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甲斐よしひろ Series of Dreams Tour Vol.1(1974-1979)

2002年9月28日(土) 愛知県勤労会館

 鶴舞の駅から、公園の周りを進んで行く。図書館や名古屋市公会堂もある広い公園 や。初めての名古屋遠征も、この愛知県勤労会館やった。隣りにあるグラウンドの 照明灯には、もう灯が入っている。

 今日の席は左側。僕の席より少し前、10列目のあたりまでは、ステージの両端が 伸びている。この形は燃えるのだ。

 昨日と同じ夢のある曲で立ち上がる。昨日のライヴ後に聞いたところによると、 ワールドカップのアンセムらしい。全然知らなかった。結局ワールドカップは1試合も 見いひんかったからな。 
 メンバーの影がステージを横切り、歓声が沸く。アンセムが流れるなか、 メンバーは自分の楽器を鳴らして音を確かめる。そうそう、昨日もこうやった。 こういうスタイルのオープニングはめずらしいのでは。 
 BGMは断ち切られた。さらなる大歓声。甲斐がアコースティックギターと ともにマイクスタンドへ。 
 「吟遊詩人の唄」 
 今日の甲斐は深い青緑色のジャケットだ。 
 大合唱から甲斐の「サンキュー」、それからもう1度サビ。今日は 曲がすべて終わってからJAH-RAHがドラムを叩くことはなかった。

 「カーテン」 
 新しいアレンジやけど、イントロではレコードのあの音も鳴っていた。 
 甲斐は身体を斜めに倒し、それと同時にマイクスタンドを逆方向へ傾ける アクション。ROCKUMENTヴァージョンの「ダイナマイトが150屯」でよく 見せていた動きだ。昨日披露した、 ビートにノって両手をひらひらさせるアクションもあり。 
 「カーテン」の後でも、JAH-RAHは音を追加しなかった。やっぱりこう いうのは、その日そのステージその瞬間の感覚やねんなあ。ライヴは本当に生きている のだ。

 「きんぽうげ」 
 今回は青紫の照明から。それから、「きんぽうげ」らしい赤・黄色・オレンジの ライトも舞台を飾る。 
 甲斐はギターを弾く仕草を見せた。いつの時も、甲斐が動く曲、客が燃える 曲や。

 MCから新曲「牙(タスク)」。 
 ラストはビートの連打。甲斐がそれに合わせて両の拳を交互に突き上げ、 フィニッシュ。

 「メモリー グラス」 
 あのイントロ。赤紫っぽいピンクの照明の下で。 
 僕にとっては、「Series of Dreams Tour Vol.1」 といえば「メモリー グラス」!というふうに、このツアーを思い出すとき真っ先に 浮かぶ曲になるだろう。こうやって生で聴くと、音も歌も実に甲斐らしい。長い間 ライヴで歌われてなかったにもかかわらず、甲斐の代表曲だとさえ思えてくる。 めちゃめちゃいい!

 「ダニーボーイに耳をふさいで」 
 「君」が去った後の痛み。赤いライトが血のように感じられた。 
 甲斐はサビで、左手で耳をふさぐ仕草をする。

 「シネマ クラブ」 
 優しくうたうだけにはしない。甲斐は言葉を切りながら、情感を込めたり。 声を張り上げたり。サビでは特にタイミングを遅らせてうたう。キーボードの高い音。 泣ける。 
 後奏で「ウォー イェー」と吼える甲斐。ラストは両手を腰のあたりで広げて、 おじぎをした。

 一人きりの甲斐よしひろ。生ギター。 
 「感触(タッチ)」 
 歌詞はオリジナル通り。「タッチ 今触れたいのさ」からの細かいダウンスト ロークの中にも、ところどころ「ザカザン!」とアクセントをつけている。 
 演奏を終えると、「汗でピックがすべる。20回くらい持ち直したの、 わかった?」

 「6月の末にROCKUMENT BOXを出したんだけど。5月のうちに つくって。6月は働かなかった」と、ワールドカップを巡った時の話題。 
 大分はアルゼンチン-フランスかどこかのつもりが、スウェーデンセネガルに なったという。 
 「僕はセネガル見たかったからいいけど、前野くんは・・・」 
 同行した前野選手はアルゼンチンが見たかったらしい。

 「名古屋は(ワールドカップ)とばされたんだよね。グランパスにピクシーがいた のに。何事もなかったかのように」 
 「(グランパスは)いいチームなのに、(君たちは試合を見に)行ってない だろ!行けよ、お前!」 
 東京には甲斐のお気に入りのチームはなく、名古屋がうらやましい様子。

 試合を見に訪れた韓国での話。 
 「向こうの人はピッチ(音程)がいい。「ブルーライト ヨコハマ」を日本語で 歌うんだよ。暗い感じだと思ってた曲が、ポップで」 
 その店では、カラオケセットとともにギタリストも1人ついていた。 
 「小さいアンプで。多分、音量7くらいでやってると思うんですけど」 
 ここで客席から「ききたい」と叫ぶ声があがる。左の僕より後ろの方の席、 ライヴ序盤からマナーの悪かったおばはんの声らしい。 
 「(歌ってたのは)俺じゃない」と甲斐。 
 それでもしつこく「ききたい」の声。 
 「俺じゃないって言ったの、聞こえなかった?」 
 甲斐が苛立つ。俺も腹が立つ。情けない客やで、ほんま。

 甲斐は話題を変えて、マリナーズを見に行ったときのことから、ジャイアンツの 話へ。 
 「ごめんね。野球のハナシして」と、ドラゴンズファンが多いであろう名古屋の 観客に。

 松藤が登場。大きな大きな拍手。 
 甲斐は「(松藤の)集中力は認める。途中から出てくるのは大変だから。でも、 時間は短いから、夜の接待は松藤が全部やる」

 「ツアー前に歌いたい曲を書き出すんだけど。そうすると多いから、まず歌いたく ないのから書いてみようと。何をおいても、「アップル パイ」だろ?」 
 客席がウケる。 
 「松藤関係ないから、「一日の終わり」も外すだろ」 
 松藤が「一日の終わり」のイントロをちょっと弾いてみせる。 
 「とにかく「アップル パイ」だけは」 
 他に歌いたくない曲が浮かばなかったのか、もう1度それでまとめる。 
 「もう一つは、みんなが「これはやらないだろう」と思ってる曲をやろうと。 かといって、そこで「アップル パイ」って書いちゃいけない。「アップル パイ」 歌うくらいだったら、「ブルーライト ヨコハマ」歌う」 
 さらに大ウケ。 
 「いいなあ、今日。これ、東京で使お」 
 「そういうのがめでたく見つかって。「ガラスの動物園」というアルバムの 中の・・・」 
 ここで客席から拍手。 
 「今のは本物の拍手だね」と甲斐。 
 そうして、レコードとちがった前奏の「男と女のいる舗道」へ。

 うたい終わった「男と女のいる舗道」について。 
 「今まで全部で2か月くらいしかやったことない。ツアーでやったときも、 途中であきてやめちゃったから」 
 松藤がオリジナルのイントロを弾く。 
 「そのイントロが好きなんだよね」と甲斐。 
 松藤はさらに弾き続ける。 
 「弾けるのわかったから」と止める甲斐。 
 「教えようか?」 
 「教えてもらっても、できない。弦が逆だから」 
 めっちゃ楽しい掛け合いや。

 次回のVol.2ツアーは、「79年から解散まで。でも、「リピート& フェイド」は最後のアルバムって感じじゃないから、あれは外して」と言ってから、 「そんな、説明の要るような」と笑う。 
 「Vol.2、Vol.3と、どこまで続くか。ワールドカップは飛ばしても、 俺は(名古屋を)飛ばさないから」 
 みんな、よろこびの拍手。

 「これも同じのに入ってるんだよね」というフリ。 
 「東京の一夜」 
 最後のサビの繰り返し。「消ーしてしまうー」と甲斐がうたい、松藤が「とー きょーの」と重ね、それから甲斐が「いちーやは」とうたっていく。

 バンドと松藤のアコースティックギターによる「裏切りの街角」。 
 「松藤に拍手を!」という甲斐の声と、それに続く拍手や歓声を受けて、松藤が 右ソデへ。 
 しかし、今日は気をつけて見ていたら、やはり続く「嵐の季節」でも松藤は キーボードの奥にいてくれた。 
 拳を突き上げながらの大合唱。オーディエンスだけに歌わせる部分、1回目は ドラムのみで。そして2回目は完全に楽器なし。会場にファンの歌が響く。

 「氷のくちびる」 
 イントロですでに、甲斐は赤の、蘭丸は青の光に映し出されている。 
 歌が入ると、照明は黄色になる。サビからは青白いライティング。 
 甲斐は昨日と同じ金色のギターだ。1番の終わりでもう弦が切れている。構わず 激しいプレイを続ける甲斐。俺はさらに燃えてしまう。 
 後奏。「あああ あああ あああ あああ あああ」が2回繰り返されるロング ヴァージョン。これ、盛りあがって大好き!

 JAH-RAHの刻むカウントが聴こえる。「タンタンタンタンタンドン!」と 6拍目でドラムが入る。続けて「ディー!ディー!ディー!」とビートの3連打。 「ズキャ!ズキャ!ズキャ!ズキャ!」と蘭丸のギターが掻き鳴らされる。閃く白い 光。 
 「ポップコーンをほおばって」 
 サビの3連打でライトは赤、緑、赤、ややあって青、白と変わる。 
 間奏は蘭丸のギターとキーボード。JAH-RAHもときどきドスン!と低い音 を響かせる。 
 サビから拳で空を3!連!打!それを繰り返しての熱狂。甲斐と蘭丸はステージ 前へ出てギターを弾きまくる。その後ろ、ステージ真ん中ではノリオのベースプレイ だ。JAH-RAHのドラムはオリジナルより細かくビートを叩き出してる。すごい、 すごいぞ!

 「翼あるもの」 
 バンドとオーディエンスの攻撃はさらにヒートアップ。こっちの武器は、歌と 拳と手拍子や。 
 蘭丸とノリオが前へ出てくる。甲斐はステージ右奥のキーボードの台の上から、 タオルを下に投げつけ、前に飛び出してくる。「俺の海に翼ひろげ」

 「HERO」 
 JAH-RAHがドラムをまたも通常のヴァージョンより細かく叩きまくる。 すごいビートや。 
 間奏で甲斐は左奥のドラムスの台に乗る。右のキーボード台に高く飛んで下り、 さらにステージへも高くジャンプ。そしてマイクスタンドを奪いに来る。「ヒーロー  空はひび割れ」の部分へ。ライトがステージを真っ赤に染めた。

 興奮さめやらぬアンコール。 
 僕らの前に帰ってきてくれたメンバーたちが、楽器の音を確かめる。演奏が 始まる前から客席は手拍子。ノリオが「フーッ」とひとつ叫んだ。 
 「マドモアゼル ブルース」 
 イントロが放出されるなか、甲斐が左ソデから走り出て来る。熱狂の第2幕が 切って落とされた。 
 激しく動く甲斐。間奏では蘭丸を指し示し、次は前野選手をアピールする。 マイクスタンドを持ち上げ、身体に巻きつけるようにしていっしょにまわってみせる。 この曲でもJAH-RAHがまたまた細かく叩きまくってくれる。ビートのうねりに 任せて甲斐は腕をまわしたり手を振ったり、存分のステージング。

 「ちんぴら」 
 「BEATNIK TOUR 2001」 ヴァージョンで、歌入りの直前に「ダダッ!」と一瞬のブレイクがある。甲斐はそこ でマイクスタンドの脇に身を沈め、立ち上がると同時に歌い出す。 
 蘭丸が独自の音を弾いている。バンドが変わる度に、いや、もっと言えば ステージで歌われる度に、「ちんぴら」も生まれ変わっていくのだ。どの曲だって そうだ。 
 最後のサビの前でも、甲斐は一瞬しゃがんでから、歌いはじめた。

 2度目のアンコールで、甲斐は明るい紫紺のツアーイラストTを着て現れた。

 「安奈」 
 メンバー全員がステージの前方へ出ての演奏。 
 甲斐は間奏で後ろへ行き、ドラムスの台に腰掛けて「ふたりで泣いた夜を  おぼえているかい」とうたう。太鼓のそばへ移って、JAH-RAHと寄り添う。 続いて蘭丸のもとへ。

 「シングルとして10月10日にリリースする曲、もう1回やるよ。祝! 松井三冠王、やるよ!」 
 福留がいるドラゴンズファンの人は、反応も複雑か。 
 しかし、「やるよ!」と甲斐が再び叫んで、そういうのも全て吹き飛ばす。 
 「牙(タスク)」 
 今日はあまり前まで出て来ない。客席を指差したり、今度はノリオのそばへ行っ たりしながら歌っていく。フィニッシュはまたちがうアクションや。

 「最後の夜汽車」 
 紫紺のステージ。長方形のパネルの一部が光って、黄緑の正方形を浮かびあがら せている。後ろからの白いライトを浴びて、ところどころに虹ができている。 
 その下で、最後のバラード。 
 「白いつきー明かりのー」と甲斐が声を振り絞ると、ライトが白に転じる。 
 後奏で甲斐は「ララララララ」とうたわない。そう思っていると、間をおいて から、「シャラララララ」とうたった。

 甲斐は今日もステージ上に長くとどまり、僕らの声援に応えてくれた。こっちの 方を指差してくれたのが、特に自分に向けたものじゃないとわかっていても、 うれしい。 
 「最後の夜汽車」からはおったジャケットの、両側の裾を持つようにして、 甲斐はターンをした。そして、もう1度手を上げてから、左のソデへと走っていった。

 帰り際、ロビーに飾られた「オロナミンC ロイヤルポリス」からの花に気が ついた。いい香りが漂っていた。

 

 

2002年9月28日 愛知県勤労会館

 

吟遊詩人の唄 
カーテン 
きんぽうげ 
牙(タスク) 
モリー グラス 
ダニーボーイに耳をふさいで 
シネマ クラブ 
感触(タッチ) 
男と女のいる舗道 
東京の一夜 
裏切りの街角 
嵐の季節 
氷のくちびる 
ポップコーンをほおばって 
翼あるもの 
HERO

 

マドモアゼル ブルース 
ちんぴら

 

安奈 
牙(タスク) 
最後の夜汽車