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1999年 春のセンバツ

MVP  比嘉 公也(沖縄尚学

 

ベストナイン

 

投手   比嘉   公也   (沖縄尚学)   3
捕手   池内   大輔   (今治西)   2
一塁手   杉山   勝悟   (静岡)   2
二塁手   具志堅   偉乃   (沖縄尚学)   3
三塁手   荷川取   秀明   (沖縄尚学)   3
遊撃手   比嘉   寿光   (沖縄尚学)   3
外野手   覚前   昌也   (PL学園)   3
   加藤   光弘   (海星)   3
   新垣   雄之   (沖縄尚学)   2

 

ベストチーム  沖縄尚学(沖縄)

ベスト監督  金城 孝夫(沖縄尚学

ベストゲーム  準決勝 沖縄尚学(沖縄) 8-6(延長12回) PL学園(大阪)

ベストプレー  準決勝 沖縄尚学 VS PL学園 9回裏2死3塁 サヨナラのピンチで 比嘉公也投手が覚前選手と勝負し、ショートゴロに打ち取る

ベスト応援団  高田(奈良)

 沖縄に悲願の優勝旗が初めて渡った歴史的な大会。また、準決勝の沖縄尚学-PL 学園戦は、高校野球の醍醐味を堪能させてくれた、球史に語りつがれるべき名勝負であった。 
 優勝候補がすんなり行ってしまうのかとも思えたが、番狂わせもあり、1戦ごとに 力をつけた好チームが活躍した。 
 延長戦7試合は過去最多。沖縄尚学のトリプルスチールは史上2度目。 
 村西(比叡山)、川原(峰山)という大会を代表する投手が初戦で姿を消してしまった。 ベストナイン以外の野手では、決勝で気を吐いた助川(水戸商)が印象的。

 


 

 

 

決勝 沖縄の悲願、成就! の日

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 7-2 水戸商(茨城)

 

 試合開始2時間以上前に甲子園に着いたが、沖縄尚学の1塁側アルプス席券売場 にはすでに長蛇の列ができていた。沖縄悲願の初優勝への思い入れが伝わってくる。
 決勝戦ならではの打撃練習をながめつつ、試合開始を待つ。すでにビールを飲んで 気合いを入れている人も多い。

 

 沖縄尚学の先発は照屋。昨日のPL戦で200球以上投げた比嘉公也は、やはり 投げられないようだ。照屋投手は好投してくれるだろうか。打線は水戸商エース三橋の 下手投げからの軟投にかわされないだろうか。PLとの死闘に気迫で勝った沖縄尚学ナイン を信じたい。

 

 先攻は水戸商。子どもによる始球式が終わって、プレーボール。1番好打者の助川 が、いきなり照屋の初球を弾き返す。やられた。右中間を破ると思われたライナーはしかし、 センター松堂が右へ走って好捕。抜けていれば立ち上がりからいやなピンチだった。 このファインプレーは大きい。松堂は、1回戦村西投手に苦しめられた比叡山戦で、相手 捕手のタッチをくぐり抜けてホームインした選手である。ポイントとなる場面でラッキーボーイ の働きをしている。 
 しかし、照屋はコントロールが定まらず、1死1・2塁のピンチを招く。打席には今大会 ホームランも打っている4番小林。ここで照屋は、自慢のカーブで小林を空振りの三振に 仕留める。強打者小林がまったくタイミングが合っていなかった。このカーブは有効だ。 照屋は次打者に四球を与えて2死満塁とするも、再びカーブで三振を奪い、ピンチを 脱した。

 

 ところが2回表、沖縄尚学はまたも守備の乱れからピンチに立たされる。ショート 比嘉寿光のエラーで先頭打者を生かし、そこから1死1・3塁に。この場面で、1番助川は 1塁前へスクイズ。ファーストが捕り、ホームはアウトのタイミングだった。が、バックホーム までに一瞬の躊躇があり、ホームはセーフ。水戸商が1点先制。さらに2番松本の当たりが 一塁手手前でイレギュラー。はじいたのを見て2塁走者が一気に3塁をまわる。セカンド 具志堅がバックアップにまわっており、これも殺せるタイミングだった。しかし、具志堅は ボールが手につかない。その間にランナーホームイン。2点目。 
 次の打者を併殺に打ち取り、 この回何とか2点でとめたものの、1塁側アルプスに不安がひろがる。PL戦で力を出し 尽くしてしまったのではないかと。対照的に盛りあがる3塁側水戸商応援団。 考えてみれば、今大会沖縄尚学がリードを許したのは初めてのことだ。 ここまで4試合、すべて接戦だったが、追いつかれたことはあってもリードされたことは 1度もなかった。不意にそのことに気がついて、僕はさらに不安になってしまった。

 

 しかし、そんな杞憂はあっという間に吹き飛んだ。2回裏先頭のキャプテン比嘉寿光弾丸ライナーで左中間を破ったのだ。守備でミスすれば、バットで返せばいい。これが 沖縄尚学の野球だ。無死2塁。5番松堂は死球で、無死1・2塁。送りバント失敗があった ものの、7番有銘がライト前へタイムリー!1点差。ここで早くも代打新垣雄之が登場。 準々決勝の市川戦では、スタメン3番に起用された左打者だ。新垣雄の当たりは強烈だった が、好守に阻まれセカンドゴロに。しかし、この間に1点追加。同点だ!アルプスだけでは おさまりきれず外野や1塁内野席にまであふれた沖縄大応援団が息をふきかえす。

 

 すぐに同点にしてくれた味方打線に勇気づけられてか、照屋は完全に立ち直った。 もう四球も出さない。リズムが出てきた。

 

 2-2のまま迎えた5回裏、沖縄尚学の攻撃。先頭の7番有銘がセンター前ヒット。 続くバッターは、代打からライトに入っていた新垣雄之。きっちり送ってくると思ったが、金城 監督の作戦はヒッティング。強攻した新垣雄の低いライナーは右中間をゴロで破る勝ち越し タイムリ三塁打!痛烈な当たりだった。3-2。 
 1死後、1番荷川取がセンターへ犠牲 フライを打ち上げて、4-2。2点差。1塁側が大いに沸く。 
 この回の得点は2点どまりだった が、この後具志堅、津嘉山が連続してセンターへ痛烈なライナーのヒットを叩き出し、三橋 投手を完璧に捉えている。「なんぼでも打てるよおっ!」確信した僕は、ブラスバンドの演奏 がもはや聞き取れない大騒ぎのアルプスからそう叫んだ。

 

 2点リードしたところでグラウンド整備。いい流れや。全くの沖縄尚学ペース。

 

 さらに6回裏。 1死2塁から、またも新垣雄がレフトオーバーのタイムリ二塁打。5-2と3点差。 沖縄尚学の勢いは止まらない。

 

 7回裏。1死から4番比嘉寿光が3塁線を破り、今日2本目の二塁打。牽制悪送球 で3塁へ進んだところで、5番松堂がライトフライ。これも犠牲フライとなって、6-2。 4点差。行ける!これでだいじょうぶや。優勝まちがいなし。1塁側はまた総立ちで大盛り あがり。 
 その真っ直中のことだ。続く6番浜田が初球を叩く。ボールは弧を描いてレフトフェンス を越えた。ホームラン!歓喜のかたまりが爆発する。こんな最高のタイミングで出たホームラン があっただろうか。まさに、優勝に華を添えるホームランだ。もうわけがわからないくらいの 大騒ぎ。それまで「タッチアップ!タッチアップ!」「まわれ、まわれえっ!」「行けーっ!」 「何点でも取れるよおーっ!」「勝てるぞおっ!」などと叫んでいた僕は、想像する間もなく 飛び出した夢のようなホームランの中、ただただ「やったーっ!やったあーっ!」と繰り返し、 その場でジャンプし続けた。感激で泣けてくる。そこへビールのシャワーが降ってくる。チェンジ になるとウェーブが起こる。これ以上のことがあるか。

 

 8回表。水戸商の打球はすべて、ショートのキャプテン比嘉寿光のところへ。テンポ よく三者凡退や。

 

 8回裏から水戸商のマウンドには安達が上がった。三橋投手は今日で3連投。 よく投げた。決勝進出の立て役者だ。2死から荷川取が打った右中間への大飛球を、この回 からライトに入った磯崎がファインプレー。ランニングキャッチした後倒れ込んで転がったが、 ボールは放さない。もともと背番号9をつけている選手だ。水戸商も最後まですばらしい。 このプレーに、1塁側からも盛んな拍手。これが高校野球のいいところだ。

 

 9回表。6番宇野の当たりはショートゴロ。キャプテン比嘉寿光が捌いてワンアウト! わき上がる歓声。 
 7番キャプテン外山の代打、根本裕はセンター前に落とし、1死1塁。 
 でも、大丈夫だ。続く代打、根本智はセカンドとライトの間に打ち上げる。セカンド具志堅が バックして捕った。ツーアウト! 
 あとひとりや。1塁側の僕らは立ち上がって「テルヤ」コール を続けている。中盤からブルペンでピッチングをしていた比嘉公也もベンチへ向かう。 最後の1人くらいは投げさせるのかと思っていたが、金城監督は動かない。今日好投の 照屋に任せるのだ。7-2。5点差、2死1塁。9番石田の打球はセンターへ。一瞬越されるか と思ったが、松堂が追いつき、そのグラブに白球が収まる。やったああああああっ!!! 沖縄県勢初の優勝や!!!沖縄の悲願、達成!!!この日をどれだけ待ち望んでいた ことか。この目で見ることができた。ついに、ついにやった!!!この現場にいられて 最高にしあわせや。ほんとうにうれしい。この瞬間を体験できた!!! 
 沖縄尚学高校、優勝。 君たちを誇りに思う。ありがとうと声をかけたい。おめでとうではなく。こんな思いをさせて もらって、心から感謝します。ありがとう!!! 
 最初と最後は松堂の好プレーやったなあ。 頭の片隅にそんなことを浮かべながら、叫び、拍手し、万歳をしてよろこびを体現する。 歓喜の中で、またビールのシャワーだ。そこここで缶ビールを思い切り振って、フタを開けて いる。頭も服も鞄も靴もビールで濡れる。それがまたうれしい。よろこびでいっぱいだ。 歓声と拍手と指笛と一体だ。甲子園に、今大会5度目の沖縄尚学校歌が流れる。

 

 

 

那覇を見渡す 祝嶺森に 
聳ゆる甍は 吾等が母校 
聳ゆる甍は 吾等が母校

 
 みんなの感情が先走ってうまく歌と合わない手拍子をしながら、感動の涙があふれて きた。もう来ないのかと思っていた沖縄悲願達成の日が来たんや。そりゃあ、泣けてくる。 
 アルプスに走って挨拶に来たナインを迎え、心から最大の拍手を贈る。もう何十年も 沖縄代表の試合に駆けつけては応援し続けた、あの名物おじさんがみんなの手で胴上げ されている。このおじさんへの感謝は、これだけでは表現しきれない。だが、おじさんにとって は最高の時だろう。どんなにうれしいことだろう。 
 歓喜の大ウェーブがわき起こる。1塁アルプススタンドから外野へ、バックスクリーン までつながって行く。何度も何度も波が押し寄せる。みんなが嬉々として加わっている。 ウェーブは次第にひろがる。1塁内野席から、アルプス、ライト、センター、レフトまで。 収まることはない。かぞえ切れないウェーブが生まれる。バックネット裏の観客たちも参加 してくれた!これは感激やった。中立の高校野球ファン、しぶく玄人っぽい人たちまで 沖縄の優勝を祝福してくれている。波はやがて3塁内野席へも。そして、3塁アルプス水戸商 応援団もウェーブしてくれた。それを見て1塁側から大拍手と歓声、指笛の音。甲子園球場 のスタンドを、ウェーブがとまらない。何周も何周も。こんな決勝戦も記憶にない。果てしなく 続きそうな大ウェーブも、表彰の準備が整い両校選手が整列し始めると、きちんとやんだ。 そして、球場じゅうからの手拍子のなか、閉会式が始まる。

 高野連会長が、講評を述べる。恒例の「印象に残った試合」に、沖縄尚学の全試合 が挙げられた。「沖縄県勢の技と気力を充分に発揮」と、堂々の優勝を讃えてくれた。 
 「優勝旗や、優勝旗。あれを沖縄へ持って還るんやあ」とため息がもれる。紫紺の 大旗が比嘉寿光主将に手渡される瞬間をしっかりと見た。信じられないほどのよろこび。 
 主催者による閉会の挨拶。「球史に残る大会で優勝旗を手渡せて、主催者として 冥利に尽きます」という言葉を沖縄初優勝にかけてもらった。

 

 手拍子の中、両校選手が場内を一周。連日の応援で、もう手が痛い。が、こんなに うれしい痛みはない。閉会式が終わり、1塁ベンチ前で記念写真に収まる沖縄尚学ナインの 姿をながめながら帰路についた。球場の外では沖縄民謡を唄い、踊る人たちが尽きなかった。  

 

 

 

水戸商  020000000  2
沖尚学  02002120X  7

 

 

 


  

 

 

準決勝 強豪に向かって行く勇気 の日

  

 

 

沖縄尚学(沖縄) 8-6(延長12回) PL学園(大阪)

 

 沖縄悲願の初優勝を目指す沖縄尚学がついにPL学園と激突。今年のPLは 走攻守投のうち、比較的投手力が弱い。ある程度は打てるはず。 問題は、あの強力打線をどうやって抑えるかだ。何とか守って接戦に持ち込みたい。 
 沖縄尚学が先攻。1番荷川取、4番比嘉寿の打順に戻している。 PLの先発は予想どおり2番手の西野。決勝をにらんでの起用だ。

 

 1回表。PL打線のことを考えると、初回から点を取っておきたい沖縄尚学。2番 具志堅が四球。3番に戻った津嘉山、4番比嘉寿の連打で先制点!しかも、5番に上がった 松堂がスクイズを決めて2点目。これは打てる!PLの猛打さえ凌げれば。

 

 1回裏。守りにつくと、PL打線はやはり恐い。何点でも取られてしまいそうな迫力だ。 しかし、1死1・2塁のピンチを無失点で切り抜けた。

 

 2回表。相手投手の制球難から1死2・3塁のチャンスを得るも、無得点。PL相手に 2点ではこころもとない。

 

 2回裏。2つのエラーにフィルダースチョイスもあって、2死満塁のピンチ。ここで 2番足立が、それまでタイミングの合っていなかったカーブをうまく流し打って、レフト前 タイムリー。PL、1点を返す。 
 さらに2死満塁のピンチが続くも、比嘉公投手が3番覚前を ピッチャーゴロに打ち取る。 
 守備が乱れて点を失い、思いっ切り押されていたが、よく 踏ん張った。弱気になると一気につけこまれる場面だったが、勇気をもって攻めの ピッチングをしている。

 

 3回。沖縄尚学クリーンアップは三者凡退に抑えられ、その裏PLの攻撃もツーアウト。 試合が落ち着きはじめるかと思われたが、そこから満塁のピンチに。点こそ取られなかった が、PL打線は息をつけない。

 

 4回表。2死1・2塁から荷川取のタイムリーで3-1。続く具志堅にこの回3つめの 四球を与えたところで、PLは投手交代。エース植山が登場。決勝進出へ、これ以上点は やれないということだ。津嘉山のファールフライを、レフトの俊足・田中一徳がおさえて チェンジ。さすがの守備だ。植山もきっちり仕事を果たした。

 

 4回裏。ツーアウトランナーなし。やっと初めて三者凡退が奪えるかと思いきや、 3番覚前・4番七野の連続二塁打が出て、3-2。またも1点差に。

 

 5回。沖縄尚学は、植山の前に三者凡退。その裏PLは、3安打でまたも2死満塁 のチャンス。しかし、ここでも比嘉公投手が無失点で切り抜ける。 
 沖縄尚学1点リードのまま 前半戦が終わる。グラウンド整備の中、甲子園の雰囲気が変わりはじめているのに 気づいた。下馬評は圧倒的にPL有利。だれが考えてもそうだろう。実際、PLは毎回ランナー を2人以上出して押しまくっている。けれども、なかなか追いつけない。球場全体に「もしか したら」の空気が流れている。PLナインもあせりはじめているのではないか。

 

 6回表。沖縄尚学の1塁側アルプスが沸く。かつての名物おじさんが、立ち上がって 応援をしはじめたのだ。ブラスバンドに合わせて腕を振り、観客の手拍子をうながす。 沖縄代表のアルプスにいわゆる応援団長はいない。友情応援のチアガールとブラスバンドの ほかは、最前列に野球部員がいるだけだ。観客の方を向いて声を張り上げるリーダーは いない。その役目は、ずっとこのおじさんが果たしてきた。会社を辞めてまで、何十年も 毎試合沖縄代表校の応援に情熱をそそいでくれていたのだ。ところが、去年から 「高校生主体の応援」とやらを高野連が義務づけたため、姿が見えなくなっていたのだ。 どうしてはるんやろうと心配していたが、やっぱりちゃんと見ていてくれたんや。強豪相手の 熱戦に、我慢できなくなったのだろう。「我が心の故郷 沖縄」と染めぬかれたかつての 黒い法被ではなく、ブレザー姿だったが、みんなはおじさんのことをもちろんよく覚えていて、 大喜び!僕もめっちゃうれしかった。

 

 6回裏。PLはまたもランナーを出しながら、得点できず。ワンアウトを取るたびに 1塁側アルプスが沸き、流れはゆっくりと沖縄尚学に向きつつある。

 

 7回表の攻撃前に、おじさんが恒例の三々七拍子。途中で扇子を放り出しても 続けるいつものパフォーマンスだ。
 それに応えるかのように、沖縄尚学打線も植山投手を 捕らえはじめる。それまでもPLの好守に阻まれてはいたものの、いい当たりは多く出て おり、打てないとは思わなかった。四球と連打で1死満塁。1塁側アルプスは大声援で 沖縄尚学を後押しする。ものすごい盛りあがりだ。PLナインにはプレッシャーだろう。とても 地元で試合しているとは思えないはずだ。植山はコントロールを乱し、押し出しの四球。 4-2。 
 そして、なおも続く1死満塁のチャンスで有銘はスクイズ。PLバッテリーは外角遠く 低めに外す。飛びつきかけた有銘がバットを引く。そこへスタートを切っていた3走・比嘉寿 がそのまま走り込んでくる。捕手はタッチに行けない。ホームイン!記録はホームスチール だ。しかもその間に1・2塁の走者もそれぞれ進塁しており、何とトリプルスチールの成立! 5-2となった。

 

 3点差をつけ、7回裏PLの攻撃もツーアウトランナーなし。あと7人。このままいける かと思われた。しかし、ここでエラーが出てしまい、チェンジにならない。リズムが崩れたか、 比嘉公は次の1番田中一に四球を与え、2死1・2塁。続く2番足立の当たりは、内野と 外野の間へ落ちる。ラッキーなタイムリ二塁打となって、5-3。 
 なお2死2・3塁で、打席 には最も恐い3番覚前。今大会屈指の強打者である。2点差、7回。バッターを考えると、 ここは歩かしのケース。が、高校野球はちがう。こういう場面でも勝負!ということがしばしば あるのだ。ここでも沖縄尚学は敬遠策を取らず、真っ向勝負に出た。結果は、ライトへ 会心の2点タイムリー。同点である。5-5。 
 この試合、ついに初めてPLが追いついた。 さっきまでのムードは一変。沖縄尚学の健闘もここまでか。やはりPL強しという思いが 球場を包む。

 

 8回はおたがいに無得点。PLはまたもや1死2塁のチャンスを逃した。 
 9回表の 沖縄尚学も0点。「逆転のPL」という言葉が重くのしかかってくる。過去に何度もあったように 、PLのサヨナラ劇がまたも演じられるのか。伝統の力。

 

 9回裏。1死から田中一がヒット。最も恐いランナーを出してしまった。超のつく俊足、 走塁センスもすごい選手だ。走られる。それが恐かった。 
 しかし、ここでPLベンチのとった 作戦は、送りバント。助かった、と思った。いや、ちがう。ツーアウトにしてもいいというぐらい、 次の3番覚前が信頼されているのだ。それだけのバッターなのである。先程の打席でも 同点打を放っている。9回裏2死2塁。サヨナラのピンチ。 
 ここでも、沖縄尚学は敬遠せずに堂々と覚前に勝負を挑んだ。ところが、 この局面で痛いミスが出てしまった。ワイルドピッチ。ボールはそれほど転がらなかったが、 田中一は好判断で3塁を陥れた。2死3塁。今大会の沖縄尚学は暴投、捕逸が多く出て しまう。それが命取りとなるのか。もう、バッテリーミスは許されない。エラーでもサヨナラだ。 
 それでも、沖縄尚学は覚前と勝負する。9回裏に入ってから1塁側アルプスは、マウンドの 比嘉公也投手に向かって、「コウヤ、コウヤ」の連呼を続けている。果たして、覚前の打球 はショートゴロに。守りきった。渾身の勝負をして、勝った!1塁側アルプスは大騒ぎ。 僕もそばの席の人たちと握手するやら、跳び上がるやら。恐いPL、恐い覚前に対して、 一歩も引かずに向かっていった。ほんとうにしびれたね。

 

 延長戦に突入。10回表沖縄尚学の攻撃は、セカンド中尾の好守に遭い、三者凡退。 その裏、比嘉公也投手は「コウヤ」コールのなか、またしても1死2塁から2死3塁という サヨナラのピンチをくぐり抜ける。

 

 11回表。3番津嘉山のレフト前タイムリーで荷川取が還り、沖縄尚学ついに勝ち越し! 6-5。 
 僕は「やったあーっ!」と叫んで、周りの人たちと握手しまくった。 アウトにはなったものの、後続も外野へ鋭い当たりを続け、植山投手を完全に捕らえている。

 

 11回裏。ここを抑えれば勝つのだ。だが、PLはしぶとい。先頭の8番植山が二塁打送りバントを決めて1死3塁。バッターは1番、センスのかたまり田中一だ。 
 スイッチヒッターの 田中一は、右打席からライト線へふらふらっと打ち上げる。これがラインの内側に落ちた。 同点。しかし、2塁を狙った田中一は返球に刺された。沖縄尚学ナインは、同点に追いつかれ たことに落胆するよりも、走者をアウトにしたことを喜んでいるようだった。いいぞ。その意気や。

 

 12回表。先頭の6番浜田がヒット。だいじょうぶ。やはり、打てる。送りバント成功で 1死2塁。途中出場の新垣雄之は凡退で2死2塁。 
 続くバッターは9番比嘉公也。左打席 から流し打ち。打球はレフトの前へ。レフト田中一、俊足をとばして前進するも、わずかに 及ばず。ボールはフェンス際へ。浜田還って7-6。またも勝ち越した!またもや1塁側 アルプスは大喜び。僕もまた「やったああーっ!」と叫んだが、もう声が嗄れていた。 9回以降はずっと、守りの間じゅう「コウヤ」コールしてるからなあ。 
 さらに荷川取の レフト前ヒットで、2塁から比嘉公也が生還。8-6。2点差をつけたのは大きい。

 

 12回裏は、最も恐いバッター覚前から。強い打球やったけど、ライトの正面。覚前は 1塁ベース上で天を仰いだ。
 しかし、PLもすがりつく。4番七野がセンター前ヒット。 
 5番田中 啓之はショートゴロ。2塁も間に合うタイミングだったが、1塁へ送球。よっしゃ、それでいい。 確実にワンアウトずつや。2点ある。2死2塁。 
 しかし、6番中尾へは四球を与えてしまう。 さすがに比嘉公也も相当疲れている。変化球でストライクが取れない状態になってきた。 2死1・2塁。同点のランナーも出てしまったわけだ。 
 バッターは7番永山。また スリーボールになってしまう。アルプスは必死の「コウヤ」コールを送り続ける。 ここへ至っても、比嘉公也投手は攻めのピッチングを崩さなかった。ストレートでツースリー まで持っていく。そして、最後もストレート!バッターは手が出ない。見逃し三振。試合終了!

 

 1塁側アルプスの歓喜が爆発する。みんな感激している。僕も周りの知らない人たち と叫び、ジャンプし、握手をし、ハイタッチを交わし、抱きあい、足を踏み鳴らした。僕の隣に すわってらしたおばさんは、娘さんが沖縄の興南高校野球部でマネージャーをしているという。 センバツの前に練習試合をして、「尚学は強い」と報告を受けていたという。みんなと「明日も 応援に来よう」と誓い合って別れた。

 

 それにしても、すごい試合やった。20年以上甲子園に通い続けているが、自分の中の ベストゲームや。これまでは、沖縄水産が天理に惜敗した決勝戦がベストやったけど。 
 強豪中の強豪PLを相手に、堂々と真正面からぶつかっていって、倒したのだ。同点のピンチ、 サヨナラのピンチにも、敬遠などしなかった。相手エースにクリーンヒットを浴びせて、打ち 崩した。前半は離されていたヒット数も13本で、2本差に迫った。 
 強豪を倒すには、守って守って、 2-1か1-0で逃げ切るパターンが多いが、こんな勝ち方ってかつてあっただろうか。 守りのミスはたくさん出るのに、打って帳消しにしてしまう。 
 ほぼ毎回得点圏に走者を進め られながらも、ねばり強く凌ぎ切った。強気の姿勢で攻め込んでいく、強力打線に立ち向かって いく比嘉公也のピッチングは、ほんとうに素晴らしかった。感動した。勇気が大事なんだと 教えてもらった。気持ちで一歩も引かなかった。少しでも弱気なところを見せれば、PL打線に つかまり、伝統の力に気圧されて、自滅してしまっていたことだろう。 
 延長12回。死闘だった。 最後の最後は気力の勝負やった。この緊迫した息詰まる試合で、PL学園はノーエラー。 これもさすがに素晴らしい。

 

 そして、沖縄尚学は決勝へ!沖縄悲願の初優勝まであとひとつ。沖水は2年続けて 涙を飲んだが、今回こそは沖縄に優勝旗を持って帰ってくれ!気を引き締めて、何とか 勝ってくれえっ!

 

 

 

尚学  200100200 012  8
PL  010100300 010  6

 

 

 

 

 

水戸商(茨城) 11-3 今治西(愛媛)

 

 沖縄尚学の決勝の相手はどちらになるのか。偵察の気分で見た。 
 打線が強く、エース越智への継投パターンができあがっている今治西の方が手強い ように見えた。ところが、2点リードされた水戸商は5回、満塁のチャンスを作って越智投手 を引きずり出すと、一気呵成に4点を奪って逆転してしまった。ここ数年ですっかり恒例と なった「水商サンバ」が何度も繰り返される。終わってみれば、7・8回にも集中打を浴びせた 水戸商の大勝であった。

 

 実際に見る水戸商は、資料とは全然ちがっていた。不安定とされた守備はノーエラー。 打線も弱いと言われていたのに、外野へ快打を連発。今大会から3番に抜擢された川上が 期待に応えているばかりか、全員がレベルアップしているようだ。いわゆる、甲子園で1戦 ごとに強くなってきたチームである。

 

 敗れた今治西は2年生の好選手も多く、層の厚さを感じる。愛媛は強豪ぞろいだが、 きっとまた甲子園に戻ってくるだろう。

 

 さて、明日の決勝戦だ。水戸商のエース三橋は、今日も緩急をつけたピッチングを 披露。アンダースローのフォームも、何パターンかタイミングを変えて投げている。9回ワン アウトでベンチへ下がり、決勝へ備えた。今日延長12回を投げた沖縄尚学比嘉公也投手 の方が疲労は濃いだろう。水戸商打線はあなどれない。沖縄尚学打線がいかに三橋投手を 攻略し、ピッチャーを楽にしてやれるかが鍵である。技巧派投手の投球に翻弄されないよう、 引きつけて白球を叩いてほしい。そして、いいゲームを。何とか、沖縄悲願の大旗を!

 

 

 


  

 

 

準々決勝 最後のアウトひとつが大変 の日

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 4-2 市川(山梨)

 

 沖縄尚学の打順の組み替えが成功した。1番と4番を入れ換えたのだが、どちらも 三塁打を放つなど活躍。初回から2点を奪って、試合を優位にすすめた。

 

 先発は2番手投手の右腕・照屋。再三フォームを注意されるなど不安定なところも あったが、責任は十分に果たした。6回途中からはエース比嘉公がリリーフ。ピンチを断った。

 

 最大のポイントは3-2で迎えた8回裏。市川は1死3塁からスクイズを敢行。しかし、 これがフライとなってダブルプレー。続く9回表に沖縄尚学は、比嘉公のタイムリーで1点 追加。完全に沖縄尚学の流れに。

 

 9回裏市川の攻撃。1死1塁からファーストゴロ。ダブルプレーで試合終了!・・・と 思いきや、ファーストの足が離れていたらしく、2死1塁で試合続行。続くバッターは三振。 今度こそ試合終了!・・・のはずが、捕手がボールを見失う間に振り逃げ。最後のワンアウト がなかなか取れない。同点のランナーまで出て嫌なムード。しかし、最後はファーストゴロで ゲームセット。ひやひやしたで。

 

 沖縄尚学、準決勝進出!春は沖縄勢初の4強だ。次は比嘉公の先発だろう。 4番で調子の出ていなかった比嘉寿が、1番でのびのびと固め打ちしたのは大きい。 相手は強くなるが、同じ高校生。くらいついて行けば、何が起こるかわからない。1回戦で 当たった村西以上の投手はいない。守っていけば、打ち勝つチャンスもあるはずや!

 

 

 


  

 

 

第6日 沖縄尚学 ベスト8一番乗り の日

 

 

 

高田(奈良) 7x-6(延長14回) 高崎商(群馬)

 

 一方的な高崎商ペースだったが、終盤、高田が猛反撃。8回裏に3点を挙げてついに 同点に追いつき、史上初だという4試合連続延長戦へ。一転してチャンスのつぶしあいに なったが、最後は松村がセンター前へサヨナラヒット。 
 粘りづよく逆転した高田は好チーム。評判の左腕・松本から18安打を奪ってつないだ。 目立った選手は、1番サードの白木。鋭いヒットを4本も放ち、守備もよくて、しかも俊足と きている。 
 応援団も、44年ぶりに出場できた県立校の喜びがはじけてたなあ。

 

 

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 5-3 浜田(島根)

 

 1回表の先頭打者にいきなり三塁打を打たれたものの、沖縄尚学・比嘉公投手は 無失点でピンチを切り抜けた。逆にその裏、沖縄尚学が先制。その後もヒットを重ね、 スクイズを決め、相手投手のボークもあって、順調に得点を追加。負ける気はしなかった。

 

 しかし、8回表に鍛冶畑が代打で登場すると、様相が変わった。鍛冶畑はケガで スタメンを外れてはいたが、本来は4番打者であり、浜田の主将である。 昨夏ベスト8入りしたときのレギュラーでもあるのだ。鍛冶畑は1死1・2塁のチャンスで 見事な流し打ち。ライト線への2点タイムリ二塁打を放った。 
 が、浜田の反撃もここまで。続く2死2塁の場面で、ショート内野安打の間にホームを ついた走者が刺されて、流れがとまった。

 

 沖縄尚学ではセカンドの具志堅が攻守走に活躍。ベースよりの打球を捕り、回転 してショートへトスしたダブルプレーでの動きは華麗だった。ベスト8一番乗りやあっ!

 

 

 


  

 

 

第5日 初出場校 延長に泣く の日

 

 

 

日南学園(宮崎) 3-1(延長12回) 峰山(京都)

 

 両エースの投げ合いで素晴らしい試合になった。峰山は防御率No.1、サウスポーの 川原。日南学園の右腕・春永は左手を振り上げる独特のフォームだ。 
 川原はすごかった。大ピンチで日南の4番吉武を直球で三振に斬って捨てたし、 完全に決まったと思われたスクイズを全く隙のないグラブトスでアウトに。 
 もう1人峰山で光ったのが岡崎。打撃はセンスを感じさせるし、記録上はエラーが ついてしまったが守備のフットワークもいい。 
 日南は今年も走れるチーム。サヨナラ負けのピンチにも動じないし、確かに優勝 候補だ。でも、内野の守備に不安もある。今年は去年の横浜のようなチームはないようだ。 
 峰山の大応援団は、バックネット裏近くまでぎっしりと。いっせいに丹後ちりめんを 振る光景は、ちょっと壮観やった。こういうの、いいやん。沖縄の民族衣装も許可してえや。 社会人野球みたいに、試合そっちのけにせんかぎりは。だいたい、高野連って何なんや? 高校野球ファンだった人間はいるのだろうか?何もわかってないぞ。

 

 

 

 

 

静岡(静岡) 7-5(延長13回) 柏陵(千葉)

 

 試合前のノックが終わると、柏陵ナインはベンチ前でラインダンス!選手名鑑の写真 は全員笑顔で写ってるし。関東大会では8点差をひっくり返したというし。このチームを 率いるのは、県立校ばかりを甲子園に導く蒲原監督。応援したくなるではないか。 
 しかし、あと一歩のところで柏陵は敗れた。ゲッツーでピンチを切り抜けたと思った ところでエラーが出て同点に。12回裏2死2塁からレフト前ヒットが出てサヨナラ勝ちかと 思ったが、走者は3塁ストップ。レフトはファンブルしていただけに、なおさら惜しかった。 結局次の13回表に決勝点を奪われた。それまでは無死3塁を切り抜けるなどよく守って いたのだが。 
 静岡の殊勲は、杉山。あと数十センチでホームランというレフトフェンス上金網直撃 の大三塁打に、13回表の決勝点を挙げたツーベース。 
 そして、何といっても両チームのエース。静岡・高木に柏陵・清水。 ともにカーブを武器とする左腕で、13回を投げ抜いた。 
 静岡は高木投手がはまれば、次の日南学園戦でも好勝負するかも。サード松山の 三塁線守備も上手い。 
 柏陵は夏にまた来てほしいチームだ。ヒットを打たれながら清水投手はよく粘った。

 

 

 


  

 

 

第2日 ヒグマ打線吼える の日

 

 

 

駒大岩見沢(北海道) 15-4 神戸弘陵(兵庫)

 

 初回から駒大岩見沢ヒグマ打線が猛爆。四球とエラーで走者をためては、痛烈な タイムリーを叩き出す。打撃の評判は本物。初回に4点、2回に5点で試合を決めた。 
 駒大岩見沢が勝つとは思っていたが、兵庫代表にここまで大差をつけるとは。 昨夏の経験者が8人もいるのも強み。弱点をあげるなら内野守備か。 
 立ち上がりに連打され、わけもわからないままにマウンドを降りた神戸弘陵の 西島投手が心配だ。立ち直ってくれるといいなあ。

 

 

 


  

 

 

初日 村西の投球は噂以上 の日

 

 

 

浜田(島根) 5-3 東海大三(長野)

 

 5-1と完全な浜田ペース。昨夏ベスト8まで行っただけのことはある。 
 が、8回裏。難しい打球を内野安打にしてしまったことから、浜田の内野陣が動揺を 見せはじめる。ここで東海大三がたたみかけ、2点差に迫る。ふいに、今年もまた甲子園に 高校野球が帰って来てんなあ、と感じる。ちょっとしたことから崩れていく守り。急変する 流れ。この試合に負ければ終わってしまうという切なさ。祈りを込めて見つめるアルプス。 あたたかいファン。これなのだ。高校野球を見るときの感覚がよみがえってくる。 
 8回裏の東海大三の攻撃は、会心の当たりが正面を突いてダブルプレーになり、 終わってしまった。が、いい試合やった。さあ、今大会も高校野球を存分に楽しむのだ!

 

 

 

 

 

沖縄尚学(沖縄) 1-0 比叡山(滋賀)

 

 比叡山の村西投手は、噂以上のピッチングを見せつけた。直球は速い。スライダー は鋭い。緩く落ちる球はナックルだそうだ。近鉄のマットソンのナックルほど遅くはなくて、 スッと落ちる。この球も有効だった。 
 対する沖縄尚学比嘉公也投手もコントロールがよく、カーブとシンカーを操る。 投手戦となった。

 

 3回、村西はピッチャー返しの打球をまともに右足に受けてしまうが、大事に至らず よかった。沖縄尚学応援団は、なかなか打てそうもないピッチャーからヒットを奪ったという ので浮かれていたが、ここは音楽を止めて村西に声援を送るぐらいの気持ちを見せた方が よかったと思う。

 

 試合が動いたのは6回裏、沖縄尚学の攻撃。2死1・3塁のチャンス。しかし、期待の 4番比嘉寿光は空振りの三振。体格のいい強打者だが、今日は村西の変化球に 全くタイミングが合っていなかった。

 

 チャンスのあとにピンチあり。7回表、比叡山は1死1・2塁と比嘉公也を攻める。 が、ここでセカンドゴロダブルプレー。両チームともほとんどヒットが打てない緊迫した 投手戦で、先に1点取った方が・・・のムードが漂っていただけに、これは大きかった。

 

 7回裏1死。完璧だった比叡山内野陣がほころびを見せる。サードのエラーで ランナーが出る。次の投球を捕手が少しはじき(記録はワイルドピッチ)、走者は2塁へ 向かう。これを刺そうとした捕手の2塁送球が高投となり、走者は一気に3塁へ。1死3塁。 最大のチャンスが訪れた。村西から点を取るには、ここはスクイズしかないだろう。 1点勝負。比叡山は満塁策まで覚悟で外しまくってくるのではないか。 
 しかし、次の球はスライダーでストライク。切れのいい球を投じれば、簡単には バントできないという自信なのか。沖縄尚学・金城監督は次の投球でスクイズを敢行。 またもバッテリーは外さない。これは決まる!と思ったが、打者・有銘のバントは転がらず キャッチャー前へ。捕手がボールを拾う。走者はまだホームから遠いところを走っている。 完全にアウトのタイミング。だが、捕手の前で一瞬停まった走者・松堂は、際どく タッチをかいくぐってホームへ滑り込んだ!捕手はタッチをアピールするも、判定はセーフ。 記録はフィルダースチョイスとされたが、これはおかしい。楽にホームでアウトにできた プレーだ。実質はエラーだろう。堅守比叡山がこの回にミスを4つ重ねてしまった。ともかく、 貴重な1点が入った。これがそのまま決勝点に。

 

 両チームともヒットは3本ずつ、四球もほとんどなく、素晴らしい投手戦だった。 守りのチームである比叡山にミスが出、内野守備が不安視された沖縄尚学がノーエラー。 機動力が自慢の比叡山は盗塁を試みることもできず、逆に沖縄尚学の方が走った。 高校生の一発勝負はわからないものだ。

 

 敗れはしたが、村西投手はすごかった。自責点0のまま甲子園を去ることになった けれど、夏もこのピッチングを見せてほしい。

 

 沖縄尚学で雰囲気がある選手は、トップバッターの荷川取。チームの課題は、 三遊間のスローイング。捕ってから投げるまで間があるので、内野安打を奪われそうだ。

 

 もうひとつ書いておくべきことがある。3、4歳の女の子がブラスバンドに合わせて 小さな太鼓を叩いていたら、腕章をつけた高野連の男が注意しに来る。一体何の害がある というのか。行き過ぎた応援規制は、アルプスのムードに水を差すだけだ。観客動員が 減っているのには、こういうことが響いているということがわからないのか。表面だけの 人気とりにばかり策を弄さずに、実態をしっかり見て応対せえっちゅうねん!

 

 

 


  

 

 

優勝予想

 

 

 

◎ 沖縄尚学(沖縄)
○ 日南学園(宮崎)
▲ PL学園(大阪)
△ 東邦(愛知)
× 今治西(愛媛)
注 駒大岩見沢(北海道)

 

 予想とはいえ、思いっ切り願望入ってます。沖縄代表の優勝が夢なので。沖縄尚学の 初戦の相手、比叡山のエースはすごいらしいけど。 
 最近常連の日南学園。いつも好感のもてるチームでしたが、なかでも今年は 九州大会を制覇。最強なのだ。 
 PLは優勝するには投手力にやや心配があるが、あの田中一徳外野手が 引っ張ってくれるだろう。横浜にも雪辱するはず。 
 潜在能力高そうなエースが化ければ、東邦の優勝も。今治西も勝ちあがる力を 秘めていると見る。 
 注目は駒大岩見沢。昨夏感動させてくれたヒグマ打線は健在。捕手から一塁手に まわった北村選手にがんばってほしい。投手もよく、初戦で手強い神戸弘陵を倒せば、 北国旋風を巻き起こす期待大。 
 横浜を無印にしたのは、いきなりPLと当たるからではない。史上初の三連覇は、 並大抵のことでは達成できないと思うからだ。水野の池田でもできなかった。あの松坂を もってしても、春夏連覇紙一重の勝利。いいチームではあるが、精神的なことも含めて 考えると、決勝まで進めないのではないだろうか。