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甲斐よしひろ Series of Dreams Tour Vol.1(1974-1979)

2002年9月27日(金) 大阪厚生年金会館大ホール

 開場時間の6時半ぎりぎりに大阪厚生年金会館に着いた。ここはけっこう久しぶり やな。 
 中に入ってグッズを買う。PCで見られるという新式のCDカードパンフレットが うれしい! 
 席はD列。今日は甲斐友5人で見るねんけど、5枚のチケットでくじ引きしたら、 残りくじでド真ん中の席になった。ラッキー。 
 「Series of Dreams Tour」と題された、年代別に曲目を 決定する夢のツアーシリーズ。その第1弾として、今回は1974年から1979年まで の曲が歌われる。どの歌が取り上げられるのか、ステージを見つめながらあれこれ想像 してみる。今日まで待ち遠しかったなあ。ツアー終盤に入って、やっと参加することが できた。福岡と広島のチケットも取ってたのに行かれへんかったし。でも、その待ちに 待ったステージがもう間もなく見られるんや!

 明るいBGMが高らかに響き出す。途端にみんな立ち上がる。夢のある曲やな。 その音楽の中を、メンバーがステージに歩み出てくる。おお、甲斐ももう出て来てるぞ! マイクスタンドの前へ寄り、アコースティックギターを強く奏で始める。すぐにどの曲か わかる前奏。最初にこれで来たかあ。大合唱になるぞ。 
 「吟遊詩人の唄」 
 甲斐の衣装は上下とも黒。上着は灰色っぽいか。中にエンジのシャツを着ている。 髪は短めで、左右の端を後ろに流している。青紫がかったサングラスが似合ってる。 
 甲斐のギター1本の演奏から、バンドでの演奏へ。客はもちろん最初からずっと、 甲斐といっしょに歌ってる。今日も「つかみきれない虹を 見つけるために」は 歌われない。「愛を奏でながら 街から街へと」で声を合わせる。 
 「そうさおいらはーっ」と声をあげた甲斐は、その後を客席にゆだねる。 うれしい合唱が続く。甲斐もまた歌う。再び、甲斐のギターだけが奏でられ、客たちへ の「サンキュー」の声とともに曲が終わった。 
 と思ったら、キーボードが「タラタラタラタラタラタラタラタラ」とあの メロディーを運んできた。バンドも加わって、そこからもう1度サビを聴かせてくれた。 
 全ての演奏が終わり、ステージが暗転してから、JAH-RAHがひとつふたつ ドラムを叩いた。

 2曲目はアップテンポの曲ではなかった。 
 「カーテン」 
 あの妖しい音がうねる。アレンジは新しい。「ROCKUMENT II」の ヴァージョンに近いか。 
 甲斐はもうサングラスを取っている。「ROCKUMENT II」でも見せた、 腕で身体の前の空間をかく仕草。 
 手拍子をするよりも身体を揺らしながら聴く感じ。僕らはそうしながら、甲斐と ともに歌った。 
 JAH-RAHがまた、曲が終わりきってから、ドラムを鳴らす。こういうのを 聴くのも好きや。生のノリが感じられて。

 蘭丸のギター。それだけでもう会場中が熱狂する。そこにドラムとパーカッション や。 
 「きんぽうげ」 
 甲斐は「くーらやみのなか」を突き放した感じで歌う。今日はそっちで行くねん な。一緒に歌う僕も、その歌い方をする。 
 ビート渦巻くステージを動く甲斐。両手を伸ばして手のひらをひらひらさせる 新しいアクションが目立つ。身体を揺すらずにはいられないというように。

 「Series of Dreams Tour。最後まで目一杯やるからね。 楽しんでってください。 やるよ!」 
 みんなの大好きなあの挨拶や。

 「松井のCMのバックに流れてるやつをやるよ。「牙」と書いて「タスク」と読む。 10月10日にリリースされる」 
 やっぱり新曲は特別にやってくれるんや!客席が歓声と拍手で「牙(タスク)」 を迎える。 
 ごく短いイントロからヴォ-カルへ。照明は爽やかな水色と白。青空の歌 「牙(タスク)」にぴったりや。 
 甲斐は「タスク!」と叫ぶのと同時に、親指と人差し指を立てた右手を突き上げる。 おお、こういうアクションが出来てたんや。徳島の ときはなかったもんなあ。客席には甲斐に合わせて同じアクションをしてる人が けっこういる。今日以前からこのツアーに参加してきた人たちなんやろうなあ。 うらやましいぞ。そして、もちろん僕もすぐにそのアクションを始めた。「タスク!」

 衝撃のイントロ!音が太い。 
 「メモリー グラス」 
 この曲の旋律が、これほどまでに劇的やったとは。歌詞の間や間奏であの部分が 流れる度にしびれた。 
 甲斐はアコースティックギターを弾きながらうたう。その語尾が切なく響く。 Singer以来の「メモリー グラス」、 めちゃめちゃいいぞ! 
 しかも、今日は3番まで全部うたってくれる。泣けるよ。新曲に興奮した直後 に、今度は久々の曲で感動。ほんま、甲斐のライヴはすごいのだ。 
 「メモリー グラス」が終わっていく。しかし、JAH-RAHのドラムだけは 細かいビートを叩き続けてる。そこへまた別のイントロが重なる。このメロディーも 僕らに歓喜の叫びをあげさせる。「うおお!「ダニーボーイ・・・」や!」 
 青紫のライト。その真ん中で、甲斐は赤紫のライトを浴び、アコースティック ギターを弾き、「ダニーボーイに耳をふさいで」をうたっていく。 
 これも大好きや。うたが沁みてくる。 
 音が静まり、甲斐が「いーくつーかのー」とうたいはじめる。「パーパパーパパー」 という哀しいコーラスが重なる。ライヴでこのコーラスがここまで生かされたアレンジ、 初めて聴いた。きっと相当久々なはず。 
 後奏。甲斐が叫び声をあげる。あのメロディーがゆっくりになっていき、曲が 終わった。 
 オリジナルアルバムには収録されず、ベストアルバム「甲斐バンドストーリー」に 入った2曲。人気は高いがなかなかライヴで聴くことのできないその2曲を、メドレー にするとは。うれしすぎる。やられたで、甲斐!

 前野選手のピアノだけが聴こえる。静かな空間が浮かびあがる。ステージの上方に は、いつの間にか長方形のパネルがいくつか吊られていた。横に長いのや縦に長いの。 それらを眺めながら、前野選手が奏でる曲を聴いていく。レコードに収められた、あの メロディーだ。だから、曲の終わりはわかっている。他の楽器たちが鳴り、甲斐が叫ぶのだ。 「もう おしまいさ」 
 「シネマ クラブ」 
 激しいバラードだ。引き裂かれた想いを絞り出すようなヴォーカル。演奏は 思いきり高まるが、静かな悲しみが伝わってくる。甲斐のバラードだ。 
 「メモリー グラス」からの別れの3曲。どれも甲斐の声がよく聴こえた。 僕は切なさで一杯になった。

 メンバーが去り、甲斐一人がマイクスタンドの前に立つ。アコースティックギター で歌ってくれるのだ。 
 「感触(タッチ)」 
 「HERO」を思わせる明るいイントロから、最初のサビなしの徳島ヴァージョン。 今日は1番を「お前がすがる俺の 胸はこんなにも」と歌った。 
 「タッチ 今触れたいのさ」からは細かいダウンストロークを重ねる。ギターが 高鳴って、再びサビへ。「ウォーーーっ」の叫びもしっかりあった。

 MCはワールドカップから野球へと話題が移る。佐々木とはブルペンで立ち話した そうだ。そういえば、「21世紀通り」でも、佐々木についてしゃべってたな。 
 スタンディングあり、大都市ありのツアー構成が気に入ってるということ。そして、 松藤を呼び入れる。このツアーにも参加してくれるんや! 
 松藤と衣装が似ててペアルックのようになってしまった日のことを悔やんでいる、 というジョーク。 
 10月からも「セイ!ヤング21」が続行されると知らせてくれるが、大阪は ネットされていない。そのことを「FM-COCOLOでいい思いをしてから、呪われて る」と表現する。確かに「21世紀通り」が聞けたのは、めちゃめちゃしあわせやった なあ。

 松藤がアコースティックギターの弦をはじく。静かな前奏。甲斐がうたい始める 直前に、どの曲かわかった。 
 「男と女のいる舗道」 
 ついに初めて聴くことができた! 
 短い間奏で甲斐がハーモニカを聴かせる。「そんなふうに」のところで松藤が コーラスを重ねる。 
 「このさんざめく」からも二人のハーモニー。長い間奏への入り際、レコードの ように「あー、あー」と切ない声を出すかどうか注目していたら、甲斐はそこでも ハーモニカを吹いた。これがまたいい感じ。 
 ラストは「んーんんーんんーんんー」のハミング。そしてもう1度ハーモニカ。

 このツアーをやるにあたって、各地のイベンターの人から、「その年代ならあの曲 が聴きたい」というリクエストがいろいろあったらしい。マニアックなのが多かった そうだ。 
 甲斐は観客に「まだ1曲あるんで、座って」とすすめた。「ひらに」と付け 加える。それで、みんなイスに座った。こういうのめずらしいな。 四国のライヴハウス以来や。ホールツアーでは初めて なのでは。

 「僕、知らなかったんですが。いまの曲と偶然カップリングで」 
 松藤が2音ずつのイントロを弾く。「BIG GIG」のアルバムの興奮を 思い出す。 
 「東京の一夜」 
 タイミングを変えて、「僕は僕だけの道を歩こうとし」はうたい切らず、間を とってから「君は僕だけのために ただ生きようとした」をうたう。自分よりも相手の ことばかりを想って過ごす日々。その悲しみが不意に胸を突いて、泣けた。

 メンバーが戻ってくる。 
 「この曲が売れたから、グリーン車に乗れるバンドになった」という甲斐の紹介。 
 「裏切りの街角」 
 松藤もアコースティックギターで参加している。

 松藤が拍手に送られて右ソデへ去る。 
 蘭丸があのイントロをエレキで、ところどころ切りながら奏でる。 
 「嵐の季節」 
 大合唱や。思い思いの拳が揺れる。

 衝撃的な音がはじける。甲斐は金色っぽく光って見える黄緑のギター。 
 「氷のくちびる」 
 間奏。蘭丸には青い照明が当たる。赤い照明を浴びた甲斐は、客席に背中を 向けている。大森さんとの時のようにセンターに並ぶことはしない。 
 たてぶえの音が聴こえてきた。見ると、松藤がステージ右奥のキーボード台の上 で、吹いているではないか。もしかして、「嵐の季節」でもそこにいたのだろうか。 アコースティックコーナーが終わっても、いっしょにやってくれるんや。 
 キーボードの高音が襲ってくる。後奏が長い!いいぞいいぞっ!

 ストロボが光る。ギターがうなる。 
 「ポップコーンをほおばって」 
 パーッカッションで2曲をつなぎこそしなかったが、王道まっしぐらの曲順に、 オーディエンスが熱狂する。 
 激しい演奏の中で、甲斐の歌声は二十歳の痛みを投げつけてくる。 
 間奏の静かな部分は蘭丸のギターで。客席の手拍子はやまない。甲斐の歌。2番 の後半から再び会場が燃える。拳の3連打。

 「翼あるもの」 
 こうなったら、当然次はこの曲。熱い興奮は続く。 
 ラストで組んだ両手を上げ、身体を伸ばす甲斐のポーズ。音楽が止まり、一瞬 キーボードだけが、それから全ての楽器が、音を放出する。ドラムのビート。 フィニッシュした瞬間、大歓声。「甲斐ーっ!」の叫び。

 ドラム。ベース。「最後の曲になりました」の言葉。 
 突き上げる拳とともに始まる「HERO」。 
 後奏で最初に「ヒーロー!」と入るところで、僕はタイミングがずれてしまった。 また新たなアレンジに仕上げられていたのだ。 
 甲斐はラストで何度も「サンキュー!」と叫ぶ。「サンキュー、オーディエンス」 とも言ってくれた。

 客たちの、アンコールを求める手拍子、甲斐の名前を叫ぶ声が、甲斐たちを ステージへと呼び戻す。 
 いきなりの激しいイントロ。 「ROCKUMENT V」ですごかった、あの曲や! 
 「マドモアゼル ブルース」 
 甲斐は白いシャツ姿になっている。間奏では、その裾を持って振るアクション。 「Big Night」の前後によく見せた動きだ。ステージを動きまわり、客席に 近づき、また、各楽器の見せ場ではそっちを指差して示したりする。 
 まさかやってくれるとは思ってなかった。でも、確かにソロアルバム「翼あるもの」 も1974年から1979年の間に発表された作品や。そうかあ。また聴けてうれしい。

 メンバー紹介。JAH-RAH、前野選手、ノリオ、蘭丸。このツアーシリーズを ずっと通して、ものすごい演奏を聴かせ続けてくれるであろう男たちや。 
 「Series of Dreams」というタイトルは、シリーズとして 続いて行くツアーであることを示すと同時に、「夢の連なり」という意味もあるんだと、 甲斐が説明してくれた。

 この曲も、やってくれるとは思ってなかった。 
 「ちんぴら」 
 「甲斐バンド BEATNIK TOUR  2001」ではオープニングにも抜擢された歌。このメンバーでのサウンドも、 またいいのだ。 
 「あー あー あー」と叫びながら沸騰する客席。甲斐もシャツの前をはだけて 走る。歌う。

 大合唱の「ちんぴら」が終わると、メンバーがまた帰っていく。甲斐は左ソデへ 去るときに、もう1回正面を向いてくれた。

 2度目のアンコールに、甲斐は黒のツアーTシャツを着て現れた。 
 何よりも先にオーディエンスへ「サンキュー!」と叫ぶ。 
 「今夜は最後まで熱烈な歓声を、ありがとう」 
 ツアータイトルについて、もう1度触れる。「歌い手の甲斐と作家の甲斐」が テーマだという。

 「流行り歌は季節関係ないらしいから。最後にみんなと一緒にうたえるやつを」 
 「安奈」 
 黄昏色の灯りの中で。蘭丸と松藤はアコースティックギター。前野選手は アコーディオン。JAH-RAHは細く背の高い太鼓を叩く。ノリオはベース。 甲斐は最後まで観客に委ねずに、すべてうたっていく。客席のみんなは口ずさむ感じ。 あたたかい雰囲気の「安奈」だ。

 1974年から1979年までやから、ファーストアルバムに入ってる「吟遊詩人 の唄」から始まって「安奈」で終わるんやなあ。そう思って納得しててんけど、ステージ を去ったのは松藤だけやった。「安奈」のために前に出てきていた他のメンバーたちは、 元の自分の位置につく。わあ、まだやってくれるんや!

 「祝!松井三冠王!」と甲斐が高らかに告げる。蘭丸がよろこぶ。僕は松井ファン としてうれしくて拍手をしながらも、(まだシーズンが終わって完全に獲得したわけじゃ ないからな)と、少し心配になっていた。決まる前にうかれていると、足元をすくわれる かもしれない。甲斐も気がかりなのか、首位打者争いで松井に迫る福留の名前を挙げた。 
 ともかくもう1回「牙(タスク)」が聴けるんや! 
 今度はもちろん最初から「タスク!」で手を上げ、指を立てる。甲斐はステージ のいちばん前まで出て来る。うおお、近いぞ! 
 甲斐は動く。「タスク!」の2連打からサビの繰り返しへ。曲の終わり、甲斐は ドラムの前にいた。最後の音でフィニッシュを決める。

 なるほど、最後は新曲やったか。再び納得していたが、バンドは1人も動かない。 ライヴはまだ続くんや!! 
 あのパネルセットが再び姿を見せる。ピアノの音。静かな曲。ウインドチャイム のメロディーも流れてくる。 
 「最後の夜汽車」 
 やはりこの年代でこの名曲ははずせない。かつてこうやってアンコールのいちばん 最後にうたわれていた歌。

 オーディエンスへの挨拶のために、メンバーが全員前に出て来る。しかし、甲斐は まだ今うたった曲の世界に入り込んでるような目をしている。蘭丸がそんな甲斐の手を 取って、高く掲げる。みんなの拍手が甲斐たちを包む。 
 メンバーが去ってからも、甲斐はステージの上に長く残ってくれた。手を振り、 おじぎをし、最後はくるっとターンをして見せ、手を上げた。客席から「ヒューッ!」 と声が飛び、拍手と「甲斐ーっ!」の叫びが続いた。

 甲斐は若かったな。PARTYっぽかった。 
 そして、いちばん感じたのは、「とにかく歌がうまい」ということ。甲斐の声を 堪能した。 
 ROCKUMENTや過去のいろんなシーンが思い浮かぶライヴやった。曲を 聴いて、その時代その時代の自分を思い出したりした。 
 けれど、もちろん今夜も、どの曲にも新しい息吹きが吹き込まれていた。 それが甲斐なのだ。 
 ああ、早くもVol.2が待ち遠しいぞっ!

 

2002年9月27日 大阪厚生年金会館大ホール

 

吟遊詩人の唄 
カーテン 
きんぽうげ 
牙(タスク) 
モリー グラス 
ダニーボーイに耳をふさいで 
シネマ クラブ 
感触(タッチ) 
男と女のいる舗道 
東京の一夜 
裏切りの街角 
嵐の季節 
氷のくちびる 
ポップコーンをほおばって 
翼あるもの 
HERO

 

マドモアゼル ブルース 
ちんぴら

 

安奈 
牙(タスク) 
最後の夜汽車