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KAI 30th ANNIVERSARY TOUR ENCORE ”アコギ”なPARTY 30

2005年4月15日(金) 京都会館第2ホール

 

 京都でのライヴは、1996年のミューズホール 以来。 
 京都会館となると、「ストレート ライフ」ツアー以来やなあ。あの日の 「ラヴ マイナス ゼロ」は忘れられない。第一期ソロ前半によく使っていた、濃紺のボディが小さくて四角くて、ネックの先がいきなり切れてないようなエレキギター。甲斐があれを静かに鳴らし、他にはキーボードが加わるくらいで、鈴木明男たちがならんで コーラスしてた。声を生かした、素晴らしいアレンジやったなあ。 
 あの頃はまだ京都に地下鉄はなく、友だちとタクシーで行ったんやった。

 今日は地下鉄で向かって行く。国際会館という駅があり、一瞬うっかりそっちを 目指しそうになったが、国際会館と京都会館は別物。事前に京都会館HPで調べておいた 通り、東西線東山駅で降りる。 
 改札を出たところに表示されてある、京都会館への最寄り出口が、HPに載って いた出口と違う。少しだけ考えて、駅の表示に従うことにした。 
 地上に出てすぐに地図があったけど、何か細くてわかりにくい道を行かな あかんみたい。おそらく、HPに載っていたのはわかりやすい大通りに近い出口で、 駅の方は物理的に近い出口を教えてくれていたのだろう。開場の6時半まであまり時間も なくて気が急くが、そのまま行くことにする。

 出口から左に進むとすぐ川があり、その手前を左折、京都らしい細い路地を歩く。 ほんまにこの道なんかいな。たよりなく感じつつも、たしかこっちの方角だと見当をつけて進む。 
 すると、小さな川沿いの狭い道に出た。桜の樹があったり、石の細い橋がかかった 向こう岸を着物の女のひとが歩いていたりする。めっちゃ風情があるねんけど、今は あまりそれを楽しんでいる余裕がない。 
 川に沿って進みきると、広い通りに出た。とりあえず右側の信号の方へ行ってみる と、いきなり向こうに巨大な鳥居が見えた。どうやら、この道で合っていたようだ。

 信号を渡ると、道は広くて大きな赤い橋になる。左右に桜も緑も多く見えて、趣の あること。観光客を乗せる人力車も停まっている。あの人力車の後ろが光るようになって るの、今初めて知った。 
 美術館、図書館と、その前を通り過ぎて行く。正面の奥は平安神宮らしい。それで あの鳥居か。京都会館とこんなに近かったとは。 
 平安神宮まで進まずに左折する。右手の桜が実にきれい。15日になってこんなに たくさん桜を見られるとは思ってもいなかった。 
 桜の公園の隣が、ついに京都会館。左手前の入口から入場。  

 甲斐バンドのライヴCD10枚組BOX「熱狂 ステージ」の豪華パンフレットを 手渡される。このツアー4ヶ所目にして初めてや。 初日の岡山から配るの間に合ってたらよかったのになあ。 
 パンフを手によろこぶ僕を見て、甲斐友が「曲目全部載ってんで」と教えてくれ た。ああ、危なかった。そう言うてもらえへんかったら、うっかり開いてしまうとこ やった。僕はCDを初めて聴く瞬間まで、収録曲目も曲順も一切知りたくないのだ。 1回目は何も情報を入れずに聴いて、実際のライヴのように驚きたいから。

 トイレに行くと、中にスタッフが立っていた。こういうの、やたら警備が厳し かった九州共立大学の、KAI FIVE 学園祭ライヴ以来やな。見たところ、 トイレ内に関係者用通路らしきものがあるので、その前をふさいでチェックしている らしい。

 客席では早くから口笛が鳴らされ、「甲斐ーっ!」の声が飛んでいる。めちゃ めちゃいい感じやん。今夜のライヴはひときわ熱くなりそうや。 
 BGMは「カントリー ロード」、「バイバイ ミス アメリカン パイ」、 マンダムのCMに使われていた曲。 
 最後のBGMが「ウィスキーバー」と歌い始めた。ステージに横から白い光が 射す。その中を甲斐の登場だ。

 「ちんぴら」 
 やはり今夜も、1番でも「そこは」を抜いて歌う。 
 「だから短く輝いては 消えてしまうというのかい」 
 ニューヴァージョンの歌詞も聴くことができた。

 松藤とともに、「裏切りの街角」 
 暗いステージに、白い光。歌い出しで拍手が起こる。 
 松藤は「わかってたよ」に入る前の部分を、オリジナルのように3つの音で 終わらせない。ラストが次につながっていくような抒情的なメロディーを奏でてくれる。 
 甲斐の声に思う存分聴き入る。今夜はハーモニカが強く吹かれている。 
 最後にみんなが拍手を始めても、僕はまだ動かない。もったいなく思えて、 音が完全に消えるのを待ってから拍手した。

 ここからは前野選手と3人で。 
 「きんぽうげ」 
 ライムグリーンの照明。1番では突き放してうたうところもあった甲斐。その後は やさしい声でうたっていく。 
 アコーディオンを這う前野選手の指が、「きんぽうげ」の間奏をつむぎ出す。 
 甲斐は「ひびわれた」の歌詞をトバしてしまう。よくオーディエンスに歌わせる 部分でもあるもんね。 
 後奏。甲斐の声は「デュデュデュ」からやがて「フフーフフー」とファルセットに 変わる。 
 ラストは松藤のアコギが「ザザザーン」と幕を引く。

 オープニングで立つ人と座ったままの人に分かれたことについて。 
 「変な生物(が生える)みたいにぼつぼつと(立って)。立って見ようが座って 見ようが自由ですから。ただ、(アコースティックライヴで)立った場合、どうやって 座るかって問題が出てくる」と、笑わせる。

 松藤にすごく大きな声援が飛ぶと、甲斐は「聞こえてるよ。近いんだから」。 松藤が「見えてるし」と続ける。 
 そういえば、2列目に、松藤に手を振っている人たちがいて、松藤も顔で反応して た。知り合いなんかな。 
 甲斐は「「家政婦は見た」のように見たくないものまで見えてしまうかもしれない けど、それはお互い様」というジョーク。

 「京都では、大都市を避けてやってるツアーとは言えないね」 
 「(京都でのライヴは久々だけど)プライベートでは来てた」と言うと、客席から 「エーッ」の声。 
 甲斐がそれに反応すると、松藤が「今日、耳いいな」 
 「昔は京都に何泊もして。丹後・・・丹後ちりめん、野村の母校・・・。豊岡 とか(にも行った)」 
 甲斐はさらに京都のことを、「今日の昼も、いいなあと。また、いい季節に来たな と」

 「ビューティフル エネルギー」 
 今夜も甲斐は短く響かせてうたい、松藤は伸ばして歌う。 
 前半を松藤が歌う2番も、サビは甲斐がうたう。そして、最後の繰り返しは、 2人のハーモニー。甲斐がサビをしめくくる。

 「かりそめのスウィング」 
 前野選手が指を鳴らして、客席の手拍子を誘う。歌に入ってからも、1番の前半は 指を鳴らし続けてる。 
 マフラーの詞は、「首に巻きつけた」でうたわれた。 
 「デューー ワッワッ」って感じで演奏されるアコーディオンが、この曲のムード を濃くしてて、いい。終盤には鍵盤を指が上へ走り「ギュルルー」と音を飾る。 
 甲斐がラストで「オーイェー!」と叫んだ。

 八坂神社に花見で来たときに、流しの人に「安奈」をうたってるのは自分だと告げ てびっくりさせたという笑い話。 
 京都ならではのMCがもうひとつ。 
 四条大橋の上。甲斐の姿を見た占い師が激しく反応し、「ちょっと、ちょっと、 君、見せて」と声を掛けてきた。「お金ない」と言っても、「いいから、いいから」と 甲斐の相を見て、「君は将来必ずビッグになる」と断言したらしい。 
 「ビッグになるっていっても、この程度か」と甲斐は茶化したけど、客席のみんな は拍手をおくる。俺らファンにとっては、甲斐は唯一無二の存在なのだ。 
 「「HERO」が売れた後、その人を探しに行ったんだけど、いなかったんだ よね」という後日談。

 「僕は磔磔から出直します。神戸はチキンジョージ から」 
 冗談ぽく言ってるけど、もしかしたら本当に地元のライヴハウスで甲斐が見られる かもしれないと、よろこびの拍手が起こる。 
 磔磔行ったなあ。甲斐友たちといっしょに。1994年だったか。店内に 「風の中の火のように」を作詞したときの甲斐の直筆ノート(CDとは少しだけ詞が ちがっていた)や、甲斐バンドのゴールドディスクが飾られてあるのだ。 
 「磔磔から始めて、磔磔で2daysできるようになったら、西部講堂行って」 
 「西部講堂、いいよねえ。浅川マキとか、俺持ってるもん。自分がそこに並んだ わけじゃないけど」

 「安奈」 
 3番あたりから、松藤のアコギの音が小さくなっていったみたいや。甲斐の歌声が 響く。そこへみんなの歌が重なって、コーラスとなる。 
 「クリスマスツリーに」で甲斐はうたうのをやめ、「あかりがとーもりー」からは オーディエンスだけにうたわせてくれた。 
 そして再び甲斐とサビを合唱する。

 「レイニー ドライヴ」 
 青緑のライティングのなか。 
 甲斐はうたい方にアクセントをつけている。「忘れてーいたー」の「いたー」や、 「ささやきーさえー」の「さえー」を強くうたい、その後の部分は静かにうたうのだ。 詞が沁みてくる。刺さってくる。 
 間奏でピアニカを聴かせてくれていた前野選手が、楽器を口から離すやすぐに 「サーチライー」のコーラスに加わっている。すごいなあ。

 「いい感じだな。・・・最後の曲になりました」 
 みんなが一斉に驚きの声をあげると、「今、(みんながあまりにも)集中してた から」と、いたずらっぽい表情をする。

 「アコースティックセットだと、甲斐のMCがたくさん聞けるだろうって勘違い してる人もいるみたいだけど。(いっぱいしゃべるかどうかは)会場によるんだよ。 かたくなな、曲が終わっても肩に力入ってるよう(な客席の雰囲気)だと、(そんなに はしゃべれない)ね。それを、いろんな角度からほぐすのも好きなんだけど」

 「磔磔から出直します」「(京都にも)こまめに来る」といううれしいセリフも 織り交ぜながらのMC。

 「神戸じゃ渚と、京都じゃ別の名前を名乗ってます」と、神戸のMCを受けての 話題も飛び出した。 
 松藤は「(京都でこのことを言うって神戸で宣言したのを)よく思い出したね」 って、感心するように驚きながらウケている。 
 甲斐は「MCで何か忘れてると思ってたんだ。それを探して、どうでもいいこと 話してた」とボケてから、「どうでもよかったのかよ!」と自分でツッコむ。

 暗転したステージ。ライトがつくより先に曲が始まる。 
 「愛のもえさし」 
 下の方で光が回っている。 
 甲斐のうた。それにコーラスも、よかったあ。歌も演奏も照明も素晴らしかった。

 「愛のもえさし」について、「松藤の歌を奪って、夜明け(という歌詞)を夜更け に変えて」 
 「歌いたい歌いたい病に時々なるんで。京都で店借り切って、朝までカラオケ 歌ったこともある」 
 そう甲斐が言うと、「彦根のときか」と 松藤が即座に反応する。

 麻生高校の名前を口にした甲斐。左の前野選手を見るも、無反応。 
 「いっしょにステージ出てるんだから」と言いつつ、仲のよさが伝わってくる シーン。

 「宣言したから、ほんとにやろう」 
 磔磔ライヴがほんまに見られるのか。感激の拍手が沸く。

 武道館のDVDの見どころは、「自分の出て ないDA PUMP(の出演部分)だ。自分は飛ばす」なんて言ってみせる。 
 アンコールの「HERO」での、DA PUMPとベースのノリオの対比もウリ だという。 
 「そういう秘蔵特典映像もあって」 
 「ぐっさんは、大友康平のマネしたときの方が音程いいんだよね」  

 「武道館で大友康平とやった時は、しぜんと歌い方が変わったんだけど。今日は 自分のうたい方でがんばる。当たり前だ。誰のコンサートだ」

 「BLUE LETTER」 
 背景に雲。左はオレンジの照明。右の松藤は青に染まってる。 
 「BLUE LETTER」の詞の舞台、この曲のモチーフとなった「道」、 「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、さらにはグレアム・グリーンの小説 「ブライトン ロック」の海辺に今自分がいるような感覚になった。 
 歌って、照明って、こんなにもイメージを広げるもんやねんなあ。

 「花,太陽,雨」 
 客席から手拍子も聞こえた。僕は、ただ3人の歌を浴びる。 
 「この白い光」は松藤のパートだったが、甲斐もいっしょにうたった。それだけ のめり込んでいたのだろう。

 「漂泊者(アウトロー)」 
 甲斐が立ち上がって歌う。オーディエンスはもちろんすでに立っている。 
 ステージ上方でカラフルなライトが左から右へ2つずつ移動し、そのうえさらに 光を放つ。 
 1番では「SOSを流してる」から「テレビのヒーローが言ってる」まで間隔が あけられたが、2番は「愛こそ救いだとしゃべってる」に続けて 「希望の時代だと言ってる」と歌っていく。 
 間奏は甲斐のハーモニカ。強く。松藤のアコギも。前野選手のアコーディオンも。 
 ラストは急激に果てる。「漂泊者(アウトロー)」らしく。 
 熱狂の声がホールのあちこちから。「甲斐ーっ!」という叫び。オーディエンスの 熱が渦巻いてる。

 「風の中の火のように」 
 場内の興奮を受けとめてのことだろう。今夜の甲斐は、この歌を全部強く歌い 切る。 
 間奏のギターにも力がこもってるで。

 前奏で甲斐が言う。「最後の曲になりました」 
 「破れたハートを売り物に」 
 しっかり聴けるが、勢いもある、絶妙のテンポでの演奏だ。 
 「あのー雲を 払い落ーとし」と、オリジナルのタイミングで歌われた。これまで アコギヴァージョンのときは「落ーとーしー」って歌うことがほとんどやったけど。 
 後半、3人それぞれのギターの鳴り方が印象的や。そう感じながら、大合唱して いく。 
 ラストは2人が甲斐のギターを見て合わせ、完璧にそろってフィニッシュ!

 本編が終わったとこやけど、甲斐はステージに長く残って歓声に応えてくれる。 今夜のオーディエンスは特に燃えてるもんなあ。

 再び出て来てくれた甲斐は、黒のTシャツ。首のところを切ってあるようだ。銀の ネックレスが覗いている。

 「翼あるもの」 
 静かなアコギと歌。それでも僕らは拳を上げる。詞と歌声をかみしめながら。 
 間奏がすごいのだ。ギターの高まりにつれてオーディエンスも盛りあがる 盛りあがる。 
 その勢いで突っ込んで行った繰り返しは、「俺の海に翼濡らし」とニュー ヴァージョンや。 
 「たーどりいーい つーーくまでー」と歌った甲斐は、左腕で押さえてギターの 角度をずらした。音の反響を変えるように。 
 早めに「俺の声が聞こえるかい」と歌い始めた。 
 「ハーウェー フラウウェー」と声をあげる。ギターの音をわき上げる。 オーディエンスの拍手が捲き起こる。甲斐はそれから最後の音をキメた。

 やはり静かな前奏から。 
 「感触(タッチ)」 
 客席からの「タッチ!」の声が多い。ええやん、ええやん。 
 「お前がすがる」のとこからは「タン タ タン」の手拍子をする人たちも。 このシングルが発表された当時のライヴでは、その手拍子が多かったんかな。 
 1番を「胸はこんなにも」から「永遠に続く口づけ交わしながら」、2番を 「腕はこんなにも」から「二人だけのこの痛み守りながら」と、クロスさせて歌う ニューヴァージョンやった。

 大歓声にうなずく甲斐。やっぱりもう1曲やってくれる! 
 「テレフォン ノイローゼ」 
 甲斐のギター!イントロからめっちゃかっこいい。あのフレーズを生かして、強く 弾いていく。 
 1番は歌入りのタイミングを遅らせる。 
 2番はオリジナル通りに歌い出す。サビの2回目ではギターの音を減らして、 「鳴りっぱなしーいいー」と力強い歌いっぷりや。 
 間奏のギターもまた強し。「ザクザク」というストロークからすでにすごい。 さらに指が上下しまくるあの奏法を畳み掛けてくるのだ。 
 3番もオリジナル通りに入った。そして、後奏がバッチリで、俺らファンが 求めてるそのものの音で、またまたかっこよかった。

 「2人を呼ぼう」の言葉に拍手。 Welcome to the ”GUTS FOR LOVE” Tourの 2回目のアンコールを連想させもするセリフやなあ。こういうのにも燃えるのだ。 
 拍手に迎えられて、2人の登場。松藤はツアーTシャツを着ている。全体は黒で、 胸の部分に、赤をバックに刀を持ったニイさんのイラストがプリントされているやつ。

 「HERO」 
 甲斐が前奏から両手で煽り、みんなタイミングを違えずに最初から拳をあげる。 
 松藤のアコギは「ザザザザザッ」って全部弾いていながらも、独特の音をつくり 出す。2番からは少しストロークを変化させた感じ。 
 間奏で甲斐が立ち上がる。「空はひび割れ」のところで照明が暗くなる。 アコースティックでもマイクスタンドを蹴り上げるのかと思ったが、それはなかった。

 「熱狂(ステージ)」 
 前奏。前野選手が右手でキーボードを奏で、左手は指揮をするように振っている。 松藤のアコギが入ると、振るのをやめる。歌入りで拍手。 
 「雨が降るその前に 歩き出す」 
 この詞が心を打つ。とにかく毎日がんばっとく。そうしとかないとな。 
 1番の区切りで再び拍手が起こる。 
 甲斐は強弱をつけてうたっていく。 
 「むかーし」の語尾を響かせ、「ホールで」とうたい、「まばーらなー客ーをー」 で声を張り上げる。 
 「こんやーの」も語尾を響かせる。「ショーは」を少し小さな声でうたう。 「すてーきだあったあー」は力強く張る。 
 「次の町へ 次の町へ」 
 30周年やこれまでのツアーのことじゃなく、これから行くぞとうたってるんだ と感じる。「進んで ゆく」

 甲斐たちが去って行く。前野選手がサムアップして見せる場面が多かったから、 両手でサムアップしたら、片手をサムアップで返してくれた。

 アンコールを欲する大きな大きな手拍子。「甲斐ーっ!」という叫びがいくつも。 これが「俺たちを呼ぶ声」やんな。

 松藤。前野選手。そして、ツアーTの上に白いジャケットを着て、甲斐が現れた。 
 「嵐の明日」 
 背景にはもう一度雲が映し出されている。 
 2番の最初は、「なぜ 不安が」とうたうニューヴァージョンの詞で。 
 二段に並んだ赤いライトが燃えるようにステージを染める。その真ん中で、甲斐は 交差した白いスポットと、さらに他の角度からも白い光を受けている。 
 腰のあたりで肘を曲げ、両手を左に向けた甲斐。右手は胴の横にそえるような 感じ。その体勢で「シャララララララララ」と美しいシャウト。今度は両手を逆向きに して「シャララララララー」。さらにもう1回そのまま声をあげた。

 すぐに演奏が始まった。 
 「かけがえのないもの#2」 
 松藤が弦をはじく。はじく。 
 1ヵ所だけ「俺」を「君」に変えたニューヴァージョンの歌詞。 
 「炎が その目にもどる時まで」 
 繰り返されるこの詞が胸に残る。 
 甲斐と松藤が後奏で、「ウォウウォウウォーっ」と声を重ねる。

 「今夜はワキアイアイと、最後まで楽しんでくれて、感謝してる。ほんとだよ。 サンキュー。ありがとう」 
 そう言ってからもう1度、「磔磔から出直します」のセリフ。

 甲斐バンドのライヴCD10枚組BOXに関して。 
 「箱根から、イベントは全部入ってます。ラグビーよりうるさかったと言われた 花園ラグビー場」 
 客席から「行ったよー」の声が飛ぶ。 
 「両国国技館。BIG GIG。解散コンサート。黒澤フィルムスタジオまで」 
 「解散コンサートのは、全部曲順通りに、全部会場を変えて。 「THE 甲斐バンド」はほとんど大阪城ホールの音だったんだけど、武道館のにした。 関西のみなさん、スイマセンて感じで」

 「3人でしかやらない曲があって。それは、デビュー曲なんですけど」 
 そう聞いて拍手が起こる場内。 
 「曲の完成度は高いんだけど。やらないにはやらない理由がある。相撲取りでも 野球選手でもサッカー選手でも、銭のとれる選手っているだろ? これは銭のとれない曲 だったわけです。次の、今日2曲目にやった「裏切りの街角」から自分たちの一生の カラーを出した曲を書いた。フォークバンドと呼ばれた過去があるから」

 そこから懐かしのフォークを特集したテレビ番組の話になって。 
 「高田渡とか、めちゃくちゃうまい。あの人たちと会いたい。楽屋には行きたい。 でも、出たくはない」 
 「あそこは自分を古典にしないと出られない場所なんだ。現役感バリバリの僕には 無理」 
 この言葉はうれしいよなあ。しびれたオーディエンスたちから拍手がおくられる。  

 デビュー曲の話に戻って。 
 「いい曲なんだよ。やっててときどきぐっとくるもん。ただ、一生やりたい色じゃ ない」 
 「30周年のツアーとかフルバンドでやって て、アコギのコーナーになると、(客席から)「バス通り」「アップル パイ」とか、 やりたくないのばっかり挙げやがって。そっちにいたら、しめ殺してやりたい」と 笑わせる。 
 「バス通り」のことは、「青春のひとつの断片」とまとめる。  

 最後は今夜重ねられたジョーク。 
 「磔磔に渚って名前で出てたら、それは僕です」 
 両脇の2人を示して、「渚スリー」なんていうバンド名も出た。

 今夜を楽しみつくした和やかな雰囲気のなかで。 
 「バス通り」 
 切ない、いい曲を、存分に味わう。 
 ラストは甲斐が、ダウンストロークとアップストロークを1回ずつ聴かせて、 曲を終えた。

 甲斐はサングラスを外し、前に出て来て、ステージの上に長くとどまってくれる。 大森さんの「25時の追跡」が始まっても。 
 「25時の追跡」に合わせて手拍子が起こる。「今夜のコンサートは全て終了 しました」とアナウンスが流れる。そんなもの、かき消してしまえ。

 

 

2005年4月15日 京都会館第2ホール

 

ちんぴら 
裏切りの街角 
きんぽうげ 
ビューティフル エネルギー 
かりそめのスウィング 
安奈 
レイニー ドライヴ 
愛のもえさし 
BLUE LETTER 
花,太陽,雨 
漂泊者(アウトロー) 
風の中の火のように 
破れたハートを売り物に

 

翼あるもの 
感触(タッチ) 
テレフォン ノイローゼ 
HERO 
熱狂(ステージ)

 

嵐の明日 
かけがえのないもの#2 
バス通り