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泣くな、ジョニー! -千葉ロッテ17連敗の夜-

オリックスVSロッテ 1998年7月7日(火) グリーンスタジアム神戸
 

 歴史的な試合だ。千葉ロッテは、この試合の前まで引き分け1をはさんで16連敗。 今日負ければ、プロ野球新記録の17連敗。果たして、阻止できるのか? 
 今のロッテは、決して嫌いなチームではない。 キャプテンのフランコは、球界一、二を争う闘志あふれるプレイヤーだ。 ロッテが勝ってもよし、負けても新記録が見られる、というくらいの気持ちでいた。

 

 球場に着くと、やはりロッテ応援団に気合いが入っている。 「どんなときも 俺たちがついてるぜーっ」という歌が今日ほど重みを感じさせることがあっただろうか。 
 期待を背負っての先発は黒木。連敗中、抑えに失敗していたが、完投能力充分の投手。 ストッパー失敗は黒木のミスというより、河本・成本の強力ストッパーコンビの故障が響いた形だろう。 グリーンスタジアムのDJに、愛称の「ジョニー黒木」で紹介された黒木は、この球場が似合いそうだ。

 

 ロッテがどん底状態なのにもかかわらず、スコアボードから異様な雰囲気を漂わせているのは、オリックスの方だった。 
 異形のオーダーと言ってもいいだろう。田口がセカンドを守っている。レフトはプリアム。 大島がサードにまわり、キャッチャーは若い日高。内・外野とも完璧だった日本一チーム・ブルーウェーブ、見る影もなし。 本西、馬場、中嶋らの退団が裏目に出ている。 
 しかし、僕は今夜オリックスを応援することに決めた。ピッチャーが木田だったからだ。

 

 試合開始。僕はセンター左に席をとった。 
 グリーンスタジアムの外野とグラウンドは近い。 「小坂ーっ、走れーっ!」「ジョニーーッ!行けーっ!」というレフトスタンドの声は、選手に聞こえているだろう。

 

 3回表。チャンスに福浦がレフトフライ。タッチアップの福澤が倒れ込むように気迫のヘッドスライデイングでホームイン。 ロッテ先制。フランコもライトフェンス直撃の2塁打で2点目。

 

 4回裏。イチロー技ありのレフト線2塁打などで、無死2、3塁。しかし、ジョニー黒木は、ニール、谷からストレートで連続三振を奪う。 気合い充分。しかし、ツーアウトから痛恨のワイルドピッチ。1点差。

 

 6回表。5回終了後の花火打ち上げが終わった途端、キャリオンがレフトスタンドへ花火。3-1。

 

 9回表。いつもは、外野でキャッチボールしたボールを最終回にイチローがライトスタンドへ投げ入れる。 でも、それがなかった。負けているせいか。田口とのコンビでないからか、背面キャッチもしてくれへんし。 パも審判4人制になって、線審がファールボールを子供にあげることもなくなってしまった。 どうも、2、3年前よりもグリーンスタジアムの魅力が減ってきてる気がするぞ。 
 ロッテは14安打放ちながら、結局3得点のまま最後の守備へ。 フランコ初芝、平井に守備固めが送られる。みんなそんなに守り悪くないのに。 フランコのグラブさばきなんて見事なのだ。にもかかわらず交代したのは、故障のせいらしい。 やはり、チーム事情は悪いのだ。

 

 9回裏。ジョニー黒木は、ここまで2安打に封じる最高のピッチング。 
 先頭のイチローを三振に切って取る。ワンアウト。これで大丈夫だろう。 
 しかし、ニールがヒット。1死1塁から、谷は簡単にファーストファールフライを打ち上げる。谷にはまだ5番は無理に思える。 
 2死1塁となって、バッター、プリアム。あと1人。黒木は相変わらずストレートをずばずば投げ込んで行く。 ツーストライク。あと1球。プリアムはファールを打つのがやっとだ。1球外す。簡単に三振が取れそうや・・・ 
 ところが、次の球をプリアムが気持ちよくスイング。大飛球。 切れるかどうかの問題だった。レフトポール際、まさかの同点2ラン。 
 黒木はマウンドにへたり込んでしまった。動けない。 連敗脱出まであと1球というところまで快投を続け、力尽きたのだ。 次のピッチャーがマウンドにやって来て、黒木はようやく重い足取りで3塁ベンチに向かいはじめた。 ロッテ応援団から、盛んにジョニーコールが起きる。 
 そのときだった。グリーンスタジアムのDJが、「黒木投手、ナイスピッチ」と言ったのだ! やっぱり、グリーンスタジアムは素晴らしい!敵チームであっても、いいプレイ、いい選手は認めるべきだ。 日本の野球ファンに欠けているのがそれなのだ。球場全体から黒木への拍手。 
 黒木には泣けた。僕はレフトのロッテ応援団そばまで移動した。 木田が降りたときから、内心ロッテを応援していたが、この感動で完全にロッテびいきになった。 
 泣くな黒木!ほんとうにいいピッチングやったぞ。

 

 延長戦。守備の人ばかりが並んだロッテ打線には、もはや1点も取る力はなかった。リードできないのだから、抑え登板覚悟でブルペンに立つ気力を見せたエース小宮山も使うわけにはいかない。 
 イチローは12回表が始まるときに、スタンドへボールを投げ込んだ。 ライト線の打球を捕って1回転してサードへ送球するステップや、鋭い2安打(打率3割8分!) で今日もすごさを見せてくれた。

 

 12回裏。もう、ロッテの勝ちはない。あの近鉄の悲劇にもかかわらず、いまだに引き分け制度があるのは、パリーグの怠慢である。 134勝1敗のチームよりも1勝134分けのチームの方が上位に来るばかげたやり方だ。 ファンをなめている。 
 ヒット、パスボール、エラーで無死2、3塁。こうなれば当然敬遠策。無死満塁。 左ピッチャーなので右の代打が出てくる。デカやろうと思ったが、なんとダイエーから移籍していた藤本やった。 
 貴重なもんが見られると思ったが、ピッチャーが右に変わると、あっさり代打の代打を出されてしまった。 
 広永。打ち上げた打球はライト後方へ。あー、タッチアップでサヨナラや。ロッテが負けてしまう。 
 しかし、もっと残酷な結末が待っていた。意外に伸びたボールは、ライトスタンドに舞い落ちたのだ。 
 あまりにも痛々しい。この試合、ファイトを見せていたセンター堀がゆっくりとゆっくりとベンチに向け、歩いていく。 代打満塁サヨナラホームランなんて初めて見たけど、そんな興奮はなかった。 
 この幕切れにも、ロッテ応援団は選手に声援を送り続けた。もう1回ジョニーコールの大合唱。 この応援団も、勝利への闘志を見せ続けたチームも素晴らしい。 
 確かにロッテは史上最悪の17連敗を喫した。だが、決して情けないチームではない。 これから何かにつけこの記録が話題にのぼるだろうが、この日のロッテのGUTSは最高だったと僕が保証します。 黒木をはじめマリーンズナインにはほんとうに感動させられた。 
 いつか、マリンスタジアムに応援に行きたい。 そのときもまた、いい試合を見せてくれよ!

 

 

 

 M









 0


 3
BW









 0

4x
 7x
 
 

勝 鈴木(3勝3S) 敗 藤田(2勝4敗3S)  
キャリオン8号 プリアム11号2ラン 広永1号満塁
 

 

 

MVP 黒木(M) 
優秀選手 プリアム(BW) イチロー(BW) 広永(BW) 堀(M) 福澤(M) 
ファインプレー 松本(M) 小川(BW)