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甲斐バンド BEATNIK TOUR 1985

1985年12月28日(土) 大阪城ホール

 

 1985年暮れ。僕は高校2年生。前年の BEATNIK TOUR 1984 FINAL、春の「LOVE MINUS  ZERO TOUR」に続いて、3回目となる甲斐バンドのコンサートに行った。 大阪城ホールは2度目。そして、初めてのアリーナ席やった。

 3日前、12月25日のサンストでは、「甲斐バンド マル秘テープ公開」という ことで、大森さんのうたう「くだけたネオンサイン」が聴けた。 
 11月に参加したイベント(バナナホールで、昔のライヴフィルムなどを見せて くれた)で、「次のツアーは、前回までと大きく内容が変わる」との情報が流されて いた。あれはほんまなんかなあ。だとしたら、一体どんな曲目をやるのだろうか。 めっちゃわくわくする。

 メンバーが姿を現し、遅れて甲斐の登場。歓声が何倍にも増す。今回も、イントロ にのって走って出て来ると思っててんけど。それが、いきなりMC。

 「今年最後のコンサート。目一杯やるからね」

 会場じゅうのファンが大よろこび。そこへ1曲目のイントロ。 
 「キラー ストリート」や! 
 その瞬間、僕の頭の中で「3曲目→1曲目の法則」ができあがった。去年3曲目に やった「野獣」が、次の「LOVE MINUS ZERO TOUR」の1曲目。 そして、「LOVE MINUS ZERO TOUR」の3曲目、 「キラー ストリート」が今夜の1曲目だ。 
 もっとも、その後この法則どおりになったのは1回か2回しかないけど。

 「キラー ストリート」には、自分の目で確かめてみたいことがあった。歌詞 カードでは「燃え上がる炎を見ただろう」になっているのに、「燃える炎・・・」と 歌っているように聴こえるのだ。ライヴではどう歌うのか。僕は甲斐の口元に注目して いた。 
 すると、甲斐は口を「燃え上がる」と動かしながら、声は「燃える」とだけ発音 する、という技を見せていることがわかった。39列目と、決して近くはなかったのに、 よう見えたもんや。この頃はまだ視力がよかったせいもあるのか。 
 めちゃめちゃ細かいことやけど、僕はこの発見にうれしくなり、家に帰ってから 練習したりした。

 「キラー ストリートが終わると、ステージ中央手前から、ホール後方に向かって 紅い光線の束が伸びた。舞台の高さから後ろの天井まで、斜めに貫いている。 
 このライティングで「デッド ライン」 
 曲の終わりで、真っ赤な光線は元の位置に戻った。

 「次の曲は1度ラインアップから外れたんだけど、また復活した。その曲を」 
 その復活した曲って何やろう?期待の拍手の中、始まったのは期待に応えてあまり ある、みんな大好きな歌。 
 「きんぽうげ」 
 春の「LOVE MINUS ZERO TOUR」ではやってくれへんかった (ツアー後半からは「三つ数えろ」に代わって演奏されたらしいけど)こともあって、 めっちゃ盛りあがる。 
 甲斐は1・2番とも「こぼーれた テーブルの酒」と歌ってしまったが、それでも いいねん。

 噂はほんとうやった。 
 「どっちみち俺のもの」「東京の冷たい壁にもたれて」と、ここ何年もやって なかったナンバーが続出。 
 特に「東京の冷たい壁にもたれて」は渋くて、よかった。エフェクターだったか、 ほとんど誰も使わなくなったものを一郎がこの曲で活用しているんだと、甲斐が サンストでうれしそうにしゃべってたもんなあ。

 MCでは開口一番、「大阪はいいよね。街全体が盛りあがってて」 
 タイガース優勝のフィーバーぶりを言っているのだ。タイガースファンがほとんど と思われる客席が沸く。 
 「(タイガースファンは)それほど下品でもなく」 
 他チームのファンは少しつらかったかもしれないが、アリーナの1人の男が 「ジャイアンツ 万歳!」と叫ぶと、会場全体に笑いが起こった。

 「ナイト ウェイヴ」の後のバラード。まず、「夜のスワニー」 
 「LOVE MINUS ZERO TOUR」のMCで「この曲は手拍子が 合わないから、静かに聴いてくれ」と言ってたけど、今日は手拍子をしてる客がいる。 でも、手拍子はやがて自然に消え入った。 
 続いて名曲「街灯」 
 僕が生で「街灯」を聴いたのは今夜が初めて。すごくよかった。 
 バラードと後半大盛りあがり大会の橋渡し役を「ラヴ マイナス ゼロ」が 務める。

 怒涛の終盤戦。まず初っ端に「地下室のメロディー」 
 これも久々で、異様なほど盛りあがる。 
 「地下室のメロディー」が終わると同時にパーカッションの音楽が始まる。それで もう、次の曲が何かわかる。甲斐が肩からギターをかける。みんなの思った通り。 
 「ポップコーンをほおばって」 
 「氷のくちびる」から「ポップコーン・・・」へ、というこのところ定着していた 流れが崩されたことになる。結局、最後まで「氷のくちびる」は歌われなかった。まさか 「氷のくちびる」をやらないなんて、想像できひんかった。

 「冷血(コールド ブラッド)」 
 去年のツアーでは新曲として披露されたこの曲が、1年ですっかりライヴ終盤の ポイントを担う重要なナンバーへとのし上がった。

 そしてステージは「翼あるもの」「漂泊者(アウトロー)」で絶頂を迎える。 
 熱狂した客たちがアンコールを叫ぶ。当時はまだ、甲斐コールをする者は 少数だった。

 アンコールの1曲目に大感激。 
 「ランデヴー」 
 今日はもうやってくれへんのかと思ってただけに、なおさらうれしかった! 
 そこへ続いて「港からやって来た女」! 
 一体何年振りやねん?甲斐ファンとしてライヴに行って、絶対やってみたかった ことの一つが実現した。もちろん「フーッ!」のことである。 
 僕が「甲斐ーっ!」って叫んだのも、この日が初めてやったと思う。3度目の ライヴということで、ようやく雰囲気にも慣れてきたし。今では1回のライヴで何回も 何回も叫んでるけど。

 2度目のアンコール。 
 これもずっとやってなかった。 
 「HERO」 
 大ヒットした割にはファンに評価されていないように言われてたけど、やれば やっぱりみんな喜ぶのだ。 
 「HERO」が最後の曲やった。今日の流れからすると、「HERO」を歌うのも 不思議ではない。僕には、「破れたハートを売り物に」が歌われなかったことの方に 意味があるように思えた。

 ホールを出てすぐの階段のあたりを、みんなが感想を言い合いながら歩いていく。 
 「「きんぽうげ」おしかったね~。1番と2番の歌詞、入れ換えたらよかったの にい~」と女のひと2人組。 
 「なっ、なっ、よかったやろ!次からもずっと来よう」 
 初めて彼女を連れて来たらしい男が、力を入れて話している。彼女の方も感激 してるみたいや。

 しかし、甲斐バンドの姿が見られるのも、そう長い間のことではなかった。 
 後から思えば、この日の曲目が暗示していたのだ。この頃にはもう決まって てんや。 
 半年後、甲斐バンドは完結する。

 

 

1985年12月28日 大阪城ホール

 

キラー ストリート 
デッド ライン 
きんぽうげ 
ダイナマイトが150屯 
どっちみち俺のもの 
ボーイッシュ ガール 
東京の冷たい壁にもたれて 
フェアリー(完全犯罪) 
悪夢 
ナイト ウェイヴ 
夜のスワニー 
街灯 
ラヴ マイナス ゼロ 
地下室のメロディー 
ポップコーンをほおばって 
冷血(コールド ブラッド) 
翼あるもの 
漂泊者(アウトロー

 

ランデヴー 
港からやって来た女 
観覧車’82

 

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