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KAI 30th ANNIVERSARY TOUR ENCORE ”アコギ”なPARTY 30

2005年4月2日(土) 三郷市文化会館

 

 前日から三郷に乗り込んだ。”Singer”の初日 以来、ほぼ10年振りになる。駅前の風情はあまり変わっていないか。しかし、 いろんな店が増えているようだ。あの日、甲斐友と乗った電車は武蔵野線だったことが わかった。新三郷あたりの車窓からの風景は、あの夕刻を思い出させた。 
 前夜は 千葉マリンスタジアムで、マリーンズ対ホークスを観戦。今日も ロッテ浦和球場で、マリーンズ対ファイターズのファーム公式戦を途中まで観戦して からの、ライヴ行きだ。

 野球場のある武蔵浦和の駅から三郷駅に戻り、会場への道を歩む。10年前にお 世話になった薬局が今もあれば、記念に何か薬を買おうと思っててんけど、なくなって しまったようで、残念。 
 大きめの道路を進み、やがて左折する。そうすると、あの懐かしい三郷市文化会館 が見えてくる。向かいの公園も健在や。前回のライヴ終了後、初めて生で聴くことができ た「ブライトン ロック」について、この公園前の道で熱く語ったっけ。

 客席に入ると、昔のマンダムのCM曲が流れている。 
 自分の席で落ち着いて、ふと目に入った場内の時計は「17:02」。開演予定 時間を2分過ぎている。 
 アナウンスがあったのは、「17:06」。 
 そして、「17:10」、いよいよBGMが高まった。「ウィスキーバー」って 歌っているように聴こえる。

 ステージ左から甲斐、右からアコギを持ったスタッフが進んで来た。 
 ギターをかけ、マイクスタンドの前に立つ甲斐。手拍子、拍手、「甲斐ーっ!」の 叫びに、「サンキュー」と応えてから、アコギを弾き始めた。

 高らかな鐘の音のような前奏は、やはり ”My name is KAI”の「ブライトン ロック」や「三つ数えろ」を 思い出させる。 
 「ちんぴら」 
 1番の最初、「恋をささやくことさえも 窮屈すぎる街」と、甲斐は「そこは」を 抜いて歌う。 
 「お前にすがりついーたー」「思いもしなかあったー」「溺れていったー のおさー」甲斐は今日も、最後を歌うタイミングを変えている。このツアーはこれで行く のだろう。 
 客席の手拍子は小さめで、会場全体が息をつめて甲斐に見入っているような 雰囲気だ。 
 「あー あー あー」と力を込めて歌っていく甲斐。ラストも「そこは」なしで 歌った。 
 後奏の最後は短め。「ちんぴら」独特の「タンタン」という2音を弾かず、 その前に音を伸ばしてフィニッシュに入る。

 「松藤英男を紹介しましょう」 
 拍手で迎え入れられた松藤は、エンジのシャツ。今日もはだけ気味や。

 「裏切りの街角」 
 前奏。1番の後。2番の後。すべてで甲斐がハーモニカを聴かせてくれる。2番後 の間奏でだけ、ハーモニカの入りを遅らせ、その音を伸ばしていく。 
 最後は松藤のアコギとともに、「あのー人がー 見え なく なあったー」と ゆっくりうたって終える。

 次に加わった前野選手は、今日は縁なしの角張ったサングラスをかけている。 
 「きんぽうげ」 
 ステージ下方はライムグリーンの照明に染まっている。 
 アコーディオンの黒いボディに、赤紫の、青紫のライトが映っているのが見える。 アコーディオンの蛇腹が震え、「きんぽうげ」のあの間奏が生み出されてゆく。

 「このツアーは、去年やった30周年ツアーのアンコールツアーということで。 十何年行ってなかった岡山から始まって。 島根とか。福岡でも中心から離れたところでやったりとか」 
 「三郷は来てたんだ。ゲネプロで。ゲネプロって、ツアー前にホール借りて通し リハーサルするんだよ。今日は「本番、本番」と自分に言い聞かせて」というジョーク。  

 「ビューティフル エネルギー」 
 甲斐のサングラスに青紫のライトが映っている。 
 甲斐は1番で、「のぼってゆくよーーーーぉ」と声を張り上げた。 
 「もう二度とこの」からアコーディオンの音色がからんでくる。 
 後奏で甲斐が、「ウー」「ウォーエー」と切なくささやいた。

 「かりそめのスウィング」 
 前野選手がはじく指に合わせて、みんなの手拍子が始まる。 
 注目のマフラーの詞、今日は「首に巻きつけた」とうたわれた。

 うたい終えた「かりそめのスウィング」について。 
 「ほとんど二十歳のときに書い て。老成してたってことですね。(今の自分が)そんな二十歳見たら、ぶっとばしたく なるだろうけど」

 三郷のお客さんに、「今日、変」とツッコむ甲斐。 
 「ふつう1・2曲目が拍手長いのに、3曲目くらいからで。(客席が)緊張し てる」 
 「関東、変。厚生年金(会館)も武道館も 行けるのに、地元になると及び腰になって」 
 笑いも起こった場内の反応からすると、地元の人たちの気持ちはその通りやった みたいや。

 「去年のツアーは、夏に山梨でリハをやって。そのときは三郷じゃなかったんだ けど」と、校名の話に入る。 
 福島の小名浜二中出身の人はフリーライターで、わざわざ電話をかけてきたと いう。  

 「前の曲は冬の歌で。次も。これはみんなで」 
 「安奈」 
 甲斐がうたいながら、みんなもうたっていいんだと示す。そのジェスチャーが だんだん大きくなっていき、みんなの歌声も大きくなる。 
 「クリスマスツリーに」からの部分は、客席だけにうたわせてくれた。

 「レイニー ドライヴ」 
 前半は松藤のアコギだけの演奏で、甲斐がうたう。 
 やがて前野選手のピアニカが、あのメロディーを重ねてくる。

 「次の曲もいい曲なんだけど、行きたくない」と、MCでたっぷり話す甲斐。 
 もう1度今日の雰囲気を「変」と言ってから、「今回のツアーは大都市では やらない。だから、三郷。もうはっきり言った方が」と笑わせる。 
 「「東京はやらない」って言ったんだけど、イベンターが「違うんですよ、 甲斐さん、東京っていっても荒川ですよ」って。荒川は遠い。うちの家から」 
 「埼玉とは相性いいから、次は大宮か浦和。浦和でやろう」 
 この予告に拍手がわく。 
 「千葉は相性悪いから」と言うと、客席から「エーーッ」って大きな声が飛んだ。 
 「千葉の人?言ってはいけない言葉?「熊の木本線」みたいな」 
 甲斐が両隣の2人と顔を見合わせる。甲斐のMCで、筒井康隆作品の中でも僕が 特に大好きな「熊の木本線」のタイトルが出るとは。3人とも読んでるみたいや。 
 「今日は質疑応答ありなのか。じゃあ、そこの端の君から」なんて言ってみせる 甲斐。 
 客席から「待ってるよー」と声が掛かると、「言ってしまった。待ってるんだ。 責任を感じる」と、埼玉ライヴが現実味を帯び始めた気配。 
 松藤がすかさず「ディスクガレージ、よろしく」

 「愛のもえさし」 
 ほんまにいい曲やんなあ。 
 ラストで背景が真紅になった。

 武道館のDVDの話題。ぐっさん、大友康平、m.c.A・T、大友・・・じゃな い大黒摩季、DA PUMPと、ゲストの名前を挙げていく。 
 「大友くんとやった曲をDVDで見て、俺はエライと思ったよ。(大友康平に 合わせて)歌い方、変えてるんだよね。今日は元に戻して」 
 と、その曲「BLUE LETTER」 
 たしかに、武道館では歌い方を変えていたのがよくわかった。あれもあの時あの場 ならではの、「BLUE LETTER」やんな。ライヴやもんね。  

 「花,太陽,雨」 
 ただただ3人の声に陶然となる。歌に詞に入り込んでいく。感動としか言い表せ ない。今日特に心に響いた1曲。絶品やった。

 松藤の刻みがすごい。アコギだけでこの音、リズム。もちろんみんな立ち上がる。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 甲斐はオーディエンスに「愛をくれーよー」と歌わせる。ラストは「誰か俺に」と 歌わせて、甲斐が「愛をくれーー」 
 もう完全にあの「漂泊者(アウトロー)」を体現してるのだ。ただ3人の歌と音 で。

 「風の中の火のように」 
 今日は甲斐が強弱をつけて歌う。武道館翌日の イベントほど極端ではなかったけど。それでも、詞がより伝わってきて、この歌の 言うぬくもりが、愛が感じられて、胸が熱くなる。

 3人ならんだギター。前奏の間に甲斐が言う。「最後の曲になりました」 
 「破れたハートを売り物に」 
 みんなで歌う。甲斐の歌と。3人のハーモニーを聴きながら。それでも強く。 声をかぎりに。

 1回目のアンコール。甲斐がアコギを奏で始める。 
 「翼あるもの」 
 間奏がすごい!甲斐のギターが次第に激しく熱を発し、オーディエンスも燃えて いく。 
 「俺の声が聞こえるかい」 
 甲斐が今日は大きな声でそう歌う。不意に泣けてきた。詞に胸がしめつけられる。 
 オーディエンスの想いを喚起するように間をあけてから、「ザカザカザカザカ」と もう一度音を高めていった。

 甲斐は静かに前奏を弾き始めた。だんだん激しくしていって、あのサビに入る。 
 「感触(タッチ)」 
 「お前がすがる俺の」「お前が叩く俺の」からの部分を、1番と2番を入れ換えて 歌うニューヴァージョン。僕らもそれに呼応して歌っていく。その日にしか体験でき ない、こういうことがまたうれしい。

 甲斐一人のアコギ2曲に熱烈な拍手がおくられる。僕も手を打ち、「甲斐ーっ!」 って叫びまくり。 
 みんなの反応にこたえるように、甲斐がもう1曲弾いてくれる。 
 「テレフォン ノイローゼ」 
 2番の前半から音を減らしていく。ブレイクもあり、甲斐とオーディエンスの 歌声が、「テレフォンノイローゼーアハ」という合唱が、合間に甲斐が叫ぶ声が、会場に 響く。 
 2番の最後は静かに弾いて、「暗闇にーーー」と声を伸ばす。今日はここで終わっ てしまうショートヴァージョンなのかと思いきや、そこから演奏が激しくなってあの間奏 へ突入していく。もうネック全体を指が上下し、往復して。 
 ああ、めちゃめちゃ燃える「テレフォン ノイローゼ」やった!

 ここから再び3人でのステージになる。 
 「HERO」 
 「ザザザザザッ」のストローク、今日は松藤が全部残さず弾いているように 感じる。 
 アコギの音色が何だか”My name is KAI”の「観覧車’82」 ふうに聴こえた。弾き方が変わったのか、こちらの受け取り方がちがうのか。同じ曲を 聴いても、毎回僕の感じ方はさまざまだ。その意味でも、ライヴは毎回毎回ちがうもん やんな。

 「熱狂(ステージ)」 
 甲斐が歌に入った瞬間、泣けてしまった。その声を聴いただけで。詞の意味を言葉 として理解する以前に。すでに心をつかまれていた。 
 客がうたう場面もあった。 
 間奏で拍手せずにはいられない。 
 特に感動した「熱狂(ステージ)」やったなあ。

 心酔したオーディエンスの前へ、2回目のアンコールに3人が帰って来る。 
 「嵐の明日」 
 今日は速いテンポでの演奏だ。 
 終盤、甲斐は激しく、強く歌う。壮烈なバラードが出現する。

 「今日だけの曲を・・・とにかく、このツアー初めての」 
 その甲斐の言葉に、みんな大よろこびで拍手! 
 「ダメだったら、途中でやめる」なんて言うから、「エーーッ」って声があがる。 
 「飽きたら(やめる)」「練習だ」なんて言ってから、「うそ。本当はすごく 練習したんだよ」 
 そして、話をやめ、「ちゃんとやろ」と切り換える。

 「かけがえのないもの#2」 
 「ドゥン ドゥン」という音を松藤のアコギが響かせる。そのリズムの上で、 甲斐がうたっていく。 
 「ウォウウォウウォー」というハーモニーを3人で。甲斐と松藤でのコーラスも あった。 
 ライヴで「かけがえのないもの」を聴けたのは、きっと ROCKUMENT以来じゃないか。ニューアルバム 「アタタカイ・ハート」からの曲やということも、曲数が増えたということも 合わせて、とにかくうれしい。

 「今夜はほんとに来てくれて感謝してる。ありがとう」 
 僕らはもちろん、拍手と「甲斐ーっ!」の声で応える。

 前半のMCで、最後の曲を「バス・・・」と言いかけてしまったので、 
 「さっきもらしてしまった「バスルーム」という曲を」 
 松藤が「愛を込めるか?」とかぶせる。

 そのデビュー曲「バス通り」について。 
 「曲の完成度は高いんだよ。でも、プロ野球選手でもサッカー選手でも、 ”銭にならない選手”ってダメじゃない」 
 神戸のときみたいに、「不憫な子ほど かわいい」と言えば伝わりやすいのではと思ったけど、今日はそうは言わなかった。 
 「「フォークバンド?」って思われてしまう。10年そのスタイルでやらないと いけないわけだから。半年間タメてタメて、「裏切りの街角」を書いた」 
 「なんで3人で(「バス通り」を)やるかっていうと、この背景に合ってる。 JAH-RAHがいて、土屋公平がいるのに、(「バス通り」をやるって)言えない。 「裏切りの街角」が限界だった」と笑わせる。  

 アコースティックライヴという形態に関して。 
 「いいなあ。俺が座って、君らが立ってる」とジョークを言ってから、 
 「歌唱力や人間性が見える。はだか。ヌードっぽい状態で」と表現する。 
 「きついんだ。松藤なんて、(終わると)へとへとになってるもんね」 
 「3人でまわるって言ったら、(最初は周りに)冗談かと思われた」 
 「スタッフの数が少ないから、みんなを待って打ち上げする」のが通常のツアーと ちがうという、舞台裏の話も。  

 歌い続けていくのに大切なこと。 
 「歌に対する純粋さ。歌っていくということへの」 
 客席が感動してる雰囲気になると、 
 「ボクにだまされちゃいけません。人間性の悪さで残ってきたとこあるから」 
 と、照れ隠しのようなセリフ。  

 「さっきの曲はすごくよかったので、またどこかでやります」という宣言が、MC のしめくくり。 
 たしかによかったもんね。またうれしさがこみあげてきて、拍手。

 マンドリンが前奏で「ポロポロ」と音を出す。 
 「バス通り」 
 MCの内容も全て受けとめて、いい歌やとあらためて感じながら聴いていく。 
 素敵だったライヴの時間が終わりに近づいていく。

 曲が終わるとすぐに、甲斐はサングラスを外して台に置き、前へ出て来る。 オーディエンスの声援に応えてくれるのだ。 
 松藤はステージを去るとき、甲斐の方を手で示していた。いい光景やったな。

 

 

2005年4月2日 三郷市文化会館

 

ちんぴら 
裏切りの街角 
きんぽうげ 
ビューティフル エネルギー 
かりそめのスウィング 
安奈 
レイニー ドライヴ 
愛のもえさし 
BLUE LETTER 
花,太陽,雨 
漂泊者(アウトロー) 
風の中の火のように 
破れたハートを売り物に

 

翼あるもの 
感触(タッチ) 
テレフォン ノイローゼ 
HERO 
熱狂(ステージ)

 

嵐の明日 
かけがえのないもの#2 
バス通り