージョンの歌詞が「橋の明かり」で。「君はこの部屋から いきなり消えた」の 「消えた」を「出て行っちまった」とうたう。 
 いつもながらこの歌では、甲斐の声のよさを思い知らされる。

 いくつか曲目は変わっているが、「地下室のメロディー」は動かない。3月のアコースティック コーナーの中心になっている。四国のファンの人気も高い。1番が終わると、拍手が起こる。

 「松山は「ダウンタウンDX」うつってるの?」 
 地元ファンから、Noの返事がある。 
 「いやな予感がするなあ。まあ、いいやー」 
 やんちゃな言い方をして、「レディ イヴ」へ。

 「ポップコーンをほおばって」の2番前の間奏で、甲斐が左に来てくれた。端っこまで 行った時、ギターの先が隅のライトに当たってしまう。「おお~っ!」という感じで目を丸く して、やせたローディを見る。

 「HERO」では、1番と2番の歌詞が反対やった。

 2度目のアンコール。舞台左で、メッケン、一光とやせたローディが話して笑っている。 
 「最後はみんなではなばなしく散ろう」という甲斐の言葉から、「破れたハートを 売り物に」

 階段を昇って行く甲斐たちを見届ける。とうとう初の1日2回公演も終わってしまった。 僕は1列目に残って、感慨に耽っていた。 
 そのとき、右の方で何者かがステージに這い上がった。何かを奪って逃げて行く。 左ソデのあのローディが、「こらーっ!」と叫ぶ。でも、そいつはもう走り去っていた。 
 やせたローディはしばらく「こんちくしょ~。ほんとに、もう」などと言っていたが、 「2回はキツいよ~~」と、その場にすわり込んだ。確かに大変やろうなあ、スタッフも。 
 男のファンが1人寄って行って「ピック下さーい」と頼んだが、「ダメ。みんな欲しいん だから、誰か1人にあげると不公平になるでしょ」 
 僕も初めて彼に声をかけた。四国でずっと近くで見てて、この人には親近感も 湧いていた。 
 「お兄さん、お疲れさまー」 
 「ありがと」やはりだいぶ疲れてはる様子。 
 「また京都で」と言ったら、 
 「京都も来んの?」と素っ頓狂な声をあげた後、「まいど」

 翌日は、夕方まで松山を観光。 
 「ぎょくすい」のかき釜飯、「もち茂」の和菓子に感激する。中でも、「もち茂」のしょうゆ 餅は最高!!!まんじゅうは全種類あんこがちがうし。「よそのんは甘過ぎる」ときっぱり 言い放つおばちゃんの自信もすごいが、言うだけのことはある!「ここが和菓子日本一!」 と僕は勝手に思っている。

 ほんとに四国ではいろいろあった。 
 1列目のど真ん中で見る。ライヴで甲斐と言葉を交わす。甲斐にさわる。3つの夢が 次々と実現した。 
 葉山村酒蔵ホールは、今までのどの会場よりも個性的やった。そこからの帰りには、 えらい目に遭った。 
 初めて来た四国は新鮮やった。親切な人たちが多く、葉山、高知、高松、松山、どこ も好きになった。新たな甲斐ファンとも知りあえた。 
 僕はもうすっかり四国びいき。また絶対行くぞ!それも何回も。

 大阪に帰ってしばらくしたら、神戸から大きな封筒が送られて来た。Kiss-FMから やった。甲斐のサイン入りステッカー。あのとき多ノ郷で投函したハガキが見事に当選した のだった。

 

1996年3月20日 松山サロンキティ

 

らせん階段   ダイナマイトが150屯
テレフォン ノイローゼ   絶対・愛
ブラッディ マリー   きんぽうげ
やせた女のブルース   時の人
地下室のメロディー   風吹く街角
破れたハートを売り物に   スマイル
安奈   安奈
スマイル   橋の明かり
レディ イヴ   地下室のメロディー
風吹く街角   レディ イヴ
風の中の火のように   風の中の火のように
ポップコーンをほおばって   ポップコーンをほおばって
漂泊者(アウトロー)   漂泊者(アウトロー
HERO   HERO
   
ダイナマイトが150屯   らせん階段
きんぽうげ   GUTS
   
GUTS   破れたハートを売り物に