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甲斐よしひろ アコギなKILLER GIG 2006

2006年10月7日(土) 岸和田市立浪切ホール

 

 早起きして明石へ行き、 高校野球秋季兵庫大会準決勝の2試合を見た。JR・地下鉄・生まれて2回目の南海電車を乗り継い で、大阪南部の岸和田へ。今日は近畿を縦断してる気分や。 
 岸和田駅前の商店街には、だんじりグッズを売っている店もあった。アーケードを抜けると、歴史を 感じさせる町並み。その道を、海の手前までひたすら真っ直ぐ進んでいく。

 ショッピングモールの左に、浪切ホールはあった。外観はオペラハウスのようだ。とても立派で 美しい。 
 客席もきれいやった。左右にある桟敷席が魅力的だ。僕の席は右端に近いけど、どうせ端っこなら 桟敷席で特別な体験をしたかったと感じられるほど。同時に、少しでも真ん中寄りで見たいという欲求も 当然あるねんけど。 
 ステージには、メンバー3人のイス。キーボードが最初から左側に設置されている。 
 「セイリング」などのBGMが流れるなか、開演を待つ。

 「ウィスキーバー」の歌声が高まる。”アコギ”なPARTY 30 と同じ曲で入場するねんな。前方客席の左右、客席後方、二階席の壁、会場全体が光と影で浮き彫りに なる。 
 現れた甲斐は、サングラスをかけている。白のジャケット。黒のシャツ。英字デザインの黒い Tシャツ。凝ったバックルの白いベルト。ストライプの入ったズボン。 
 松藤と、サングラスのないクラッシャー木村もポジションについている。ギターの松藤が右。 ヴァイオリンを手にしたクラッシャーが、キーボードのある左。 
 ステージの左右で炎が揺れている。曇り空の背景が浮かび、虹のライトが「観覧車」を思わせる。

 ギターの前奏でも、「観覧車」かと思った。そこへ、ヴァイオリンであのフレーズが届けられる。 
 「スウィート スムース ステイトメント」 
 ほんまに久々や!Series of Dreams Tour  Vol.3でもリハーサルはしたって言ってたから、編成の変わる今回こそやってくれるん ちゃうかと思ってはいたけど。1曲目とは! 
 深く愛し抜く、大好きな詞が、甲斐の声で沁みてくる。これが聴きたかったのだ。 
 「ザザザザッザザザ」と繰り返しているギターで、CDとは全く違った印象になっている。速めの 演奏で、勢いが感じられる。 
 1番の「君を見るまで愛していると告げたことさえなかった」だけ、ニューヴァージョンの詞だった。 
 サビは3人のハーモニー。 
 甲斐は2番も「too muchかい?」とうたった。「mismatchかい?」とうたっていた 第1期ソロのライヴヴァージョンから、オリジナルの詞に戻したのだ。 
 生で「スウィート スムース ステイトメント」が聴けるという感激。この1曲だけでも、今日来た 甲斐があったと感じる。甲斐のライヴは、いつもそう思わせてくれる。

 「裏切りの街角」 
 ヴァイオリンが入ることで、こんなに変わるんや。改めてそう強く感じる。チェロが特徴的だった Classic Kaiとも違って、また新鮮だ。 
 しかも、甲斐が吹くハーモニカとクラッシャーのヴァイオリンが、ケンカせずにとけ合ってる。 
 一旦イスに腰掛けたクラッシャーが、「チュッチュルル チュルルッチュチュチュチュ」の後から 再びヴァイオリンを奏で出す。 
 甲斐がラストをゆっくりうたってくる。松藤とクラッシャーが呼吸を合わせ、最後の一音を弾き 切った。

 「ビューティフル エネルギー」 
 甲斐がほぼワンフレーズごとに、ヴォーカルに強弱をつけていく。静かに響かせたり、声を高ならせ たり。その声が心地いい。言葉の印象も際立って胸に届いてくる。 
 甲斐は今回も「しれーなーいからーぁ」の語尾を下げてうたう。 
 2番は松藤がうたい出す。ヴァイオリンが1番と違った奏法。音を細かく震わせるトレモロで、 メロディーをつむぎ出す。 
 「もう 二度とーー」は甲斐と二人で。松藤は「しれーなーいからーーー」と声を伸ばす。 
 ヴァイオリンの間奏が、この曲も美しい。そして、「ビューーティフル エーーナジー」の ハーモニーも。

 甲斐は歓声に応え、このアコギツアーが沖縄宮古島まで続くことを告げる。 
 「最後まで楽しんでってほしいと思ってます」 
 その言葉が、最初のMCのしめくくり。

 ヴァイオリンの前奏。この音が聴きたかったから、やってくれると思ってたよ。この編成でやらない 手はない。 
 「かりそめのスウィング」 
 甲斐は手を打ったり体を揺すったりしながらうたう。いいノリだ。間奏に入ると、軽く踊ってみせる。 「軽くダンスしてね」という「PARTY」のMCを思い出す。 
 この曲も強弱をつけたうたい方だ。手を叩くように振る、新たなアクションも見ることができた。 
 フィニッシュで「オーイェー」の声。曲が終わると、甲斐がクラッシャーの名前を呼び上げた。

 「きんぽうげ」 
 松藤甲斐ヴァージョンで、穏やかに。 
 間奏のヴァイオリンが、やはりいい。オリジナルの音を感じさせながら、独自のメロディーを 連ねていく。アルバム「松藤甲斐」で松藤がやりたかったというフルートの音も、クラッシャーが ヴァイオリンで表現してる。 
 「ひびー割れーたガラスー窓」 
 このアレンジだと、ここからの部分の詞も、甲斐の声で聴くことができる。 
 後奏。甲斐と松藤が「ダダダダダ ダダダダダ」と声を重ね、やがて「フーフフー」という甲斐の ファルセット。 
 甲斐が今度は松藤の名前を呼び、松藤と松藤の曲を讃えた。

 今夜のオーディエンスを「大阪なのにカタい」と言う。「そういうのをほぐしていくのも好きなん だけど」と、雰囲気をほぐすMCへ。

 「きんぽうげ」が松藤の曲なのが悔しいと言ってみせる。 
 「その前にうたった「かりそめのスウィング」は、「裏切りの街角」ほど売れなかったとレコード 会社から文句を言われた。30万枚売れたんだからいいじゃないか」

 だんじりの街、ここ岸和田について。 
 「博多にも山笠があるから。(岸和田は)博多と似てると思ってる」 
 井筒監督の映画「岸和田少年愚連隊」 は10回見たという。「甲斐よしひろ ONE DAY IN OSAKA」という名作TV番組で、井筒 監督と対談もしてたね。 
 本当に石を投げつけるリンチのシーンを挙げたりしつつ、「あのイメージです。僕の岸和田に対する イメージは、あの映画からできてます」 
 「博多では、山笠の期間はあの山笠の格好が正装だからね。ホテルでも何でも、あの格好で入れる んだ。締め込みで」

 祭りの街は祭り好きの男たちが前面に出ているが、実は・・・という話。 
 博多でも表向きはそうだが、嫁が後ろから糸を引いているんだという。 
 「男たちが座敷で宴会して刺身やなんかを食べてるとき、女たちは台所で中落ちやふぐの皮を食べ てて。俺は末っ子だからどっちも行き来して、こっち(台所)の方が全然うまいじゃん!と」

 このツアーで巡ってる街のこと。 
 お兄さんが訪ねて来て驚いたが、その街が単身赴任先だった。 
 津の隣に阿漕(あこぎ)という、このツアーにぴったりの駅を見つけた。阿漕の漢字を説明する のに、「漕げよマイケル」を挙げていた。やはり音楽の教科書に載っていたそうだ。

 今日の会場もそうだけど、地方のホールはどこもきれいで施設がいいらしい。 
 「(歴史のある)京都会館なんて、ウォシュレット付いたの、つい最近なのに」 
 「十数年前の第三セクターあたりが絡んでるんじゃないかと睨んでるんだけど」

 不況で命名権を売ったホールについても言及する。 
 「渋公って言えないじゃん」 
 僕は、渋谷公会堂の名前が変わったの、知らなかった。新しい名前も含めて、びっくり。

 かつての外務大臣の発言に対するコメントも出た。僕もニュースで見て同じように思ってたし、 ごく真っ当な意見やと思う。

 「客がカタい」という話に戻って、大阪に遠慮は似合わないと言う。 
 「君たちに(激しいのと大人しいのの)中間は似合わない」 
 その言葉に、「ハイ!」というめっちゃ元気な返事が飛ぶ。 
 甲斐は「そういうの、ムカツク」と言ってみせてから、「どっちだ」と自分でツッコんだ。

 「再結成のときのシングルを」 
 「甘いKissをしようぜ」 
 甲斐はサビのみ、手を打つ仕草。 
 僕は歌に入り込み、甲斐の声を堪能したくて、2番の前半は手を打たなかった。 
 「アマイ大人になってさ いろんなもん削って つまんない顔していちゃ お前に逢えない」 「夢と罰みたいなKiss」詞が沁みる。 
 「キスをしたんだあーぁ」とうたいながら甲斐は、くちびるのあたりから右手をはなした。

 再びMC。福岡の小学生は、体育の時間などに動くとき、「やァ!」という掛け声をあげていた そうだ。「体操の隊形に開け」「やァ!」というふうに。 
 飲み屋でなぜかその話で盛りあがってた。そしたら、店の女の子が長崎で、「長崎でも「やァ!」 言いますよ」と教えてくれたという。 
 大阪のうちの小学校では、大運動会の組み立て体操のときだけ言うてたな。「サボテン、用意!」 「やァ!」とか。

 次は「安奈」だと告げてから、甲斐は「通常のツアーでこの曲をやるときは、カラオケ状態になっ てる」と言う。前奏が終わると、みんなが一斉に歌い出す。甲斐のライヴでは、バラード以外どの曲も みんなそうやけど。 
 「あのシステムは、おかしいよね」と笑う。 
 「今日は(アコースティックだから甲斐の歌声を)ちゃんと聴けるでしょう」

 そうして始まった「安奈」。ヴァイオリンとともに。 
 「Classic Kai」の後、クラッシャー木村が語っていた感想がよみがえる。「甲斐さんが、 ヴァイオリンの音色を聴いて「安奈」をいつもよりやさしくうたった、と言っていたのがうれしかった」 
 今夜も甲斐はやさしくうたっている。そのことをたしかめるようにしながら、聴き入ってゆく。 
 「安奈、お前に会いたい」はオーディエンスにうたわせる。それから「愛の灯をともしたい」まで、 客席にゆだねたり、甲斐もいっしょにうたったり。そして、「サンキュー」と言ってから、最後のサビを うたい始めた。

 緑の照明。甲斐の足元は赤く染まっている。 
 「LADY」 
 甲斐は強く歌う。激しいバラード。これが甲斐のバラードだ。松藤のギターもあくまで強く。 
 1番からすでに、サビ前の「ああ、LADY」を、「ああ」なしで後ろを上げるように呼び掛けた。 
 「からのポケットに」からが特にすさまじい。「にじーをー」と伸ばさず、「虹を」と詰めて歌う。 「だけどー今ー帆をー上げー高い波をくぐりーぬけー」声が濁ろうがかまわず、ひたすら強く歌い切る甲斐。 
 俺も船を出すぜ!

 「BLUE LETTER」 
 このバラードでも、松藤は初めから「ザカザーン」と分厚く大きな音を掻き鳴らす。 
 甲斐はヴォーカルに強弱をつけてうたっていく。 
 「恋におおーおち」「虜にいなったあー」「だけど心はなーれ いつか 別れてきーたー」 
 フレーズの区切りごとに、キーボードの高い音が曲を彩る。クラッシャーが奏でているのだ。 
 サビは最後を短く、「ブルーーレタ」。「”アコギ”なPARTY 30」から、このうたい方に なっている。 
 ホールにある音が甲斐の歌声だけになる、3番中盤がやはりたまらない。

 前奏のギター。歌入り前が今までにないアレンジになっている。甲斐にも新鮮に響いているようだ。 ヴァイオリン入りのアコースティックライヴだからと立つのをがまんしていたオーディエンスが、立ち 上がりはじめる。これからやって来る大合唱の波の兆しに、じっとしていられないのだ。甲斐がマイク スタンドに近づいた。「お前の髪に」 
 「ナイト ウェイヴ」 
 ヴァイオリンの調べが心地よい。「Classic Kai」の「破れたハート・・・」があんなに 素晴らしかってんもん。この三部作に合うはずやんな。 
 甲斐は「ウーウウー」となめらかに歌っていく。甲斐の歌声を聴き、ヴァイオリンとギターに包まれ、 手を打っての大合唱。気持ちよくって、うれしくて。甲斐はラストのみ、「ウォーオオーオ アーアアー」 と大きく声を伸ばした。

 ライトが点いた瞬間、スタッフ2人の姿も映し出された。しかし、甲斐はそんなことに構いやしない。 自らの衝動どおりに歌っていくのだ。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 ステージのバックでカラフルなライトが流れ、光が2つ回転している。アコースティックでも拳を 上げる。歌も演奏も力強いから。もはやすわってる奴なんているもんか。「漂泊者(アウトロー)」は 今夜も激しく熱いのだ。 
 間奏は甲斐のハーモニカ。そして、クラッシャーのヴァイオリン。互いが意識し合ってる。 相手を尊重しつつ、自分が音を出すとなったら存分に。

 「風の中の火のように」 
 初めから激しい。甲斐と松藤と、ギターも二つだ。 
 「そんなとき君の名を呼ーぶーー」「寒さに目が覚め自分をー抱くーー」「風の中の火のようにーー」 コーラスが重ね合わされる。 
 燃えるオーディエンスとともに曲も熱く突き進んでゆく。 
 甲斐が「愛なーのに」と歌うと、バックが真紅に染まる。それから、三人で「風の中の火のように」 と3回繰り返す。そして甲斐一人で、「火のーようにーー」を3回、最後は「火のーーーーっ」と 張り上げた。

 美しいメロディーが会場を渡る。ストリングスによる前奏が流されているのだ。これは 「Classic Kai」の音源に違いない。クラッシャーを待って、いっしょにコーラスから入って ゆく。 
 「破れたハートを売り物に」 
 アコギヴァージョンでも、「落ーとーしー」と遅くならない。オリジナルと同じく「落ーとし」と 詰めて歌うアレンジになっている。 
 甲斐はほほえんでいる。しあわせでしかたないって感じ。この瞬間、この場、この音が気持ちいい んやろう。 
 間奏の後も、甲斐は「今夜はここで静かにしなくていい、来いよ」という仕草。オーディエンスにも 「かなーしみやわらげ」「俺ーの愛はー」と、ところどころ歌わせていく。続いて三度訪れるサビの 大合唱で、本編は大団円へ。

 1回目のアンコール。甲斐とクラッシャーの二人がやって来る。クラッシャーはホルターネック。 ラメも見える。

 「冷血(コールド ブラッド)」 
 甲斐が激しくストロークするギターと、クラッシャーのヴァイオリン。ライトは緑と、下が赤だった か。「うらんでも」の前から鮮やかさを増すのが印象的だ。そこからのヴァイオリンがスリリング。 この曲独特の怖さ、冷たさを感じさせるのだ。 
 間奏で甲斐のアコギが高まる。それに連れてヴァイオリンの攻撃も強まってくる。上って、上りつめ ていく。 
 再び後奏で二つの楽器が絡みつく。速度を上げ、空気を震わせ、やがて果てた。

 甲斐がギターをスタッフに渡しかけてから、やっぱりまた肩にかける。 
 「松藤を呼び戻そう」の声で三人が揃った。 
 前奏は「観覧車」かと思った。1曲目に続いて、今日2回目や。でも、今度も別の歌やった。 
 「HERO」 
 おお、そうやったんか。それならもちろん、拳を2連打や!! 
 今夜も、「HERO」の熱さと快さが伝わってくるアレンジ。甲斐も詞を乗せるテンポを緩めたり しない。「砕け散っても」は客にゆだね、すぐに「HERO」と甲斐たちが続けるのもいいぞ。 
 いい歌やなあ。つくづく思う。ヒット曲だからとかは何も関係なく。ただ真っ直ぐ聴けば、ちゃんと 自分の胸に届くのだ。

 前奏は松藤のギターから。 
 「最後の夜汽車」 
 甲斐の歌だ。声のよさが、詞のよさが、沁みること。せつない。響かせる語尾の余韻がなおさらに。 
 しかも、ヴァイオリンがまたすごいのだ。間奏であのフレーズを奏でたかと思うと、2回目は それを高い音で聴かせてくれる。この抒情に満ちた調べ。この編成で歌うにふさわしいよなあ。

 余韻を胸に手を打ち、「甲斐ーっ!」って叫んでいると、2回目のアンコールが訪れた。甲斐は 白のTシャツに着換えている。

 甲斐と松藤が小さな楽器を手にしている。ウクレレだろうか。こういう楽器を見るといつも、 「Singer」の武道館を思い出す。「バス通り」やな。 
 ところが、始まったのは予想もしない曲だった。 
 「ハート」 
 おおお、ライヴで「ハート」なんて、初めてや!この歌に対する思いが一気に押し寄せて来る。 それと同時に、この貴重なステージを少しでも見逃すまいと、意識がさらに甲斐へ集中していく。 今この時だけの「ハート」を焼き付けるんや。 
 演奏と曲調に合わせて、甲斐は軽快な歌い方。力の抜け加減が絶妙やねんな。声も小さめで、口を マイクの方に突き出すようにして歌っている。 
 「天気雨」という言葉に、今日の明石を思い出した。それから、すぐに詞の本来の意味が伝わって きて、いつもうまくはいかない恋愛を思う。生で甲斐の歌を聴くと、ひときわしっかり感じられる ねんな。 
 甲斐は後奏で「ハ~ア~~~」「ハ~」と声を伸ばす。これが「ハート」のライヴヴァージョン なんや。 
 早めの暗転でフィニッシュ。

 オーディエンスへの感謝を述べる最後のMC。 
 会場のそこここから飛ぶ元気な「やァ!」の声に、甲斐は「「やァ!」禁止」と言って笑った。

 次にやる最後の曲は、長い間ステージで歌っていなかった。特別なイベントで歌ったら、泣いている ファンがいたらしい。 
 「この曲で泣くんだ」 
 それで思い直したのかな。最近はアコギで歌ってくれる機会が増えた。

 「バス通り」 
 甲斐がほほえんでる。 
 「まぶしかったのーーーーーー」 
 声の伸びがいい。思わず引き込まれていく。この歌声だけでも、聴く者を泣かせる力がある。 
 ヴァイオリンのトレモロが、「バス通り」と、ライヴの終わりを彩った。

 僕らは甲斐たちに目一杯の拍手と声をおくる。クラッシャーが去る。松藤はマイクスタンドに 近寄って、「甲斐よしひろ」って紹介して行った。こんなふうに、メンバーが甲斐の名前を呼び上げるの って、初めて見たな。拍手と歓声、「甲斐ーっ!」の叫びがまた激しくなる。 
 それらに応える甲斐。マイクスタンドの後方に離れて立っているけど、「サンキュー」と言っている のが小さく聴き取れる。それから、マイクスタンドに近付いて、あらためてみんなに聴こえるように 「サンキュー」と告げた。

 甲斐のいなくなったステージを眺めながら、今夜のシーンを思い返す。どの曲でのことだったか 思い出せない情景。 
 キーボードの高い音。客席横の壁に三人の影が映っていたところ。ヴァイオリンを指ではじく 奏法。甲斐にMCの途中で急に紹介され、驚きつつ立ち上がったクラッシャー。

 バンドツアーのROLLING CIRCUS REVUE との違いが際立って来たな。アコギツアーだから聴ける曲、バンドツアーだから歌う曲というのが、 できてきてる。しかも、それぞれにめったに聴けない曲を取り上げてくれるのだ。これから、ライヴで いろんな歌が聴けるぞ。 
 ますますおもしろくなってきた。

 

 

2006年10月7日 岸和田市立浪切ホール

 

スウィート スムース ステイトメント 
裏切りの街角 
ビューティフル エネルギー 
かりそめのスウィング 
きんぽうげ 
甘いKissをしようぜ 
安奈 
LADY 
BLUE LETTER 
ナイト ウェイヴ 
漂泊者(アウトロー) 
風の中の火のように 
破れたハートを売り物に

 

冷血(コールド ブラッド) 
HERO 
最後の夜汽車

 

ハート 
バス通り