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阿波踊りサウンドフェスティバル 2002

2002年8月11日(日) 徳島中央公園鷲の門広場

 昨日の午後は大阪ドーム近鉄-西武を見た。それから京都へ移動して、 バカ映画覆面上映オールナイト。4本立てのはずが、急遽中篇が1本追加され、5本 立てになった。その分オールナイトの終映時刻が遅くなり、寝る時間が減って しまった。家に帰ってちょっとだけ寝てから、徳島へ出発。

 まずJRで舞子まで。そこから高速バスに乗り換える。これだと渋滞の心配が ない。高速舞子-徳島の往復切符を買うと安くなるし、明日の夜はグリーンスタジアム 神戸で野球を見るから、舞子で降りると便利なのだ。 
 この作戦は成功やった。舞子からだと徳島駅前まで1時間半もかからなかった。 明石海峡大橋大鳴門橋を渡っての旅は快適。運転手さんの愛想がよくて、ますます 気持ちがいい。車内のテレビでは「懐かしの歌謡曲」みたいな番組が流れていたが、 僕はラジオ高校野球を聞いていた。青い海と空を眺めながらの高校野球もいい。 ちょうど今向かっている先の徳島代表・鳴門工業の試合やった。鳴門工業は快調に 打っている。

 バスを降りると、すぐに会場を目指す。今日のイベントは自由席だ。徳島中央公園 は駅の反対側にあるはず。駅の地下に店がたくさんあるらしい。きっとその地下街が 駅の下をずっとのびていて、通り抜けて反対側に出られるんやろう。そう見当をつけて 下りてみたが、地下街は意外に狭かった。駅の向こうへは通じていない。 
 しばらく駅の周りをうろうろしたものの、近くにあるはずの公園へ行く道が わからない。少しでも早く行っていい席で見たいのに。だんだんあせってくる。年配の 駅員さんを見つけて、「徳島中央公園はどう行ったらいいんですか?」と尋ねた。 
 「徳島中央公園?お城のある公園のこと?」と、逆にきかれる。 
 地元の人は徳島中央公園って呼べへんのかな。「お城の公園」で通っているの か。ともかくその公園への道を教えてもらった。駅ビルに向かって右に進んでいき、 線路の上にかかった小さな歩道橋を渡る。すると、もうそこが公園やった。

 左手に売店。右手にはTV関係らしき車両が何台か停まっている。車の横には 臨時の救護室がつくってあった。その奥を右に折れると、小さな橋がある。それを渡る と視界が開ける。会場や。客席の右横から会場に近づく形になる。右に見えるステージ のバックには、ピンク・黄色・ブルーで「SOUND FESTIVAL 2002」 のロゴ。「オロナミンC」と「オロナミンC ロイヤルポリス」の広告もある。 
 客席の前半分はパイプ椅子席。後ろは立ち見や。ゆっくり会場を眺める間も 惜しんで、会場後方のファンの列に急ぐ。早くから来てる人たちも多かったのだろう、 すでにかなりの人数が並んでいる。列に沿って鷲の門と思われる門をくぐる。門の外は すぐ道路。 その端の歩道を、まだまだ列が伸びている。ずっと歩いて最後尾についた のは、高校野球の第4試合、樟南(鹿児島)-一関学院(岩手)の試合が始まった頃 やった。 
 8月中旬のイベント。しかもアコースティック。ということで、今日のライヴは 3年前の那智勝浦シンボルパークをイメージして いた。でも、こうやって道路沿いに長い列をつくって待っていると、似てるのは 高知葉山村酒蔵ホールの方やと思えてくる。あのとき も道に並んだなあ。歩道もない国道の端やった。思えば、同じ四国やな。 
 道路の反対側はお城の堀で、白鳥が泳いでたりする。そういう景色を見ながら 待っていると、雨が降ってきた。めちゃめちゃ晴れてたのになあ。そういえば、 葉山村の日も、晴れから一転して土砂降りやった。

 5時半開場。雨もあがったようだ。 
 門のところでチケット代わりのうちわを受け取る。白地に黒で、「SOUND  FESTIVAL 2002」という、ステージと同じロゴが入っている。 「オロナミンC」「オロナミンC ロイヤルポリス」のマークも同じ。「阿波踊り」と も書いてある。裏には大きく赤い「オロナミンC ドリンク」の印。その上のキャッチ コピーはもちろん「元気ハツラツ」。 
 門をくぐって、会場の鷲の門広場に入る。今度は客席後方から進んでいく形だ。 並んでた列の長さからして、イスに座れるか微妙なとこや。後ろの方でもいいから、 とにかく座席確保を目指すことにした。「できるだけ前を」なんて言って探してたら、 その間に座るとこがなくなってしまいそうや。急いで立見席との仕切りを抜ける。ほぼ 最後方ながら、ど真ん中のイスに座ることができた。ぎりぎりやったな。 
 会場の右側には、お城の堀や石垣がある。客席の後ろは、さっきくぐった鷲の門。 左後方では、オロナミンCやオロナミンCロイヤルポリスを売っていた。せっかくや から、甲斐がCMソングを歌っているロイヤルポリスを買うことにする。あのCMが 始まってから、ほとんど毎日飲んでるのだ。イス席を離れるときに、輪ゴムつきの出場証 を渡された。これで立見席のお客さんと区別するねんな。チケットがうちわやったし、 こういう野外イベントらしい風情に、お祭り気分がさらに高まってくる。

 6時半になり、まずは「FRIDE PRIDE」の登場。女性ヴォーカル SHIHO、ギタリスト横田明紀男、2人のジャズユニット。サポートメンバーとして パーカッションのメグちゃん(小柄なおじさん)も加わって、10曲ほど演奏。 
 SHIHOはショートヘア。パワーを感じさせる発声と声量。すごく高い声も出し てた。 
 パーマの横田氏は、SHIHOから「誰かに似てると思いませんか?」と紹介され ていた。答はクリスタルキングの高い声を出す人。あと、外国のミュージシャンの名前も 言っていた。「ハイ フィデリティ」で、 「あのパーマ!」って書かれてた人かな? 
 お洒落ないい音楽やったけど、曲調は手拍子するのがむずかしかった。ジャズや もんな。本人たちが「踊ってほしい」と言ってたように、その方が合うんやろう。 いちばん盛りあがったのは、「ジャンピング ジャック フラッシュ」。 
 FRIDE PRIDEがいるステージの上空には、ちょうど新月すぎの細い月が かかってて、いい感じ。でも、すぐに姿を隠してしまい、月明かりの下で甲斐の歌を 聴くことはかなわなかった。

 FRIDE PRIDEが去って、セッティングの間、休憩に入る。この インターバルが長い。客席には「オロナミンCいかがですかあ」と歩き回る売り子も 現れた。 
 ステージでは、赤いTシャツのJAH-RAHが楽器のチェックをしてる。 タオルをかけた名鏡さんの姿も見えた。 
 「橋の上や石垣に上っている方は、危険ですので下りてください」なんていう アナウンスが何度か入る。観客の数がよほど増えてきてるらしい。 
 地元局の女子アナが「みなさん、お待ちかね」と、甲斐の出番が近いことを 告げる。一気に立ち上がる客席。甲斐を呼ぶ手拍子が始まる。それでも、なかなか出て こない。僕らはどきどきしながら手拍子を続けた。

 ROCKUMENTのテーマ曲。歓声があがる。右側から甲斐が現れる。白い シャツに黒のベスト。アコースティックギターをかき鳴らす。オーディエンスは手拍子。 明るい曲だ。「HERO」なのか。 
 「俺を素敵だと思うなら そっと」 
 甲斐はそこから歌いはじめた。「感触(タッチ)」や! 
 アコースティックヴァージョンを聴けたのは初めて。感激や。甲斐といっしょに 歌っていく。会場も大いに盛りあがってる。 
 今日は1番2番ともに「とわに続く 口づけ交わしながら」と歌った。「タッチ」 の声は低く抑えて、でも味わい深く響いて。「走り続けよう」の後は 「ウォーーーっ」と叫ぶ。これ、好きやねん。 
 ラストはライヴアルバム「100万$ナイト」のそれを思わせるコード展開。 これもまためっちゃ好き。ここの音が楽譜に載ってなくて、ギターで探したことも あったなあ。 
 「甲斐ーっ!」の声が飛び交う。すでに会場全体が興奮してる。

 「ここで、相棒の松藤英男を」と、甲斐は早くも松藤を呼び寄せる。 
 松藤は髪を短くしていた。メガネをかけている。いっしょにノリオとJAH- RAHもやって来る。甲斐をはさんで左にノリオ、右に松藤、左奥のパーカッションの セットにJAH-RAHがつく。

 静かな前奏。 
 「裏切りの街角」 
 手拍子に包まれて。甲斐は間奏でハーモニカを吹く。 
 ベースとパーカッションも入っているが、 「My name is KAI」に近い演奏。あのシリーズではメドレーやった けど、今夜は最後まで聴くことができた。

 「シーズン」 
 おお!今日来るときに海を見て、聴きたいと思っててんなあ。最高の タイミング。 
 コーラスが心地いい。そういえば、アコースティックの「シーズン」で、バック コーラスが入ってるのは初めてかもしれない。 
 「お前は幻だと言う」のところで音は静かになり、ステージの後ろから白い光が 射す。 
 この曲でも、甲斐は間奏でハーモニカを吹いた。 
 やっぱり夏の、海の、「シーズン」はいいよなあ。

 メンバーがカウントを刻むのが聴こえる。 
 「ビューティフル エネルギー」 
 紫紺のライト。「オーロラが」の前で緑に変わる。 
 2番は松藤がうたう。サビからはまた甲斐のヴォーカルだ。 
 最後の繰り返しは「金色の汗を流そうぜ」「爪をたてようぜ」の2回やった。 
 気持ちいいハーモニーを聴かせた甲斐は、曲が終わると、「どうだ」と言い 放った。出来映えが誇らしいって顔。観客が拍手と歓声で応える。

 MCは高校野球の話題から。 
 「今日はハッピーだね。鳴門工業、勝ったもんね。バンザイだね。福岡の柳川も 勝ったんだ」 
 地元のみなさんがうれしそうに拍手をする。 
 「ワールドカップを、日本と韓国で10試合見て。その後遺症を振り払うよう に、シアトルへイチローと佐々木を見に。イチロー巻きと佐々木巻き、食べて。・・・ 結局遊んでんじゃん」 
 「今年はサッカーより以上に野球、という感じで」

 次の歌について。 
 「季節感ない。いいんだろうか、阿波踊りの前夜に」 
 いいねんいいねん。会場全体の雰囲気も僕も、そんな気持ち。 
 「みなさんといっしょに歌うコーナーです。英語の響きなんだけど、漢字で 書ける。それでタイトルを決めた。知ってたら、歌って」

 「安奈」 
 1番の後で、拍手が起こる。やっぱりこの歌聴きたかった人が多いねんなあ。 ファンも同じや。 
 この歌でも甲斐のハーモニカを聴くことができた。

 「今年は東京ドームに行くことが増えそうで」と、再び野球に関するMC。 
 途中、近くの道路を走るバイクの爆音が聞こえると、「燃焼してるねえ。俺も 燃焼してるけどね」 
 好きなプロ野球チームについて。 
 「西鉄っていう幻のチーム・・・いや、もうほんとに幻のチームだよね」 
 西鉄がなくなって、東京に出てきてからは、「郷に入りては、ってことで」巨人。 
 そして、松井の話へ。甲子園の5打席連続敬遠にも触れ、「その松井が、今年は 素晴らしいことに三冠王で。土屋公平っていう、いっしょにレコーディングしてる男が ジャイアンツ狂いで、めちゃめちゃ喜んでる」 
 そこからいよいよ、松井出演のCMで流れてる新曲の紹介や。 
 「「牙(タスク)」という曲を。牙というグループが歌ってると思ってる人が いるらしいけど、あれ、僕ですから。そのうち知れわたっていくでしょう」 
 最後の言葉はシングルとして出ることを示してるんやろう。客席から喜びの拍手。

 「牙(タスク)」 
 曲はカウントから始まった。すぐに「もう誰も愛せないというのかい」という 感じの詞で歌い出す。 
 CMでしか聴いたことがなかったから、全部を聴くのはもちろん初めて。知らな かった部分の詞が切なくていい。 
 そして、「青空の中放つセンセイション」という、あのサビへ。他にも晴れ わたった空を感じさせる詞があって、まさに青空の歌や。ほんまにあの映像にぴったり の歌やってんなあ。爽快や。 
 「タスク!」と叫ぶタイミングが、ちょっとずらしてあるところもある。そこ がまたかっこいい。めっちゃ気に入った!

 「牙(タスク)」が終わった瞬間、僕は感激を込めて「甲斐ーっ!」と叫んだ。 他にもたくさん「甲斐ーっ!」の声が飛ぶ。それに続けて、子どもが弱い声で甲斐の名 を口にした。 
 甲斐はそっちを見て「なめんなよ、テメエ」と言ってから、「ほんとにびびっ ちゃった。ごめんね。大丈夫、大丈夫」と笑ってみせた。

 「風の中の火のように」 
 松藤のギターに赤いライトが映ってる。バックでは火が揺れている。 
 アコースティックではあるけど、パーカッションが効いていて、最初からずっと 力強い演奏や。 
 甲斐のヴォーカルもまた強い。間奏の「オー、イェー」をはじめ、叫びが多い。 ラストは「火のーーーーーーーーーーっ」と長く声をあげた。

 「漂泊者(アウトロー)」 
 後方の火はつけられたまま。 
 「やり切れないさ」を甲斐は、1番では低く歌った。2番からは高く張り上げる。 曲が熱を帯びてくる。 
 ダークな演奏やった。「風の中の火のように」の後に、この「漂泊者(アウトロー)」。 「明るい曲の裏の曲も書く」と言った、テリー伊藤との対談を思い出した。対極に あるもの。それに、甲斐は発表当時から言っていた。「「風の中の火のように」は 90年代の「漂泊者(アウトロー)」だ」と。

 クライマックスは続く。 
 「破れたハートを売り物に」 
 松藤のギターに、今度は紫のライトが当たっている。 
 アコギヴァージョンやけど、いつもより力強く。パーカッションも鳴っている のだ。 
 この曲が最後かもしれない。そんな思いもよぎって、ありったけの声を出して 甲斐たちといっしょに歌った。

 甲斐はまだステージにとどまってくれた。 
 「みなさんと歌いたい。盛大にやりたいんで、FRIED PRIEDの諸君に も入ってもらって」 
 FRIED PRIEDの2人とメグちゃんが、再びステージに。 
 「HERO」 
 アコギとパーカッションによる那智勝浦ヴァージョンやけど、それがさらに進化 していた。「ザザザザザッ ザザザザザッ」と、同じテンポの中でストロークが1回増え ている。このアレンジ好きやあ。ステージの両端からは、横田氏とメグちゃんの タンバリンも。 
 歌い出しは今日も、「生きるってことは」から。大合唱や。ファンといっしょに、 左端のメグちゃんも、右端のパーマ横田も拳を突き上げる。間奏もひたすら燃え上がる。 SHIHOが吼える。得意の高音を放つ。そして、甲斐が歌う。みんな歌ってる。 めっちゃ楽しい。

 拍手に送られて、メンバーたちが去っていく。FRIDE PRIDE、メグ ちゃん。それに、松藤も。ノリオも。メンバー紹介のときピースを突き出してた JAH-RAHも。 
 しかし、甲斐はステージに残ってくれた! 
 もう1度一人になって、ギターを奏でる。その後ろではいつの間にか、また炎が 揺れていた。 
 「翼あるもの」 
 静かな、高い声で歌いはじめる。「翼あるもの」の切なさをかみしめながら聴く。 「STORY OF US」のヴァージョンを思い出す。 
 甲斐の歌い方が昂まってくる。2番の後の間奏は激しい。すごい。こうなると、 完全に「My name is KAI」だ。 
 最後のサビを歌い終えると、また静かになっていくギター。曲が果てたと思えた 時、一瞬の静寂を待って、再びかき鳴らされるストローク。音がわきあがってくる。 両手を高く伸べる甲斐のポーズが見えてくるようだ。あの感覚をギター一本で表現する。 これをじっくりと目一杯やってくれた。 
 最後の一音を弾く前に両手を広げる甲斐。それから、アップストロークひとつで フィニッシュを決めた。

 大歓声。拍手。手拍子。「甲斐ーっ!」の叫び。それらに応えてから、甲斐が行く。 
 流れてきたBGMは「牙(タスク)」やった。ここを離れるのは、この曲を最後 まで聴いてからや。

 いいライヴやったなあ。新曲「牙(タスク)」もほんまにいい。 
 気分よく駅の方へ歩いていると、みんなの声が耳に入ってくる。「生「安奈」が 聴けるなんて」と、感激してる人もいる。みんなよろこんでくれてるなあ。僕はさらに 気分がよくなってきた。

 一夜明けた徳島の街。通り沿いにはたくさん、阿波踊りの観客席が作られていた。 昼を過ぎると、あちこちからお囃子が聴こえてくる。こんなにたくさんの鉢巻きと ハッピとうちわを見たのは、初めてやなあ。 
 阿波踊りの街に後ろ髪を引かれつつ、神戸行きのバスに乗り込んだ。

 

2002年8月11日 徳島中央公園鷲の門広場

 

感触(タッチ) 
裏切りの街角 
シーズン 
ビューティフル エネルギー 
安奈 
牙(タスク) 
風の中の火のように 
漂泊者(アウトロー) 
破れたハートを売り物に 
HERO 
翼あるもの