BBガールズ初のホールワンマンライブ。一世一代の勝負の日。めちゃめちゃ楽しみだし、最高に期待しているし、何があっても結局うまくいくと確信している。
曲順予想をした。
もっとオールドファッションド
人生はミラーボール
苦い林檎酒
それはウソじゃない!?
透明な水
ひらいたトランプ
ミルク32(カバー)
瑠璃色の地球(カバー)
(バンドによるインスト、衣装チェンジ)
夜明けの月に
恋してオムレツ
離れてもそばにいて
クランベリージャム
泡のないグラス
風のファンタジスタ
ガーディアン・エンジェル
平成ガール
まだまだGIRLでいいかしら
(アンコール)
陽だまりの鳥
境界線はいらない
1曲目最有力は「もっとオールドファッションド」。去年3月から一貫してBBガールズのマンスリーライブ「土曜パームトーン劇場」でオープニングを飾っている。
しかし、いきなり「人生はミラーボール」で行く手もある。はんなりディスコボールシャワーとのバンドバージョンでは後奏が長く、たじさんがタンバリンを叩く。最後は「京都ミューズホーオー~~ル」みたいな感じでシャウトするはず。「もっとオールドファッションド」はBBガールズとしての音源が未発表だが、「人生はミラーボール」はもちろんアルバム「ラ・ブラバ/LA BRAVA」にも入っている。BBガールズのライブに来た回数が少なめの方も多く来られるであろう今回は、よく知られているこちらで始める可能性もあるのでは。
さらに、とっておいた「もっとオールドファッションド」を、衣装チェンジに続く後半の1曲目に持っていくこともできる。「人生はミラーボール」と並んでオープニングに適している「ガーディアン・エンジェル」は終盤のたたみ掛けに使いたいのだ。
穴予想としては、アカペラの「Fai La Brava」がある。梅小路フェスで一度最初に歌われた。でも、初のMUSEでやるだろうか。いつものように「チャーリーズ・エンジェル」のテーマに続いて巻頭のSEとして流されるのでは。
考えた末、1曲目はやはり「もっとオールドファッションド」だ。以前に歌詞を変えてライブの最初に歌われていたというもう一つの実績もある。何より、たじさんより先にカナさんが登場して見せ場をつくることは、前奏がごく短い「人生はミラーボール」ではできない。「もっとオールドファッションド」から入って、次に「人生はミラーボール」だ。
「苦い林檎酒」は序盤に配置する。あのスキャットを聴かせて、バンドサウンドの中にあってもたじさんの歌声の素晴らしさを知らしめておくためだ。
「それはウソじゃない!?」は今回特に注目している。
スタジオ練習の日のツイートに「初めてバンドでやるあの曲をアレンジ! いやぁまさかあんな感じになるなんて!」というめちゃくちゃ期待させるのがあったから。
同じ理由で注目なのが「離れてもそばにいて」で、はんなりディスコボールシャワーが初めて演奏するのはこの2曲なのでは。だから「離れてもそばにいて」はなるべく後ろに寄せた。
着換えの間はバンド「はんなりディスコボールシャワー」がインストを聴かせてくれるだろう。逆に言うと、その前はバンドメンバーがインターバルをとって、BBガールズ二人だけの時間を作るのでは。そこで、カナさんのキーボードだけの、普段の感じの演奏もお披露目すると思う。
そのときにカバーもやるのでは。BBガールズはカバーも素敵だ。この大舞台で見せるなら、名作中の名作、中島みゆき「ミルク32」と松田聖子「瑠璃色の地球」ではないか。
カバーはやらない可能性もあるが、前期の甲斐バンドがライブで岩崎宏美の「ロマンス」をカバーしたのをメディアの人が見て、「こういうミーハーな面もあるのか」と好意的に受け取り、甲斐よしひろのラジオレギュラーが決まった、という話が印象に残っているので。
静かな流れは「夜明けの月に」から雰囲気を変えていく。
バラードを続けない並び。
「泡のないグラス」の後の重責は「風のファンタジスタ」が担う。
その後は「ガーディアン・エンジェル」「平成ガール」「まだまだGIRLでいいかしら」か、「平成ガール」「ガーディアン・エンジェル」「まだまだGIRLでいいかしら」と予想するが、間奏でカナさんがたじさんに紹介される曲が続かない前者を採った。
アンコール1曲目「陽だまりの鳥」の前に感動のMC。
フィナーレはやはり「境界線はいらない」だ。
ついに迎えたMUSEライブ当日。
暖冬なのに、京都は雪が舞っている。
阪急烏丸駅および京都市営地下鉄四条駅の13番出口。階段を上りきって左へ進むと、すぐ左手にとんこつラーメンの一蘭がある。一蘭が入っているビルの3階と4階が京都ミューズホール(KYOTO MUSE)。
一蘭への入り口の左に広めのスペースがあり、MUSEへ上がる階段はその奥にあるようだ。
MUSEの場所もわかったので、近くのお気軽会議室へ。
マイドンさんが「2・9 BBガールズ MUSEワンマン大喜利決起集会」を開いてくれるのだ。
ウォーミングアップ大喜利、大喜利日本シリーズに続いて、BBガールズ大喜利格付けチェックも開催。大喜利勢の回答の中にまぎれたたじさんorカナさんの回答を見抜くことができるか、という企画。たじさんカナさんとも、しっかり面白い答を出されていた。当てるのは至難の業だったが、太郎左衛門さんが何とパーフェクトを達成、超一流の称号を得た。
最後は
「本日はご参加いただきありがとうございました!
この後 BBガールズ京都MUSEワンマン盛り上がっていきましょう!」
という文が映し出された。マイドンさんの美しい配慮。
あらかじめマイドンさんに頼んでおいて、早めにMUSEに向かわせてもらう。入場順の詳細がまだ明らかにされていないのだ。整理番号順にする予定だとは聞いているのだが。
僕の整理番号は1番。発売初日の朝、わくわく梅小路フェスへ急いで手に入れた。あの日からずっと財布に入れている。何より、最前列の真ん中でこの記念すべきライブを見たい。
外に出ると、さっき降り注いでいたあられも止んでいた。幸先よし。
MUSE前には、すでに並んでいる方々がいた。開場の4時半にはまだ30分以上ある。
そして、花のスタンドが3つ並んでいた。手描きのプレートもあって、とてもいい。
花を贈ることは去年から考えていて、KYOTO MUSEに届けてくれる花屋さんのサイトも見ていた。見本のひとつ、紫とピンク中心の花のバスケットが特にきれいだしBBガールズらしいと思ってお気に入りだった。でも、「ファンより」みたいな感じにしようと思っていたら匿名禁止だったり、僕1人で花を贈っていいものか考えるところもあったりで、遠慮した方がよさそうだという気になっていた。
そんなところへあきっすんのあきさんが、みんなで花を贈ろうと呼びかけてくれて、めっちゃありがたかった。
こうして実際に花を見ると、本当に贈ってよかったと感じる。
カナさんのバンド仲間で、たじさんのソロライブで共演したこともある、fm GIG「BBガールズのまだまだGIRLでいいかしら」リスナー、アフロラQメンバーの湊マサコさんの弟さんとご挨拶。
そして、すぐに駅にコインロッカーを探しに行く。 ところが、かなり遠くにしかないらしい。駅の大きさとロッカーの数が比例してない気がするが、もしかして京都という街の性質上たくさん作れないのかもしれない。
あきらめてMUSEに戻ると、階段下で待つ人数が増えている。客はここで待つように表示が出ている。
まだ4時半になる前という感覚だったが、スタッフの方が開場に来てくれた。
確認すると、整理番号順の入場だ。よかった! 一番乗りで階段を上がっていく。
前に甲斐よしひろのアンプラグドツアーで来たときは、階段が外にあったような。他の会場と混同しているのか。ビル自体が変わっているのかもしれない。一蘭があった記憶はない。
もぎりの前で一旦待たされ、すぐに開場。ドリンクチケットを受け取り、さらに階段をぐるぐる上る。年季が入った雰囲気。新しめの会場というイメージだったが、僕が来たのは甲斐よしひろがアルバム「GUTS」を出した年の3月。いつの間にか24年も経っている。
階段の途中に15しかないというMUSEのロッカーを見つけたが、これは小さい。大喜利道具もつまったリュックや上着を入れる用ではない。何より今は最前列のセンター確保だ。
やっと上りきって扉を抜けると、入り口のカウンターにそろったパームトーンのメンバーが笑顔で迎えてくれた。
まず感じたのは、意外と小さいということ。キャパは最大350ということだったが、そこまで入れたらぎゅうぎゅうだろう。BBガールズにとって大変な挑戦、という気がしない。BBガールズの実力なら、充分埋められる気がする。
客席の前方はスタンディングと聴いていたが、ほぼ全部がスタンディングだ。前方の両壁際が、備え付けのベンチになっている。そのそばにテーブルと小さな椅子が少し。真ん中あたりに、立ち見の人が飲み物を置けるようなテーブルが3つほど。これはけっこうな数の観客を受け入れられる態勢だ。
客席には段差があり、前半分が低くなっている。これはよく覚えている。甲斐のライブでは右手後方に立っていたのだが、前の方に小柄なお客さんがそろっていて見やすくて助かったと思っていたら、段差のせいだった。それを口にして少し笑いが起きたから。
ステージにはえんじ色の幕が下りている。その前に少しスペースがあり、真ん中にだけステージ側にせり出す形で、丸みのあるバーが付いた黒いフェンスが3つ並ぶ。フェンスの下部は網目状の薄い台とつながっている。誰もいない客席を真っ直ぐフェンスの方に向かい、「ここ、乗っていいんですか?」と冴沢͡鐘己プロデューサーに確認してから、ど真ん中の網の上に立つ。リュックは足元に。2つの上着はフェンスの縦枠に結び付ける。目指していた場所を確保できた。
後続のお客さんは意外にも、なかなか前の真ん中に来ない。数少ない椅子に座ったり、立ちテーブルに陣取ったり、写真を撮るのに最適な角度を探したり、まず左後方にあるバーカウンターでドリンクを引き換えたり。
最後方の真ん中にPAがあり、客席はないが二階もある。公式のものか、カメラも設置されている。
天井は噂通り高く、大きなミラーボールもしっかりある。
すかいどんさんの前説が始まった。
僕はラジオの番組越しにパームトーンの曽我未知子さんから、大喜利勢とか仲間内にBBガールズのライブでの客の定番ノリを教えてあげてと言われ、みなさんの負担にならない程度に個別でやんわり伝える感じにしていた。でも、すかいどんさんは曽我さんから面と向かって直々に前説を頼まれたとのこと。「人生はミラーボール」のCメロを本格的に歌われ、僕が「BBガールズ!!」と叫ぶ役目をおおせつかった。
右後方の入り口カウンターでは、BBガールズのCD、タオル、たじさんが描いたイラストなどが売られている。BBガールズタオルが完売になる。客席に人が増えてくる。前も後ろもまんべんなく埋まる。開演時間が近づく。
諸注意を告げるようなアナウンスはない。
えんじの幕の向こうから楽器チェックの音が聴こえる。鍵盤が鳴った。もうカナさんが幕の向こうにいるのか。
ステージ側の電気が落ちた気配。「おっ」と声が出てしまった。いよいよ始まるぞ。
流れていた曲が終わった。すかさず「たじーっ!」「カナーっ!」って叫ぶ。
次のBGMが始まるかと思いきや、いつもマンスリーライブで聴いてきたオープニングを知らせる「チャーリーズ・エンジェル」のテーマが響き始める。えんじの幕の上にミラーボールの光の玉がまわる。ああ、ついにBBガールズのMUSEが始まる。場内は手拍子が起こっている。BBガールズの曲が奏でられる前から。普段のライブではないことだ。初めてBBガールズのステージを見る人も多いだろうけど、みんなこの特別なライブに期待し、祝福している。
曲が変わる。BBガールズの歌声。「Fai La Brava」だ。アルバム「ラ・ブラバ/LA BRAVA」のリリース以来、ワンマンライブで行ってきた形。
「Fai La Brava」が終わる。歓声と拍手が沸く。幕が左から右へ開かれていく。ステージが光に浮かぶ。
ステージの上には、バンド「はんなりディスコボールシャワー」の4人がいる。恒例のスパンコールの衣装だ。真っ正面に、黄色の衣装のドラムスふるじゅんさんが見える。ふるじゅんさんは2本のスティックを叩き合わせてリズムを刻み続ける。場内はそれに合わせて手拍子が沸いている。
カナさんはどこだ。先に入ってくるはずのカナさんは。
カナさんは右の奥から現れた。スパンコールのジャケットの中は「ラ・ブラバ/LA BRAVA」Tシャツ。あざやかなブルーのスカート。あの光沢はサテンなのかな。髪の右側に青い花飾り。「カナーっ!」の声援がいくつも飛ぶ。いいぞ。カナさんはキーボードの前へ。キーボードがステージの右にあるのも、二段あるのも、スタジオ246のリハ写真で見た通り。BBガールズのライブでキーボードが二段なのは初体験だ。期待が高まる。カナさんが最初のフレーズを弾く。バンドの演奏が本格化する。
一瞬ステージの左端を見たが、そちらに通路はないみたい。早くもたじさんが右手奥から登場だ。カナさんとおそろいのジャケットに「ラ・ブラバ/LA BRAVA」Tシャツ。カナさんと同じ素材のピンクのスカート。ウエストを締めるおしゃれなのは、あれもコルセットっていうのかな。髪の左側に大きい黒の派手なリボン。ヒールの高いブーツはゴールドのラメに見える。「たじーっ!」の声もいっぱいだ。
二人ともいきいきした表情。緊張し過ぎてるとか感極まってるとかすごく気負ってるとか、そんな様子は全くない。やっぱり何も心配ない。見てるこちらも楽しいばかり。
「もっとオールドファッションド」
たじさんとともに手を上げながら。いつものオープニング曲がMUSEでバンドで。
たじさんは観客ひとりずつを見て訴えかけていく感じで歌っていく。「来てくれたんだね。見えてるよ。楽しんでいってね」と伝えているように見える。カナさんは全体を見渡しながら弾いているみたい。最前列に小さな男の子と女の子がいるのに気づいた様子。
カナさんの後ろにギターのたかしさん。反対の左側にもう一人のギター、増田雄一さん。ベースのかじさんは左端。
たじさんのスキャットがいい。1曲目から、初めて見る人にもBBガールズの魅力を感じさせているはずだ。
「人生はミラーボール」
たじさんが左へ、そして右へと動きながら歌っていく。やはり客の顔を1人ずつ見ていくようにして。声を重ねるところでは、カナさんを振り返って視線を交わす。「Are you lady?」と、カナさんが左手を客席に向けて横に動かす。2番は右手だ。このところあみ出した両手を使うジェスチャーはしなかった。バンドバージョンだと演奏が変わって、鍵盤から両手を離せないのかもしれない。
左の端へも右の端へも行ったたじさん。2番の終わりはど真ん中に戻って「あなた次第」と指差しポーズを決める。最高だ。
そして、「こんなもんじゃないでしょ」からのあのCメロ。たじさんは、慣れていない人にもわかりやすく客席に呼びかけた。そこでみんなで、「BBガールズ!!」
最後の「回せレインボー!」では、たじさんといっしょに人差し指を出した右手を回す。バンドのMUSEの今夜はそんな気分だ。
「人生はミラーボール」バンドバージョンのお楽しみ、ここから後奏がまだまだ展開していく。たじさんがステージからタンバリンを拾い上げる。客の死角に置いていたのか。バンドの音が熱を帯びる。たじさんもタンバリンを叩いてる。それがブレイク。たじさんのシャウト。「ミューズホールへようこそ」
これは感激だ。いつもは「サウンドパーあーク」とか「わくわく梅小路フェッスー」とかイベント名を叫ぶところで、「ようこそ」って言ってくれた。今夜の特別さを感じる。
もうひとつ。甲斐バンドが新宿の都有地で行った野外イベント「THE BIG GIG」で、2曲目を歌い終えたボーカルの甲斐よしひろは、「よく来てくれたな。BIG GIGにようこそ」と呼びかけた。会場は今の東京都庁が建っている場所。僕は行けなかったが、初めて買った甲斐バンドのアルバムが「THE BIG GIG」のライブ盤だった。BBガールズが出ているfm GIGというラジオ局の名前も、BIG GIGから付けていると、僕は最初から勝手にそうにらんでいる。
大好きな「人生はミラーボール」、かっこいいステージ、いつもと違うシャウト、それが重なる特別なセリフ。胸が熱くなってくる。
初めて聴くアレンジ。「初めてバンドでやる曲があんな感じになるなんて!」というツイートは、やはりこの曲のことだったのか。
「それはウソじゃない!?」
テンポがだいぶ速く生まれ変わっている。歌うたじさんがグングンこちらへ歩いてくるようなイメージ。おしゃれな原曲をロックに寄せているのか。メンバーのプレイも激しい。カナさんはキーボードに手をかざして、ひゆんひゆん言わせている。わあ、あれってきっとテルミンじゃないのか。映画で見たテルミン博士が鳴らしていた装置は見えないが、キーボードの盤面に組み込まれているっぽい。とにかく何もかもが派手、ステージ上の誰もがちょっと変わったことをしてるみたい、全部ひっくるめてめっちゃ楽しい。これはまた聴きたいな。
「カモン、かじさん」
皮切りのたじさんのセリフでピンときた。これは一昨年のわくわく梅小路フェスバージョンだろう。かじさんのベースに続いて、ふるじゅんさんのドラム。
原曲からかなり変わった「クランベリージャム」
1番を歌い終えたたじさんがまわる。「フーッ!」の歓声が飛ぶ。
2番以降はたじさんはまわらず。バックのメンバーを示す。たかしさんのギターソロ。盛りあがっていると、ソロは左の雄一さんに移る。そして最後はカナさんのキーボードだ。バンド全員にソロの見せ場がある。
それから原曲の「one more jam」のフレーズへと収束していく。「one more love」
あのとき見たライブが今日のMUSEにつながってるんだと思うとうるうる来たが、かっこいいライブを見てるうれしさと楽しさが勝っている。
ここで「ミューズホールへようこそ」以外で初めてのMC。
ついに始まったBBガールズのMUSEライブ。楽しんでいってください。
「透明な水」
このバラードもバンドバージョンになっている。
今日初めて手拍子しない静かな曲で、知らないうちに前のバーに両手を置いていた。気づいてあわてて手を離す。手を置いて体重をかけて、まるで休んでいるような体勢じゃないか。たじさんやカナさんががんばっているときに、そんな姿勢はとれない。しっかり立って、心に刻むように聴いていく。
最後は曲が少しゆっくりになっていく。ふるじゅんさんのウィンドチャイムがしめくくりをきれいに飾った。
「苦い林檎酒」
手拍子をする感じのアレンジは久々だ。
たじさんのスキャット。ここなんだ。これを聴いてくれ。きっと多くの人に沁みているはず。
最前列は、ステージ全体のライティングを眺めるのに適しているとはいえない。もちろん、いちばん見たいのはBBガールズであり、ライブを体感するには最高の位置だから、それでいいのだけど。ただ、この「苦い林檎酒」のときだけは、世界が赤に染まっているのが感じられた。
「ひらいたトランプ」
このところの土曜パームトーン劇場と同じく、前半の終わりの方に「ひらいたトランプ」を持ってきた。楽しいMUSEライブが何だかどんどん進んでいく。このステージ、時間の流れが速いぞ。
ストレートなバンドバージョンというか、「それはウソじゃない!?」や「クランベリージャム」ほどアレンジを変えた感じは受けないが、やはりBBガールズ二人のときとはだいぶ手触りが違う。キーボードの三連打もカナさんのソロも、他の楽器が包んでいるみたいな印象。渾然一体。
バンドメンバーがステージを後にする。
MUSEのステージに、BBガールズが二人だけ。
偶然いっしょにラジオをすることになり、ユニット結成に至ったこと。性格が似ていないという二人の関係。ライブを始めた頃。このMUSEライブの決定と、今日まで。
いろいろと話してくれた。
思い出話の後だけど、次に歌うのは新曲だと、さらっとたじさんが告げる。
MUSEでも新曲をやるというラジオでの痛恨のネタバレがなければ、カバーかもしれないと想像しながらMCを聴いていたところだ。そして、新曲のサプライズに声をあげていただろう。
木曜日で状況が一変した。今ではどんな作品なのか注目の新曲を、いざ。
二人だけだから、たじさんの歌声もカナさんのキーボードもクローズアップされる。バンドもいいし、BBガールズだけのライブも本当にいい。
ありがとうと伝え、自分のだめなところもそのまま愛してとせがむ歌詞。静かな中に切実でほんとうの想いが燃えている。
技を凝らしてテーマを目立たせず、さり気なく感じ取らせる歌もある。どうしても伝えたい気持ち、これだけは言いたいこと、必ず届けたいメッセージを、ストレートに表現する歌もある。僕はどちらも好きなのだが、この新曲は後者だ。自分にはよくない部分もあるけど、全部丸ごと受けとめてほしい。いじらしいし、素敵だね。僕の好きなアーティストがうたっているのだから、なおさらだ。すっと心深く入ってくる。
今年は毎月ライブで新曲を発表していくBBガールズ。2月の新曲もよかった。タイトルを早く知りたいな。
はんなりディスコボールシャワーが帰ってきた。
雄一さんがギターを奏で始めるが、ラジオから流れてくる音みたいに聴こえる。昔のアメリカ映画で、部屋に置いてある大きめのラジオで音楽を聴いているシーンみたいだ。
「離れてもそばにいて」
ラジオからの曲の世界へ入り込んだように、僕の頭の中のスクリーンに映る映像が変わる。古き良き時代のハリウッド映画。広いクラブのステージを、客たちが酒を飲みながら見上げている。バンドが演奏していて、右前にはピアノがある。弾いているのはカナさんだ。さらに前、センターには歌姫たじさんの姿が。たじさんが歌うと、みんな釘づけだ。
ライブで「離れてもそばにいて」を聴くたびに、いろんなイメージが浮かぶが、このクラブの映像が最も多く見えた。それが今日は、実際に目にしている感覚だ。このうえなくぴったりな雰囲気。まるで、想像していた映像に曲を寄せていったかのように。
バンドを従え、カナさんのピアノを得たたじさんがうたい上げる。その声がクラブの空気に溶けると、音楽はまたラジオから流れ出す。部屋のラジオの画が映る。幻の世界が雄一さんのギターに戻っていく。
名画を演じたBBガールズが、一旦ステージから姿を消す。
その間はやはり、はんなりディスコボールシャワーによるインスト演奏だ。
手拍子しながら聴いているうちに、BBガールズの曲だとわかってくる。「クランベリージャム」だ。
曲が変わった。これも聴き覚えがある気がする。でも、BBガールズにこういう曲、あったっけ? サビが来た。「上腕二頭筋に登らせて」だ。たかしさんのギターソロ。雄一さんのギターソロ。お互いに見合いながら。いい感じ。ふるじゅんさんのドラムも激しくなる。やがてみんな、右側を見ながらの演奏になっていく。BBガールズが戻るタイミングをはかっているのか。毎月のライブで「明日に向って撃て!」の曲が流れる長さからしても、これぐらいは着換えにかかるっぽい。
BBガールズが再び登場。注目の衣装は、fm GIGアカデミー賞のときの着物だ。
カナさんはサンガカラーの紫の着物。胸元は少しはだけている風。網タイツ。黒のブーツ。髪の右側に青い花。
たじさんの着物はピンク系。左肩をはだけている。黒に炎の模様が入ったブーツ。髪を飾るは左側の赤い花。
前奏。急いで振り付け態勢突入。
「恋してオムレツ」
なるほど。後半のスタートに打ってつけの曲だ。静かな曲からも、インストからも、大きく印象が変わる。
カナさんの「ワー」のアクションが大きいバージョンだ。今日はもちろんそうですよね。MUSEなんだ。派手に行きましょう。あ、もしかして、土曜パームトーン劇場で大きなアクションを始めたのは、MUSEを見越してのことだったのか。
2番の後の間奏で、たじさんのMCが入る。これも再スタートにふさわしいもうひとつの理由だ。後半も盛りあがってとの言葉に、拍手と歓声が応える。
この流れなら間違えようがない。カナさんといっしょに腕を高く伸ばしてダブルピースだ。「イェイ!」
一昨年のお正月、自分の部屋のパソコンで初めて聴いたBBガールズの曲を、僕は今、京都ミューズホールで聴いている。
あらためてMC。
もう半分が終わったのか。たじさんもカナさんも速いと言っている。客席で見ていてもそう思う。何の不安もなく、かっこよくて心地いい堂々たるステージが前進していく。
カナさんのピアノから。
「泡のないグラス」
17曲と聞いていたから、「泡のないグラス」がないのかと思ってた。たぶん冴沢さんの数え間違い。オリジナル曲を全部やるなら、18曲になるはずなのだ。短いアカペラ曲と1月の新曲「天界の雫」を除き、2月の新曲を入れるならば。
考えてみると、外すはずがなかった。「泡のないグラス」が特に好きだというファンの方もいる。初めての大舞台でやらない手はない。
たじさんの声がMUSEを渡っていく。ボーカルもピアノもバンドも悲しみを告げるバラード。みんな静かに聴き入っている。やはりうたわれてよかった。
今日はきっとオリジナル曲が全部聴ける。BBガールズは名カバーも多いし、甲斐よしひろのラジオのエピソードが印象深かったから、カバーもやるかと予想したが、まずはオリジナルだもんね。今はBBガールズの曲のよさを、BBガールズのライブのすごさを、知ってもらう時期ということだろう。それに何より、名曲ぞろいのBBガールズの楽曲を披露したいという思いが強いのでは。めっちゃいいもんね。今日ずっとそれが証明されている。
この流れなら、次はあの曲。
雄一さんがアコギに持ち換えている。もう絶対だ。
カナさんのピアノが正解だと言っている。
「夜明けの月に」
月明りを示す黄色い明かりに、たじさんがうたう。僕が特に好きなうた。希望のうた。勇気のうた。
きっと次は「風のファンタジスタ」だ。「陽だまりの鳥」こそはさまないものの、去年7月の土曜パームトーン劇場を思い出す並び。僕を癒してくれたんだ。
今日はいろいろなことが次々によみがえって胸に来る。そのたびにうるうるきてしまう。
BBガールズの数々のライブ。その名場面や聴けた曲たち。これまでのMCやラジオで聴いたこと。たじさんのソロライブやカナさんのバンドのライブで見たもの。全てが今日に続いている感覚。そして、このMUSEもこれから重ねていく日々のライブも、また後へとつながっていくのだな。
たじさんがしっかりと立ち直す。来るぞ。闇の中でたじさんの左手が上がる。すぐ客席で右手を上げる。
「風のファンタジスタ」
ステージからたくさんの拳が見えているはず。たじさんの声が強くなる。ここからは怒濤のたたみ掛けだ。思いを込めて拳を突き上げる。
間奏の後のサビ。「夢を君の手に」で、カナさんは客席を指差さない。バンドバージョンでは鍵盤から手を離せないのか。
後奏。たじさんの声がさらに力強くなる。しかも深みがあるんだ。豊かにつややかに、強いままずっと伸びてゆく。やった。このすごさをたくさんの人が今見ている。
カナさんの静かなキーボード。たじさんが勝利の拳を掲げる。それを見上げて同じように拳を示してから叫ぶ。「たじーっ!」
たじさんが、客席を煽る言葉を投げる。まだまだ行くぞと。土曜パームトーン劇場の舞台裏のホワイトボードに、曲名と「MC」だけでなく、「あおり」まで書いてあったのは、今日のためだったのか。
さあ、前奏からたかしさんのギターだ。燃える燃える。たじさんが作詞作曲し、カナさんがギターの曲にアレンジしたというやつだ。カナさんのキーボードも華やかに。
「平成ガール」
どんどん熱狂していく場内。みんなが手を打ち、腕を振るなか、たじさんがいつものように「いつの間にやら夜みたーい、エッアーン」と歌って弾む。
2番の最後でもこれを待ち構えていると、「君のルーツも教えてー、ギッター」という初のフレーズ。当然そこからたかしさんのギターだ。うなる音へと歓声が飛ぶ。「たかしーっ!」の声も。
大騒ぎの間奏から一度静まる曲調。平成を彩った名曲をカナさんとともにコーラスしていく。たじさんのシャウトが大きなバンドの渦を起こす。スキャットに連れてまた速くなる強くなる。
後奏。またしてもたかしさんのギターが響く。ここはいつも過激なカナさんにも注目だ。右手に鍵盤を横断させながら、左手はテルミンだ。今日だからできるまた新しい興奮。他の楽器も全部すごいぞ。頂点へ駆け上がったところでたじさんの動きと音が止まる。「カナーっ!」「たかしーっ!」「たじーっ!」
たじさんもカナさんも手を打つ前奏。
「ガーディアン・エンジェル」
閃く音をギターが生み出している。久々に見るバンドによる「ガーディアン・エンジェル」は、ストイックに飾りをそぎ落としたロックの姿をしていた。アレンジはそう大きく変わっていない気がするのに不思議だ。これもまた今日だからこその感触。
間奏。たじさんが手をしなやかにカナさんの方へ向ける。同時にキーボードが鳴る心地よさ。さあ、カナさんのソロだ。表出されるメロディとリズムに会場が沸く。たじさんがカナさんの名前を呼び上げる。「カナーっ!」「カナーっ!」の叫びがいくつも続いた。
いつものクセでカウントを待っていた。俺のまぬけめ。いきなり湧き立つ煽情的なキーボード。おおお、これ好きなんだよ。
「まだまだGIRLでいいかしら」
たじさんが「フーッ!」って足を曲げる。カナさんも歌ってる。ビートが弾んでる。曲に任せて体を動かす。サビの右手はたじさんに合わせて。ただただ楽しい。曲が気持ちいい。心が跳ねる。たじさんもカナさんも楽しみと元気とよろこびにあふれてる。再びカナさんのソロと歓声。もっと大きく右手を動かしたいな。そうもいかないのは観客がいっぱいだから。うれしいなあ。たじさんの強い声。ステージのあちこちまで意識が向かない。BBガールズの代表曲は夢中のままに終わった。
ここで本編終了だと思っていたが、BBガールズもはんなりディスコボールシャワーもステージに残っている。
感謝を述べるたじさん。本当にいいMUSEライブになっているな。
真摯な言葉ときれいなピアノ。あのバラードがうたわれる時。
「陽だまりの鳥」
カナさんのピアノだけでたじさんがうたっていく。今日何度目だろう。またうるうるきてしまう。
2番の前に間奏が入る。バンドの音が加わっている。
声が沁みる。詞が沁みる。ピアノがそれを引き立てる。バンドが今日の音を添える。
カナさんのピアノが、たじさんのうたが、カナさんのコーラスが高まる。最後のサビが繰り返される。
たじさんのあのスキャットがさらに高く、さらにさらに高くきれいに澄んでいった。
BBガールズとはんなりディスコボールシャワーが去り始めるや、手拍子が始まる。MUSEがアンコールを求めている。
すぐに戻ってきてくれた。
最後はもちろんあの曲だ。
「境界線はいらない」
またまたうるうるきてしまう。カナさんもそんなふうに見えるけど、僕の気のせいかもしれない。
サビだ。開場から肩にかけてきたBBガールズタオルを振る。後ろの人たちの視界をさえぎらないように、顔よりも低い位置で。MUSEじゅうがこの瞬間、タオルや手を振ってるんだな。振り返って見てみたいけど、それよりステージから目を離したくない。BBガールズからは今どんな景色が見えているんだろう。いつものライブより何倍も広い会場。何倍も多い観客。それも、もちろん自分たちを見に足を運んだお客さんたちだ。開演からずっと楽しませ続けてきたお客さんたちだ。感慨深いだろう。壮観だろう。いや、ひたすら気持ちいいものなのかもしれないな。
動きだけではない。声も合わさっている。生の「ラララ ラララ」がホール全体から聴こえる。
楽しそうにのびやかなスキャットのたじさん。BBガールズのMUSEライブが終わっていく。
BBガールズとはんなりディスコボールシャワーが前に出る。6人が並んで手を取り、高く掲げて満場の拍手を浴びる。
そのまま一度おじぎをして、それからそれぞれが思い思いに観客に応える。
繰り返される「たじーっ!」「カナーっ!」の声援が、BBガールズの背中を追っていった。
本当にあっという間だったな。
そして、大成功だった。お客さんもたくさん入り、最初から最後まで盛りあがった。
そしてそして、何といっても内容が充実してた。最高だ。
毎月自分たちのワンマンライブを仕上げてきた。それも、毎回コラボやカバーや新曲という課題を出されながら。ライブの形もよりプロらしく、もっとプロらしくと進化させて。
数々のフリーライブで場数も踏んできた。野外イベントもあれば、遠征もあった。
そうやって成長してきたBBガールズだから、やってのけると思っていたが、実際素晴らしかった。信頼しているはんなりディスコボールシャワーが一緒だったから、なおさら心強かったことでしょう。
MUSEが決まったときから、当日は初めてライブで二人が同時に泣くのではないかと思ってた。
僕が知るBBガールズは、カナさんが感激の涙を流しているときたじさんは明るく笑っていて、たじさんが感極まっているときはカナさんがしっかり支えていた。
今日は二人とも泣いて、しゃべれないあるいは歌えないというシーンもあるのかなと。そう思っていたが、二人とも二三度目がうるんでいるように見えただけだった。それも僕の錯覚かもしれない。
二人とも「あくまでもMUSEライブは通過点」と言っていたから、それが大きかったのかな。
本当に通過点なんだなと僕が最も強く感じたのは、冴沢プロデューサーが、カナさんとともにゲスト出演したFMおおつで、「今回が成功したら二度目のMUSEを考えている」と話したと聞いたとき。
2月9日に伝説のライブをして、それを機にすぐ爆発的に売れる。ということがなかったとしても、後がある。しっかりしたライブをすれば、次につながっていく。ちゃんと着実に考えてもらえているんだ。それなら、MUSEで力み返ることもない。終わった途端燃え尽きることもない。初のMUSEを音楽人生のピークとせずに、これからも登っていける。のではないかと。
ただ、いくら進化した成長したBBガールズだといっても、はんなりディスコボールシャワーがついているといっても、大きな期待に応えてこんなに見事なライブをするには、大変なこともあったと思う。
このうれしい結果は、しっかり準備してくれたからなんだろうな。本当にありがたいし、尊敬します。
数字が苦手だろうが、お寿司が食べれなかろうが、マザー・テレサを知らなかろうが、それが何だ。こんなにすごいライブができる者が一体どれだけいるのか。ライブに行きたいとここまで強く思わせてくれるアーティストがどれだけいるのか。BBガールズは本当にすごいミュージシャンなんだ。
終演後、BBガールズは出口で観客を見送ると言っていた。
そのじゃまをせず、最後の方にそっとブログに載せる写真をお願いしようと思っていたら、機会を逸してしまった。
日本海がとてつもなくきれいだった富山ライブのときもそうだ。僕は肝心なときに写真を撮れていない。
でも、いいんだ。今日の思い出は自分の中に残り続ける。
僕はそれを抱きしめて、烏丸の街を歩き始めた。
2月9日(日) 京都ミューズホール
もっとオールドファッションド
人生はミラーボール
それはウソじゃない!?
クランベリージャム
透明な水
苦い林檎酒
ひらいたトランプ
ダメなところも
離れてもそばにいて
恋してオムレツ
泡のないグラス
夜明けの月に
風のファンタジスタ
平成ガール
ガーディアン・エンジェル
まだまだGIRLでいいかしら
陽だまりの鳥
境界線はいらない