CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ PARTY30 in 日本武道館

2004年11月6日(土) 日本武道館

 

 改札からエスカレーターまで、こんなに長かったんや。久しぶりに降りた 地下鉄九段下駅で、まずそう思った。エスカレーターが長いのは覚えててんけど。 
 これまで武道館に来たこと は3回。1995年1月の”Singer”、 3月のMARCH OF THE MUSIC、 1996年のBig Night。 
 エスカレーターを上りきり、8年振りの武道館へはやる気持ちを抑え、まずは一旦 回れ右。30周年・3時間・30曲のステージを前に腹ごしらえに行く。昼間は神宮球場東都大学野球入れ替え戦を見たりしてて、早めの夕食を摂る時間がなかったのだ。

 お腹もふくれたところで、仕切り直し。武道館へ向かう坂を上っていく。大通り から左に折れると、風情あるお城の佇まい。せっかくの風景、武道館へ気持ちも 高まっているのに、ダフ屋の声がジャマや。想い出の門をくぐると、いよいよそこは 武道館。

 左手前に白いテント。グッズが売られているのだ。早く武道館へ入りたいから、 並ぶのはライヴが終わってからにする。 
 武道館正面にはピンクの看板。黒い文字で 「KAI 30TH ANNIVERSARY PARTY 30 in  日本武道館」、そしてさらに大きく「KAI YOSHIHIRO」と書いてある。 
 携帯でそれを写真に収める。8年前はこんなことできひんかったよな。 
 甲斐ファン仲間との記念撮影を終えるや、入場の列へ向かった。

 以前と同じく、武道館に向かって右につくられた列につく。アリーナと1階席の 観客はそこから左へ、2階席の観客は右へと分かれて進んで行く。僕は最初の ”Singer”以来のアリーナ。正面入口に近づくと、 数多くのお祝いの花が目に入ってきた。甲斐トリビュートアルバム「グッドフェローズ」 に参加したメンバーや、さまざまな人たち、TV局や会社などからの。

 入口を抜ける。表示にしたがって左へ進む。入口の左端あたりに人だかりがあっ た。見ると、某有名人が入場手続きをしているところやった。 
 階段を下りて行く。武道館、通路も階段も狭いな。久々やから忘れていた。これ は中でグッズ売られへんはずやな。 
 階段下のトイレはとてつもない混みようやった。僕も自分の席に行く前にトイレを 済ませておこうと、けっこう離れた男子トイレまで移動してんけど、そっちまで ずーーーっと女性ファンの列が続いていた。男子トイレでさえかなり待たされた。さっき のサンドイッチ屋で行っといたらよかったな。

 ようやくアリーナへと歩を踏み入れる。感慨を胸に。 
 今日は何と4列目で見ることができるのだ。・・・あれ、あの「R」と書いた白い 看板は何や。・・・あ!そうや。武道館はブロック指定やったんや。完全に忘れてた。 チケットが届いた時から、Dという文字を見て4列目やと思い込んでよろこんでいた。 
 ショックを受けながら、自分の席を探す。Dブロックはそれでもわりと前の方、 少し左寄りやった。ファンクラブで申し込んでもアリーナ取れなかった人もたくさん いてはるんやし、ここやったら御の字。八角形の天井を見上げてみる。自分の席が 八角形の前半分内に位置していることが確認できた。日の丸も目に入る。

 武道館のステージはやはり広い。左右への出っ張りもある。出っ張り部分は スロープになっていて、その端は高くそれぞれスタンド席のすぐそばまで伸びている。 ”BIG GIG”や”PARTY”ではリフトが用いられたが、今回は坂がその役目 を果たすのだ。ステージ前の壁は黒く、客席から見ると、左右がぐんと高くなった形は 黒い羽のよう。 
 ステージ後方には網がしつらえてある。XXXのライトはその後ろ。それより低い 位置に、XXXを中心として、円いライトが左右に数多くならんでいる。特大会場なら ではやなあ。 
 マイクの場所からすると、メンバーの位置はわりと中央に寄っている感じ。 ステージが左右に長いからそう見えるのだろうか。僕の席は蘭丸のほぼ正面らしい。 いいぞ。 
 流れているのは洋楽で、甲斐トリビュートアルバムではない。今夜は生で聴ける からかな。広い場内のあちこちを見渡し、しかしステージからは目を離しすぎない ようにしつつ、開演を待つ。

 客電が落ちる。が、真っ暗にはならない。スタンドに設置された柱状の肌色の照明 が、四方から客席を照らしているのだ。オーディエンスもライヴの一員だと言ってくれ ているように。前島さんが「武道館でやってみたい、初めての照明プランがある」って 言ってたのは、これのことやったんかなあ。 
 ステージは青に染まる。大森さんの「25時の追跡」が響き出す。立ち上がっての 手拍子。ギターの音をかみしめながら。 
 赤い光が一つずつ混じっていく。それから、あのXXXの真っ赤が放たれる。 メンバーが入ってくる。歓声のなか、JAH-RAHが金色にした髪をかなり短く 切っているように見えた。

 悲しげなキーボードの前奏。拍手と歓声に包まれて現れた甲斐が、うたい始める。 「思い出話は」のあたりで少しメロディーを変え、一瞬演奏が消える。 
 「ポップコーンをほおばって」 
 一転して、あの3連打!早くも白いストロボだ。赤も混ざって閃く。武道館全体が 一気に熱狂や。 
 甲斐は1番を歌い終えたところでもう「アーアーアー」と叫びをあげる。 
 2番の前。ギターが刻まれている。歓声が沸きあがる。甲斐がふたたび歌い出す。 ドラムが「ズシーン、ズシーン」と響いてくる。JAH-RAHのプレイでは初めての 感触かもしれない。 
 3連打が押し寄せる後奏。赤と白のストロボがもう一度、甲斐や蘭丸の影を刻む。 松藤のアコギも聴こえてくる。めっちゃ燃えたで。

 あの前奏がギターから。 
 「きんぽうげ」 
 蘭丸が左で間奏を弾く間、甲斐は右へ行って観客へアピール。会場全体を巻き込ん で行く。普通のホールではドラムスの前へ行ったりもするとこやけど、これだけ大きな 会場だと動きも変わってくるやんな。 
 サビの繰り返し。客席には「きのーおを」と歌わせてくれる。 
 「オーイェー!」とかって、後奏で甲斐がたくさん声を発した。

 いつもの弾む感じじゃなくて、ゆっくりめのリズム。ここでも重量感のある、 JAH-RAHのドラム。サックスの音を表現する、ギターとキーボードがスリリング。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 「死にかけた奴らも消えうせろ」というニューヴァージョンの歌詞も聴けた。 
 後奏の照明は、やはり全体的に明るめ。そこで甲斐がくるくるとマイクスタンドを 廻す。スタンドを両手に受けてからのアクションも激しい。頭上で振り廻していく。

 「目一杯やるから。楽しんで。やるよ!」

 「電光石火BABY」 
 甲斐が左右に動く。特に右だ。坂を上って行き、歓声に迎えられスタンド席へ 近づく。すると、そこの照明が初めて点いた。端まで行った甲斐を捉える専用のライトが あってんなあ。 
 コーラスは前野選手とノリオが担当しているようだ。甲斐はオリジナルと同じ タイミングで「ハーッ!」と叫んだ。 
 今日は確かに「体震わせ」と歌った。プロモーションビデオで見せた、頭の上で 両手を合わせて体を揺らすポーズが、久々に登場。歩きながらで、挙げるのは片手だけ やったけど。

 イントロがブレイクした瞬間だけ、赤いXXXが現れた。 
 「FIGHT THE FUTURE」 
 力強いサビは、赤やオレンジや黄色のライトに彩られて。 
 甲斐は手のひらを見せるようなアクション。肘を曲げて頭の上で。あるいは、 前へ突き出して。 
 最後に「FIGHT THE FUTURE」と歌う時、甲斐は両手を交差させ、 それから解き放った。

 短いMCで、「ちょうど中盤あたりでゲストがある」と告げられる。 
 甲斐トリビュートアルバムに参加したミュージシャンが何人か来るらしい。でも、 僕は誰が来るのかあえて情報を入れないようにしてきた。今夜の楽しみのために。

 「東京の一夜」 
 「ダンダンダンダン」のリズムの、2拍目と4拍目が高くなっている。演奏全体 も激しい。「BIG GIG」ヴァージョンとはいえ、音は進化しているのだ。 そうやろうとは思ってたけど、名古屋と 大阪では、そこまで実感できる余裕が自分になくて。 甲斐はいつの歌でも、「今」の感覚を吹き込んで歌うもんね。 
 「口にーしたー」の後の「ジャーン」が抒情的。今回の「東京の一夜」は、ここも 特徴やんな。 
 「遠く離れて暮らす二人の・・・」と松藤のコーラスがかぶさる。 
 ラストの繰り返し。松藤の「東京の一夜は」が大きく響く。後奏で甲斐が切ない 声をあげた。

 「くだけたネオンサイン」 
 前奏は大森さんのオリジナル通り、静かに立ちあがる。蘭丸のギターが入るところ から、音が激しくなっていく。 
 甲斐はタイミングを変えてうたっている。「そうでもないさっ てー」というふう に、切るところがレコードと違うのだ。 
 「くだけたー ネオンサーインー」と、甲斐は1番で、「サイン」の部分のみ 上げてうたった。 
 後奏。ステージの左奥で、松藤がギターを奏でている。大森さんのギターだ。 甲斐はその松藤を見つめる。それから、そちらを手で示した。大森さんのギターを弾く 松藤。甲斐は天を見上げるようにしていた。

 「シーズン」 
 大きく手を叩いて歌う気分じゃなかった。小さく手拍子して、甲斐の歌に聴き 入った。ただひたすら。

 ライティングを見るために振り向いた。武道館のスタンド席に円が描き出され、 その中に波の影が揺れている。 
 「ナイト ウェイヴ」 
 今夜は前奏が少し長い気がした。みんなで波の照明を味わう時間なのかもしれ ない。手拍子を始める。「ナイトウェイヴ ナイトウェイヴ」とシンセの声が聴こえる。 やがてビートの波が寄せてくる。 
 間奏では蘭丸が、ドラムス、ベース・・・と順番に、ソロパートを演奏する メンバーの方を指差していく。ノリオのソロは、印象的だった Vol.2ツアーの東京のように細かく弾きまくるの ではなく、また新たなベースラインやった。蘭丸が、自分にスポットが当たる一瞬前から 弾き始めたのが、かっこいい。 
 バンドが静まり、甲斐が戻って来て、最後の「ナーーーイト ウェーーイヴ」で しめくくる。

 ここでゲストを呼び入れるかと思った。「ナイト ウェイヴ」の後にライヴの展開 が変わることはよくある。でも、今夜はちがった。 
 「地下室のメロディー」 
 甲斐がアコギを縦に持って弾くアクション、今日は特にたっぷり見せてくれた。

 ギターのイントロにみんな大興奮。 
 「港からやって来た女」 
 蘭丸が口火を切る曲が、今回多いやんな。それで一気に盛りあがれてうれしい。 ギターのいい曲がたくさんあるってことやんなあ。 
 甲斐はもう動く動く。坂を上って右へ左へ。どこもかしこも熱狂しまくり。 
 右端で2番を歌う。「泣かないでも」で目に手をやる。「ハナをーー」で鼻に手を 当てる。 
 甲斐は走って3番を左端でうたう。「み、見つーめ」と。 
 「オーレーはあー」から再び声を張り上げ、坂を下りて蘭丸のそばへ。最後の サビは甲斐と蘭丸が一つのマイクで歌う。「バイ!バイ!バイ!」でのギターも激しい。 俺らは「フーッ!」って叫んで跳び上がる。このシーン、今日も4回やったけど、もっと やるかと感じた。甲斐もバンドも、多分オーディエンスも、すごかったから。

 「嵐の季節」 
 レコードに入ってる音が、バックでかすかに流れている。静かやけど熱さを感じ させるやつ。これがまたいいねんなあ。 
 今日は全部のタイミングで拳を突き上げる。そうしないでいられるか。 
 武道館に、客の声と拳だけ。

 甲斐が後ろのドラムス台で靴紐を直してる。前へ出て来て、モニターに足をかけて もう一度じっくり直す。 
 今日は10月までのツアーと違って、ここでインターバルはないようだ。 
 甲斐と松藤が前のイスに座り、MCに入った。

 「30周年、3時間、30曲。武道館31回目」 
 そう甲斐が言うと、松藤が間髪入れずに「惜しい!」と声をあげる。 
 武道館も30回目だったら完璧だったのにという話になり、「どこが多かったん だろう」なんて言ってみせる。 
 「ストレートライフツアーかなあ」と言って、「今笑ったのは知ってる奴だ」 
 「解散コンサートが4日間でよかったのか」 
 言ってる方も聞いてる方も、心の中では「もっとどんどんライヴやろうよ」って 思ってる。 
 「いつか一人で武道館やろ。松藤とも縁を切らないと」とも言ってみせる。 ほんまはめちゃめちゃ仲がいいからこそ。

 「「安奈」をやりましょう」 
 甲斐、松藤、前野選手がイスに座り、メンバーも後ろに残っての演奏だ。 
 特別な「安奈」やった。30年と今日の日を祝うように。みんなであたたかに。 甲斐の歌声を聴き、「あんなーあ」と声を合わせて。

 ここからゲストコーナーの幕開け。 
 「最初を誰にしようか考えた」と甲斐。 
 「どこでもやれる奴。遊園地でもNHKでも」という言葉で、芸人としての キャリアがある者だとわかる。 
 「大河ドラマを初めて1年全部見てる。昔、「樅の木は残った」を半年見て。 それは主人公がカイっていう名前だから見てたんだけど、それだけで」

 期待が高まったところで、DonDokoDonのぐっさん、山口智充登場。 アコギを携えて。 
 歌う前に一つネタをやらせて下さい、と申し出る。 
 「”音飛びするCD”というのを、今日は甲斐さんヴァージョンで」の言葉に、 みんなよろこぶ。 
 「「東京の一夜」で、さっきも歌われていましたけども、やらしていただきたいと 思います」 
 「とーきょーーのいちーやは この街で過ごす一年のょにょにょにょにょにょにょ にょにょにょにょにょにょ・・・・・・」 
 ばっちりウケた。すかさず「続きましてー」と演芸口調でやって、ツッコまれる。

 「やっていいですか?」の問いに甲斐がOKすると、「ネタの方ですけど」と、 マジでもう一つネタをやりたいらしい。 
 そして、”蝉しぐれ”と”ヒグラシ”のモノマネを披露。 
 「笑いのない、感動だけのモノマネなんですけど」ってしめくくってたけど、 ほんまに上手くてよかったよ。

 それから、いよいよ「陽の訪れのように」 
 ステージ中央にぐっさん。客席から向かって右に甲斐。そして松藤。 
 ぐっさんがアコギを弾いて歌い、甲斐はハーモニカ、松藤はアコギで参加する。 そして、甲斐と松藤のコーラス。 
 2番で甲斐がぐっさんに寄っていく。しかし、ぐっさんのギターが当たりそう。 これでは弾きにくくなってしまうと判断したのだろう、甲斐は体を引き、最後の繰り返し でぐっさんの左にまわって、いっしょに歌った。

 思えば、結婚式ネタの漫才に爆笑して1998年度 笑芸MVPとか言ってたDonDokoDonのぐっさんを、こういう形で見る ことになるとは。「東京の一夜」や「陽の訪れのように」を選ぶあたり、ほんまに聴いて るねんなあと思えて、好感度アップやな。

 いつかのMCでも言ってた、「トリビュートは本人が動き過ぎると失敗する」との 逸話を甲斐が紹介する。 
 そういう考えがあったから、「彼が手を挙げたとき、キスしてやりたいくらいの 気持ちになったんですが」 
 そんな言葉で呼び入れられたのは、HOUND DOGの大友康平

 「デビュー曲をある番組でよくかけてて」と、大友とのつながりを話す甲斐。 「嵐の金曜日」、ラジオでほめてたやんなあ。LOOKの鈴木トオルを評価するときも、 「こんなにすごいと思った新人は、HOUND DOG以来」とか言うてたし。 
 「何か、ひとこと」と、甲斐に促された大友は、「甲斐さんあっての大友です」と 謙遜。

 松藤のアコースティックギターで、「BLUE LETTER」 
 まず大友が歌い出す。トリビュートアルバム「グッドフェローズ」では、予想 してたより抑えめな歌い方やったけど、今日は激しい。イメージ通りの大友節だ。と 思っていると、時折は語尾で力を抜いて歌う。これが大友のスタイルやねんな。 
 2番は甲斐がうたう。一瞬、ここで大友が語りをかぶせたらどうしようと思った が、今日はなかった。このアレンジやもんね。ちゃんと甲斐の声を聴かせてくれる。 
 3番は前半を甲斐が、後半を大友が歌う。大友との調和を図ったのか、それとも 触発されたのか、甲斐のヴォーカルもいつもの「BLUE LETTER」より激しく なっている。 
 もちろんサビでは2人が歌う。「BLUE LETTER」と繰り返して曲が 終わっていく。

 次のゲストとは「2週間に1回会ってる」という。ほんまによく飲んでるみたい や。呼ばれた名前はもちろん、m.c.A・T。 
 開口一番「キンチョウしてます」。普段いっぱい会ってても舞台は別物なんやろう な。 
 甲斐が「先に言っとくけど、次の曲は最初の1分、原形ない。トリビュートって いうのは、いかに裏切るかだから」と賛辞をおくる。恐縮しているふうのm.c.A・T に、客席のみんなからも拍手がおくられる。もちろん僕も心からの拍手を捧げる。 トリビュートアルバムの中でもこの歌がいちばん好きなのだ。斬新やし、かっこいいし、 リスペクトが強く感じられて。 
 甲斐がその曲名を告げる。 
 「裏切りの街角」

 「Boy!Boy!」の連呼に、俺らは拳をあげる。m.c.A・Tが歌い、早口 で捲くし立てる。もちろん甲斐も、m.c.A・Tの右側少し後ろでステップを踏み、 手を挙げ、「Boy!Boy!」って歌ってる。「Sexy Voice」のところで 甲斐が生の声をあげることはなかった。 
 やがてあのフレーズが降ってくる。m.c.A・Tが歌い出す。甲斐と2人が 左右に別れ、ステージを所狭しと動きながら。「しとしと五月雨」からは2人で声を 合わす。「君さえいてくれたならば」は甲斐だけが歌う。その裏で、m.c.A・Tが 「イェー!」「ヤー!」とシャウトを挟む。ここの2人が絶妙や。それから、「アーー」 の高い音。 
 甲斐とm.c.A・Tを目で追いながら、歌い、手を打ち、あるいは踊る。武道館 全部が興奮してる。 
 ラストは「発車のベル 叫び声のなか」を、m.c.A・Tと甲斐が交互に歌う。 そして、m.c.A・Tが「あの人がーーー」と最後の熱唱を決める。再びビートが 渦巻き、「Boy!Boy!」の波に拳の嵐。 
 「KAI BAND NOW ALIVE!」

 「今夜唯一の姫を」との紹介で、代わって大黒摩季が姿を見せる。 
 「NHKのBS見てたら、「HERO」歌ってんの。で、後ろには公平がいて。 何だ、このバンドは」 
 そういう甲斐の言葉で、みんな蘭丸に対して拍手。蘭丸も応えてくれる。 
 大黒は「ことわり入れたじゃないですかあ」と笑ってる。 
 なんか、みんな甲斐が好きって雰囲気。いいなあ。

 「HERO」 
 音も歌もトリビュートヴァージョンだ。 
 大黒は、マイクを持って伸ばした左手の手首に右手を打ちつける手拍子。 
 甲斐もところどころいっしょに歌っていく。キーとか、同じにしたのかな。

 「ISSAのソロに曲を書いて」と、甲斐がDA PUMPとのつながりを話す。 そして、4人が現れる。

 甲斐はソデへ下がり、DA PUMPによる「風の中の火のように」 
 4人が横に並ぶ。ISSAはいちばん右。右と左の2人がヴォーカルを取り、 真ん中の2人はダンスに専念。 
 4人のダンスがぴったりや。素晴らしい。深夜のTV「少年チャンプルー」を 偶然見つけて、甲斐とのつながりからその後何度か見ててんけど、おかげで「あれは 難易度の高い技やな」とか少しわかった。 
 動きまわってのラップのパート。メッセージを込めた内容がいいのだ。 
 ダンスの2人が、床に手をついてバランスを取り、ポーズを決める。おお、また 大技やってくれたなあ。

 DA PUMPよかったよ。そういえば、俺がDA PUMPの歌をちゃんと 聴いたのも、甲斐がラジオで「Rhapsody in Blue」かけた時が最初 やったな。

 これで、ゲスト5組とのステージは終わり。戻って来た甲斐が言う。 
 「30周年だ。こういうのもいいだろう。楽しくて。俺はあそこ(左ソデを指し て)にいてすごく楽しかったもん」 
 ひと呼吸おいてから、「バラードをやりましょう」

 「最後の夜汽車」 
 武道館の雰囲気が一転。甲斐の声に聴き入ってゆく。 
 3番の前に短い間奏があるのが、今日は新鮮に感じられる。 
 最後の繰り返し1回目。「おー とおざかーるーう」の語尾がいい。

 「レイン」 
 バックに光の描く円が回っている。広い場内に印象的だ。 
 甲斐は今日も、肘を直角に曲げて手を打つ。

 尖った音が炸裂。ここからラッシュが始まるのだ。 
 「幻惑されて」 
 今日はゆっくりしたリズム。ひとつひとつの音が存在感を見せつける。 
 間奏がすごい!細かく掻き鳴らされるギター。全楽器一斉の音の放出。甲斐の アクション。光と闇。その波が寄せては返す。やがて静かにイントロのフレーズが 帰ってくる。その中でギターが糸を引く。もう一度音がはじけ、あの凶暴な 「幻惑されて」のうねりになる。二本のギターが。ドラムスが。

 「三つ数えろ」 
 初めから「ウフッフー」のコーラスがよく聴こえる。 キーボードの「キュルルルル」も効いている。 
 客席がさらにその熱を増してゆく。

 「氷のくちびる」 
 前奏のシンバルの金属音がやはり印象的だ。 
 2番の前で、甲斐が蘭丸に、手で自分の隣のスペースを示す。甲斐とならんで 間奏を弾いた蘭丸は、ライトが消えてもしばらくそこにじっとしてから、左へ戻る。 
 「白い指がともーす キャンドルライートーおお」の裏に滑り込む、悲しげな 「ヒュルルルルルルー」という音が胸に迫る。 
 甲斐は後奏で「アアア アアア アアア アアア アアア アアア アアア  アアララララー」と二まわり続けて全部歌う。最高や。

 「翼あるもの」 
 前奏がものすごい。このスケールが、音の太さが、昂揚感がたまらない。ひときわ 熱狂するオーディエンスたち。 
 甲斐がステージを走る。坂を駆け上がる。間奏後の「おーれのーーうーーみーい につーばさひろーげーー」は右端で。最後の「おーれのーこーえーーがきーこえるー かい」では左にいる。そしてあのエンディングに向けて、マイクスタンドへ帰ってゆく。

 「漂泊者(アウトロー)」 
 数多くの小さな円いライト各々の中を、虹が横切っていく。興奮のさなか目に映る その光景に、さらに狂乱する。 
 サビでは青緑のライトが一斉に、左右斜め上から甲斐のもとへ射す。

 「冷血(コールド ブラッド)」 
 縦に回転した白い光が手前下を照らした時、甲斐が歌に入る。 
 青から白へ、白から赤へ。照明が歌にともなって劇的に、その色を変えていく。 
 甲斐は1番では、サビ前にジャンプしなかった。 
 3番前の甲斐のアクション。向かって左の右肘から、叩き落していく。 
 後奏での、手で腕を払う仕草が多かった。肩の方も払いのける。寒気を振り払って いるのだろうか。

 「破れたハートを売り物に」 
 大ラスから移るなら、やっぱりここがいいやんな。 
 みんなでみんなで大合唱や。甲斐とメンバーと甲斐を好きなみんなで。

 アンコール。俺は手拍子をしつつ、時々思い切り「甲斐ーっ!」と叫ぶ。最近は こうやって好きな時に衝動をぶつけるのが気に入っててんけど、後方から聞こえてくる 気合いの入った甲斐コールに、「かーい!   かーい!」といっしょに声をあげずに はいられなくなった。

 メンバーが現れる。蘭丸がノリオと間合いをはかるようにしてプレイし始めた。 
 「ブライトン ロック」 
 甲斐が躍り出てくる。銀のラメのTシャツを着ている。 
 歌が、音が、動きが、強い。あああ、やっぱり「ブライトン ロック」は燃える で!

 「ラヴ マイナス ゼロ」 
 甲斐は黒のジャケット姿。 
 オーディエンスに向けて、甲斐が声をかける。 
 「サンキュー30周年 サン!キュー!」 
 最後はそう叫んだ。

 JAH-RAHのドラム。それとともに武道館に虹ができる。 
 「観覧車’82」 
 間奏。指を1本突き出した手を、交互に挙げるようにして、甲斐が回りながら 右前へすすんでいく。

 甲斐が去り、メンバーが姿を消した後も、虹の照明は残っている。メインステージ 上だけでなく、その左右にも虹色が長くつづいている。中央の照明は、左から右へ 桃色から紫までならんでいる。左右両翼は逆の順序で、紫から桃色へ連なっている。 虹は後方の客席にまで届いている。 
 今度は最初から甲斐コールに加わる。声を合わせて甲斐の名前を呼ぶの、やっぱり いいもんや。甲斐の登場を切望しながら。

 甲斐が一人、ステージに帰って来た。アコギを手にする。うおお、今日もやって くれるんや!ゲストがあったし、すでに30曲行ってるから、もう聴かれへんと思って たよ。感激や。 
 「テレフォン ノイローゼ」 
 イントロでちょっと演奏をやめかけたりする。ギターから手を放して。間を 取って。そこから音を高めていって、あのフレーズへ。 
 「 出会ってーひと月め」と、タイミングをずらした方で歌い始める。 
 渾身の声で「テレフォンノイローゼーアハ」と歌うあまり、僕は息が続かず次の 部分を歌えなくなったりした。

 甲斐がゲストを1組ずつ呼び入れていく。歌ったときと反対に、DA PUMP、 大黒摩季、m.c.A・T、ぐっさんの順番だ。甲斐は1人ずつ握手していく。 
 大友康平は岐阜で主演ドラマの撮影があるため、先に武道館を発ったと説明が ある。みんなで少しずつ歌うのだが、ぐっさんが大友の声を出せるから、大友のパートも ぐっさんが歌うという。 
 ここでぐっさんがひとこと。「大友さん、帰る時「新幹線待たしてあるから」 って、わけわからんこと言うてましたよ」 
 左から、ぐっさん、m.c.A・T、大黒摩季、甲斐、DA PUMPが ならんだ。 
 ツアーヴァージョンの「HERO」が始まる。 
 前奏で、ヴォーカルたちの後ろに一郎が見えた。僕は思わず「一郎ーっ!」って 叫んだけど、その瞬間歌入りになる。 
 ぐっさんが大友の声で歌ってるかどうかはわからなかった。甲斐もいっしょに 歌ってるから、どうしてもそっちの声が聴きたいし。 
 大黒摩季のマイクの入りがいまいちか。甲斐が右ソデへ向かって、もっと上げる ようにさかんにアピールする。大黒は黒の甲斐ツアーT。武道館限定版。裾にたくさん 切れ目を入れて、ひらひらさせている。 
 サビはもちろん全員で歌い、2番はぐっさんが歌い出す。サビの前ですごく高い 声が響く。女性やろうと思って大黒摩季を見たけど、彼女は歌っていない。誰の声やった んかなあ。 
 間奏に入るところで、甲斐が「田中一郎」と告げる。黒いロングジャケットを 着た一郎に、オーディエンスの歓呼の声が降り注ぐ。ステージ左に蘭丸。一郎は右へ 出てプレイする。 
 甲斐がマイクスタンドを蹴り上げた。左隣の大黒が目を大きく見張ってみせる。 
 ラストは甲斐が左から順にゲストのもとへ行き、いっしょに「ヒーローー」と 歌っていく。いちばん右端のDA PUMPメンバー2人のところへは間に合わず、 ISSAら左の2人と2回歌った。

 曲が果てると、甲斐は「DA PUMP!DA PUMP!」と名前を2度呼び 上げた。ゲスト全員の名前を呼んでオーディエンスの拍手を誘い、1人ずつと握手して いく。甲斐と抱き合う人もいる。去年の夏、なんばHatchでのイベントで、チャボ がサンタラの美人ヴォーカル田村キョウコに抱きついて見せたシーンを思い出したが、 甲斐は大黒摩季とは抱き合わなかった。甲斐らしい。

 もしかしたら、「逝ってしまった大森信和のために」と、甲斐が言うかもしれない と思っていた。 
 しかし、曲は静かに流れはじめた。はかなげなピアノの音が奏でられる。長く 続いた旋律がやがてあのメロディーに代わると、拍手が起きた。 
 「100万$ナイト」 
 初めは大森さんのことを考えて聴いていた。実際にこうやって見るまでは、一郎の ギターにも注目しようと思っていた。だけど、聴いていくうちに、甲斐が歌で描き出す すさまじい恋愛に、曲自身の持つ世界に、僕は完全にとり込まれてしまった。その中へ のめり込んでいった。 
 詞が胸に突き刺さる。彼女の悲しさがリアルに沁みてきた。 
 甲斐は「100 万 ドーーール ナイーーツ」と、最後のツの音をわずかに 感じさせるようにうたった。 
 「俺の胸にとまった天使」とまで呼んだ女が、「稲妻の走る道を 罪人のような目 をして 俺の名だけを呼んでいる」この結果。こんなことにしてしまったつらさ。なんて 悲しい歌なんだろう。 
 甲斐がまた静かにうたいはじめる。「どこで二人が」の後からしだいに声を高めて いく。それにつれて高鳴るピアノ。 
 ふたたび甲斐が「俺の胸にとまった天使」と呼ぶ。「二人だけの誓いを  もう一度だけ口にして 祈る言葉はありはしない」 
 「俺は 俺は」甲斐が繰り返す。「さけんーでる 100 万 ドーーール  ナイーーツ」 
 悲しみの後奏へと入っていく。暑さと焦燥感まで伝えるキーボード。ドラムが強く 叩き出される。甲斐のシャウトの始まりだ。 
 「ウォーオーーオオオーーーっ」 
 その瞬間、ミラーボールが光を放つ。おびただしい白い光の球を、ステージに、 客席に、天井に、武道館全体へ吹き出している。ミラーボールがまわる。全ての光の球も まわる。甲斐がその下で叫んでいる。全身に力を込めて。身体を反らして。叩きつける ように。高く放つように。首を振って。首を後ろに倒して。ファルセットをあげる。 またシャウトする。痛みをこらえ切れないように叫んでる。

 甲斐たちがステージを去り、俺ももう武道館から出て行かなければならない。 
 主のいなくなったステージの上にはミラーボールが残り、そこへ向かって白い光が 伸びている。紺のライトが舞台を照らし、赤いXXXが熱を帯びている。 
 そんな景色を目に焼きつけながら、左前方の出口へと向かう。しゃべる気には なれなかった。 
 3時間をどれだけ過ぎたのだろう。ほんとうにたっぷりやってくれた。さまざまな 歌。甲斐の声。細かなシーンもいろいろ覚えている。甲斐がハーモニカを舞台後方へ投げ てしまったこと。蘭丸がゆっくり前へ歩いて出てきながら激しく弾きまくる様子。甲斐が 「そして、松藤英男」と紹介したところ。 
 しかし、今はただ、「100万$ナイト」だけが俺の中で鳴っている。あの歌の 衝撃がまだまだずっしりと残っている。

 武道館を出たところに、また人だかりができていた。今度は誰を見てるのか。そう 思いつつ歩を進めると、あたりには白い光の球がまわっていた。はっとして見上げる と、甲斐からオーディエンスへのとびきりのプレゼントが目に入った。 そこにはもう一つのミラーボールが光を受けてまわっていた。

 

 

2004年11月6日 日本武道館

 

ポップコーンをほおばって 
きんぽうげ 
ダイナマイトが150屯 
電光石火BABY 
FIGHT THE FUTURE 
東京の一夜 
くだけたネオンサイン 
シーズン 
ナイト ウェイヴ 
地下室のメロディー 
港からやって来た女 
嵐の季節 
安奈 
陽の訪れのように(トリビュートヴァージョン +山口智充) 
BLUE LETTER(+大友康平) 
裏切りの街角(トリビュートヴァージョン +m.c.A・T) 
HERO(トリビュートヴァジョン +大黒摩季) 
風の中の火のように(トリビュートヴァージョン DA PUMP) 
最後の夜汽車 
レイン 
幻惑されて 
三つ数えろ 
氷のくちびる 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー) 
冷血(コールド ブラッド) 
破れたハートを売り物に

 

ブライトン ロック 
ラヴ マイナス ゼロ 
観覧車’82

 

テレフォン ノイローゼ 
HERO(+DA PUMP、大黒摩季、m.c.A・T、山口智充、田中一郎) 
100万$ナイト(+田中一郎)