CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ ROCKUMENT

-Guitar of Friends-

 

1995年5月30日(火) パワーステーション

 開場が大幅に遅れた。入った頃にはもう開演時間。4月の初日と同じく左横に席を 確保。甲斐を真横から見る位置だ。 
 ステージを一目見て、4月と大きく違うところがあった。後ろの壁にスクリーンが 吊されていたのだ。一体何を映すつもりなのだろうか。

 BGMは4月と同じ。ストーンズのクラシック調。楽器の準備も終わり、メンバーのための 飲み物やおしぼりも置かれてある。アナウンスもあった。 
 なのに、始まらない。もう8時やで。今か今かと待つ会場に、SDSで運ばれている 皿の音が目立つ。

 暗転。最後の曲は4月とちがった。スモークも少ない。 
 スクリーンに白黒の映像がうかぶ。サングラスをかけ、ギターを弾く甲斐。 ハーモニカもセットしてある。端の方にはヤッチもすわっている。楽屋や!一気にすごい 歓声。 
 大きな鏡のある部屋。バックの5人はイスに腰掛け、甲斐だけが立っている。 歩きながらギターを弾いている。音声は入ってないので何の曲かはわからない。しかし、 拍手と歓声で客席はすでにすごい熱気。 
 甲斐が部屋を出て、歩いて来る。それを映像は真っ正面からとらえている。甲斐が 今、一歩ずつこっちに近づいて来てるのだ!まさにロックのドキュメント。歓声が、また 一段階大きくなる。 
 甲斐がドアをくぐり、映像が消えた瞬間、舞台右手から甲斐が登場だ。 
 黒のジャケットに黒いパンツ。光沢のない真紅のシャツ。 
 アコースティック ギターが奏でるのは、意外にもポップな曲調。明らかに「愛と 呼ばれるもの」ではない。長めのイントロの間、全くどの曲かわからんかった。 
 「アジテイター」 
 アコースティックの「アジテイター」なんて全く予想してなかった。甲斐はささやくように うたう。真横の僕の席からは、甲斐がハーモニカに吸いつく姿が印象的やった。

 メンバーが登場し、またもポップなイントロ。でも、これも歌い出すまで何かわかれ へん。それだけに、「彼女は俺に 火の中を歩かせ・・・」と歌いはじめたときの驚きは、 めっちゃ大きかった。「電光石火Baby」! 
 俺はもう、「おーーっ!!」とでかい声をあげていた。「電光石火・・・」や「フェアリー」 などのポップな曲は、ある意味では最もやる可能性が低いと思っていたのだが。 「ダニーボーイに耳をふさいで」も「バス通り」も「シネマ クラブ」もやった今では、もう、 やらない曲なんてないのだ! 
 みんなの驚きが喜びへと変わり、大合唱。むっちゃくちゃ盛りあがる。僕ももちろん 声のかぎりに歌う。 
 甲斐は、3番のサビをひとまわりだけ歌うと、客に「電光石火ベイベーッ!」と 叫ばせる。そしてそれを受けて「ベイベー、ベイベー、ベベベベイベーッ」と歌う。これを 何度も繰り返す。打ち込みではなく生なのだ。これには興奮。もう、「ベイベー」言いまくり。 
 さらに、それで終わるのではなく、もう1回サビへと突入。どんだけ盛りあがった ことか!

 たたみかけるようにドラムが叩きだす。他の楽器も加わって、あのイントロ。客が どよめく。僕はまたもや、「お~っ!」と叫んでしまった。「ちんぴら」や! 
 もう僕の声は、かすれはじめていた。喉が痛い。まだ3曲目やというのに。 
 FIVE初期よりも、レコードの方に近い「ちんぴら」やった。レコードとちがってたんは、 出だしの歌詞で甲斐が「そこは」をとばして歌ったことぐらい。 
 オープニングから、ものすごい3曲やった。強烈や。

 「待たせて悪かった。目一杯やるからね」 
 第一声に続いて、きれいなイントロ。これも何の曲かわからない。コーラスが入る。 
 「シーズン」 
 名曲やのに、このところずっととり上げられてなかった。が、ついに!「胸いっぱい の愛」に続くGOLD路線か? 
 どっちかというとシングルに近い感じ。 
 「はじけーとぶ~」から静かになる。手拍子もやんで、いい雰囲気。

 アコースティック ギターのイントロ。これはすぐにわかった。またまた「おおお~おっ !!!」と叫んでしまう。エレキが入る。まぎれもなく、ライヴで初めて聴くあの曲や! 
 「ブラッディ マリー」。真っ赤なライトで。 
 涙がうかんできた。目の前でうたう甲斐の声は、「この夜にさよなら」の頃の声 やった。すきとおって、繊細な。長いキャリアの間に、甲斐の声は力強く変わって行ったと 思っていた。なのに、この曲では、意外なほど力強さの分量が少なかった。歌詞も完璧。 
 2番の終わりには「チューウウ・・・」と高い声を出す。3番の終わりにも。 
 レコードと同様に、最後のコーラスは長かった。甲斐が1人で「あれは血まみれの  愛のくーらしさ・・・」とうたったり。 
 「メモリー グラス」とならんで、バンド時代から「ライヴで聴けないけど是非聴いて みたい曲」のトップだとファンの間で言われていた曲。 
 うたい終えた甲斐は、「今のは23歳の頃の曲で・・・」と話はじめた。「昔からこんな 長い詞を書いてたんだよな」「LIVEでは数回しかやってない」 
 よく聞きとれなかったが、「こいつがいると、こういう曲もやってみようという気になる」 という意味のことを、ジョージを示しながら。

 「先月に比べると世の中も大分落ち着いてきたけど。このパワステは、すごい日の 次にあたることが多くて・・・」と、前夜の結婚式の話。甲斐が明治神宮のふかしまんじゅう が好きだということもわかった。 
 「見てる方はそうは思わないんだろうけど、実はこういうアンプラグドっぽいものの 方が、体力要るんだよね。体力使うし、下半身使う・・・・・・あっ、少し頭脳もね(笑)」 
 それで、このシリーズはアンコール1回だけなんかなあ。

 甲斐とジョージがイスに。今月はジョージと2人だけのコーナーはないんかと 思ってたけど。 
 「GET!」 
 4月と同じヴァージョン。 
 ジョージが歌い出しで甲斐の顔をじっと見る。が、もちろん今日はすんなりと1回で パス。2番、3番と歌に入るところでジョージがいちいち甲斐の方を見る。それがおかしい らしくて、何度も2人で笑いあってた。 
 今日も甲斐は、イスにすわりながらも激しいアクション。ひかえめながら、ズボンを まさぐるポーズも出た。三郷以来や。

 「今夜のゲストを・・・」という甲斐の言葉に、ヤッチ登場。「ヤッチーッ」という声が たくさんとぶ。 
 ヤッチのためのイスと機材が運ばれる。左側に!つまり僕の目の前である。 
 3人がイスに腰掛ける。 
 甲斐がひと言。「男はだまってロックンロール」 
 横一線にならんでいるため、真横の僕からは、ヤッチの姿しか見えない。 
 ヤッチがアコースティック ギターを弾き出す。 
 「幻惑されて」 
 まさかこれをアコギでやるなんて!誰が想像しただろうか? 
 イントロでは初っ端の部分をカット。アコースティックらしいアレンジになっていた。 
 1番の途中で、ヤッチがはじめてこっちをちらっと見たとき、何度も拳を突き上げた ら、笑ってくれた。 
 「げ~んわくさーれて おーぼれてゆー・・・」とヤッチがコーラス。これが何か 新鮮。FIVE初期の匂い。 
 2番の後の間奏も「ウフフ・・・」のとこをカット。ヤッチがギターをたたいて再び 弾き始める。 
 「罪に誘ってあげるーうう」の後、ヤッチの指がネックをはい上がり、最後のサビへ。 
 さすがプロ!というアレンジ。格好良かった。

 ツトムの体調が戻ったという話や、ヤッチがリハの初日、ヒゲづらで現れたことなど。 
 こんなMC聞いたら、「もうすぐFIVE復活か?!」と思ってしまうではないか。

 ジョージが去り、甲斐とヤッチ、2人だけがイスに。ヤッチがアコースティック ギターを 奏で始める。 
 「月に泣く」のメロディー。 
 先に歌いはじめたのは、甲斐の方やった。 
 「街(くに)を逃げた夜」のところを「街(まち)を逃げた夜」に変えて歌っていた。 
 「この手にあふれる」からはヤッチ。「フーッ」と高い声を出すときには、目をつぶって 独特の表情と口の形になる。 
 2番もヤッチ。 
 最後の「ラーラララー・・・」の合間にはヤッチがよく叫んでいた。ヤッチのパワフルさ を痛烈に思い出す。 
 RED SUDDEN-DEATH TOURの中盤以降は「ラララ・・・」のところで前に 出てギターに専念していたが、今回は甲斐とヴォーカルの勝負!という感じ。

 イスが片付けられ、メンバーが揃う。 
 「久しぶりにヤッチとやってるわけだけど。ギンギンにやってた頃のやつを・・・」 
 何やろ?FIVE初期の曲かなあ。 
 「Fever」 
 RED SUDDEN-DEATHの1曲目にやったときと似た感じ。編成がちがうから そっくりそのままではないが、ヤッチのギターなんかはほぼおんなじやったと思う。

 次の曲は、イントロからみんな大よろこび。 
 ギャーン、ギャーン、ギャーンッ!とヤッチがギターであおり、「ウォー」とか 「ヒュー」とかいう歓声があがる。甲斐がマイクスタンドを蹴り上げ、「絶対・愛」。 
 客席も白い照明。もう大爆発。すごい熱狂。わけわからんくらい盛りあがる。全員 が歌っている。叫んでいる。手拍子している。踊っている。拳をあげている。 
 演奏は武道館とちがってFIVEヴァージョン。ヤッチがジョージの方を向いてあおって も、ジョージはニコニコしながらいつも通り弾いている。甲斐は満足気な表情。 
 腕の筋肉が目立つジョージに対し、ヤッチは小さい模様のたくさん入った赤い シャツを細い腕が透けていて、これも対照的やった。

 甲斐が完璧なタイミングでマイクスタンドを廻す。 
 「嵐の明日」 
 「涙をこらえ」の前でマイクスタンドは廻さない。甲斐1人でその部分を歌う。 「雨の中・・・」からは後ろ向きにすわり込む。 
 ラスト。「ウォーーッ」と叫ぶ甲斐。思いきり身体がそっている。すごい角度。真横 から見ると、すさまじい迫力だ。 
 長いギターの後奏があり、エンディング。 
 甲斐がもう1度名前を呼びあげるなか、ヤッチが去る。情熱のこもった声援が 飛び交うが、ヤッチは以前と変わらずおどけたポーズ。終始マイペースであった。だが、 すごいパワーを感じた。やっぱりヤッチは迫力ある。

 バンドのメンバーも全員引きあげる。 
 甲斐が1人で「愛と呼ばれるもの」。 
 ヤッチがいたさっきまでと雰囲気がガラッと変わる。4月と同じ弾き語りやけど、 ハーモニカはなし。

 ドラムが叩き始める。この前と同じヴァージョンや。 
 「ダイナマイトが150屯」 
 今日は特にドラムが効いてた気がする。

 続けてあのイントロ。 
 「渇いた街」 
 ここから本編ラストまで突っ走るという宣言のように。

 アコースティック ギターを持ってマイクスタンドの前に立つ甲斐。 
 「恋愛平行線」 
 この曲を本編終了ぎりぎりにもってくるとは思っていなかった。 
 最後の甲斐の叫び。今日は「COME ON!ジョージ!」やった。

 例のブルース ヴァージョンのイントロにのせて、「今夜はありがとう」。 
 「漂泊者(アウトロー)」 
 後半は「愛をくれーよおー」を客に歌わせる。 
 いつもは歌い終わると「OH COME ON!」と言うが、今日はちょっとずらして 「OH」の後、だいぶ遅らせてから「COME O~N」と言ってた。 
 「漂泊者(アウトロー)」の演奏が終わり、「ああ、これで本編おしまいやなあ・・・」と 思ってたら、そのままリズムが刻まれ続けていて、「観覧車」に突入! 
 もう終わりやと思ってたから、これはうれしかった。確かに、「最後の曲になり ました」とは言ってなかった。 
 「ウォーオオオオオ!」と叫ぶ甲斐。すぐ近くまでやって来た。大興奮。 
 今度こそ本編終了。

 アンコールにはもちろんヤッチも参加。ヤッチとジョージは同じようにそれぞれギター の先に煙草をはさんでいた。 
 「風の中の火のように」。4月と同じく、初めアコースティックで2番からはじける テイク。 
 1番の最後「君なんだ・・・」の「んだ」のところで、それまで手拍子してたヤッチが エレキを鳴らし、それをきっかけに全ての楽器が演奏に加わる。 
 やっぱりヤッチが来てんねんからこの曲やらなあ。 
 これでヤッチの出演は終わり。甲斐が掌を上に向けて差し出す。それをヤッチが 叩き、甲斐がヤッチの掌を叩き返すと、ヤッチは手をふって「イテテテ・・・」のポーズ。 FIVEの頃と変わらぬ光景。

 「こんなにたくさんの人につめかけていただいて感謝してます」と、いつになく丁寧な 言い方。 
 演奏が始まる。静かな曲。後ろに下がっていた甲斐が前に出て演奏を停める。 
 「武道館と同じ失敗するとこだった」 
 メンバー紹介を忘れていたのだ。 
 「あのときは曲が増えたりして、その前の名古屋、大阪と流れがちがったんで、 甲斐バンドのメンバー以外は紹介すんの忘れちゃったんだけど・・・」 
 「その埋め合わせにどうしたかっていうと、ちゃんとVIDEOの歌詞カードで1人ずつ 写真付きで紹介した。ふつうやらないよ、俺は(笑)」 
 紹介されたメンバーは4月とおんなじ。ドラムスの田中一光は、ジョニー・デップに ちょっと似てた。

 「ラ ラ ラ ラ ラ ラ」とゆっくりしたリズム。ついにやってくれたか。「火傷」。 
 ライティングの加減で、甲斐の横顔に紫の影ができる。甲斐のヴォーカルに甲斐の 声のリフレイン。 
 雰囲気があって、よかった。 
 この曲で終わり。今日もアンコールは1回やった。正面ど真ん中の1番前、 マイクスタンドのすぐ近くまで行って、余韻に浸る。明日は正面で見たいなあ。この すばらしいライヴを、真ん中から。ステージ全体を見渡し、ライティングもじっくり味わい たい。 
 場内のモニターには、「See You Again and Get Together Soon」の文字 が。甲斐の映像をバックに。 
 もちろんGet Together Soonや。明日も見に来るで!

 

1995年5月30日 パワーステーション

 

アジテイター 
電光石火Baby 
ちんぴら 
シーズン 
ブラッディ マリー 
GET! 
幻惑されて 
月に泣く 
Fever 
絶対・愛 
嵐の明日 
愛と呼ばれるもの 
ダイナマイトが150屯 
渇いた街 
恋愛平行線 
漂泊者(アウトロー) 
観覧車82

 

風の中の火のように 
火傷