CRY

Twitterには長いやつ

甲斐よしひろ ROCKUMENT

-Guitar of Friends-

 

1995年4月27日(木) パワーステーション

天気が悪い。ポツポツ来ている。パワステ特製の傘も売ってはいるが。 
整理番号順に10~20人ずつ入って行く。恐い顔したオヤジが指揮を取っている。 
ドリンクと交換するためのコインを受け取り、階段をぐるぐると二階分降りる。 
グッズも売っていたが、見てる暇はない。とにかく、まずいい場所を確保せねば。 
ステージ正面は、すでにたくさん客がいたため、ステージ左横に陣取った。 BVで甲斐が言っていた通り、ステージを取り囲むように三方に客席があるのだ。 横の席にはまだあまり人がいなかったので、2列目に立つことができた。 最前列の人をはさんで、すぐそこがステージである。 これはもしかしてめちゃめちゃ近いぞ! 
当日券組が入って来た頃には、B2席は一杯であった。 
二階席にあたるSDSでは、客が料理を喰っている。結構、高級な感じ。 
SDSのさらに上がB1立ち見席。 みんな、前の手すりにもたれかかりながら下を見ている。 
正面の壁にたくさんモニターがあって、きれいな景色の映像が流され、 PSのロゴを浮かびあがらせている。

BGMは、ストーンズの曲をクラッシック調にしたやつ。 間もなく始まる、というアナウンスが入ると、全てのモニターが一斉に 「甲斐よしひろ ROCKUMENT Guitar of Friends」という文字を映し出す。 
やがて、BGMがオルゴール風のきれいな曲に変わった。 
天井からたくさんスモークが吹き出る。 
そこへ、たった1人で甲斐が登場。ギターとハーモニカ。 「拳 あげろ」とうたいだす。「愛と呼ばれるもの」 
アコースティックだからか、CDよりも丁寧な歌い方。 「誓いもくちづけもーっ」と叫ぶのではなく、 「誓いもくちづけもーぉ」と、最後の音を響かせる。 
弦をはじいて、「ピーン」という音を2回出してから、3番へ。 チュララ・・・はなかった。 
「ここが1番うたいたかった」と言ってただけあって、オープニングにふさわしい。 Singerのツアーがもし、リクエスト関係なしやったら、やっぱり1曲目やったかも。 
それにしても、近い!!史上最高の近さ。 横顔やけど、表情もはっきり見える。ビデオよりも大きい!

メンバーが出て来て、いきなり激しいイントロ。 
「ダイナマイトが150屯」! 
曲のアレンジも甲斐のアクションも、かなり変わっていた。 「とっぽい~やろう、どいていなあっ」と歌った後、ダンズダッダダン、ズダダッダン! と同じ部分の演奏が繰り返され、それから「スカしたマヌケめ、気をつけろおーっ」と 歌うのだ。甲斐はマイクスタンドを使わない。 
ヒストリーライヴ以来や。やるとは思ってなかった。めっちゃ盛りあがる。 甲斐も客に「ダイナマイトがひゃくごじゅっトンーッ」と歌わせてくれる。 
「クールなあやろう、どいていなあっ」の後には、間奏が入らず、 ここからいつものペース。スピードが倍加したような感じがして、 これがまた盛りあがるねん。

3曲目も激しいイントロ。R&Rメドレーの「どっちみち俺のもの」のようだ。てっきり そうやと思ってたら何と甲斐が、「青くたれこーめる夕暮れの・・・」と歌いだした。 
まさかまさかの「胸いっぱいの愛」。 
昔の曲をやるようになってからも、「GOLD」の中の曲は、府中での 「MIDNIGHT」1回きりで、何かやってほしいとは思っていたが、 「胸いっぱいの愛」をやってくれるとは。 
みんな大よろこびで「Go!」と叫んで拳を突きあげた。 客にも歌わしてくれたし。ラストは、「Go! はりさけんばか~りーのー Go! 声にも なりゃしいなーい~ Go! 果てない闇のさ~きーでー Go! 今夜お前と死いに たあい~」と続けて、レコードよりも多く歌えてうれしかった。 もうむちゃくちゃ盛りあがる。

MCもものすごく多かった。 「宗教関係プラスアルファでものものしいなか、出足が遅れることもなく、 来てくれて感謝してる」 
「西は天災、東は人災」という話を繰り返し。神戸製鋼ラグビー部から 「東京大丈夫?」って電話があったけど、「まずそっちだろう!」と言ったという エピソードも。 
水道水に毒が混入されるという噂があって、水を避けてたときのことなど、 とにかくよくしゃべる。僕が今まで行ったライヴのなかでは、ダントツのMCの量。 
今回のセットについては、「もう、こういう形だったら、何でもあり、だもんね」 「ここは、メシ食ってる客がいるっていうのがずっと抵抗あったんだけど」 「今日はこの会場始まって以来初めて横にも客を入れたんだ」 
舞台右ソデのスタッフに何か言ったりしているのも、 「すっかり見られてるわけですね」

4曲目。太ももまである黒いジャケットの甲斐がマイクスタンドの前に立ち、 CD通り、いきなり歌いはじめる。 
「恋愛平行線」 
ため息もちゃんとあった。 
「ララララ ラララ ラララ・・・」の後、甲斐が「Hey、ジョージ!」と叫ぶ。 ライヴでは初めての曲やけど、想像以上にライヴむきで、よかった。

ドラムス、キーボードとメッケンが去って、甲斐とジョージだけが、イスにすわる。 4月のギタリストということで、あらためてジョージを紹介。近くで見るジョージは、意外に 背が低かった。しかし確かに男前である。B2の客席は禁煙であるが、ジョージは ときどき煙草をくわえながらギターを弾いていた。 
「武道館の前に、本当にたくさんの曲をリストアップしたんだけど、あのスケール だから栄える曲と、小さいところでこそ伝わる歌があるということを痛感して・・・ 絶対ライヴハウスでやりたかったんだ。そういうやつを」 
ブルースっぽい感じ。あの特徴のあるイントロじゃなかったから、甲斐が 歌いはじめるまで何の曲かわからなかった。 
地下室のメロディー」 
久々の曲で客がわく。 
ずっと、静かな演奏で歌われ、「バーンドーは」「メーロディーイ」とジョージの コーラスが重ねられて、雰囲気があった。

2人がイスにすわったまま。甲斐が武道館で弾いた例のかわったギターを手にする。 「武道館でもやったやつを・・・」という言葉に客が「バス通り」を思い浮かべたのが わかったらしくて、「あの曲じゃないよ。今、足を組みかえたとき期待しただろう」と 笑った。 
「橋の明かり」 
ギター2本だけやから、アルバムが出る前にオールナイトで生演奏したときの 形に近い。 
かすれた声が澄み渡って響く。 
感動。これはもう、ほんまにむちゃむちゃよかった。

ジョージのギター。甲斐もアコースティック ギターを、繊細な感じで弦1本ずつはじく。 そこへ、あの赤いライト。 
「LADY」 
ギターだけなので、前のツアーとちょっとちがう。 
ステージの真上と、横ななめ上にしかライトはないのに、ステージ全体が 赤い照明に包まれ、甲斐もジョージも真っ赤に染まる。 
後半、キーボードやベースが加わる。また見られて、よかった。

バンドが全員戻り、「GET!」。 
イスにすわったまま「GET!」をやるなんて想像できただろうか? アレンジもCDとは全然ちがう。すわったままとはいえ、首を左右に振ったり、 マイクスタンドを持ち上げたりと、甲斐はかなり動く。 
最後1度ブレイクしてから、「シェキ ベイベ~」とうたいだす。 「100万$ナイト」に入ってる「港・・・」みたいな感じ。

イスが片付けられ、キーボードがよく効いた、古き良きアメリカのロックンロール、 みたいな演奏が始まった。「青い瞳のステラ」を激しくロックにしたような、と 言ったら余計わかりにくいかなあ。 
これが何と「シネマ クラブ」やった! 
かなりアップテンポ。そやけど甲斐は確かに、「もう おしまいさーっ、 すべてわあ 手遅れーっ」と歌っている。 
相当イメージがちがう「シネマ クラブ」やったけど、最後の繰り返しのところは バラードになった。 
かなりの間やってなかったはずで、ついに初めて生で聴くことができた!

再び甲斐1人となり、アコースティック ギターをかき鳴らす。 
「らせん階段」 
FIVEの初期にやったときと同じヴァージョン。最後の繰り返しはなかった。 
今に合った歌詞やと感じた。この曲があったのだ。

メンバーが帰って来た。「さあ、みなさんがいっしょにうたうコーナーが来ました」という 甲斐の言葉に客がウケる。 
「破れたハートを売り物に」 
この曲に先立って、「ファンクラブなんてずうっと嫌だったんだけど、ある時期に そういうのもいいんじゃないかと思って作ったら、今回地震のあと、神戸の会員から 手紙がたくさん来て・・・全てしっかりと読んだ」ということや、3月7日と8日に震災 に関するイベントに参加したということが話され、そういう想いを込めた「破れた ハート・・・」だった。武道館と同じように、客席に白いライトがふりそそいだ。 
みんなで大合唱。 
最後に来て甲斐が歌詞をトバしてしまった。「みんなさまよーってる」の次、 「うかれた街角で さまよいうたってる」とうたうべきところを「愛にうえなーがら~ 今夜さまよーってる」とうたったのだ。ジョージが驚いて目を見開き、メッケンの方を 向いて「びっくりしたけど、甲斐にあわせて、ひとまわり少なく演奏して終わろう」と、 表情で知らせていた。

続いてアコースティックの「風の中の火のように」。 
イベントでやった曲が続いたことになる。 
甲斐が「君なんだ」と歌い終わった瞬間、メッケンのベースがはじけ、2番からは 大ノリ。 
メッケンは、甲斐の左にいるので僕からはごく至近距離になる。少し髪を切った こともあるが、近くで見るとメッケンは、思ったよりずっとさわやかなヤツやった。

衝撃的なイントロ。僕の前にいる女の子たちがわく。 
「渇いた街」 
やはりこの歌はこの辺(ライヴ後半の盛りあがりの初め)でやるべき曲や。 
後半で甲斐は、「HEY!HEY!HEY!」で見せた、頭を振りながらギターを弾く アクション。かっこいい!

イントロで甲斐は後ろへ下がって光沢のあるショッキングピンクのシャツのボタンを 外す。横からやから、よく見えるのだ。そして、シャツの前を開いて、前へ出て行き、 両手をひろげて「翼あるもの」。 
ステージが狭いので、甲斐の動きがちがう。「オ~レのーうーみいぃに・・・」に 入るところでは、マイクスタンドを蹴り上げてそのまま振りまわし、スタンドがステージに 放り出されたときには、マイクだけが甲斐の手に残っていて、それで歌い出した。 これは格好良かった。 
最後のアクションも、いつもとはちょっとちがった。両手をあげることはあまりせず、 体を前に倒す姿勢が長かった。 
そのまま、ゆっくりしたリズムが刻まれ続ける。「きんぽうげ」かと思ったが、 本格的にイントロが始まると、そうでないことがわかる。昔に近いヴァージョンの 「観覧車82」や!みんな大よろこび。 
FIVEでやってた頃のヴァージョンとちがって、すごくロック!めっちゃ盛りあがる。 
甲斐がせつなそうに「ウォーオオオオオ」と叫ぶ横顔がよく見える。 気持ちが込められてるのがわかる。 
すごくよかった。

最後に「漂泊者(アウトロー)」。例のブルース調。 
3月8日より激しかった「HEY!HEY!HEY!」よりもさらに激しいヴァージョン。 ドラムがよく叩かれる。 
「希望の時代だと言ってる」のところで甲斐は、指を1本立てて振り、 「No、No、ちがうぜ」というポーズ。 
「爆発しそう」の後、繰り返しはなかった。 
このアレンジなら、一緒にうたってもいいのだろうが、地震や3月8日の 「漂泊者(アウトロー)」のことを思い出して、僕はうたえなかった。手拍子もせず、 ただじっと甲斐を見て、歌を聴いていた。

アンコールは短かった。この左横の席からは、ステージ右後方から出て来る甲斐たち の様子がよくわかる。甲斐は口に何か白いものをくわえていた。久々に煙草でも 吸う気になったのだろうか。と、甲斐がいきなりそれをこっちに向かって投げた。 その白い物体は、滑るように宙を飛び、カーブしながら僕の脇をすり抜けて行った。 ピックやった。そのピックは、後ろの壁にもたれさせてある柵のあいだに落ちた。 どこにあるのかはっきりとは見えへんかったけど、そのときすぐにダダダッと はいつくばって進めば見つかるはずやった。でも僕は、そうしている間にステージ の様子を見逃すのが嫌やった。迷っているスキに後ろの人にとられてもうた。 
ピックをとりそこなったのは、バンド時代、「ポップコーン・・・」の最中、甲斐ばっかり 見てて、一郎が投げたピックに気が付かなかったとき以来、2度目のことだ。 突然やったからなあ。うう、悔しい。 
舞台に出て来たのは甲斐とジョージだけ。 
「テレフォン ノイローゼ」 
甲斐はステージを動きまわり、2番では、僕の目の前にすわった! もうめちゃめちゃ近い!でかい映画館の最前列よりもひどいくらいの首の角度に なって、見上げる。僕の前の列の女の子は、手をのばせば確実に甲斐に触れられる のに、やはりいざとなるとできないようだった。 
いつものことやけど、甲斐は右サイドに行くことが多かった。 特に今日は差が激しかった。右奥の客の前にはよく行ってたけど、左奥は ドラムセットとメッケンがおったし。

「最後の曲になりました」 
「エーッ」という声がおこる。甲斐はすでに始まっていた演奏をとめ、「納得 してないようだから」ともう1度「最後の曲になりました」と繰り返す。 
「エエーッ!!」という大きな反応。 
甲斐は満足そうな顔をしながら「いつか終わるんだ!」とレッドサドンデスの 名古屋でのセリフを言い放つ。 
バラードが始まった。「荒野を下って」か?拍手がわき起こる。 
「かけがえのないもの」 
アルバムでは甲斐自身がコーラスしていたが、今日はもちろん、バックの メンバーがコーラス。

5人が去って行く。モニターには、甲斐の姿とメッセージが映し出される。 
新曲と昔の曲がうまくとけ合ったいいステージやった。ライヴで初めて聴けた 曲もあったし。これからも、過去の名曲をとり入れたライヴを続けてくれるだろう。

コインを持って後ろのバーへ。ビールを飲みたかったのに、アルコールは実費 とのこと。ジュースしかない。ハーフ&ハーフというのを見つけて一瞬ビールか!と 思ったが、メロンジュースとレモンジュースのハーフ&ハーフということやった。 何やそれ。ライヴで叫びまくった喉の渇きを、ジンジャーエールでいやすのは ちょっと残念やった。

 

1995年4月27日 パワーステーション

 

愛と呼ばれるもの 
ダイナマイトが150屯 
胸いっぱいの愛 
恋愛平行線 
地下室のメロディー 
橋の明かり 
LADY 
GET! 
シネマ クラブ 
らせん階段 
破れたハートを売り物に 
風の中の火のように 
渇いた街 
翼あるもの 
観覧車82 
漂泊者(アウトロー

 

テレフォン ノイローゼ 
かけがえのないもの