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KAI FIVE 九州共立大学 第29回 霜月祭コンサート

1993年11月2日(火) 九州共立大学 福原学園記念館

 

 よかった。ちょうど日程が合う。甲斐が久々に学祭の舞台に立つという、KAI FIVEの学園祭 ライヴ。初日は11月2日。僕の大学も学祭期間中である。まあ授業があったところで、休んでライヴに 行くのは確実やったけど。 
 それに、2日に福岡へ行けば、次の日福岡ドームで、ダイエー・巨人連合-L.A.ドジャースの 試合を見ることもできる。甲斐のライヴを見て、松井と大リーグの対決も見て、同時に福岡ドームも見られ て、これで博多ラーメンでも食べれば、最高の旅になる。 
 「大阪から行く」という言葉に驚く九州共立大学大学祭実行委員から電話で道順を聞いて、いざ、 出発。

 小倉から鹿児島本線に乗り換えて、折尾という町へ。帰りの切符を買っておこうとしたら、自動 券売機に500円玉が通用しなくて驚いた。地元では有名そうな町やのにな。 
 駅前からバス。種類が多くて、どれに乗ったらいいのかわかりづらい。こういうとき、できるだけ 人に聞かずに行き当たりばったりでやってみようとするのが、僕のクセだ。共立大学は近そうやし、 路線図を見ると8割以上のバスが共立大を通るようだ。しばらくもたもたしていたが、思い切って適当な のにとび乗った。 
 と、バスはいきなり最初のカーブを大学とは逆方向に曲がるではないか。まさか、あの確率で外れる とは。すぐに間違いに気付いたが、駅からほとんど離れていない最初の停留所で降りるのも恥ずかしい気が して、2つ目の停留所まで待って降りることにした。 
 が、ここでまたもやトラブル発生。 
 さっきの500円玉を料金箱に入れたところ、「ありゃー、お兄ちゃん、両替えしてくれないと。 お釣りないよ」と言われてしまったのだ。 
 「回数券ならあるけど、どうする?」 
 お釣りの分をバスの回数券で払ってもらうか、証明書を書いてもらってバス会社の事務所でお金に 換えるか、どっちかを選べと言う。白い眼で見ているたくさんのお客さんを待たせて、証明書を書いてくれ という図太さはなかった。 
 「回数券でいいです」 
 平気な顔を装って言った。仕方ない。 
 「たまにこういう人いるんだよ」 
 そんなん、慰めになれへん。 
 「それ、どの線でも使えるから」 
 俺にどうやって福岡のバスの回数券使えーゆうねん。 
 もう1回バスに乗るのもしゃくやから、歩いて引き返した。歩いてみると結構遠い。 
 駅のそばまで来ると、「九州共立大学 この先まっすぐ」という看板が目に入った。どうやら歩いて 行ける距離のようだ。はじめっからそうしとけばよかった。 
 坂をのぼって行ったら、大学のそばの石垣に大看板があった。

 

 九州共立大学 霜月祭

  芸能人 KAI FIVE

 

 「芸能人て」と、心の中でツッコみながら通った。

 チケット売り場まで少し迷った。たくさん模擬店が出ている。ダイエーホークスのスタジャンが 目立つ。九州スポーツを壁に貼っている店も多かった。 
 早くから並ぶつもりが、いろいろあったので、すでに発売開始時間を少し過ぎてしまっていた。 
 前の方はかなり売れてしまっていたが、3列目の左端の方にあと1つだけ空いてる席があったので、 そこを取った。ラッキー、ぎりぎりやった。きれいなブルーのチケットと緑の整理券をもらう。ロゴ入りの 美しいデザインのチケットで、うれしかった。こんなん、「PARTY」以来や。ぴあは味気ないもんな。

 時間があるのでうろうろする。腹ごしらえもしておかねば。客引きしてるお姉さんが一番かわいかった 店でクレープを買う。チョコバナナ。最悪。冷えきっていた。顔で選んだのがまずかった。 
 飲み物も要る。アルコールもいろいろ売ってた。ここはひとつ、親父の故郷・沖縄のオリオンビール を買っておこう。沖縄の民族衣装をまとった兄ちゃんが、沖縄弁を早口でまくしたててきた。僕は単語 ぐらいしか知らないのでとまどった。横の人が「こいつ相手にしないで下さいね」と助けてくれたが、 その兄ちゃんは強烈で、その後も民族衣装の集団を率いて踊りまくっていた。 
 あれこれ歩いて見ていると、校舎の中で、どこやらへ行くにはどう行けばいいのですかと聞かれた。 僕が知るわけもない。僕は道でよく知らない人から声をかけられる。ぼ~っとしてるように見えるから だろうか。 
 開場が近づく。ちょっとだけノドが渇いた。探してみると500mlの缶コーラが100円で売って いるではないか。そんなに飲めそうもなかってんけど、あんまり安いからつい買うてもうた。

 会場前にスタッフが立ち、「ブロックごとに列をつくって下さあ~い」と叫んでいる。僕のブロック はA-1。みんな気おくれするらしく全然並ばないので、飲みきれないコーラを持ってA-1の一番前に 並んだ。 
 並んでいてもヒマなので、無理矢理コーラを飲みほした。ちょっと寒くなってきた。我ながら なんていやしい奴。

 開場。A-1の列から順に中へ入る。当然僕が一番乗りになるわけだ。ちょっとうれしかった。 
 が、いきなり止められてしまった。缶を持って入るなということだ。手荷物チェックも厳しく、 警備の人数も異常に多い。ものものしい警戒。今まで行ったどのコンサートよりきつい。 
 あほみたいにビールとコーラをたくさん飲んだので、開演まで頻繁にトイレに行く羽目になった。 後悔先に立たず。トイレの中まで警備が数人いるので、何度も行くのは結構恥ずかしかった。入口には 女子も警備に立ってるし。

 3列目の左から3番目。左は女子大生2人組。右は年上の女性6人組。「甲斐よしひろヒストリー」 の頃からこういうファンも増えてきた。「吟遊詩人の唄」とか聴きたいのかな。

 予想通り、「HERO」がオープニング。ふだんのファン以外の人も多いし、やっぱりこれから 始めるやろう。 
 続いて「絶対・愛」。大騒ぎ。マイクスタンド廻しまくって初めての客にもアピールしてから、 「安奈」の前奏にのって「こんばんは、KAI FIVEです」

 「新曲をやりましょう」の声に、ファンがよろこぶ。やっぱりやってくれるのか!今日は 「激愛(パッション)」が聴けるのでは、という期待に応えてくれた。一旦消えたスポットに、甲斐が 「ちょっと待って」ともう一度ライトを当てさせ、「この間発売されたばかりの「激愛(パッション)」と いう曲を」ときちんと言ってから、始まった。 
 初めてライヴで演奏された「激愛(パッション)」は、CDよりも力強い感じ。

 右サイドのヤッチが激しくイントロを弾く。 
 「切ない痙攣」 
 CDでは「落下する月」「涙のアドレス」に続いて入っているせいか、そんなに激しい曲だとは 思っていなかった。しかし、ヤッチは終始ギンギンに弾きまくって、今日一番の見せ場という感じ。 「切ない痙攣」も初めてやったから、めっちゃうれしかった。

 「嵐の明日」「BLUE LETTER」では、初めての客にも甲斐のヴォーカルのすごさを見せ つけたと思う。 
 「祭りの場であえて「BLUE LETTER」をやった。成人の集いでもやったんだ。結婚式では やんないんだけど」という話で、MCが始まった。 
 一日中別室に隔離されてたらしく、「今日初めて出会う世間が君たちです」 
 そして例の「芸能人 KAI FIVE」という看板の話題。 
 「芸能人・・・・・・。他に何か書きようがなかったのか」 
 笑って「まあ、同郷のよしみで許そう」 
 と言いつつ、次のMCでもいきなり「芸能人・・・・・・。」 
 そこまで気にしてるのか、と客が少しざわつくと、「そればっかし」と自分でツッコンでみせた。

 「きんぽうげ」から後はもう大熱狂。めちゃめちゃいいで。 
 「翼あるもの」「風の中の火のように」で本編終了。

 やはり初めての客も多かったようだ。というのも、アンコールのとき 「カイ ファイブ、カイ ファイブ」という聞き慣れないコールがあったのだ。きっとこれも今日しか できない体験。

 アンコールはやっぱり「漂泊者(アウトロー)」。格好良い。 
 1曲だけやったけど、全部で8曲ぐらいやったらどうしようと心配していたわりに15曲やって くれたんで満足。いつもより5、6曲少ないので、少しちがった構成。「嵐の明日ツアー」から後で 「涙のアドレス」をやらなかったのは、今日が初めてだろう。

 

 翌日。 
 練習から見たいので、早めにホテルを出て、ドームへ急ぐ。川沿いの道に入ったときに、右後ろから 見られている気配がした。ちらっと見ると、やはり知らない男がこっちを見ている。なんや男かと思って たら、話しかけてきた。 
 「あのー、昨日共立大にいませんでした?」 
 「はあ、いましたけど?」 
 話を聞いてみると、昨日大学で道を聞いてきた男やった。 
 「共立大の方ですか?」 
 自分の大学で道聞くって考えたらおかしいけど、とりあえずそう尋ねてみた。 
 「いいえ、KAI FIVEを見に来たんです」 
 「ああ、甲斐のファンなんですか。僕も甲斐見るために行ったんですよ。地元やないんですけど」 
 「どこですか?」 
 「大阪です。ちょうど次の日ドームで松井も見られるし、と思って」 
 「お~~、おんなじこと考える奴っているんだなあ」 
 えらく感心している。俺もまさかそんな奴があるとは思ってへんかったけど。 
 「どっから来はったんですか?」 
 「僕はねー、東京」

 ライヴに行った先で初対面の人と甲斐友になるのは、これが初めてやった。ライヴの話で盛りあがり、 意気投合した。野球を見て、サンストで聞いて以来夢やった「替え玉」に博多ラーメン屋で挑戦して、 照和を探した。想像以上にいい旅になったな。

 

 

1993年11月2日 九州共立大学 福原学園記念館

 

HERO 
絶対・愛 
安奈 
激愛(パッション) 
ポップコーンをほおばって 
切ない痙攣 
嵐の明日 
BLUE LETTER 
破れたハートを売り物に 
きんぽうげ 
幻惑されて 
氷のくちびる 
翼あるもの 
風の中の火のように

 

漂泊者(アウトロー